無数の召喚魔を前にして、しかし稼津斗達の進撃は止まらない。
寧ろ止まるどころか、ドンドン進撃するスピードが上昇しているようにも見える。

「失せろ…!」

中でも特出しているのは矢張り稼津斗だ。
XXの新形態に覚醒した事が関係しているのか、殺意の波動と暗黒パワーを略完全に使いこなしている。
今もまた『瞬獄殺』で100近い召喚魔を、一瞬のうちに葬ったところだ。


其れに慌てているのは、管制室(?)の調達だ。

「だ、ダメです!侵入者止まりません!
 デュナミス様の警護傀儡2000体を向かわせましたが、速度を落とすどころか加速しながら無限階段を上昇中!」

完全に誤算だった。
宮殿の外の混成艦隊だけならば、造物主の掟の簡易版を持たせた召喚魔を混ぜた召喚魔戦隊で押し切る事が出来ただろう。

事実、外の混成艦隊との戦闘では優位を保った状態を維持している。

だが宮殿内部は如何だ?完全にやられている。
4桁の召喚魔がまるで役に立たないなど悪夢としか思えないような光景だ。

「この力…危険だな。排除せねばならん。」

「どうぞお好きに…僕と彼女は最終段階の準備に入る。」

其れを見たデュナミスは排除せねばならんと言うが、フェイトもセクスドゥムも『排除?好きにすれば?』と言わんばかりだ。
或は『どうせ排除なんて無理だから。それにやられたらそこまでの相手だったってだけ』とでも思っているのかもしれない。

計画の最終段階に向かい、フェイトとセクスドゥムはこの場を後にした。











ネギま Story Of XX 115時間目
『Limitation FLAME』











「氷薙稼津斗とネギ・スプリングフィールド…そしてその仲間達…予想以上だなこの理不尽な力は。
 特に氷薙稼津斗…奴の力はかのサウザント・マスターすら遥かに凌駕している…よもや此れほどの力を宿しているとは正直思っていなかった。」

モニターに映る戦闘を見ながら、デュナミスは稼津斗達の驚異的な戦闘力を認めざるを得なかった。
無論、総督府で自分を相手に見事な立ち回りを見せた和美、亜子、のどかの3人についてはその実力は認めている。
だが、稼津斗は別として、他の仲間達も其れと同等かそれ以上の力を有しているとは思わなかったようだ。

稼津斗、ネギ、小太郎の暫定最強野郎トリオが兎に角召喚魔を撃滅し、其れの攻撃から逃れたモノは後続の仲間達に葬られる。
無敵にして最強と言っても、決して誇張ではない一団が此方に向かってきているのは正直脅威であった。

「…此れは…全然大丈夫じゃないな。
 あれらを相手に此方の戦力が貴様等の様な小娘5〜6人の現状を思えば如何考えても。」

「デュナミス様酷い!!」

「ぶっちゃけた〜〜。」

「力至らずスマンデス…」


そして盛大にぶっちゃけた。
確かに稼津斗達一行を迎え撃つには、あまりにも戦力が貧弱だ。

と言うか相手にもならないだろう。
フェイトガールズの戦闘力はラカンの強さ表で言えば精々1500が良い所だ。

其れに対し向かって来てる連中は、千雨、夏美、まき絵の3人を除いて全員が1万を超える強さを持った連中だ――如何考えたって勝てる筈がない。

「だが、貴様等の質は良い……此れを使えば奴等とも渡り合えるであろう。」

そう言ってデュナミスが取り出したのは何かの…薬のような錠剤。
此れが一体何だと言うのだろうか?

「デュナミス様、此れは?」

「服用者の力を数百倍に高める秘薬だ。
 無論、弱者が力を求めて使えば倍加に耐えきれず身体が崩壊するだろうが――貴様等ならば大丈夫であろう。
 貴様等はテルティウムとセクスドゥムと共に数々の任務をこなしてきたからな。
 事実壊滅状態だった我等『完全なる世界』が、今再び20年前に成し遂げられなかった大計画を成就しようとしている…此れだけの戦力でだ。
 此れは貴様等の戦果だ…誇っていいぞ小娘共。」

言いながら仮面を外す………意外や意外、現れたのは想像以上のイケメンである。
此れにはフェイトガールズ(特に暦)も見惚れてしまう。

「でゅ、デュナミス様…」

「正直、貴様等には感謝せななばならん…全ての望みが潰えたと思っていた我に、最後の機会を与えてくれたも同然だからな。
 そう、愚かな人類に神罰の鉄槌を振り下ろす機会をな!そして、タカミチとゲーデルに一泡吹かす!!」

「最後なんか付け加えたーー!?」

「個人的!?」

「小さい!!」


何やらタカミチとクルトに個人的な恨みがあるらしく、最後の機会とやらの内容になんか付け加えられた。
20年前の大計画の成就もさることながら、個人的な私怨も晴らしておきたいと言うところだろう。

「では、我自ら出でようぞ!
 其れも此れも奴らを止めねば夢の幻!!貴様達も共に来い!!」

「「「は、はい!!」」」

その為には稼津斗達は何としても止めねばならない。
出動するデュナミスに、暦、焔、環の3人が付き従い、調だけは計画の最終段階発動の為にこの部屋に残る事に。

「あらあら、ウチは置いてけぼりですか〜〜?
 決めの戦場に、ウチを置いていかはるなんて、つれないわ〜〜デュナミスはん。」

更に何処から現れたのか月詠も姿を見せる。
まるで気配を感じさせずに現れたところを見ると、陰陽術で転移でもして来たのだろう。

「月詠か…来るならば好きにしろ。
 正直貴様のような者の力にも頼らざるを得ないのが我等の現状だ。」

「それはもう、お給料分は働かせてもらいますえ♪
 うふふふ…先輩も本当に美味しそうになって……あぁ、早く殺し(愛し)合いたいおすなぁ…うふふふふふふふふふふふふふ…



「……小娘共、事が済んだ暁には貴様等がどんな道に進もうと知った事ではないが――アレみたいにだけはなるなよ?」

「「「はい……」」」

相も変わらず月詠はぶっ飛んでいた…デュナミスがドン引きするくらいに。
人として何かが終わっている月詠も加え、出撃――デュナミスの中では戦力差以上の不安要素が渦巻いていたが…








――――――








天下無敵の蒼き翼は止まらない。
来る敵を、殴って切って粉砕し、只管駆け続けた螺旋階段。
其れもようやく終わり、同時に召喚魔の姿も消え去った――此処からは階段以外のルートで上層を目指す事になるのだろう。

現れた敵は問題なく葬って来たが、この場に到着したのはフルメンバーではない。
実は、螺旋階段が途中で分岐し、その分岐点で小太郎、夏美、和美、さよ、ユエ、ビーの6人は『人質救出組』として別行動になったのだ。
此方と比べると戦力は大幅にダウンするが、和美と小太郎が居るので大した問題はないだろう。


「此処が螺旋階段の頂上だな?」

「その様でござるな……あすな殿、栞殿と代わって貰ってよいでござるか?」

「うん…………あ、アスナさんしばらく失礼します。」

良いわよ、元々貴女の身体なんだし。

此処であすなの人格から栞の人格にチェンジ。
余談だが、栞の呼称については本人の願いで『ルーナ』ではなく『栞』で統一されている。

さて、此処での人格チェンジは言うまでもなく、此処から先のルートを聞くためだ。
そう簡単に教えていいものかと思うだろうが、今の栞の心境は中々に複雑なのだ。
今まではフェイトの――完全なる世界が行おうとしている方法しか魔法世界救済の手段はないと思っていた。
だが、ネギと稼津斗にはその代替案があると言う――其れを信じてみたくなったのだ。

まぁ、それ以上にネギに『落とされた事』が大きなウェイトを占めてはいるのだが…

「あの、ネギさん…大丈夫ですか?ずっとその姿で戦いっ放しではないですか。
 その…デュナミス様の強さは尋常ではありません――魔力の残量などは…」

そう、先ずネギの心配をするくらいにはネギに傾倒しているのだ。
全てが解決したら、或は新学期には3−Aに新たな生徒が増えているのかもしれない。

「まぁ、大丈夫じゃないか?マクダウェルのコピーに、アレだけの…ある意味拷問レベルの特訓をしてもらったんだからな?」

「うん。…おかげで雷天大壮の運用効率はラカンさんと戦った時の数倍に跳ね上がってる。
 其れに『完全なる世界』の中で丸1日休ませてもらったから魔力は満タン状態――だから大丈夫ですよ栞さん。」

「そうなのですか…?」

確かにネギの強さは相当だった。
其れこそ今のネギなら、無変身で全力の稼津斗とも可成り良い勝負が出来るだろう。

だが…

「其れだけではないだろうネギ坊主?」

「ウム…私も魔法に関してはマダマダ素人アルが何と言うか――
 アレだけの敵を倒して、魔力が減るどころか逆に増えているように感じるアル。」

「闇の魔法による魔力容量の増大…ですね?
 より『馴染んで』きている…其れに伴い『浸食』も…」

「はい…どうやらそうみたいです…」

ネギの異常なまでの強さの裏には矢張り闇の魔法の浸食と適応があった。
端的に言うなら、戦いながら浸食と適応が進み、疲れるどころか魔力量はドンドン増え、リアルタイムでパワーアップしていたのだ。

「まぁ、大丈夫だろう。」

「何がだよ…アンタも大概アレだよな稼津斗先生…」

「いや、適当な事を言ってるわけじゃない。
 俺の殺意の波動と暗黒パワーにしろ、ネギの闇の魔法にしろ、この手の力は其れを扱う者の心の持ち方にダイレクトに反応するものだ。
 だとすれば、少なくともこの宮殿内ではネギも俺も暴走する事はない――闇に喰われてる暇などない程の目的を果たしに来てるんだからな。」

其れでも稼津斗は大丈夫だと言う。
確かに、この宮殿での成すべき事を考えれば暴走している暇などない。
精神が闇の力を凌駕していれば、喰われる事はないのだ。

「つまりはそう言う事です!それに、今この場でのパワーアップは正直ありがたいでしょう?
 全部終わったらどうなるか分かりませんが…まぁ、皆さんが居れば多分きっと大丈夫だと思いますので。」

無責任ではない。
成すべき事はキッチリやり遂げるから、其の後でどうにかなったらその時はお願いしますと言う、ある意味で仲間を信頼していないとできない事だ。

「だから行きましょう栞さん、この世界を救いに。
 行きましょうアスナさん、貴女を救いに…」

ネギ…そうね、『私』も其れを待ってるわ…

「はい…行きましょうネギさん、皆さん!」

不安は一時的にではあるが払拭された。
後は進むのみ。

「あの扉の向こうが墓所になります。墓所を抜けて上層部に上がれば……」

「!?…待て、扉の向こうに何か居る!」

ルートを説明し始めた栞だが、それを止めるようにイクサが扉の向こうから『気配』を感じ取ったと言う。
いや、イクサのみならず、稼津斗組の全員が其れを感じ取った事だろう。

「待ち伏せ?或は罠か?」

「いや…微塵も隠そうとしない強大な魔力と闘気――正面切ってやり合う気のようだな…如何するネギ?」

「…行こう。こんな所で止まって何ていられないんだから。」

其れは間違いなく扉の向こうに敵がいると言う事。
だが、そんな物は止まる理由になりはしない。
そもそもここは敵方の本拠地なのだ、敵が出てこない方がオカシイと言うモノだろう。

そして立ち塞がる敵は――迷う事など無い、倒して進むだけだ。



――ギィィィィ…



大きな扉を開けると、目の前に広がるのはヒンヤリとした空気の佇む薄暗い部屋…墓所と言う名もピッタリだ。

その部屋の中央の円形の足場。
其処にはデュナミスを筆頭に、月詠、焔、暦、環――ラスボス前の中ボス軍団が其処に居た。

「ようこそ蒼き翼の諸君――次代の子等よ…」








――――――








その頃、人質救出組の6人は慎重に目的地に向かっていた。
和美と夏美のアーティタクトを併用した、二重のステルス迷彩とでも言うべき状態で召喚魔の横を大胆にも通り過ぎていた。

無論正面から挑んでも、和美と小太郎が一掃するだろう。
だが、正直な事を言うと人質救出までに無用な戦闘はしたくない。
此処での戦闘を嗅ぎ付けられて、増援を送られたら面倒なことこの上ないのだ。

なので、こうしてステルス機能全開で進んでいる訳だ。

「それにしてもすっごいなぁこのステルスは…真横通ってるのに全然気付かへんで?
 ぶっちゃけ、朝倉さんのアーティファクトと夏美姉ちゃんのアーティファクトの複合ステルスやったら、兄ちゃんでも見つけるの難しいと思うで?」

「そ、そうかな?」

「おう!特に夏美姉ちゃんのは隠密行動には神の如きアイテムや!」

「あ、ありがと///

加えて、実を言うとこの二重ステルスの効果は夏美のアーティファクトによるところが大きい。
確かに和美のアーティファクトでの光学迷彩も優秀だが、其れだけでは気配で気付かれる可能性がある。

だが、夏美のアーティファクトはその気配を『限りなく0にする』と言う反則ギリギリの効果であり、更に視界にも映らないと言うおまけつき。
此れでは如何足掻いても召喚魔如きには見つけられるはずもない。

「なぁ、夏美姉ちゃん本気で俺の相棒にならへん?てか、なってほしいんやけどダメか?」

「ふええ!?あ、相棒って…コタ君!?」

「こらこら少年、こんなところでプロポーズ紛いの事するなっての♪」

「え〜〜?えぇやん、本心やし、俺夏美姉ちゃんこと好きやし♪」

「〜〜〜〜///!!!」

「…ビーさん、ラブコメしている場合でないと思うのは私だけでしょうか?」

「いえ、私も思いましたよユエさん…」

取り敢えず救出組は余裕綽々であるようだ。








――――――








「………阿修羅閃空。」

墓所では、現れたデュナミスに対して…

「覇ぁ!!」

「むぅ!?」

稼津斗が先制攻撃を仕掛けていた。
残像を残すほどの高速移動『阿修羅閃空』から、必殺の正拳突き!
余りにも速い一撃だが其れを防いだデュナミスも、成程並の使い手ではないだろう。


――成程、此れは疾い…

――此れは…矢張りセクスドゥムが使うのと同じ高密度魔力の多重障壁か…だが!
「温い…同調・断空!!」

だが其れも稼津斗相手には無意味。
如何に強固な障壁だろうとも、術式破壊技を持つ稼津斗には問題にもならない。


――バキィィ!!!


障壁を貫いた拳はデュナミスの顔面を捉え、仮面を粉砕しながらブッ飛ばす。
其れでもKOされなかったデュナミスのタフさは褒めても罰は当たらない筈だ。

「拳を障壁で防ぐなど温い事はするなよな。
 男なら格闘技は己の身体で防いでナンボだろう?…障壁は射撃や魔法に対して使うものだって教わらなかったのか?」

「ふふ…見事…だが、君達の『弱点』は放っておいていいのかな?」

ブッ飛ばされてもデュナミスは余裕。
見れば月詠達の姿がない……其れ等は一瞬で他のメンバーに近付いていた。

狙いは言うまでもなく、戦闘力が極端に低いまき絵と千雨、そして直接戦闘が得意ではない栞だ。

「無能者め…灰にしてくれる。」

「先ずはアンさんがたから送りまひょか?」

焔の目に魔力が集中し、月詠も抜刀!


「させない!!」

「月詠、私の仲間に手出しはさせんぞ!!」

が、其れもアキラと刹那によって阻止!
アキラは亜子のアーティファクトから貰った液体の魔法薬を自身のアーティファクトで操って『水の盾』で焔の攻撃をシャットアウト。
刹那も、神速とも言える動きで月詠の一閃を夕凪で受けて攻撃を止める。

「いけずやわぁ〜〜、どうせ先輩達が勝てば生き返るんですから…少しくらい殺しても良いですやろ?」

「戯言を…貴様は人の命をなんだと思っている!!」

そのまま刹那と月詠はタイマンの斬り合いに突入!
更に…

「時の…!!ってあれ?」

「自在なリボン!」

「序でに燃えちゃえ!!」

「叩きのめすアル!」

時に干渉しようとした暦のアーティファクトをまき絵がアーティファクトで盗み去り、戻そうとするところにクスハと古菲の一発が炸裂!
更にそのまま格闘戦に持ち込んで分断。

「暦!!おのれぇぇ…!!」

「竜族だったか?…だが上には上が居ると知れ!楓!!」

「うむ!!」

竜族化した環にはイクサと楓が!
翡翠とブラッディダガ―の乱れ射ちで動く事を許さない。

「馬鹿な…おのれぇぇ…燃え尽きろ!!」

「火は水で消える…其れも通さない!!!」

「精霊融合『水の精霊』!行くで裕奈!!」

「合点!!」

焔も裕奈、アキラ、亜子の3人が相手では幾らなんでも分が悪い。
人数差もさることながら、まるで相手になって居なかった。

「……極めて余裕みたいだが?」

「だろうな…だが、切り札はとっておくものだろう?」

「…なに?」

それでもまだ屈しない。
そう…切り札があるから。


「く…かくなる上は…」

「頂いた此れを…!!」

「使ってでも倒すです!!」

追い込まれた3人はデュナミスから貰った秘薬を口に!



其れを飲み込んだ瞬間に効果が表れた。


「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!」」」

魔力が膨れ上がり、闇色のオーラをその身に纏っている。
その力の上昇値たるや、無変身の稼津斗の従者達を上回って居る程だ。

「魔法薬での強制強化!!」

「成程…此れが切り札か…」

ラスボス前の中ボス軍団戦は、ダメージ限界突破のオーバーキルでスンナリと…とは行かないようだ。




















 To Be Continued…