第二合流地点は殺気と闘気で満ち満ちていた。
 それらの発生源は稼津斗とルガール。

 ルガールは切り落とされた機械義手をスペアに付け替え抜かりは無い。
 稼津斗もまた絶対の力を隠そうともせず赤黒い波動を其の身に纏っている。

 本よりルガール如き稼津斗の敵では無いが、殺意の波動に目覚めた稼津斗なら万が一すらありえない。
 誰もが稼津斗の負けは考えていないが…矢張り稼津斗の様子は尋常では無い。

 服は此処に来るまでに着替えたのだろう、貸衣装ではなく何時もの黒ジーンズに黒ジャケットだ。
 だが、その黒ジャケットの背の文字が問題だった。

 何時もは『武』又は『闘』と入っているのだが…今入っているのは『滅』一文字。
 恐らくは殺意の波動が纏う衣の文字まで変えてしまったのだろう。
 煌々と紅く輝く『滅』一文字は、そのまま死を体現したかのような威圧感すら感じる。

 「うぬが真の力…見せてみよ!!

 「君ぬぉ、死に場所はぁ此処どぅぁ!!」

 そして始まってしまった……死合いが…











 ネギま Story Of XX 101時間目
 『滅殺・抹殺・瞬獄殺!』











 だが、この『死合い』も端から勝負になるはずは無い。
 如何に力を増したルガールと言えども、殺意の波動に適うだろうか?



 答えは否。



 殺意の波動はある意味最も純粋な戦闘本能を活性化しているといえる。
 つまり今の稼津斗は戦闘本能のみで行動していると言っても過言では無い。

 故に戦術も戦略もありはしない。
 ただ本能の赴くままに力を揮い、眼前の敵を滅する…それだけだ。


 「ぬぅん!!」

 「下らん…こんな拳など要らぬ…!

 ソレを示すように、ルガールの拳打を軽々と受け止め、逆にその拳を粉砕!!
 其のまま横蹴りを喰らわせ、吹き飛んだ所を追いかけ、ボディに拳一発!

 無論此れでは終わらず、地に伏したルガールを蹴り飛ばし、更に其処に滅殺剛波動の超連射。
 更に阿修羅閃空で間合いを詰め、目にも留まらぬ滅殺剛昇龍!
 加えて最後の一撃から間髪入れずに天魔剛羅刹!

 ラッシュに継ぐラッシュはルガールに多大なダメージを与えていく。
 が、ルガールとて早々簡単に行く相手では無い。

 バリアを張って気弾系を無効化すると反撃に転じる。


 「ジェェノスワアァァイドカットゥァァァ!!!」

 空を切り裂く鋭い蹴りを放つが、稼津斗は既に居ない。
 いや、ある意味で其処にはいたのだ。

 「温い…うぬも我が殺意の糧となれ!!

 略真上から強襲!
 ルガールの反撃を見るや『禊』で逆カウンターを決めてきた。

 反対に反撃を潰されたルガールはキツイ。
 出掛りを潰されたせいでバランスを崩し床にダイブ!


 「この脚も用を成さぬ…!!

 「ぐがぁぁあ!!」

 其処に稼津斗のストンピング。
 右の足は完全に粉砕された事だろう。

 「ば、ばぁかぬあぁぁ!くおぉぉの私ぐぁ、手ぇも足も出んぬぁどという事があってとぅあまるかぁぁ!!」

 「だが此れがうぬの力の現実…弱い…余りにも弱すぎる。
  うぬではまるで喰い足りぬが、せめて至極の技で終らせるとしよう…うぬを黄泉へ送る技『瞬獄殺』…!


 「拙い!稼津君ダメ!!」

 最大の一撃の構え、ソレを見て裕奈は飛び出すが、もう遅い。
 一瞬の閃光の後、勝負は付いていた…

 血達磨になったルガール、だがまだ息はあるようだ。
 いや、息があるどころか…

 「ふっふっふ…よぉていとは違ったぐあぁ、まぁ此れで良しとしよう…貴様に、我が暗黒パワーをぉぉぉ…」

 左手が稼津斗の胸に突き刺さっていた。


 尤も不死の稼津斗にはこの程度は蚊に刺されたようなものだが問題は其処ではない。
 ルガールの腕から『何か』が稼津斗の中に送り込まれているのだ。

 恐らくは此れが『暗黒パワー』という物なのだろう。
 剥がそうとしても剥がれず、その力はドンドン送り込まれていく。

 「小賢しい事を……だが、此れは……う…ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!」

 オリハルコンと殺意の波動と暗黒パワーが内部で衝突したのだろう。
 稼津斗の身体が一瞬輝いたかと思ったら、そのまま意識を失った。

 「稼津君!!……良かった生きてる…」

 命に別状は無いが。
 だが、裕奈は胸中穏やかではない。

 当然だ、親友を傷付けられ、そして大切な人を暴走させ、おまけに妙な力を送りこまれたのだ。
 怒るなという方に無理がある。

 「…覚悟できてるよね?」

 アーティファクトの剣先を突きつけルガールを睨みつける。
 最早ルガールの力は無いに等しい故に、叩き潰す事は容易だろう。

 「ふっふっふ…わぁたしはもはやこぉこまでどぅあぁ…が、目的は果たしとぅあ。
  殺意の波動と言ったか?ソレと、わぁたしの暗黒プワァァが合わされば、どんな殺戮者がでぇきるのだろうな?…たぁのしみどぅあ。」

 「この…!!」

 「どぅあがぁ!貴様等に負けるなどは我慢できん…最後見せてやろう、わぁが最強の技を!!」

 この期に及んでまだ、ルガールは抵抗というか攻撃の手段があるらしい。
 裕奈もソレに備えるが……ルガールが取り出したのは何かのスイッチ。



 猛烈に嫌な予感がした。


 「ふっふっふ…ルガール流最終奥義ぃ!……自爆!!」

 「なぁ!?自爆ってアンタ…そりゃ無いでしょうが!!!!!」

 叫んでみても時既に遅し。
 スイッチは押し込まれ、ルガール発光!然る後に大爆発!!!

 第二合流地点がソレでも吹き飛ばなかったのは恐るべき頑丈さというしかないだろう…


 「…取り敢えず、覚えてて良かった防御魔法…」

 序でに裕奈も防御魔法を展開し、皆無事だ。
 結局ルガールは稼津斗にフルボッコにされた挙句に自爆しただけであった…合掌。


 とは言え状況は芳しくない。
 ルガールは消えても、召喚魔物、魔獣は次々と現れてくる。

 「こりゃ流石に私1人じゃきついか?」

 流石の裕奈も数の暴力に対処するには限界がある。
 僅か数秒とは言えルガールにエネルギーを吸収されたアキラは、今は戦力としては期待出来そうにない。

 「ゴメンゆーな…」

 「気にすんなっての、今はゆっくり休んでなよ、パルが来るまで持ち堪える位は余裕だぜ!」

 即時XXに変身し、召喚ユニットの殲滅開始。
 撃つ撃つ撃つ!斬る斬る斬る!!
 現れた先から撃って斬って殲滅、滅殺、轟殺!

 ハルナが来るまで持ち堪えようとたった1人で引切り無しに現れる魔獣を相手に獅子奮迅の大立ち回り。
 その活躍や凄まじく、正に鎧袖一触という他は無い。


 だが、矢張り数と言うのは恐ろしい。
 召喚された1体が、遂にアキラとまき絵に!!

 他を殲滅中の裕奈は救援に行けないし、今のアキラでは迎撃は難しい。
 絶体絶命……思わず目を閉じる…が!!


 「ちぃ!!!舐めた事してんじゃねぇクソッタレが!!」

 会場に給仕として来ていたトサカがアキラ達を庇うように躍り出る。
 だが、それも盾になるのが精一杯……身体を魔獣の一撃が貫き…

 「ったく世話かけさせんじゃねぇよ…馬鹿が…」


 ――パシュゥゥゥ…


 その身体が光の粒になって消えた。

 「トサカ…さん?」

 普通に考えればおかしい。
 仮に今の一撃が致命傷だとして息絶えたとしても遺体は其処に残るはず。
 ソレが何も残さず光の粒になって消滅とは一体如何言う事なのだろうか?



 一切不明だが同様の事は他の場所でも起こっていた。



 「チーフ!!!」

 「ちょ、マテやコラ!!」

 「あ〜〜…こりゃドジ踏んじまったかねぇ…」

 別ルートで第二合流地点に向かっていた小太郎と夏美と一緒に居たくままチーフも…
 魔獣を締め上げ大活躍だったが、一撃を喰らい…そして光となって消滅。

 舞踏会上の外でも又、多くの人々が魔獣の攻撃で消滅を余儀なくされていた。








 ――――――








 第二合流地点に向かうネギ達一行の戦いも苛烈を極めていた。

 現れる魔獣はクレイグが手にした長剣で切って払って滅殺し、古菲と超もアーティファクトを駆使して無双!
 クスハに至ってはアーティファクトで魔獣を操り、同士討ちまでさせている。
 アイシャはネギと千雨を護る様に防御結界を展開。


 のどか、亜子、和美の3人は現れたローブの男に対して息もつかせぬ連携で圧倒している。


 天下無双とも言うべき状況だが…何故か嫌な予感が拭えない。


 「ふむ…中々…否、最強クラスというべき実力だな。
  貴様等でこれならば…成程氷薙稼津斗はテルティウムやセクスドゥムの手には余るわけだ。」

 押されて居るモノの、ローブの男は巧みな防御で決定打を決めさせない。
 だからと言って優位に立っているというわけではないのだが。


 「うむ…そろそろ終らせるかな?先ずはミヤザキノドカ、貴様から消してやろう!」

 「そう簡単には…やられません!!」

 攻撃態勢を取る男に対し、のどかも迎撃姿勢をとる。
 攻撃がかち合えばのどかが押し切ることが出来るだろう。


 だが、此れは男の罠だった。
 放たれた一撃はのどかを越え、クレイグに直撃。

 「が…!!くそ…これじゃあカッコ悪いにも程があるだろう…!!」

 そして殆ど間を入れずに光になって消滅。


 「え…?」

 当然ソレは信じられない光景。
 のどかのみならず全員が突然の状況に驚き声すら上げられないで居る。


 だが、戦闘において動きを止めるのは自殺行為。
 即刻第2波がのどかに放たれる。


 しかしソレもまたのどかに到達する事はなかった。




 アイシャがのどかを庇ったから。

 「アイシャさん!!」

 「あはは…貧乏くじよね私も……もう1回アンタと遺跡に潜りたかったなぁ…」


 ――パァァァァァ…


 そのアイシャもまた光となって消滅。
 認めたくない現実だ。


 「邪魔を…所詮は木偶人形に過ぎんか…人形は人形師には逆らえん。」

 「…木偶人形やと…?」

 「誰が木偶人形だってのさ…この野郎…」

 だがそれに対して放たれた男の一言は、少女達の怒りを沸騰させるには充分だった。
 亜子と和美にとっては自分の仲間を面倒見てくれた恩人であり、そして今助太刀を買って出てくれた仲間のクレイグとアイシャ。
 その2人が木偶人形呼ばわりされて黙っていられるはずは無い。


 「アイシャさんもクレイグさんも…人形なんかじゃありません!!!」

 その中でものどかは特にだ。

 魔法世界に来てからずっと世話になってたトレジャーハンターのチーム。
 中でもクレイグは何時ものどかの事を気にかけてくれていた。
 アイシャはのどかを本当の妹のように可愛がってくれていた。


 そんな2人が消滅し、あまつさえ『木偶人形』等と言われた。
 怒らずに居られるか?


 否!断じて否!!

 「アイシャさんとクレイグさんは…大切な仲間だったんです…とっても大切な!!
  ソレを木偶人形呼ばわりするなんて…許せません…絶対に…絶対にぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 ――バガァァァァァァァン!!!!


 瞬間、力が弾けた。

 のどかだけでは無い、和美と亜子もまた同様に力が弾けている。


 3人が立って居る場所の床は罅割れてクレーターを作り、纏うオーラも強くなっている。
 何よりも変わったのはその見た目。

 のどかの金髪、和美の蛍火の髪、亜子の白髪…それらが激しく逆立っているのだ。


 「む!?」

 「この腐れ外道……アンタは此処で滅すべきさね…!!」

 「のどかの仲間を、ウチ等の仲間を木偶人形言った事は許す事できへん…!!」

 「クレイグさんの、アイシャさんの仇…!
  トレジャーハンターにして蒼き翼が一員、宮崎のどか……貴方を滅させていただきます!!」


 ソレは進化。
 少女達の仲間を思う心が怒りへと転化した事で起こった最強の進化。


 「覚悟しなよ?この……クズ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 まるで獣の咆哮が如き和美の怒声。
 ソレは第2ラウンド開始の合図であった。













  To Be Continued…