総督府に突如現れた大量の魔物。
 それは建物の外のみならず、舞踏会場にまで出現してきた。

 当然、参加していたセレブ達は大パニック。
 華やかな舞踏会場は一転して阿鼻叫喚の修羅場に変貌だ。

 無論総督府の衛兵とて何もしていないわけでは無い。
 即座に迎撃に打って出るが……その攻撃は一切通じていない。

 そして、この危機に動いた乙女騎士団のエミリィとコレットの魔法もまた同様だ。
 果敢に攻める彼女達の魔法もまるで効いていない。



 だが、奇妙なことがあった。

 「白き雷!!」

 「魔法の射手!!」


 そんな中でユエとベアトリクス…更には高音と愛衣の攻撃は効いているのだ。
 そう、旧世界――地球出身である者の攻撃は。

 とは言え数が余りにも多い。
 美空までもがアーティファクトを展開し、超高速移動からの魔法の矢で戦線を維持しているが限界がある。


 「皆急いで、脱出するわ!」

 其処に現れたのはあすな。
 舞踏会場の様子が気になって来たと言うところだろう。
 果たして総督府の運命や如何に…











 ネギま Story Of XX 100時間目
 『ハードクラッシュ!!』











 「いやいやいや、アスナ、この状況で脱出は流石に無理じゃねすか?
  私のアーティファクト使っても逃げ切るのは難しいすよ?」

 「なら、その道は私が切り開くわ。
  召喚された魔物なら、幾ら強くても私の前には塵芥程度しかないわ。」

 美空の不安にもまるで動じない。
 確かにこの召喚魔物に対しては無類の強さを誇るだろう…『アスナ』ならば。


 「ハッ!!」

 だがこのあすなは、アスナと似て非なる存在。
 当然『完全魔力無効体質』を受け継いでいるわけは無く……アッサリと捕縛!

 更に間髪居れずに叩きつけ!

 如何に頑丈であろうとも、3m以上の高さから、ソレも力任せに叩きつけられては堪らない。
 しかもダウンしたあすなに容赦なく蹴りが飛ぶ……事態はより悪くなってしまったようだ。

 それでも魔物の動きは止まらない。
 大ダメージを受けて動けないあすなに近づき……

 「…それ以上私のクラスメイトに汚い手で触れるな、下衆が。」

 追撃は出来なかった。
 何時の間にか現れた亜人の女性が、大口径のガバメントと思われる銃を魔物に突きつけていたから。

 余りにも唐突なことに魔物ですら動きが止まったが、女性はそんなことに構わず引き金を引く。



 風船が割れたかのような音を響かせ魔物粉滅!
 同時に、この女性の正体も明らかになる。

 「らしくないな…この程度はお前の敵じゃ無いんじゃ無いかアスナ?」

 「真名…!」

 そう、この女性の正体は真名。
 ゲートポートの一件以来、タカミチと共に魔法世界を渡り情報の収集に当たっていたのだ。

 ソレが数日前にこの舞踏会の事を知り、丁度拳闘大会の事も有ったのでオスティアで再会出来るかもと思って此処に来たのだ。

 どうやって舞踏会に忍び込んだかは言わぬが華だろう。


 「さてと…麻帆良の関係者は余り多くないな?
  高音さん、春日、脱出する――私について来い!」

 「待って下さい龍宮さん!
  この会場の人達を見殺しには出来ません…彼等の避難経路も確保しなければ…!」

 「そっちには構ってられないな。
  私が学園から受けた依頼は『魔法世界の麻帆良生徒を無事に帰還させよ』って事でね。
  彼等の事は依頼に無い……悪いがタダ働きはしない主義でね。」


 完全に仕事人である。
 確かに無用なリスクを避けるのはプロとして当然だが…

 「ならその依頼を俺が上書きしよう。」

 「!?…稼津斗にぃ!!…久しぶりだね…!!」

 「あぁ、本当にな。」

 稼津斗が参上。
 気配察知で『良くない事』が起きているのを察し、瞬間移動でやってきたのだ。

 「再会を喜んでる暇は無さそうだが…真名、助けろとは言わないが、この会場の人達が逃げるための経路を確保する事は出来るな?」

 「ソレは勿論…けど、稼津斗にぃ――幾ら稼津斗にぃでも報酬はキッチリ頂くよ?」

 「無論承知の事だ…報酬は、麻帆良に戻ったらデート1回、駅前の甘味処の特製あんみつ食べ放題で如何だ?」

 久々に会った訳だが、状況的に再会を喜んでいる場合では無い。
 そんな中での稼津斗からの『依頼の上書きと報酬』に真名は一瞬呆気に取られるも、直ぐに笑みを浮かべ…

 「ソレは又…私にとっては億の金に勝る報酬だ!」

 手にしたガバメントのトリガーを引き絞る。

 「OK、その依頼は受けたよ稼津斗にぃ。此処は任せてくれ。」

 「あぁ、頼む。」

 真名が居ればこの場は安心と判断したのだろう、瞬間移動で別の場所に転移して行った。


 「さてと…稼津斗にぃに任された以上は負けられないな?
  何より、キッチリ仕事をこなさないと、折角の報酬もフイになってしまうのでね。」

 ソレが合図だった。
 次の瞬間、真名の2丁のハンドガンが火を噴き魔物を吹き飛ばす。
 ソレを皮切りに人間の限界スピードを超えているのではないかという連射!連射!!大連射!!!

 恐らくは速射用に改造が施してあるのだろうがソレにしたって凄まじい。
 一体1秒間に何回引き金を引いているのか?

 軽快な身のこなしも合さり、銃撃がまるで舞の如く!

 だが、連射をすればマガジンも直ぐに尽きる。
 交換か?


 否!!


 交換などせずハンドガンを投げ捨てると転移魔法を応用して今度は2丁のサブマシンガンを取り出し更なる超連射!!
 真名が動くたびに魔物が、魔獣が、倒れる!消し飛ぶ!!貫かれる!!!

 止まっても、逆に襲い掛かっても的にしかならない。
 何たる実力差!真名の前には魔物も魔獣も塵芥以下の有象無象でしかない様だ。

 「ふ、意外に脆いな?」

 サブマシンガンも撃ち尽くし、新たに取り出したるはアサルトライフルとグレネードランチャー!
 連射と破壊力のコンビネーション!!

 一つだけ言っておくと、この2つの大型銃器を同時に使用するなど等普通は絶対不可能である。
 だが、其処はオリハルコンを有する真名である!
 日々の鍛錬で得た強靭な肉体にモノを言わせた超絶無茶使用なのだ…本人は全然平気だが。

 もう止まらない!
 只管に撃つ!兎に角撃つ!!出現を上回るスピードで殲滅する!!!

 「さて…そろそろフィニッシュだな?アデアット!!」

 そして終幕を宣言しアーティファクトを展開。
 集束するエネルギー!
 スパークする魔力!
 真名の瞳に全ての敵がロックオンされ…

 全方位同時砲撃(フルレンジ・バスター)!!

 撃ち出された魔力弾、その数実に50!
 壁や敵に当たって反射し、舞踏会場内を縦横無尽に魔力弾が駆け巡る。
 それでも舞踏会参加者に1発たりとも掠りもしないのは真名の緻密な計算によるモノだろう。

 魔力弾が反射限界を超えて消える頃、其処に魔物、魔獣は一体も居なかった。


 「なにこれ台風?人間台風すか?」

 余りの事に美空も…いや、高音までもが目が点状態。
 真名が現れてから殲滅までの所要時間は僅かに5分ともなれば無理も無い。

 『稼津斗の従者は矢張り半端では無い』と再認識するには充分だっただろう。

 「呆気ない…ふむ、餡蜜は10杯までにまけとくよ稼津斗にぃ。」

 そして、ソレを行った当の真名はマダマダ余裕であった。








 ――――――








 その頃、総督特別室から脱出したネギ達も第二合流地点に向かっていた。
 暴走で体力と魔力を激しく削ったネギだが、其処は稼津斗のパートナーである亜子がいる。

 すぐさま魔力と体力を回復する魔法薬で回復し、動くには問題ないレベルにまで回復している。

 とは言え戦闘行為は未だ無理だが…そんなものは些細な問題、無問題。
 ネギが戦闘を行えなくても委細問題などない。

 何故なら和美と亜子とのどかが居るから。
 稼津斗の従者である彼女達は基本バックスといっても能力が激強である。

 「雷神の鉄槌!!」

 「極星の勅命!!」

 
「魔天葬送華!!」

 数にモノを言わせた魔物や魔獣など敵では無い。
 此れだけでも充分強いが、更に其処に超と古菲も加わっているのだから抜かりない。

 そして更に嬉しい事に、真名達と一緒に此処に来ていたクスハが途中で合流!
 最強の妖狐である『九尾の狐』らしく、黒い炎で大暴れ。

 「亜子に、皆に触れるな〜〜〜!!!!」

 此れはもう負けない布陣になっていた。


 「はぁ、はぁ…やっぱり仲間って頼りになりますね。」

 「当たり前だろ?自分がどうにもならない時に頼れるのがマジの仲間ってモンさ。」

 回復したとは言え、ネギも未だ暴走の反動が大きく千雨に肩を借りてる状態だ。
 こんな状況では、この頼りになる仲間達は本当にありがたい。


 だが、矢張り魔物の数は多い。
 しかも此処は真名が大暴れした会場と違って、左右の幅が大きくない地下への通路。
 如何しても迎撃組みは前方に集中するわけで、そうなると…

 「――――!!」

 「しまった!!」

 「マジかオイ!!」


 背後がおろそかに!
 行き成り背後から現れた巨大な魔物がネギと千雨を強襲!

 普段のネギならばなんて事無い相手だが、暴走の反動を受けたネギではキツイ。
 まして千雨では相手にもならない!

 「そうは行くかよ!!」

 だが、その一撃が振り下ろされるより速く魔物の腕が切り飛ばされた。
 更にソレに追随するように爆発一閃!!

 「クレイグさん、アイシャさん!!」

 「よう嬢ちゃん!」

 「大丈夫のどか♪」

 ソレを行ったのはクレイグとアイシャ。
 のどかがこっちに着てからお世話になっていたトレジャーハンターのメンバーだ。

 「なんか大変な事になってるじゃねえか?及ばずながら手ぇ出させてもらうぜ?」

 「良いんですか!?」

 「アンタはもうアタシ等の仲間なの、トレジャーハンターの仲間意識は強いんだから♪」

 此処で更に嬉しい援軍の追加。
 稼津斗のパートナーには及ばなくとも、数々の修羅場を潜り抜けてきたトレジャーハンターである彼等の戦闘力は侮れない。

 殿が出来て、委細不安は無くなった。
 後は地下の第二合流地点を目指すのみ。

 現れる魔物を次から次へと葬って行く。
 順調だったが、ふと突然、進行方向に何かが現れた。

 「…ミヤザキノドカにアサクラカズミ…危険だと聞いている。」

 ソレは黒いローブに身を包み、仮面で顔を覆った大柄な人物。
 一目見ても今まで倒してきた魔物とは明らかに格が違う。

 ソレを感じとり…


 ――轟!!


 和美、亜子、のどかはXXに変身。
 如何考えたって話し合いが通じる相手では無い…ならば砕いて進むが上策だ。

 「成程、その2人だけでなく、イズミアコも危険だったか…排除させてもらう。」

 「排除?アンタが私等を?…面白いこと言うさね……やってみなよ、出来るモンならね!」

 妙な威圧感のある相手だが恐れるほどではない。
 目的地目前での大バトルは不可避。

 「ほざくなよ小娘が…」

 「小娘かどうか、自分で確かめや!!」

 挨拶代わりに放たれた亜子の飛び膝蹴り。
 ソレが事実上の戦闘開始合図だった。








 ――――――








 「スターライト…ブレイカァァァァ!!!」


 ――バッガァァン!!!


 「ゆーなスゴ…」

 同刻、ハルナとバラバラになった裕奈達は一番乗りで第二合流地点に到着していた。
 リインフォースと楓、小太郎は別ルートを通って舞踏会参加者を避難させている為、戦闘員は裕奈とアキラのみ。

 だがそれでも裕奈がチートなので問題なし!
 此処までの道程で集束砲を合計3発ぶちかまし、魔物を全粉砕!!

 流石は何時ぞや異世界を訪れた時に『白い魔王様』とタッグを組んだだけの事はある。
 アキラも簡単な気功付与打撃で撃退はしていたが、撃退数は明白だった。

 「おし、此処まで来たら後はパルを待つのみ!!」

 「…けど、そうも行かないみたい。」

 「デスヨねやっぱし!!」

 だが、到着したとて安心は禁物。
 第二合流点にだって魔物は現れる!ソレこそうじゃうじゃと。

 無論ソレに負ける裕奈ではない。
 即刻撃退に乗り出し、然る後に無双タイム突入!!
 ソレにアキラも加われば魔物も大したことは無い。


 そう、魔物は。


 「うあ!?」

 「アキラ!?」

 突然のアキラの悲鳴。
 ソレに驚いて振り返ると、アキラが宙に浮いていた。

 いや、正確には何かに首根っ子を捕まれて吊り上げられていた。

 「ふふふ…ふははははは!!ゆぉ〜もや此処でこんなに良いものと出会えるとはぬぁ?
  此れはわぁたしにとってもうれすぃ誤算どぅあったぁ。」

 「アンタ…ルガール!!」

 ソレを行って居たのは、拳闘大会の準決勝で稼津斗にフルボッコにされたルガール。
 この短期間で治療を終えたらしい…凄まじい回復力だ。

 もっとも、右腕だけは損傷が酷すぎたのか、肘から下が機械義手になっているが。

 「おぉっと、動くなよ小娘ぇ…動けばこの小娘をこぉろすぃ。」

 「の野郎…!」

 それでも何か目的が有るのかアキラを人質に。
 友の命がかかっては迂闊な行動は出来ない。

 「全く忌々しいダブルエックスむぇ…くおぉの私の覇王としてのプゥライドをズ〜タズタぬぃしてくれよって。
  だが、ソレも此処までどぅあ…お前等のエネルギーを吸収しぃ、私は更なる力をえぇる!!」

 「う…あぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」

 「「アキラ!!!」」

 だが、どの道助ける心算などルガールには無いのだろう。
 機械義手が怪しく輝き、アキラからエネルギーを吸収して行く。

 本音を言えば直ぐにでも助けたい。
 だが動けばその瞬間に、ルガールはアキラの首の骨を砕くだろう。

 「くはははは!!すぅばらすぃ…すばらすぃぞ!!!此れだけのエネルギーは…」

 「クズが…


 ――斬!!


 突然、アキラの身体が床に落ちた――ルガールの機械義手と共に。

 「ぬぁぬぃ!?」

 「愚物が……死に損なったか…

 義手を切り落とす事でアキラを助けたのだ。
 ソレを行ったのは稼津斗だ…が、様子が何時もと違う。

 紅い髪に紅い目、そして浅黒い肌……殺意の波動に目覚めている。


 実は稼津斗も裕奈達に遅れてこの場に来ていた。
 本来ならそのまま合流だったが…タイミングが余りにも悪かった。

 稼津斗が此処に到着したのは、アキラがエネルギーを吸収されている正にその瞬間。

 ソレを見た瞬間…キレタのだ。
 さっきの総督との一件でギリギリ抑えていた殺意の波動が、それで一気に目覚めてしまったのだ。

 「貴様は…サイ・ダブルエックス……おぬおるえぇ…」

 「ルガール…大会では仏の慈悲で生かしておいたが…主は矢張り滅するより他に無いようだ…
  我が滅殺の拳、存分に其の身に刻み込むが良い…!!

 以前の街中でのクルトとの一件のせいだろうか?
 稼津斗の殺意の波動が強くなっている。

 「我は拳を極めし者…我が望むは真なる強者との死合いのみ…うぬが真の力、見せてみよ!!

 「ほぉざくぬぁあ!!烈風拳ん!!」

 剛羅刹爪!!

 互いの気弾がぶつかり粉塵が巻き上がる!

 始まってしまった闘いを、裕奈も、そしてギリギリ助かったアキラも、その他のメンバーも…タダ見ていることしか出来なかった。













  To Be Continued…