四輪の塔付近に現れた地獄門は全て破壊し、其処から現れる悪魔をシャットダウンしただけでなく、ネロとダンテは新たな力を得ていたのだが、地獄門での戦闘後にサーチャーを飛ばしていたなたねは、ワイスマンとスカリエッティが作り出した『神体』がリベール近郊までやって来ている事を察知し、其れを王室親衛隊の隊長であるユリアに伝えていた。
「陛下と殿下を取り込んだ人形がリベールに……此れは最大の脅威であるのかもしれないが、事前に知らされていれば幾らでも対策は出来るか――良く伝えてくれたなたね殿。
貴殿が事前に伝えてくれた事でリベールの防衛網を強化する事が出来そうだ。」
「いえ、私は己のすべき事をしたに過ぎませんユリア隊長。
ですが、アレはリベールに……少なくとも都市部には絶対に入らせてはいけない存在です。本物のエクゾディアには遥かに劣るとは言え、アレは姉さんとクローゼ、そしてヴィヴィオの魔力を有している存在なのですから。
一撃で都市一つを破壊する事くらいならば可能な筈です。」
「陛下と殿下の魔力を有している存在ならば確かに其れ位は可能だろうが……出来る事ならばリベールの都市部に到達する前に陛下に目覚めて頂きたいところだが……レイジングハート奪還に向かったルガール殿達はまだ戻って来ないか。」
本来のエクゾディアと比べれば神体の力は劣るが、其れでもなのはとクローゼとヴィヴィオの魔力をその身に宿しているのであれば、其の力は決して侮る事は出来ないモノと言えるだろう。
幸いにしてリベールの防衛網は、不動兄妹製の『量産型パテル=マテル』をはじめとして十二分に整っているので、神体の侵攻を食い止める事は出来るだろうが、其れとは別に神体内部に取り込まれているなのは、クローゼ、ヴィヴィオの奪還も行わねばならない。
其の為には、内部に取り込まれたなのはの意識を覚醒させるのが最も手っ取り早く、其のカギとなるのがなのはの相棒である『レイジングハート』なのだ。
なのはが神体に取り込まれると同時に、レイジングハートはワイスマンとスカリエッティによって悪魔界に転移させられており、其れを奪還するためにルガールと鬼の子供達が悪魔界に向かったのだが、そのルガール達は未だリベールには戻って来ていなかったのだ。
だが――
「ハッハッハ~~!レイジングハートを奪還して来たぞユリア殿~~!!」
「「「「「「「「ただいま~~。」」」」」」」」
其処に実にタイミングよくレイジングハート奪還組が戻って来た。
ルガールが鬼の子供達を乗せたタイヤ付きの貨物コンテナを『ゴッドプレス』で運んで来ると言う中々の力技での帰還だったが。
「ルガール殿、中々に突っ込みどころのある帰還だな?何処から持ってきたのだ其の貨物コンテナは……」
「うむ、紅蓮の塔から悪魔界に向かったのだが、ベガを倒してレイジングハートを奪還して戻って来たら何故か紺碧の塔に来てしまっていてね、その近くに此のコンテナがあったので有難く使わせてもらった次第だ。
ルガール運送のゴッドプレス直行便はどんな運送よりも確実だよ。」
「目的地まで一直線で、進行方向にあるモノは魔獣だろうとなんだろうとぶっ飛ばして直進するなんて芸当、アンタか稼津斗さんにしか出来ないけどな。」
ルガールは相当な力技で王都まで戻って来たようだが、何はともあれレイジングハートを奪還出来たのであればなのはを覚醒させる事が出来るだろう。
だが、それと同時に神体の近くには一際大きな地獄門が出現し、其処から大量の人造悪魔が現れ、リベールへと向かうのだった。
黒き星と白き翼 Chapter85
『リベールと神体の激突!~王を目覚めさせろ~』
一際大きな地獄門から現れた人造悪魔はリベールに向かっていたのだが……
「神をも超える力、思い知れ。」
其の多くは地獄門の出現を察知したDevil May Cryの面々によって撃滅され、特にバージルの『次元斬・絶』は一瞬で三桁の人造悪魔を撃滅していたのだから凄まじい事この上ないだろう。
そしてそれだけではなく、ネロは新たに手に入れた力で人造悪魔を掴むと同時に強烈な電撃を喰らわせてブチ殺し、ダンテは何時もの調子で余裕綽々で人造悪魔を滅殺していた。
「大層な建造物だとは思うけどよ、目障りだぜ!」
人造悪魔を粗方片付けたところでネロは閻魔刀での居合を一閃し、そして納刀する――と同時に一際大きな地獄門は中腹から真っ二つに切り裂かれて崩壊し、人造悪魔のリベールへの流出も止まったのだった。
そして地獄門を破壊したネロは飛行魔法を使って、神体の周囲に浮遊している浮遊石に降り立っていた。
「如何だ、見晴らしが良くなっただろ?
リベールの景観を破壊するようなモノを建てないで欲しいもんだぜ……建てるなら、せめて王様の許可を取ってからにしろよな。」
『小癪な……そんな理由で地獄門を破壊したと言うのかね?』
「んな訳あるかよ……テメェら如きに見下ろされるのは我慢出来なかっただけってな――おそらく、バージルやオッサンも異口同音に同じ事を言う筈だぜ。」
其処でネロは神体内部に居るワイスマンとスカリエッティを挑発するような事を言って、更にアームズエイドでサムズダウンして見せる。
其れと同時に騎士のような悪魔が現れてネロに斬りかかって来たが、ネロは其れを難なく躱すと、カウンターのバスターをブチかまして沈黙させた――其れでもワイスマンとスカリエッティは自分達の方が有利と思っているのか、『君では神体に触れる事も出来ん』と言って来たのだが、ネロは飛行魔法を使って飛ぶと、神体の周囲に現れた騎士型の悪魔をレッドクィーンと閻魔刀で撃滅しながら神体に近付き、遂には神体にレッドクィーンを突き刺して、その上に立って見せた。
「如何だい、触れてやったぜ?」
『ならば其処で暫しおとなしくしていたまえ!』
「だが断るぜ。」
其処に新たな騎士型の悪魔が現れたが、ネロはブルーローズのチャージショットで其れを粉砕した――のだが、其れでも神体は止まらなかったので、騎士型の悪魔はワイスマンとスカリエッティの一種の通信機の役目も担っているのだろう。
「こいつを幾ら倒しても無駄か……なら、やっぱりなのはを目覚めさせないとだな。」
ネロは閻魔刀を握り直すと、改めて神体と向き合うのだった。
そして、此の場所に居るのはネロだけではなく、なたねにダンテにバージル、王室親衛隊と王国軍情報部、ルガール、アーナス、悪魔将軍、ロレントからブライト三姉妹と京と京のクローン三人とBLAZE、ボースからアガットとアネラス、ルーアンからカルナ、ツァイスから不動三兄妹、同盟国のカルバートからジン、同じく同盟国のベルカからシグナムを隊長とする精鋭部隊が神体と対峙していた。
『此れは此れは相当な精鋭達が集まってくれたようだが、其れでもこの神体の前には君達と言えども塵芥に等しい……神に歯向かう愚かさをその身で味わいたまえ!』
「神だと?下らねぇな……!
借り物の力で粋がってるテメェ等の其のちっぽけな本性、俺の灼熱の炎と比べてみな!!」
「言うだけ無駄ですよ草薙京。
此の手の輩には口では通じません……身体に分らせるより他に手はありません。尤も、そちらの方が面倒な事が無くて助かるとも言えますが。」
「確かに、其れは言えてるかもな……燃やすぜ!!」
そして始まった凄まじい戦い。
神体は其の存在其の物が『地獄門』としての機能も兼ね備えているらしく、騎士型の人造悪魔だけでなく、悪魔界から天然の悪魔も次々と召喚しており、倒しても倒しても中々その数は減らず、普通ならばジリ貧になるのだが、此処に集まったメンバーに限ってはそうではなかった。
ルガール、アーナス、悪魔将軍と言った魔王は言わずもがなだが、其れ以外のメンバーも悪魔を掃滅しながら神体への攻撃を行っていたのだ。
「来い、ジャンク・ウォリアー!ターボ・ウォリアー!スターダスト・ドラゴン!」
ジャンク・ウォリアー:ATK2300
ターボ・ウォリアー:ATK2500
スターダスト・ドラゴン:ATK2500
「出番よ、セブンソード・ウォリアー!ライトニング・ウォリアー!プリンセス・ヴァルキリア!!」
セブンソード・ウォリアー:ATK2300
ライトニング・ウォリアー:ATK2400
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500
「暴れまくれ!銀河騎士!銀河眼の残光竜!銀河眼の光子竜!」
銀河騎士:ATK2800
銀河眼の残光竜:ATK3000
銀河眼の光子竜:ATK3000
不動三兄妹も夫々がエースクラスの精霊を召喚して悪魔を殲滅して神体に攻撃を加えているのだ……が、悪魔は殲滅しても攻撃を受けた神体は全くダメージを受けた様子はない。
京が無式を叩き込もうと、アインスがビックバンイレイザーを叩き込もうと、悪魔将軍が地獄のメリーゴーランドで斬りつけても、レーシャが10倍かめはめ波をブチかまそうともマッタクもって動じる事はなく、それどころか両手に黒い炎を集めてから其れを一気に放つ、『殲滅の業火・エクゾードフレイム』で攻撃して来たのだ。
其れは本来のエクゾードフレイムには遠く及ばないが、それでも直撃すればリベールの都市は壊滅状態になるだろう。
「「「くず鉄のかかし!!」」」
しかしそれも不動三兄妹が発動したカードの効果で止められてしまい、その攻撃の隙を突いてなたねがレイジングハートを持って神体に突撃して先端を突き刺す!
神体の外側は思った以上に硬く、レイジングハートで貫く事は出来ず、なたねも神体からの攻撃を躱すために其の場から離れてしまった。
『レイジングハートを奪還するとは予想外だったが、其れも無意味だ。
今更この神体にレイジングハートを突き刺したところで大したダメージにはならないのだからね……無駄な足搔きはすべきではないと思うけれどね?』
「確かに、外側は相当に頑丈だ……其れこそ俺の右腕でも外側をぶっ壊す事は難しいかもだが、だけど中からならどうだろうな?」
だが其れでは終わらず、ネロがレイジングハートに向けてブルーローズを連射し、其の弾丸はレイジングハートの柄に次々と命中し、そしてレイジングハートを神体の内部に押し込んだのだった。
神体内部に押し込まれたレイジングハートは、押し込まれた勢いのまま神体内部に突き刺さる。
『ぐあぁぁ……き、貴様、なにをした!?』
『此れは……まさか……!!』
その瞬間に神体内部に居るワイスマンとスカリエッティから苦悶の声が漏れる……より神体を思い通りに動かすために神体と一体化しているが故に、神体が受けたダメージのフィードバックを受けたのだろう。
だが、其れは大した問題ではなかった。少なくともリベール組にとっては。
「頼りになる仲間達と戦うのも悪くはありませんが、主役が不在では楽しみは半減してしまいます。
何時まで寝ている心算ですか?ソロソロ目を覚まして一緒に遊びましょう姉さん……高町なのは!」
神体の外からなたねがそう言えば、神体内部に突き刺さったレイジングハートも黙ってはいない。
『It's time to wake up Master(そろそろ起きる時ですよマスター。)』
ルビー色のコアを点滅させてそう言うと、レイジングハートが突き刺さった場所から腕が付きだしてレイジングハートを掴むと、其れを真っ直ぐに下ろしてレイジングハートが突き刺さった部分を切り裂き……そして切り裂かれた場所からはなのはが現れた。
「はぁ、はぁ……此れはまたなんとも刺激的な目覚ましだが、おかげで完全に目が覚めた――感謝するぞなたね……そしてレイジングハート、よくぞ戻って来てくれた。
お前が居ればこそ、私は其の力を100%発揮出来るのだからな。」
『It's an honor... For now, let's kill the professor and the doctor.(光栄です……取り敢えず、教授とドクターはぶち殺しましょう。)』
「其れは勿論だが、其れよりも先に、クローゼとヴィヴィオを助け出さねばだ。」
復活したなのははレイジングハートを一閃してすぐ近くにあった塊を一閃すると、その中からはクローゼが現れ、崩れ落ちようとしていたクローゼをなのははギリギリのところでキャッチしたのだった。
なのはが目を覚まし、クローゼも解放されたのだが、なのはもクローゼもまだ神体の内部に居る状態なので、神体の力は衰えてはいない――だが、なのはが目を覚まし、クローゼも解放されたと言う事は、神体は此れから弱体化して行くと言う事でもあったのだった。
To Be Continued 
補足説明
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