翡翠の塔に出現した地獄門の前ではネロとグリフォンが睨み合い、ネロが右腕――不動兄妹製の機械義肢『アームズ・エイド』を展開してグリフォンを挑発して、其処から超絶バトルが始まった。


『この攻撃、避け切れるか!』

「ヒュー!此れはまたなんとも凄い弾幕だな?
 此れは全部避けるのは難しいが……全部避けられないなら避け切れない分は迎撃するだけだぜ!」


身軽に動き回るネロに対し、グリフォンは翼から無数の雷球を撃ちだしての弾幕攻撃を仕掛けたのだが、其れに対してネロは回避行動を取りつつ、回避し切れない雷球は閻魔刀を一閃して切り裂いて見せた。


『この攻撃を切り裂くだと?其れに其の刀は、魔剣士スパーダの……貴様、スパーダの血筋だったのか……!』

「気付くのがおせぇんだよこの鳥頭。」


ネロが閻魔刀を使った事で、グリフォンはネロがスパーダの血筋だと言う事に気付き戦慄した――悪魔界に於いて、『魔剣士スパーダ』の名は逆賊の裏切り者の名であると同時に、魔帝を打ち倒して封印した恐るべき存在の名でもあるので、特に知性のある上級悪魔にとっては憎むべき者であり、そして畏怖するモノでもあるのだ。


『よもやスパーダの血筋とこうして相対する事になろうとは……』

「なんだよ、ビビっちまったか?」

『いいや、この幸運に感謝しよう!
 悪魔界と人間界が繋がること自体が稀であり、我等のような存在が人間界に現れる事が出来るなど、それこそ余程の好条件が揃わぬ限り不可能な事なのだが、地獄門のおかげでやって来れた人間界でスパーダの血筋と戦う事が出来るとはな……其の力、存分に見せてみろ小僧!』


「ハッ、それがお望みなら応えてやるけどよ……焼き鳥やフライドチキンにされても文句言うんじゃねぇぞ!」


閻魔刀を納刀したネロはレッドクィーンを抜いてグリップを捻ってエンジンを吹かし、刀身を灼熱させて斬撃の威力を高める――イクシードと名付けられた斬撃強化能力もまた、不動兄妹の手によって魔改造が施され、グリップ一捻りでイクシードレベルがマックスになるようになっていたりするのだ。
そしてネロが吠えると同時にグリフォンが雷撃を放ち、ネロは其れを避けると同時にイクシードレベルマックスのレッドクィーンでダンテ直伝の『飛ぶ斬撃』の『マキシマムドライヴ』を放ってグリフォンを攻撃し、グリフォンは其れを翼でガードしたが、完全にはガードし切れずにガードに使った右の翼は折れ、飛ぶ事は不可能になってしまうのだった。











黒き星と白き翼 Chapter84
『四輪の塔と地獄門とDMC~地獄門と悪魔は滅~』










『ぐぅぅぅ……まさか私の翼を折るとは……流石はスパーダの血筋と褒めておこう。』

「だがこれで、もう空に逃げる事は出来なくなっちまったな鳥頭?
 空を飛べなくなっちまったら、テメェはもう異常に成長しちまったスズメですらねぇ……身体がデカいだけのタダの木偶の棒でしかねぇから俺の相手じゃねぇんだよ!
 無様晒す前に悪魔界に帰る事をお勧めするぜ?」

『敵に背を向けて逃げるなど、出来る筈がなかろう……!!』


翼が折れたグリフォンはもう飛ぶ事は出来ず、『空からの攻撃』と言う最大のアドバンテージを失ってしまった――其れでも圧倒的な巨躯から繰り出される攻撃は地上戦限定であっても脅威となるのだが、其れはあくまでも一般人が相手であればの話であり、なたねをして『悪魔をボコるのが趣味なんです』と言うネロにとっては大した脅威ではなかった。
パワーショベルの如き嘴での連続突きも、巨大な足の爪での攻撃も、大きいが故に攻撃モーションが丸分かりなのでネロは難なく回避し、カウンターでブルーローズのチャージショットやイクシードレベルマックスのレッドクィーンでの攻撃をブチかましてグリフォンにダメージを与えて行き、遂に脚に放ったストリークでグリフォンをダウンさせた。


「こいつで決めるぜ!」


此処が好機と見たネロは、アームズエイドを使ってグリフォンに肉薄したのだが、アームズエイドから発射されたのはロケットアンカーのサブアームではなく、悪魔の右腕をより再現したエネルギー体の腕だった。
アームズエイドは不動兄妹によってアップデートが行われており、何回目かのアップデートの際にスナッチ用のロケットアンカー搭載のサブアームはオミットされて、戦術オーブメントと数種のクォーツを組み込んで、悪魔の右腕の『射程無限の霊体の腕』を完全再現していたのだ。
そのエネルギー体の腕でグリフォンの頭を掴んだネロは、力任せに上空に投げ飛ばし、落ちて来たところに渾身の右ストレートをブチかましてグリフィンをぶっ飛ばすと同時にアームズエイドに内蔵されている『メテオ・ストライク』を発動して、『防御力無視』の一撃を喰らわせていた。

上級悪魔であるグリフォンは相当に頑丈な身体を持っているのだが、防御力を無視する一撃を喰らったのならば其の頑丈な身体は意味を成さず、今の一撃で胸にあるコアも罅割れてしまい、瀕死の状態になってしまっていた。


「ゲームセットだな……其れとも、まだやるか?」

『……見事だ。スパーダの血筋は伊達ではないか……よもや我がこうも一方的にやられるとは思わなかったが、だからこそお前には我の力を託す事が出来ると言うモノだ……この力、持っていけスパーダの血を継ぐ者よ。』


瀕死のグリフォンはネロの力を認めると同時に己の力を託すに値する存在だとして、その命の炎が尽きる寸前に自らを『悪魔の武器』に変えてネロに其の力を託したのだった。

グリフォンが姿を変えた悪魔の武器は刀身に稲妻を纏った二本の長剣『雷双剣・グリフォン』で、ネロは其れを手に取ると逆手二刀の構えを取り、其処から超高速の一瞬六斬で地獄門を瓦礫の山に変え、更にアームズエイドに内蔵された『サンダー・ボルト』のカードの効果で瓦礫を粉々に破壊したのだった。


「此れで一つ……残りは三つか……任せたぜなたね、バージル、オッサン。」


新たな武器を得たネロは、其れをアームズエイドに収納し、同時にアームズエイドには新たに『掴んだ瞬間に10万ボルト』の機能が追加されたのだった。








――――――







ネロがグリフォンと戦っていた頃、他の四輪の塔でもバトルが行われていた。
琥珀の塔に現れたタルタルシアンにはバージルが相対していた。


「悪魔界の法にすら背いた存在が相手か……悪魔界に落ちて、黒騎士となっていた俺には相応しい相手かも知れんが、貴様如きでは俺の相手をするには役者不足だ。」


タルタルシアンは、死と破壊に満ちた悪魔界の仄暗い法律にすら背いて悪魔界の最下層に落とされた悪魔であり、其の力を封じるために全身を鋼鉄の拘束具で縛られ、両腕には手枷と鉄球が嵌められているのだが、タルタルシアンの怪力の前では、動きを制限するための鉄球ですら腕の延長上の武器でしかなく、タルタルシアンは鎖付きの鉄球でバージルを攻撃する。


「ふん、温いな。」


だがバージルは其れを瞬間移動、『エアトリック』で回避してタルタルシアンの背後を取ると、不動兄妹作の『刀型デバイス』を抜刀して切り上げ、更には強烈な斬り下ろしでタルタルシアンを地面に叩きつける。
正に圧倒的な力の差であり、普通ならばここで撤退するのだろうが、タルタルシアンはパワーは最強であっても知能レベルが低いのでバージルとの力の差を理解する事が出来ず、結果としてバージルに戦いを挑んだのだが、なにも出来ずに敗北となってしまったのだった。


「木偶の棒如きが俺に勝てると思っていたか?……だとしたら、それはこの上ない滑稽な笑い話だな。」


タルタルシアンを滅したバージルは汗で垂れて来た前髪を掻き揚げてオールバックに直し、不敵な笑みを浮かべて崩れ去り消滅していくタルタルシアンを見送り、そして次元斬で地獄門を破壊するのだった。








――――――








紺碧の塔に現れた悪魔界の巨大なムカデのギガピードにはなたねが対処していた。
ギガピードは全長10m以上の悪魔界で育った悪魔のムカデであり、その身からは数万ボルトの電撃を発しているので其れを狩るのは簡単な事ではないのだが、ギガピードと対峙したなたねは即刻其の攻略法を見つけていた。


「成程、其の電撃は堅い外骨格の周囲に魔力を超高速で回転させる事で発生させている訳ですか……摩擦によって生じる静電気をもっと派手にした、そんなところなのでしょうが、そうであるのならば其の摩擦をなくせば良いだけの事です。」


なたねは無数の火炎球『パイロシューター』をギガピードの周囲に配置すると、其れを直撃させずに電撃の周囲をゆっくりと回転させる。
其れを始めた直後はなにも変化はなかったが、数分が経つと徐々に、しかし目に見えて電撃の威力が落ちて来た――超高熱のパイロシューターが速度の異なる摩擦熱を発生させた事で、摩擦の差が生じてしまい電撃の強さが安定しなくなって来たのだ。


「悪魔界の存在と言えども所詮は蟲、知能は高くないようですね。」


電撃が弱くなったのを見たなたねは、新たにダガーナイフのような形のパイロシューター、『パイロシューター・ファングフォーム』を展開すると、其れをギガピードの外骨格の隙間に楔を打つかのように叩き込んでいく。
ギガピードの外骨格はレアメタルのミスリルのように堅いのだが、中身は柔らかいので外骨格の隙間を狙われると非常に脆いのだ。
更に多くの虫がそうであるように、ギガピードもまた超高熱や超低温には弱いので、弱点である外骨格の隙間に灼熱の刃を叩き込まれたらたまったモノではないだろう。


「さて、そろそろ終わりに……」

『『『『『グオォォォォォォォォォォォォ!!!』』』』』
F・G・D:ATK5000



此処でトドメと思ったところで現れたのは、ヴィヴィオのドラゴンであるファイブ・ゴッド・ドラゴンのバハムートだった。


「しようと思いましたが、貴方も主を捕らわれて怒っていると言う事ですか……ならば、その怒りを存分にぶつけて差し上げてはいかがでしょうか?」

『『『『『グゴォォォォ……ガアァァァァァァァァァ!!!』』』』』


バハムートの五つの頭、その全ての目に怒りの炎が宿っている事を見て取ったなたねは、此の場でのトドメをバハムートに譲り、バハムートは五つの頭から夫々異なる属性のブレスを放ってギガピートも地獄門も粉砕したのだった。


「ルガール小父様達ならば確実にレイジングハートを奪還してくれるでしょうが……教授とドクターとやらは姉さんとクローゼとヴィヴィオ、そしてリベールを些か過小評価していると言わざるを得ないかもしれません。
 姉さんとクローゼはこの世界をより良きものに変える存在であり、ヴィヴィオはその娘です……貴方達の下賤な目的の為に利用できる存在ではないのですよ――姉さんが王を務めるリベールもまたね。
 姉さんとクローゼが目を覚ました時が貴方達の終焉の始まりです……精々束の間の偽りの勝利に酔っていると良い。」


目的を果たしたなたねはバハムートと共にルーアンにあるDevil May Cryの事務所へと戻っていくのだった。








――――――








紅蓮の塔ではダンテとヴォルベルグが対峙していたのだが、此れは今回の戦いで最も因縁の戦いと言えるモノだった。
ヴォルベルグは嘗ては異教の神だったのだが、何時しか邪神として恐れ、忌まわしい存在として扱われるようになった結果、悪魔となった存在であり、悪魔となった後はスパーダと戦い、そして敗北して悪魔界の奥底に封印された存在だったのだ。
其の封印はワイスマンとスカリエッティよって解かれ、そして復活した先で相対したのがスパーダの息子であるダンテだったとは、運命の悪戯も此処まで来ると見事と言うしかないだろう。


「親父の力をもってしても封印するのが精一杯だったってのは実際に戦ってみて良く分かった……だけどな、今の俺はもう親父は超えてるぜ?」


ダンテもヴォルベルグとの戦いは楽しんでいたのだが、此処でリベリオンを魔剣スパーダに変化させると、更に魔力を送り込んで魔剣スパーダをリベリオンと完全融合させて新たな魔剣を誕生させる。
其の魔剣の名は、『魔剣ダンテ』……其れはダンテがスパーダを超えた証でもあった。
スパーダの時のような刀身が伸びたりと言う理不尽な斬撃間合いはないが、魔剣ダンテは鎧や堅い殻を無効にする『ブレイク』の能力が備わっており、更にデビルトリガー発動時には攻撃力とリーチが四倍になるというチート級の効果が備わっているのだ。

其の魔剣の力と、歴戦のデビルハンターの力が融合すれば其れはもう最強無敵であり、ダンテはヴォルベルグのお供である二匹の白狼『フレキ』と『ゲリ』を魔剣ダンテで切り伏せると、其処からヴォルベルグに目にもとまらぬラッシュを繰り出し、其のラッシュの〆は超高速連続斬撃『ダンスマカブル』からのハンドガンの曲撃ち『ミリオンダラー』のコンボでヴォルベルグを叩きのめす。


『…………』


大ダメージを負ったヴォルベルグは形勢不利とみて其の場から離脱したのだが、その際に使い魔のフレキとゲリは其の場に残し、ダンテに託したのだった。


「大きなワンちゃんを二匹も飼う事になるとはな……ボースの市長さんにドッグフードを格安で卸してもらえないか要交渉だなこいつは。
 でもってあとはコイツをぶっ壊せば良いだけなんだが……お前さん達もご主人様が囚われちまったんだから、黙ってられないよな?」


ガァァァァァァァ!!!』
真紅眼の鋼炎竜:ATK2800


『ギシャァァァァァ!!』
ブルーアイズ・タイラント・ドラゴン:ATK3400



そしてその場になのはのドラゴンである『ヴァリアス』と、クローゼのドラゴンである『アシェル』が現れ、必殺の火炎弾とブレス攻撃で地獄門を完全粉砕したのだった。


「地獄門も、最強クラスの光のドラゴンと闇のドラゴンの攻撃を喰らったら一溜りもないって事だな?……なのは嬢ちゃんとクローゼ嬢ちゃんは、マジでスゲェドラゴンを使役してんだな……」


こうして全ての地獄門が破壊された訳だが――


「何時の間にかリベールの近くまで来ていましたか……ですが、此処が貴方達の死に場所です。」


なたねはギガピード撃破後にサーチャーを飛ばして周囲の状況を探っていたのだが、其の中でワイスマンとスカリエッティの『神体』がリベールの直ぐ近くまでやって来ている事を掴んでいた。
其れは同時に、リベール最大の戦いのカウントダウンが始まったと言う事でもあったのだった。










 To Be Continued 







補足説明