ルガールと鬼の子供達がレイジングハートを奪還するために悪魔界を訪れていた頃、リベールの各所――四輪の塔の付近には黒い巨大なオブジェが現れていた。
其れは『リベール革命』の際にリベールの四大都市に現れていた『地獄門』に酷似しており、そのオブジェからは下級の悪魔が溢れ出していた。
そしてそれに関してはすぐさま王国軍と王室親衛隊に連絡が入っていた。
「地獄門……よもやそれがまたリベールに現れるとは……下級悪魔程度ならば王室親衛隊の隊員と王国軍の隊員を総動員すれば制圧出来るが、地獄門を破壊するとなると、それだけでは足りんな……さて、どうしたモノか……?」
「迷っても仕方あるまいユリア隊長。
餅は餅屋、此処はDevil May Cryに正式に依頼を出すのがベターではないかな?悪魔退治ならば彼等の右に出る者はいないだろう?」
「リシャール大佐……確かにそれが最善の選択かも知れないな。」
地獄門から止めどなく現れる下級悪魔は王国軍と王室親衛隊で制圧する事が出来るが、地獄門の破壊となるとその限りではないので、此処は『悪魔退治』の専門家であるDevil
May Cryの面々に依頼を出す事にした。
そしてその依頼を受けたダンテは嬉々として依頼を受けると、バージル、ネロとなたねと共に地獄門の破壊へと出向いて行った――ダンテは紅蓮の塔、バージルは紺碧の塔、なたねは琥珀の塔、ネロは翡翠の塔にある地獄門が担当だ。
地獄門が破壊されれば悪魔の流出は止まるのだが、逆に言えば地獄門が健在である限りは悪魔が出てくるのだが、其れはマッタクもって問題にもなっていなかった。
リベールの各地には精鋭が揃っており、特にロレントは『此処は本当にリベールの田舎町なのか?』と疑いたくなるほどの過剰戦力が集まっており、ロレントを襲った悪魔はロレントの精鋭達によって現れた先から滅されていた。
「やっちゃいなさい、パテル=マテル♪」
「ビッグバン……イレイザー!!」
特にレンのパテル=マテルのビーム砲と、アインスの極大直射魔法による『直線(笑)』な殲滅攻撃は強烈無比で、寧ろこれは悪魔の方に同情してしまうレベルだろう。
「キョォォォォォォォ!!フヘハハハ……ア~ヒャハハハハハハ!!!」
「八神……遂に脳みそぶっ飛んじまったか?」
「アレって八稚女、だよなオリジナル?なんか俺が知ってる八稚女と違うぜ?」
「暴走してんだろ……てかよ、絶対食ってるよなアレは……悪魔って食えるんだ。」
プラスアルファでロレントの危険人物である八神庵は、こう言う時には『敵味方の判別がつく暴走』という、中々に意味不明な強化状態となって敵を葬ってくれるので頼りになるのだった。
地獄門が破壊されるまでの防衛戦となるが、ロレントをはじめとして各地戦局はリベール優勢で問題なかった。
黒き星と白き翼 Chapter83
『魔人と魔神と鬼の子供達~悪魔界でのバトル~』
一方、レイジングハート奪還の為に悪魔界にやって来たルガールと鬼の子供達はレイジングハートの在処まで辿り着き、其処でレイジングハートの番人を務めている魔人、ベガと相対し、ルガールがベガと戦い、鬼の子供達は狂暴化した悪魔達の相手をする事になった。
「アンタなら大丈夫だとは思うけど、油断だけはするなよルガールさん。」
「心配ご無用だ一夏君。
私は己の腕に絶対の自信は持っているが、だがしかし相手が誰であろうとも慢心はしない……仮に一瞬の隙を突かれて致命傷を負おうとも、其の時は最終奥義の自爆を使うまでの事。
そして自爆しても私の趣味は復活だから問題ない!」
「復活出来る自爆って、もう色々とチート級の攻撃手段よね。」
魔王の一人であるルガールは強くなるためならばあらゆる格闘技も、他者の技も修め、嘗て己の右目を奪ったオロチの力をもその身に宿し、更には殺意の波動までをも己の力としてしまった猛者であり、全ての力を開放した『ゴッド・ルガール』となれば、『ナイトメアフォーム』のアーナスですら上回るだろう。
それだけの力を持っているのならば心配はないが、三度ルガールと対峙したベガは、此れまでとは異なって白髪となり、二度目の時と比べると細身にはなったモノの、それは二度目の時のマッスルボディをパワーその他は其のままに絞り込んだ感じであり、戦闘力は大きく増していたので油断は禁物だろう。
「烈風拳!」
「ぬん!」
先ずはルガールが烈風拳を放ち、それに対してベガはサイコパニッシュを放って相殺する。
だがルガールは烈風拳を放つと同時にビースデストラクションで突進しており、ベガに後ろ回し蹴りを喰らわせてから蹴り上げ、更に手刀を振り下ろしてベガを吹き飛ばす。
しかし吹き飛ばされたベガは空中で姿勢を立て直すと、ヘッドプレスで強襲し、其れがガードされてもサマーソルトスカルダイバーで背後から攻撃してルガールの背中に一撃を加える。
「中々にやる……だが、甘い!」
背中に一撃を喰らいながらもルガールは反転してベガの首を掴むと持ち上げ、そのまま地面に叩きつけ、勢いでバウンドしたところにバニシングフラットを叩き込み、更に追撃のグラビティスマッシュを放つ。
そのグラビティスマッシュをベガワープで躱したベガは、再びルガールの背後を取るとダブルニープレスを喰らわせた後に、デッドリースルーで強引に投げて地面に叩きつける。
その連携攻撃は強烈で、ルガールも少なくないダメージを負ってしまった。
「死をぉ、くれてやる!」
確実なダメージを叩き込んだ事で、ベガは形勢有利と見たのか更なる攻撃をしようとしたのだが、此処で起き上がったルガールがその身に宿した全ての力を解放して来た――鍛え上げた己の力だけでなく、オロチの暗黒パワーと殺意の波動も解放し、『ゴッド・ルガール』となったのだ。
「「魔人を自称するだけあって見事な力と褒めておこう……だからこそ、私も全力をもって君を殺すとしよう!そう、本体であるその思念体までも!!」」
殺意の波動とオロチの暗黒パワーの同時発動は稼津斗とルガールでは異なる特徴がある。
稼津斗の方が漢字オンリーの話し方になるのに対し、ルガールの方はエコーが掛かったかのような声に変わるのだ――それがより威圧感を高めている訳でもあるのだが。
「オロチの暗黒パワーと殺意の波動か……どぅあぁが、わぁがサイコパワーもオロチの暗黒パワーを得るにいたっとぅあ!わぁたしに隙はぬぁい!」
「「ならば試してみるかね?カイザァァ……ウェイブ!!」」
ベガは新たな身体を得る際に、ワイスマンとスカリエッティによって『黒昌』によるオロチの暗黒パワーを与えられており、それがサイコパワーと融合して以前よりも可成り高い戦闘力を有するに至ったのだが、しかしそれでも『ゴッド』となったルガールには及ばない。
ルガールが放った巨大な気弾『カイザーウェイブ』はベガワープで回避するも、回避先にはルガールがゴッドレーンで先回りしており、肘打ち→裏拳→レッグトマホーク→ビースデストラクション→ジェノサイドカッターの連続技を叩き込む。
「ぶるあぁ……ば、馬鹿ぬぁ……!」
「「さっきまでの威勢のよさは何処に行ったのかな?死ねい、愚かなる弱者よ……ギガンテックプレッシャー!!」」
更にルガールはベガの首を掴んで持ち上げると巨大な気の柱を発生させて攻撃する。
気の柱を何度も発生させ、その気の柱には髑髏の紋様が浮き上がっているのが『魔王』を彷彿とさせる、中々に洒落が利いた粋な攻撃とも言えるだろう。
其れを喰らったベガは瀕死状態となったのだが、身体が崩壊しても思念体である本体が無事であれば幾らでも復活は出来る――此処でベガが目を付けたのは一夏だった。
一夏の中の殺意の波動に目を付け、サイコパワーを送り込み強制的に其の力を表に引き出してきたのだ。
「あが!?……グゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
千冬との戦いの際に『無の波動』の境地に至った一夏は殺意の波動を極めるでも克服するでもなく、己の一部として受け入れた訳だが、だがだからと言って殺意の波動が無くなった訳ではなく、ベガによって強制的に殺意の波動に目覚めさせられてしまったのだ。
殺意の波動に目覚めた証として、一夏の髪と目は赤く染まり、肌も浅黒く変化している……
『望むなら何時でもお前の挑戦を受けよう。』
『また、私と戦ってくれるかな?』
『次はもっと強くなってるわよね?』
『ウヌが力、目覚めさせてみぃ!』
『一夏、強くなったな。』
だが、一夏の脳裏にはなのはや恋人達、師である稼津斗、そして姉である千冬の姿が浮かんでいた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そして、其れは一夏を殺意の波動の支配から解放するには充分な力を持っていた。
「ぶわぁかな、悪其の物とぅお言える黒き力をその身に宿しながるぁ、こぉのベガ様の支配を退けると言うのくぁ!?」
「殺意の波動を単純な闇の力って考えたのがアンタの敗北の要因だよベガ……殺意の波動は単純な闇の力じゃない。極めるか、克服するか、或いは受け入れるかで全く異なる力を与えてくれる可能性の力なんだよ!
喰らえ……絶・昇龍拳!!」
阿修羅閃空で間合いを縮めた一夏は『無の波動』を拳に乗せた真・昇龍拳、『絶・昇龍拳』をベガに叩きこんで其の身体を崩壊させる――それだけならばベガは新たな身体を得て生き延びるのだが、『悪しき力を無に帰す』力を持った『無の波動』を喰らった事で本体である思念体にも大きなダメージが叩きこまれており、思念体は此の場から逃げる事も難しくなっていた。
「「一夏君を乗っ取ろうとしたのがそもそもの間違いだ……これでお終いだ。精々冥府で極卒相手に大立ち回りでもやってみるが良い……滅殺!!」」
その思念体に、ルガールがトドメとなるルガール版瞬獄殺の『ラストジャッジメント』を叩き込み思念体を完全に消滅させる――『死者の魂をも滅する』業が深い極滅奥義の瞬獄殺を喰らったら此の世に存在する事すら出来ないのである。
逆に言えば過去二回の戦いで瞬獄殺を喰らいながらも思念体が滅されなかった事の方が奇跡であると言えるだろう。
「「ハッハッハーーーー!!」」
――カキィィィィィィン!!
天
「「勝利など容易い!」」
「俺達の、勝ちだな。」
ルガールの『絶対殺す奥義』でベガは完全に此の世から消え去り、もう二度と復活する事はないだろう。
こうしてルガールと鬼の子供達は見事レイジングハートを奪還し、そしてリベールに帰還するまでの間に悪魔界で悪魔を撃滅しまくって行くのだった……魔王と鬼の子供達のチームもまた中々に強力であるようだ。
――――――
ルガールと鬼の子供達がレイジングハートの奪還に成功したころ、Devil May Cryの面々は夫々担当の四輪の塔に到着し、其処に現れた地獄門と対峙していた。
そしてその地獄門からは、強力な力を持った上級悪魔が現れていた。
翡翠の塔には巨大な鳥の悪魔『グリフォン』、琥珀の塔には双頭の巨人『タルタルシアン』、紺碧の塔には悪魔界の巨大ムカデ『ギガピート』、そして紅蓮の塔には嘗ては異教の神であった『ヴォルベルグ』が現れていた。
何れも悪魔界に於いては最強クラスの上級悪魔であり、並の人間では凡そ敵う相手ではないだろうが、此処にいるメンツはその限りではない。
『可成り高い力を感じるが……貴様、右腕は如何した?』
「右腕だって?……こいつで満足かい?」
翡翠の塔の地獄門ではネロとグリフォンが対峙しており、グリフォンはネロの右腕がない事を訝しがったが、ネロは不敵な笑みを浮かべると右腕を勢いよく振り下ろして不動兄妹製の義手型兵装を展開して其れを見せつける。
奪われた『悪魔の右腕』以上の性能を持つ義手型兵装『アームズ・エイド』は、ネロにとって有難いモノだっただろう――だからこそ、ネロは其の力を存分に発揮して敵を葬ると心に決めていた。其れこそが、此れを作ってくれた不動兄妹に対しての最大の礼になると思ったからだ。
「来いよ鳥頭。其れとも予想外の俺の右腕にビビっちまったか?」
『吠えるか小僧が……良かろう、我が力をその身で味わうと良い!』
かくして、翡翠の塔ではネロとグリフォンの戦いが幕を開けたのだった。
To Be Continued 
補足説明
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