『宣戦布告』と言う一応の形を取って始まった、実質的なエサーガ国によるリベール王国への侵攻だったが、此れはリベールが戦況を優位に進めていた――王都は言うに及ばず各地に精鋭が揃っており、特に王都以上の戦力が集結している『魔窟』とも言われているロレントは外敵に対してもマッタク持って問題なかった。
そんなロレントに対してワイスマンとスカリエッティが直々に作り出した人造人間部隊&戦闘機人部隊を送り込み、人造人間部隊の中でもトップクラスの実力を持っているツヴァイはアインスと交戦状態となっていたのだった。
「ふむ、中々にやるな?予想以上だ。」
「マダマダ、私の力はこんなものではないぞ!」
激しく攻め立てるツヴァイに対し、アインスは余裕で其の攻撃を捌いて行く。
捌かれるたびにツヴァイの攻撃は激しさを増して行くモノのアインスに其の攻撃は届かない――先発開発されたアインスと後発開発されたツヴァイならばツヴァイの方が性能的に上である筈にも関わらずだ。
確かに基本性能で言えばツヴァイの方が上なのだが、アインスを拾い育てたのは『人類の突然変異種』、『人類の進化の頂点』、『歩くチートバグ』、『このオッサン攻撃当てる事出来ないんですけどマジで』等々の異名を持つカシウスであり、そんなカシウスに育てられた結果、アインスは元々備わっていた『あらゆる技術を習得出来る能力』と相まってブライト三姉妹の中でもぶっちぎりの戦闘力を誇る存在となっているので、基本性能では劣っていても後から鍛えられた力でツヴァイを上回っていると言う訳である。
「「舐めんな!!」」
此処でアインスはツヴァイの、京はネームレスの攻撃を『九百拾式・鵺摘み』で捌くとアインスは『外式・龍射り』、京は『外式・虎伏せ』でカウンターをする。
「何だよお前の偽物かアインス?」
「いや、ワイスマンが作った私の妹らしい……そっちはお前のクローンか京?」
「みたいだが、うちにいる一号、二号、三号と比べりゃ大分粗悪品だな?見てくれは似てる部分もあるが背は俺よりずっとチビだし、炎の色もなってねぇ。そもそも草薙流の技の真似事も出来ねぇってんなら俺のクローンとは呼べねぇよ。」
「成程、其れは確かにその通りだ……ならば、此処からは共に己を模した粗悪品を始末すると言うのは如何だ?」
「良いね?其の案には乗らせて貰うぜアインス!」
攻撃を捌いた京とアインスは背中合わせに立つと京は紅蓮の、アインスは闇色の炎を其の手に宿し、其れを一気に放ってツヴァイとネームレスを攻撃する――闇払いにしては強烈過ぎる炎に、ツヴァイはバリアを張る事で対処し、ネームレスは自らも炎を放ってやり過ごす。
其れでも少しばかり後退させられたのを見るに力の差はハッキリしていると言えるだろう。
「とは言ったけどよ、レンっつーかパテル=マテルとキリュウが暴れまくってる現状だと俺達が本気出さなくても良いんじゃねぇかなと思うんだがその辺は如何よ?」
「其れは其れとして、だ。」
だがしかし、ロレント地方ではレンが不動兄妹によって魔改造を施されたパテル=マテルを起動し、更にパテル=マテルに仕込まれていた『煉獄竜オーガ・ドラグーン』も召喚して無双状態にあった。
加えてレン自身が滅茶苦茶強いので人造人間も戦闘機人も問題ではなく、そもそもにして過剰戦力上等のロレントにはどれだけの戦力を送り込んだところで無意味であるのかも知れない。
『お前本当に人間か?』と言いたくなる連中しか居ないのだロレントには……まぁ、中には魔族の血を引くシェラザードや、熾天使の血を引く璃音も居たりするのだが。
取り敢えずロレントの方は現状マッタク問題ないと言えるだろう。
黒き星と白き翼 Chapter76
『圧倒的魔王の力と謎の女剣士』
一方でルーアン地方。
遊撃士のカルナとDevil May Cryのメンバーによって市街地は守られ、マーシア孤児院付近はルガールが『自爆と復活の無限ループ』と言う反則以外の何物でもないトンデモ攻撃と、ゴッド・ルガール化による圧倒的な戦闘力でアルテナのクローンとトワイライトロードの部隊を鎧袖一触!
正に無敵状態だったのだが……
「ムハハハハ……先日ぬぉ雪辱を果ぁたしに来ぃたぞぉ。」
「「また来たか……ならば其の力も私が取り込んでくれる!」」
そんなルガールの前に現れたのはベガ。
KOFに乱入してルガールに撃退されたベガだが、ワイスマンとスカリエッティが作り上げた新たな肉体を得てルガールにリベンジマッチを挑んで来たのだ――KOFに乱入して来た時と比べると身体が一回り大きくなり、全身の筋肉も膨れ上がっていた。(ZEROシリーズのベガ)
強化されたベガは巨体とは裏腹に高い機動力と、『ベガワープ』なる瞬間移動を会得していたのだが、オロチの暗黒パワーと殺意の波動と言う強大な二つの闇の力を有するルガールにはその程度では通じない。
サイコパワーを凝縮したエネルギー弾である『サイコバニッシュ』はルガールの『カイザーウェイブ』で搔き消され、『ベガワープ』は嘗ての士郎との戦いで会得した『気配を読む術』によって出所を割り出されていたのだ。
「「ジェノサイドカッター!!」」
ベガワープの出現先に現れたベガに対してジェノサイドカッターを叩き込むと、其処から空中でネックハンキングを極めた後にハンマーパンチと回転踵落としで地面に叩き付けたところに極大のカイザーウェイブを叩き込んでターンエンド。
普通ならば此れで戦闘不能だろうが、新たなベガのボディは相当に頑丈だったらしく、此れを喰らっても直ぐに起き上がり、着地したルガールにスライディングキックを決めて体勢を崩すと、其処からダブルニープレスに繋いで、デッドリースルーで地面に叩き付けて大ダメージを与えた――と思ったらルガールは即立ち上がり、烈風拳を放つとルガール版『阿修羅閃空』である『ゴッドレーン』でベガの背後を取ると、ルガール版瞬獄殺の『ラストジャッジメント』を叩き込み滅殺する。
『死者の魂をも殺す』と言われる殺意の波動の究極奥義を喰らえば間違いなく即死であり、ベガもまた絶命したのだがその身体からは黒いエネルギーが沸き上がってベガの形となる――此れこそがベガの本体である『サイコパワーの思念体』なのだ。
ベガは元々は普通の人間だったが、サイコパワーと呼ばれる超常パワーを身に付けてからは其の力を磨き、遂にはサイコパワー其の物を自らの本体として肉体はあくまでもサイコパワーの入れ物に過ぎないモノとする存在となっていたのだ――そして、思念体の入れ物である肉体はより強力なモノを求めてワイスマンとスカリエッティに力を貸す代わりに最高の身体を作るように求めたのだ。
『ムハハハハハ、すわぁすがは魔王、素晴らしい強さどぅあ。だぁからこそその身体は貰い受けるぅ!その身体こそ、次なるベェガに相応しいモノォ!!』
思念体となったベガはその身体を乗っ取ろうとルガールに向かって行くが、ルガールも其れを避けようとはせず、また迎撃しようともしなかったため、思念体のベガはアッサリとルガールの身体に入り込む事が出来たのだが……
『素晴らすぃ身体だ!此ぉれならば……此ぉれなら……ばぁぁぁぁ!?
ぬ、ぬぁんだ意識がぁ……消える……私の意識ぐぁ消えていく……?ババ、ばぁかぬぁ!こぉのベェガ様がくぉんなところどぅえ……ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ルガールの身体に入ったその瞬間にベガの意識は急速に薄れて行き、そして消滅してしまった……サイコパワーを極め、肉体すら思念体の器としたベガであったが魔王の身体を乗っ取ると言うのは、流石に少々無謀だったと言う事だろう。
「「人間風情……と言うのは賢明に生きている人間に対して失礼か。
君程度の存在が私の身体を乗っ取れると思っているのかね?言った筈だ、『其の力も私が取り込んでくれる』とね……オロチの暗黒パワーと殺意の波動の両方を宿した私は、魔王をも超えた魔神とも言うべき存在。君程度の矮小な存在によって如何にかなる相手ではないのだよ。」」
逆にルガールは戦闘前に宣言した通りベガのサイコパワーを自分のモノとしてしまった。
これにより新たに瞬間移動の『オメガ・テレポート』、全身にサイコパワーを纏って突進する『サイコクラッシャー・オメガ』を習得したのだった。
――――――
現状では戦局はリベール大幅に優勢な状況であるが、その状況においてもワイスマンとスカリエッティに焦りは無かった――アルテナのコピーとトワイライトロード、人造人間と戦闘機人、京の劣化クローンではリベールを制圧出来ない事は想定内だったのだ。
「ではプロフェッサー、そろそろアレを投入するとしようか?」
「そうだね、アレの出番だ。」
新たな戦力として準備していたモノをグロリアスからリベールへと投下する。
其れはリベール革命の際にデュナンが使役した悪魔に良く似た存在であったのだが、その身体の所々が機械化されている奇異な存在だった――其れもその筈、これ等は奪ったネロの『悪魔の右腕』に取り込まれていた悪魔の器官から作り出した人工悪魔で、足りない部分を機械で補った存在であるのだから。
本物の悪魔と比べれば魔力は低いが、機械で補われている部分は強固であり、本物の悪魔には存在しない科学武装も搭載されているので、戦闘力で言えばどっこいどっこいと言ったところだろう。
そして其れ等の人工悪魔と共に出撃したのは二人の女剣士。
バイザー型の仮面で顔は分からないが、一人は黒髪を肩のあたりまで伸ばしており、もう一人は長い茶髪を一本の三つ編みに纏めていて、二人の手には刀が握られていたのだった。
「ククク……彼女達の素顔を見たら高町なのは君と織斑一夏君は果たしてどんな顔をするのか、とても楽しみだとは思わないかプロフェッサー?」
「あぁ、実に楽しみだよドクター。損壊は激しかったが、彼女達の身体を手に入れる事が出来たのは運が良かった。
私達の持つ技術を試すための実験材料に過ぎなかったが、其れが巧く行った上にリベールの王と、王室親衛隊の気鋭の新人に対して此処まで有効となる存在になるとは思っていなかったがね。
ククク、私達からのプレゼントだ……受け取ってくれたまえよ高町なのは君、織斑一夏君。」
そして新たな戦力をリベールに投下したワイスマンとスカリエッティの顔には悪意タップリの笑みが張り付いていた――此の二人は人間が究極的に闇落ちした存在であると言っても決して間違いではないのかも知れない。
――――――
そうして新たなに人造悪魔がリベールに投下された訳だが、其れでも戦局を覆すには至らなかった――各地で人造悪魔は次々と撃破されて行き、ツァイス地方に至っては不動三兄妹が『超融合』のカードを使って人造悪魔を素材にして融合精霊を誕生させていたくらいなのだ。
ルーアン地方ではパワーアップしたルガールとDevil May Cryの面子によって悪魔が殲滅され、ボース地方では悪魔将軍と其の配下、そしてアガットによって粉砕されて、ロレント地方は言うに及ばずだ。
「おぉぉぉぉ……喰らいやがれぇぇ!!」
「事前にエナジードリンクを飲んで来たので強制冬眠も回避出来るから使わせて貰うぞ……炎殺黒龍波ぁ!!」
「やっちゃいなさいパテル=マテル♪」
人外の戦闘力を持つ者が集結している魔窟であるロレントを落とすのは一国を落とすよりも難しいのかも知れない。
新たな戦力が投入されても依然としてリベールが優勢なのは変わらなかったが……
「此れは、父の剣だと?……貴様、何処でその剣を覚えた!!」
「此の剣は千冬姉の……テンメェ、軽々しくその剣を揮うんじゃねぇ!!」
グランセル地方に降り立った二人の女剣士。
その剣士の揮う剣技を見て、なのはと一夏は心穏やかではなかった――三つ編みの女剣士が使っているのはなのはの父である『不破士郎』が確立した『神鳴流』で、黒髪の女剣士が使っているのは一夏の姉である『織斑千冬』が学んでいた剣術を独自に昇華させた唯一無二の剣術であったのだった。
To Be Continued 
補足説明
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