KOFチーム戦の一回戦が終了し、インターバルを挟んで二回戦が始まるのだが、そのインターバルの間に一回戦の様子を写したカメラのフィルムをプリントアウトして貰ったドロシーは、その写真を見て何とも難しい顔をしていた。
写真其の物は良く撮れており、リベール通信で組んだ『KOF特集』でも使えるモノだったのだが、ドロシーは一回戦の第一試合の写真が気になっているようだ。


「如何したドロシー、写真になんか変なモンでも写ってたか?」

「先輩、ある意味で大正解です~~。見て下さいよ此れ、一回戦の第一試合の写真なんですけど……」

「ドレドレ……良く撮れてるじゃねぇか?三連覇の期待が掛かる草薙京の百八拾弐式、最高の瞬間をシャッターしたって言えるぜ!こりゃ、リベ通の表紙飾れるかも知れねぇな?」

「はい、確かに京君の事はとってもカッコ良く撮れたんですけど、問題は第一リングの試合の方なんですよね……」

「第一リングってーと、あの後味の悪い試合か……って、何だコイツは!?」


難しい顔をしていたドロシーに声を掛けたナイアルは、写真を見せられて、ロレントチームの写真は良く撮れていると賞賛したのだが、次に見せられたスポーツマンチームの写真を見てその顔は驚愕に染まっていた。
何故ならば写真に収められたヘヴィ・D!には闇色の蛇型のオーラが巻き付いていたからだ。
しかもその蛇型のオーラは只の蛇ではなく、頭が八つに分かれていたのだから尚更だろう。


「先輩、此れって心霊写真って言う奴なんですか!?だとしたら、スッゴク怖いんですけど!!」

「心霊写真なんて生易しいもんじゃないぜコイツは……スポーツマンチームの面々は、オロチの力を宿してるってのか……?」


ナイアルはジャーナリストとして様々な事件を取材しており、その中には少しばかりオカルト的なモノも含まれていたのだが、その中でナイアルは『オロチ』の存在を知るに至り、只の伝説や神話の類ではないとジャーナリストの直感で感じたナイアルは独自に調査を進めて、『オロチ』が決して伝説や神話の中だけの存在ではなく、実在するモノだと言う事を確信し、同時にオロチの力が強大で危険なモノである事も理解していた。
そして『オロチの血を引かぬ者でなければオロチの力を使う事は出来ない』と言う事も分かっていた――ルガールと稼津斗がオロチの力を其の身に宿しても平気なのは、ルガールは魔王であり稼津斗は人を超越した鬼であるからだ。其れでもルガールは一度はその巨大な力に飲み込まれて消滅しているのだが。


「オロチの力って、何だかおっかない奴ですよねぇ?京君とアインスちゃんとエステルちゃん大丈夫でしょうか?」

「大丈夫な筈……いや、大丈夫か。
 恐らくだがコイツ等の事に気付いてない陛下じゃねぇ、もしもの場合の策は打ってある筈だ……だが、今は其れらしきモノを感じねぇって事は大会は通常通り行われるって事だろうからな。つまりは、あの三人でなんとかなると考えてるって事でもあるし、実際にアイツ等なら問題ねぇか。特に京は嘗てオロチを倒した一族の末裔な訳だしな?
 うっし、そうと決まれば俺等も取材続行だ!ドロシー、二回戦の最終試合、特に第二リングの方は気合入れて写真撮れよ?胸糞悪い試合しやがった連中を優勝候補筆頭のチームが成敗する様を思い切りかっこ良くカメラに収めてやれ!」

「アイアイサー!了解であります!!」


スポーツマンチームの事は確かに気になるが、もしもの事態になった時の事はなのはも考えているだろうと言う事と、ロレントチームの三人ならば問題ないと思考を切り替えて取材を続ける事に。
確かに京はオロチを倒した三種の神器の一種『草薙の拳』を司る草薙一族の末裔であるし、アインスは人間でありながら上級魔族に匹敵する強大な魔力を宿している上に抜群の格闘センスを持った強者であり、エステルは『天然のチートバグ』と言っても過言ではないカシウス・ブライトから直々に棒術の手解きを受け、史上最年少でA級遊撃士になった実力の持ち主なので心配は杞憂と言うモノだろう。
そしてナイアルとドロシーがアリーナの客席に戻ると、フィールドでは丁度二回戦の第一試合が始まるところだった。











黒き星と白き翼 Chapter54
『熱闘!爆裂!!二回戦も激闘必至!!!』










二回戦第一試合、第一リングの『餓狼伝説チーム』と『サイコソルジャーチーム』の試合は、餓狼伝説チームは古式キックボクシングのチャンピオン『ジョー・東』が、サイコソルジャーチームはアイドル拳法家の『麻宮アテナ』が先鋒で登場。
普通に考えたら絞り込んだ細マッチョのジョーと、一見すると華奢な少女のアテナでは勝負にならないように見えるだろうが、アテナは拳法だけでなく気でも魔法でもない独自の『サイコパワー』と言う一種の超能力があり、其れを使った遠距離攻撃やその他トリッキーな攻撃がある事を考えると勝負は分からないだろう。
そんな第一ラウンドは、開始と同時にジョーが鋭い飛び横蹴りで突っ込んで来たのを、アテナはサイコパワーを使った投げでカウンター。華奢な少女が片手で成人男性を投げると言うのは中々物凄い絵面であるが、サイコパワーを使えば対象物体の重量をゼロにする事も可能なので、やろうと思えば一回戦で京がKOした300㎏オーバーの巨漢を投げる事も簡単なのだ。
その後もジョーは果敢に攻めるも、アテナのサイコパワーを使った攻撃にペースを乱されまくり、業を煮やした所で巨大な竜巻を発生させる『スクリューアッパー』繰り出し、しかしそれはアテナの『サイコリフレクター』によって跳ね返され、跳ね返された竜巻で場外に吹っ飛ばされて場外負け。ジョーが場外負けとは洒落にもならない結果だろう。

続いて餓狼伝説チームは次鋒の『アンディ・ボガード』が登場。
格闘家としては若干小柄なアンディだが、単身東方に修業に出て、其処で古流格闘技である『骨法』と気を操る術を身に付け、体の大きさのハンデを跳ね返す程の実力を身に付けたストイックな格闘家だ。
第二ラウンドは開始と同時にアンディが消えた……と思った次の瞬間にはアテナにアンディの肘打ちが突き刺さっていた。
小柄故にパワーでは劣るアンディだが、スピードに関しては一級品で、一番の得意技である超高速の肘打ち『斬影拳』は正に目にも映らないほどの速さであり、そのあまりのスピードにアテナもサイコパワーを使っての投げのカウンターが間に合わなかったのだ。
その後もアンディの超速攻撃にアテナは防戦一方となりLPもガリガリ削られて行ったのだが、何度目かの攻防でアテナが切り札である『シャイニングクリスタルビット』を発動してアンディを止める。
サイコパワーで作り出したエネルギー球『ビット』を自身の周りに周回させる事で攻撃と防御を同時に行う技だが其れだけでなく、周回しているビットを一つに纏めて放つ『クリスタルシュート』を繰り出す。
それに対しアンディは自身の前に巨大な気の塊を発生させる『檄・飛翔拳』を使って相殺する。
するとアテナはハイジャンプするとパワーを高め、全身にサイコパワーを纏って突撃する『フェニックス・ファング・アロー』を放ち、アンディも全身に気を纏った状態で錐揉み回転しながら突進蹴りを放つ『超裂破弾』で迎え撃つ!
ぶつかった二つの技は何方も一歩も退かず、その結果高まったエネルギーが爆発してアテナもアンディも場外に吹き飛ばされ、両者場外のドローに。
だが、此れで餓狼伝説チームは大将のテリー・ボガードを残すだけとなり追い詰められたと言えるだろう。
第三ラウンドはテリー・ボガードとサイコソルジャーチームの次鋒である『椎拳崇』だ。
拳崇も拳法とサイコパワーを駆使して戦うのだが、実力はあれどアテナに熱を上げて若干修業が疎かになっている部分がある残念な奴であり、そんな奴がストリートファイトで実力を磨き上げて来た百戦錬磨のテリーに勝てる筈はなく、試合開始直後に大きな踏み込みのナックルパンチ『バーンナックル』を叩き込まれ、其処からボディブロー→アッパーカット→パワーチャージ→パワーダンクの連続技を喰らわされて敢え無くKOされてしまった……此れではアテナに振り向いて貰えるのは当分先になる事だろう。
そしてファイナルラウンドはテリーと御年九十三歳となる大会参加者最高齢の『鎮源斎』の試合だ。
鎮にはサイコパワーはなく、拳法の一種である『酔拳』を駆使して戦うのだが、酔拳は所謂『酔っ払い』の動きを模した拳法だけにトリッキーさはピカ一で、次の攻撃が読めないと言う点では何とも厄介なモノと言えるだろう。
更に鎮は腰にぶら下げた瓢箪を飛ばして来たり、口に酒を含んでからの火炎放射などの攻撃も行って来たのでテリーも苦戦したのだが、試合の幕切れは突如として訪れた。


「Are You OK?Buster Wolf!!」

「むむ!!?」


鎮の回転突撃『龍輪蓬莱』に対し、テリーはカウンター気味にバーンナックルから一気に気を解放する『バスターウルフ』を放ち、鎮は辛くも其れをガードしたのだが、ガードした事で大切な酒を入れておく瓢箪が破損してしまったのだ。
鎮が使う酔拳は酔っ払いの動きを模しているだけでなく『酔えば酔うほど強くなる』と言われているので、酔うのに必要な酒を入れておく瓢箪が破損したと言うのは致命傷と言えるだろう。


「ホッホッホ、此の試合、ワシの負けじゃな。」


で、此処で鎮が自ら敗北を宣言し試合終了だ。


「……何故?」

「武闘家たる者、時には自ら敗北を認めて身を退く事もまた大事な事じゃよ。」

「……勉強になります。」


鎮の深い言葉を聞いたテリーは拳に手を合わせて一礼する――長めの金髪にブルージーンズと白のTシャツにファーの付いたフライトジャケットと言うラフな格好から少し粗野なイメージのあるテリーだが、武闘家としての礼節は持ち合わせているのだ。
こうして餓狼伝説チームが三回戦にコマを進める事になったのだが、同じく二回戦の第一試合が行われている第二リングの方も中々の混戦となっていた。
極限流チームは先鋒で『ユリ・サカザキ』が、ベルカガールズは先鋒で『ヴィクトーリア・ダールグリュン』が登場し、ユリは空手らしからぬ相手の胸倉を掴んでの連続往復ビンタやヒップアタックでヴィクトーリアを翻弄したが、ヴィクトーリアも負けじと『雷帝』の名に恥じない苛烈な攻撃を行い、最後はユリの『覇王翔哮拳』とヴィクトーリアの渾身の雷撃がかち合い、その衝撃で仲良く場外に吹っ飛ばされて両者場外のドロー。
第二ラウンドは極限流チームは『ロバート・ガルシア』、ベルカガールズは『ミカヤ・シェベル』が次鋒として登場。
ロバートは『極限流の最強の虎』と称される極限流の師範であり其の実力は折り紙付きだが、ミカヤもまた『抜刀術天瞳流』の師範を若干十九歳で務めている猛者であり其の実力は疑いようもない。
第二ラウンドはロバートの華麗な足技とミカヤの洗練された剣術が真っ向からぶつからう展開となり、ロバートの連続蹴り『幻影脚』とミカヤの連続逆手居合い『無限斬』がかち合ったのには会場が湧き、何方も一歩も退かない試合展開だったのだが、何方も一歩も退かない試合展開だっただけに互いに決定打を欠き、フルタイム戦った末にタイムーバーのドローに。
そして大将戦の『リョウ・サカザキ』と『ジークリンデ・エレミア』の試合は凄まじいの一言に尽きるモノだった。
リョウは『極限流の無敵の龍』との異名を持つ極限流の師範で、ジークリンデはベルカで『鉄腕』の二つ名を持つ猛者なのだ……そんな二人がぶつかったら只で済む筈がなく、試合は初っ端から互いに真っ向から打ち合う展開に!


「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


無数の拳と蹴りが交錯し、これまた互いにLPを削り合う試合になったのだが、此処で先に仕掛けたのはジークリンデだった。
ローキックと見せかけてからのミドルキックののトリックプレイでリョウのガードを崩すと、其処に必殺の鉄腕の一撃を叩き込んでリョウのLPを残り1ポイントにまで減少させたのだ。
あと一撃入れれば勝ちなのだが、此れで仕留められなかったのはある意味では最悪と言えるだろう――極限流はその名が示す通り、極限状態にあってこそ其の真の力を発揮するのだから。


「極限流奥義!!」


此の土壇場でリョウは極限流奥義の『龍虎乱舞』を発動!
圧倒的な闘気と共に放たれた龍虎乱舞はガード不能であり、ジークリンデには無数の拳と蹴りが叩き込まれて行く。其れだけでも大ダメージなのだが、リョウの龍虎乱舞は其れだけでは済まない。
ロバートもまた龍虎乱舞を修めているのだが、ロバートの龍虎乱舞が無数の蹴りと拳を叩き込んだ後にジャンピングアッパーカットの『龍牙』を決めるのに対し、リョウの龍虎乱舞は乱舞攻撃の後でジャンピングアッパーの虎砲を叩き込んだ上で〆に『覇王翔哮拳』をブチかますモノとなっており破壊力が段違いなのだ。
其れを喰らったジークリンデのLPはゼロになり、極限流チームが三回戦にコマを進めたのだった。


「まさかジークが負けるとは……矢張りここは俺が出てベルカの武を示すべきだな。」

「だから、ダメだって言ってるでしょう?学習能力無いんですか兄さんは。」

「いだだだだ!コブラは、拷問コブラは止めろアインハルト!」

「もういっその事、遊星に超強化したジャンク・ウォリアー召喚して貰うか?具体的には攻撃力が42400ポイントの。」

「一体何をどうやったら其処まで攻撃力が上昇するんですか……」


貴賓席ではベルカから参戦したチームが二回戦で敗退した事を悔んだクラウスがアインハルトに拷問コブラツイストを極められていた……この王、何処までも戦闘狂である様だ。








――――――








続く二回戦駄二試合。
第二リングの方はクローンチームのKUSANAGIが三人抜きで三回戦へと駒を進めていた――クローンだけに若干劣化しているのは否めないが、其れでも草薙の拳と言うのは相当に強かった。クローン三人はオリジナルの京から草薙流の手解きも受けていたのだから尚更だろう。
本来草薙流は一子相伝なのだが、既に京はノーヴェと真吾に草薙流を教えているので今更だろう――京曰く、『一子相伝なんて古臭いやり方じゃ、何れ流派は潰れちまうぜ』との事らしいが。


「灯影姿に見惚れたか?」


勝ちゼリフも鮮やかに、クローンチームは三回戦進出を決定。
一方、第一リングの『女性格闘家チーム』と『リベールギャルズ』の試合は何方も退かない互角の戦いになっていた。
先鋒として登場したブルー・マリーとグリフィンは、二人とも女性としてはパワーファイターの部類で、打撃や関節技の他に豪快な投げ技も得意としていた――修めている格闘技は違えど、ある意味でミラーマッチと言えるこの試合は、大技の応酬となった。
マリーがグリフィンのフックをダッキングで躱してバックドロップを見舞えば、グリフィンも負けじとダウン状態からマリーに飛びつきフランケンシュタイナーで投げ、追撃のフラッシュエルボー!からのグリフィンリフトでぶん投げる!
其処にグリフィンは更なる追撃をしようとするが、其処はマリーが鋭いスライディングキック『ストレートスライサー』でカウンターし、其処から変形の膝十字固め『クラブクラッチ』を極めてグリフィンの右膝に『亜脱臼』のダメージエミュレートが入る。
右膝が亜脱臼したとなればグリフィンの機動力は当然落ちるが、グリフィンはギブアップするどころか益々闘気が燃えたらしく、マリーの変則飛び蹴り上げ『バーチカルアロー』を昇龍拳で迎撃すると……


「うおりゃあぁぁ!!」


其処からマリーを上空に放り投げ、落ちて来た所を両肩でキャッチしてバックブリーカー!
更にもう一度放り投げてバックブリーカーを極め、三度放り投げると『グリフィンスパーク!』の掛け声と共にジャンプし、空中でマリーの足を自身の両足で極め、両腕をチキンウィングに極めて其のまま地面に叩き付ける!
そのあまりの破壊力にマリーのLPはゼロになって先ずはリベールギャルズが一勝したのだが、グリフィンは右膝に発生したダメージエミュレートが大技を使った事で『亜脱臼』から『右膝骨折』になってしまい、この状態では戦えないからと次の試合を棄権。
結果としてイーブンとなった第二ラウンドに登場したのはヴィシュヌとキング。互いに古式キックボクシングを修めている基本の格闘技が完全なるミラーマッチだ。


「宜しくお願いします。」

「相手になるわ。」


古式キックボクシングの最大の魅力は鞭のようにしなる蹴りであり、第二ラウンドは激しくも美しい足技の応酬となった。
ロー、ミドル、ハイ、膝蹴り飛び蹴りスライディングキックと繰り出される足技は何れも華麗かつ強力で、真面に入ったらLPがごっそり削られるのは間違いないが、此の二人の戦いは足技だけでは終わらない。


「ベノムストライク!」

「波動拳!」


ヴィシュヌもグリフィンも気を高める術を身に付けており、互いに気弾攻撃も使う事が出来るのだ。


「まだ若いのにやるじゃない?こんなに楽しい戦いはリョウと戦った時以来だわ。」

「キングさんも強いですね……でも、此の試合は勝たせて頂きますよ?」

「其れはこっちのセリフよ……なら、此処でお互いに最高の技をぶつけ合うってのは如何?」

「……良いですね。その提案、乗らせて頂きます。」


互いに相手の力を認め合った上で『己の最高の技をぶつけ合う』事にし、ヴィシュヌもキングも気を高めて行く……そして気が最大まで高まったところで地を蹴り、互いに凄まじい乱舞攻撃を繰り出す!
ヴィシュヌが繰り出した『烈風雷神掌』とキングが繰り出した『イリュージョンダンス』は見事なまでの打撃の応酬となり、フィニッシュの昇竜拳とトルネードキックが相討ちになって両者目出度くLPが付きてのダブルKOの壮絶な幕切れに……なったのだが、此の応酬の衝撃でキングの服が壊れ、上半身は下着を晒すと言う何ともセクシーな姿となっていた。

此れにて決着は第三ラウンドの更識刀奈vs不知火舞に託される事になったのだが、リング上は少しばかり奇妙な事になっていた――と言うのも、リング上には二人の刀奈が存在していたからだ。


「ふふ、掛かってらっしゃい!」

「派手な登場ね。」


勿論刀奈が分裂した訳ではなく、片方は舞の変装であり、舞は刀奈の変装を解いて構えを取ると、刀奈も扇子に『変装上手』と出した後に扇子をグリフィンに投げ渡して構えを取る。
試合開始と同時に先ずは互いに軽く打ち合ってから間合いを離し、暫し膠着状態に。


「何を休んでいるのかしら?行くわよ!」


その膠着状態は刀奈が破り、流れるような動きで攻撃して行くが、舞は其れを華麗に躱して行く。


「此の程度なら……えい!龍炎舞!」

「く……波動拳!」

「ムササビの舞!」

「昇龍拳!」


更に激しい攻防が行われ、互いにLPを削る展開に。


「花蝶扇!」

「此の程度……!」

「必殺忍び蜂!はぁぁぁ……一つ!二つ!三つ!」


此処で舞は扇を飛ばす花蝶扇から前転からの肘打ちの必殺忍び蜂に繋ぎ、三連続の花蝶扇『水取りの舞』を炸裂させて刀奈のLPを大きく削る。


「おいたが過ぎた様ね?」

「あらあら、マダマダイタズラは終わってないわよ?」


其処から今度は刀奈が猛攻を行い、『激流竜巻旋風脚』を叩き込んで舞のLPを大きく削る――そして其処からはまたしても互いにLPを削り合うような試合展開となり、気が付けば何方もLPは残り三桁と言う状況に。


「ハァァァァァァァ!!」

「てやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


此処で刀奈と舞は互いに気を高める……己の最大の一撃を放つ心算なのだろう。


「はぁぁぁ……不知火流究極奥義!超必殺忍び蜂!!」

「蒼龍……波動拳!!」


最大まで気を高めると、舞は全身に炎を纏って必殺忍び蜂を放ち、刀奈は極大の気功波を放つ!
かち合った二つの技は最初は拮抗していたモノの、徐々に刀奈の気功波が舞を押し返して行った――舞の技が炎であるのに対し刀奈の技は水……相性の上では刀奈の方が圧倒的に有利だったのだ。


「これで……決まりよぉぉぉぉ!!」

「く……きゃぁぁぁぁぁぁ!!」


最後は相性で有利な刀奈が舞を押し切ってKO!


「今回は、私の勝ちね♪」


実に華のある女性格闘家チームとリベールギャルズの試合は、大将戦の最後の最後で相性の差が出てリベールギャルズの勝利となった――そして其の華麗な試合にアリーナは一気に過熱し、大会を大いに盛り上げてくれる事になった。
そして二回戦は第三試合に移ったのだが、この第三試合は二回戦最大の見せ場と言っても過言ではないだろう。
第一リングでは今日のライバルである庵が率いる『八神チーム』と、テリーの弟子であるロックを要する『餓狼MOWチーム』がぶつかり、第二リングでは実力者揃いの『カルバートファイターズ』と親衛隊の若手で構成された『リベリオンチーム』がぶつかるのだから、その注目度はハンパなモノではないだろう。

KOFチーム戦の二回戦はマダマダ目が離せない様である。










 To Be Continued 







補足説明