熱闘が続いているKOFのチーム戦の第二回戦も後半戦に入り、その後半戦の最初を飾るのは第一リングの『八神チームvs餓狼MOWチーム』と、第二リングの『カルバートファイターズvsリベリオンチーム』の試合だ。
八神チームは優勝候補の筆頭である『ロレントチーム』のリーダー格である京とライバル関係にある庵がチームを率いているから注目されているのだが、餓狼MOWチームも世界を股に掛ける義海賊団『リーリンナイツ』の首領であるB・ジェニーが、嘗て裏社会でその名を馳せた覇者であるギース・ハワードの息子であるロック・ハワードと、遥か遠くの大陸で特殊部隊の隊員員として名を挙げたケビン・ライアンを引き連れての参戦であるから注目度は高く、第二試合の方も、カルバートファイターズは共和国の格闘王であるケン・マスターズが、無冠の覇者たるジン・ヴァセックとケンの親友にして終生の好敵手である『永遠の挑戦者』のリュウがチームを組み、其れに対するは現リベール女王のなのはの私設組織であった『リベリオン』の一員であり、現在は親衛隊の一員である織斑マドカ、レオナ・ハイデルン、織斑一夏の『リベリオンチーム』なので盛り上がるなと言うのが無理な話だろう。


「……ふむ、成程。」

「兄さん、如何かした?」

「なのはから通信が入ったんだ。
 八神チームとカルバートファイターズの両方が勝利した場合は二回戦終了後に三回戦の組み合わせを、ロレントチーム、八神チーム、カルバートファイターズが当たらないようにシャッフルしてくれとの事だ。」

「シャッフルって、何でよ?」

「京と庵はライバルであり、観客も此の二人の試合は見たいだろうが、現行の組み合わせで八神チームとカルバートファイターズの双方が勝った場合、三回戦で其の二チームがぶつかる事になり、何方かが準決勝前に姿を消す事になる。
 カルバートファイターズも、共和国の格闘王のケンが居る事を考えると三回戦で姿を消すと言うのは些か寂しい――大会が盛り上がる事を考えると、この二チームは準決勝まで残った上で、そして双方がロレントチームと戦うと言う展開になった方が良いんだろうな。」

「王様自ら対戦の組み合わせのシャッフルを命じるって如何なのよ……まぁ、言わんとしてる事は分からないでもないけどさ?で、如何するの兄さん?」

「大会は盛り上がった方が良いだろうし、俺も京と庵の試合は見たい……そして其れ以上に京とカルバートファイターズのリュウの試合も見たいからな。尤も、其れは両チームが勝った場合だけれどな。」


そんな中、遊星になのはからの通信が入り、『八神チームとカルバートファイターズの両方が勝ったら三回戦の組み合わせをシャッフルして欲しい』と言う依頼だったのだが、此れは大会をより盛り上げる為の措置と判断した遊星はこの依頼を受ける事を決めた。
遊星ならば遠隔操作で対戦の組み合わせをシャッフルする事位は朝飯前なのだ。


「あの赤い髪の人、なんだかとっても怖い感じがする。本当に人間?」

「あの赤毛……しょっちゅう家電ぶっ壊しちゃ兄さんに修理依頼して……お得意様ではあるんだけど、アイツの所に修理に行くと決まって兄さんご飯御馳走になってくんのよねぇ――あのタヌキ娘のお手製の。
 まさかと思うけど、兄さんとタヌキ娘を会わせるために家電ぶっ壊してんじゃないでしょうねあの赤毛……」

「レーシャ、顔が怖いよ?ほら、もっと笑って♪」


その隣では、レーシャとエレナがちょっと賑やかだった。
個人戦の準々決勝で戦ってから友達になったレーシャとエレナだが、エレナが割と積極的なタイプだった事でスッカリ仲良くなった様である――拳を交えて花咲く友情と言うのは武闘家にとって尤も尊い友情であるのかもしれない。











黒き星と白き翼 Chapter55
『凶暴なる試合と真っ向勝負の試合』










二回戦第三試合、第一リングにはレンとジェニーが、第二リングにはジンとマドカが先鋒として上がり、試合開始の時を待っていた。……美少女三人の中に無骨なジンと言うのが何とも目立つ事この上ないが、此れはまぁ仕方ないだろう。


「ジン・ヴァセック……マドカと並ぶとその大きさが際立つと言うモノだが、一体ドレだけ大きいんだ?マドカの倍とまでは行かずとも、最低でも1.3~4倍はあるんじゃないか?」

「確実に2mは越えていると思います。」

「其れだけの巨体でありながら動きは重くないと来ているから相当な使い手なのは間違いないな……此れほどの武闘家を前にして戦う事が出来ないとは生殺しも良いところだぞ本気で。
 ベルカに帰ったら皇国軍の一個師団相手に模擬戦だな……」

「……シャマル先生に連絡を入れておいた方が良さそうですね。」


貴賓席の方では相も変わらずクラウスの血が騒いでいるようだが、取り敢えず乱入するのは止めてベルカに帰ったら軍の一個師団相手に模擬戦を行う事にしたみたいである……クラウスの相手をさせられる一個師団の兵には一抹の同情を禁じ得ないが。


『さぁ、二回戦も後半の第三試合!
 第一リングはレン・ブライトとB・ジェニー!第二リングはジン・ヴァセックと織斑マドカが先鋒として上がっている~~~!!
 可憐なる死神と義海賊団の首領の麗しき対戦は期待出来そうだが、共和国で『無冠の王者』と言われているジンと、史上最年少で王室親衛隊の隊員を務めているマドカの対戦も目が離せないモノになりそうだ~~!!
 其れじゃあ行くぞ~~!二回戦第三試合!第一リング、レン・ブライトvsB・ジェニー!第二リング、ジン・ヴァセックvs織斑マドカ!バトル、アクセラレーショーン!!』



「ふふ、レンがその魂を狩ってあげるわ。」

「あら~ん、私の魂は安くないわよ~ん?」


「さて、全力でやるとするか!」

「……私は勝つ。」


そんなこんなで二回戦第三試合が始まった。
先ずは第一リングの方から試合を見て行くとしよう。

レンが木製のデス・サイズを使った攻撃を繰り出すのに対し、ジェニーはドレスの裾を使った攻撃や地を這う竜巻と言った飛び道具を駆使して戦い、互いに決定打を許さない削り合いの展開に持ち込まれた。
ジェニーの横蹴りをレンがガードし、レンのデス・サイズでの足払いをジェニーがジャンプで避け、カウンターで繰り出された後回し蹴りをレンがスウェーバックで避け、背後から斬りかかるがジェニーは其れを見事に白羽取り!
この一連の見事な攻防には観客からも割れんばかりの拍手が送られた。


「ふふ、軽い感じがしたけれどやるわねお姉さん?レンと互角に戦ったのはお姉さんで五人目ね。」

「ふふ~~ん?それじゃあ他の四人を教えてくれるかしらん?」

「エステルとヨシュアとシェラザードとアガットね。」

「あらん?草薙京は入ってないの?」

「京とアインスとレーヴェとパパはレンの事を圧倒したから♪」

「あ~~……納得したわ。」


略互角の戦いをしていたレンとジェニーだったが、何度目かの攻防の果てにレンがデス・サイズをブーメランの様に投げ、ジェニーは其れをジャンプで躱したのだが、躱した先にレンが先回りし、両手を組んだハンマーパンチを繰り出してジェニーをロープに叩き付け、ロープの反動でバウンドして来たジェニーをその勢いを利用して場外に放り投げてターンエンド。


「うふふ、レンの勝ちね♪」

「むっきー!何だかこの負け方はとっても納得いかないわ~ん!!」

「負けは負けって事で納得しときなお嬢さん……な~に、俺がすぐにリカバリーしてやるさ。」


第一ラウンドはレンが制し、餓狼MOWチームは二番手のケビン・ライアンが登場。
鍛え上げられたその肉体は正に筋骨隆々其の物で、パワーだけならばシェンに勝るとも劣らないだろう――加えて特殊部隊の隊員として数多くの修羅場を潜り抜けて来た其の実力は確かなモノであるのだ。


「お嬢ちゃんだからって手加減出来る相手じゃねぇな……一丁相手になって貰うぜ!」

「うふふ、お兄さんみたいなタイプは嫌いじゃないわ。楽しみましょう。」


第二ラウンドは、今度はレンは先程とは打って変わってヒット&アウェイの戦術を取って来た――決定打にはならないが、しかし確実に相手のLPを削る攻撃を繰り出して行くと言うあからさまな判定勝ち狙いの戦い方だが、其処にはレンが此の試合で『三人抜き』を狙っているからこその戦い方だろう。
ジェニーを場外負けにしたのも三試合を戦う為のスタミナの温存の意味があったからだ――そして第二ラウンドのヒット&アウェイ戦法も実に効果的であり、少しずつだが確実にケビンのLPを削って行った。


「ふん、下らん戦い方だ。」

「そう言うなよ、あのヒット&アウェイ中々のモンだぜ?そんでもって、距離を離す事が出来なった時のディフェンスも大したモンだぜ。」


その戦法を庵は『下らん』と言ったが、シェンは『見事なモンだ』と賞賛していた――庵としてはレンの実力を知っているが故の評価なのだろうが。


「ぐ、ちょこまかと……このぉ!!」

「隙あり!貰ったわ……エステル直伝、金剛撃!!」


試合の方はケビンの裏拳を躱したレンがエステル直伝の金剛撃を叩き込んだ所でタイムアップとなり、レンの判定勝ちとなって此れでレンの二人抜きだ。此れは、此のまま三人抜きしてしまう勢いだろう。


「限界まで、飛ばすぜ。」


後が無くなった餓狼MOWチームは大将のロックが登場して第三ラウンドが始まった。
ロックはヒット&アウェイを許さんと、レンに常にくっ付いて近接戦を仕掛けたのだが、レンはロックの攻撃を的確にガードし、同時に的確な一撃を入れて少しずつLPを削って行く。
此のまま行けば本当にレンは三人抜きをしてしまうかも知れない……其の期待が高まったのか、客席からは割れんばかりの『レンコール』が沸き起こり、其れと同時にロックの攻めが雑になって来た。割れんばかりのレンコールの中でアウェイの空気を感じてしまったのかもしれない。


「(攻めが雑になってる……攻め疲れかしら?でも、そうだとしたら此れは好機……もう出し惜しみする必要はないわね!)」


此れを好機と見たレンは、一転して攻めに出る。


「小娘が……客の歓声に浮かされたか。」


其れを見た庵は吐き捨てるようにそう言うと、此れ以上見る価値はないと言わんばかりにリングに背を向ける――そして次の瞬間!


「待ってたぜ、その鉄壁のガードが開く時をな!」

「しまった!」

「デッドリィィィ……レェェェェブ!!」


ガードを開けたレンに、ロックのデッドリーレイブが炸裂!
計九発の拳打と蹴りが叩き込まれた後に強烈な気功波をブチかまされ、此の攻撃でレンのLPはゼロになってしまった……三人抜きを目前にしてこの結果は悔しい事この上ないだろう。


「彼の攻めが雑になっていたのは私のミスを誘う為だった……観客の声援に浮かれてしまったのねレンは……」

「負けて気付いた事は評価してやるが、どんなに下らん戦い方でも其れを最後まで貫く事が出来ん奴に勝利は訪れないと知れ……此処からは俺がやる。」


レンが負けたの受けて次にリングに上がって来たのは大将格である庵だった。
大将格である庵が次鋒として登場した事に客席は大いにざわついていた。


「庵が何で二番目に?若しかしてレンの健闘を称えて……其れとも、シェンさんに負担を掛けないようにして、とか?」

「冗談言うなよエステル、奴はそんなロマンチストでもヒューマニストでもねぇ。」

「そ、そうよね。」

「言うなれば八神庵は『冷徹なナルシスト』と言ったところか……此の試合、荒れるぞ。」


試合を通路から観戦していたロレントチームの面々はこんな事を言っていたが、アインスが言った事はあながち間違いではないだろう――庵は京を殺す事が己の全てであり、其れ以外の事は、其れこそ己の命ですら如何でも良いと思っているのだ。故に、『冷徹なナルシスト』と言うのは、庵を如実に表現した言葉だと言えるだろう。

で、試合の方はと言うと、庵はロックが繰り出した攻撃をノーガードで受けていた。――故に、庵は口内を切って口から血が流れ出している。


「な、何で庵はガードしないんだ?」

「プライドの高い庵の事だ、ロックと同じ条件で戦おうと考えて敢えてダメージを受けたんだ!」


まさかの事態に観客は様々な憶測を飛ばす。


「ふん……ギャラリー共の言う事など所詮は憶測に過ぎん戯言でしかないが……貴様には分かるだろう、ロック・ハワード?」

「あぁ、分かってるぜ八神……」


だが、その真意はマッタク持って別のモノだ。
庵は敢えて自らダメージを受ける事で、最大の一撃を出せる状況を、最大の一撃を出さざるを得ない状況を作り上げたのだ――ロックも其れが分かったからこそ、気を最大まで高めて其れを迎え打たんとする。


「遊びは終わりだ!」

「レイジング……!ぐ……こんな時に……!」


庵は八稚女を、ロックはレイジングストームを放とうとするが、ロックはレイジングストームを放つ刹那の瞬間に己の中に流れる暗黒の力が疼き、それが原因となって一瞬打ち遅れ、結果として庵の八稚女がロックに炸裂する!


「啼け!叫べ!そして……死ねぇぇぇぇ!!」


そして其れは通常の八稚女とは異なり、最後は相手の胸元を掴んで炎を浴びせて爆発させるのではなく、琴月 陰のように相手を押し倒した上で炎を浴びせて爆発させると言うモノだった――そして其れだけでは終わらず庵はロックを絞首吊りに持ち上げると更に炎を浴びせようとする。


「それはだめよーん!」


だが、炎を炸裂させようとしたところでジェニーが乱入して庵を蹴り飛ばして攻撃を強制終了させた。
『既に敗退したチームメンバーによる援護攻撃』は大会規定で反則となっているので、ジェニーの乱入は明確な反則なのだが、庵の最後の絞首吊りはその前の攻撃でロックのLPがゼロになっていたため『LPがゼロになった相手への攻撃は禁止』の大会規定に抵触するので、両者反則負けとなり、結果としてシェンが残った八神チームが三回戦へと駒を進めたのだった。


「クククク……ハハハハ……ハァッハッハッハッハ!!!」


そして、此の試合は一回戦では形を潜めていた庵の凶暴性が表に出た試合でもあったと言えるだろう。








――――――








一方で第二リングの方はと言うと、第一ラウンドはマドカが木製のナイフを使った暗殺術と、稼津斗直伝の体術を持ってしてジンに挑んだが、圧倒的な体格差があるが故にマドカの攻撃はジンには通じず、逆にジンに首根っこを掴まれて宙吊りにされた挙げ句、場外へと下ろされて場外負けに。
そしてリベリオンチームは二番手のレオナが出て来たのだが、今度はレオナがジンを圧倒する試合展開となっていた――ジンは巨体でも動ける武闘家だが、レオナは其れ以上に動ける上に、本気を出したスピードは超神速の域に達しているのだ。
ジンはレオナを捉える事は出来ないが、レオナもジンをKOする事は出来ず、タイムオーバーまで戦った末に、勝利したのはレオナだった……ギリギリで攻め勝ったとは言っても、ジンから勝利を奪ったと言うのは大きいだろう。


「かかって来な!」

「貴方では、勝てない。」


カルバートファイターズの二人目は共和国の格闘王であるケン・マスターズだ。
使う技は稼津斗が使う技によく似ており、恐らくは嘗て稼津斗の技を見ていた武闘家の一人が其れを独自に『武術』の域にまで昇華させたモノを学んだのだろうが、其れ故にフルタイムを戦った事による疲労があるにも関わらずレオナはケンの攻撃に対処する事が出来ていた。
ケン独自のアレンジがなされているとは言え、其の攻撃はレオナにとっては全て見た事のあるモノであり対処は容易かった……稼津斗の、鬼の技を見て、其の身で体験していると言うのも大きいだろう。


「やるな……だったらこれは如何だ!」


此処でケンは連続の回し蹴りを繰り出して来た。
其れ自体は一夏達も使う『疾風迅雷脚』と同じなのでレオナも冷静に対処したのだが、疾風迅雷脚がシメに垂直上昇する竜巻旋風脚を放つのに対し、ケンは竜巻旋風脚ではなく昇龍裂破→神龍拳の連続技に繋いで来たのだ。
見た事のない連続技に虚を突かれたレオナは昇龍裂破で強引にガードを抉じ開けられ、神龍拳を真面に喰らってしまった……九頭龍裂破、ケンが考えたオリジナルの技が見事に決まった訳だ。
LPが大きく削られたレオナは大分追い込まれたが……


「本当なら使いたくなかったけれど……制御出来る力なら、必要な時には使うべきね。」


此処で内に眠るオロチの血を覚醒させ、髪と目が赤く染まる。
オロチの力を完全とは言えないがある程度己で制御出来るレオナは、理性を失わずに其の力を引き出す事が出来るようになっており、オロチの力を覚醒させたレオナは元々速かったスピードが更に速くなり、攻撃の動作を見てからではガードが間に合わないレベルのスピードとなるのである。
だが、ケンも天才的な勘でレオナの攻撃を予想しギリギリでガードをする――モノの、レオナのスピードが速すぎるためにカウンターを入れるには至らない。
だがしかし、ジンとの試合をフルタイムで戦ったレオナは既にスタミナを消耗しており、そんな状態でオロチの力を覚醒させて超高速戦闘を行ったらどうなるかは明白であり、途中でスタミナ切れを起こして足が止まってしまった。
そして動きを止めたとなればケンにとっては絶好の好機なので一気に距離を詰めて炎を纏った拳で昇龍拳を叩き込もうとしたのだが……


「貴方も道連れ。サヨナラ。」

「え?何だとぉぉぉぉぉぉ!?」


昇龍拳が放たれると同時にレオナもジャンプすると、空中でケンの背中に乗って其のまま一気に場外へダイブ!まさかまさかの土壇場でのダブル場外という結果になり決着は大将戦へ!
ケンもまさかこんな事をしてくるとは思わなかったが故に対処が出来なかったのだろう……逆に言えば、其れだけケンはルールがガチガチの試合に慣れ切っていたと言う事なのだろうが。

そして試合は大将戦のリュウvs一夏の試合に。


「良い目をしている……本気で来い!」

「あぁ、全力で行くぜ!」


試合開始と同時に一夏は飛び出すと先ずは飛び後回し蹴りを繰り出す。
リュウは其れを難なくガードするが、一夏は空中で前方宙返りをするとその勢いのまま踵落としを炸裂させる……が、リュウは其れも見事に防いで見せ、一夏の着地に合わせて足払いを放つ。
普通ならば喰らってしまうところだが、一夏は殺意の波動に目覚めた時から使えるようになった阿修羅閃空で間合いを離して其れを回避する。


「「波動拳!!」」


間合いが離れたところで互いに波動拳を放つと、其れと同時に一気に距離を詰め、激しい近距離での戦いが展開される……両者とも攻防一体の技の応酬故に互いに決定打を許さない。
リュウと一夏がの試合が始まった直後に、第一リングでは庵の凶暴性が前面に出た試合が終わっており、観客は少し静まり返っていたのだが、此の激しい攻防にアリーナは再び熱狂の渦に包まれていた。


「若いのにこれほどの実力を備えているとは大したモノだ……将来有望な若者と出会えるとは、大会に参加した価値はあったな。」

「嬉しい事言ってくれますね……なら、もっと大会に参加して良かったって思わせてやりますよ!」

「来い!」


そこから更に激しい攻防が繰り広げられ、互いにLPがガリガリと削られて、気が付けばリュウも一夏も残るLPは四分の一ほどとなっていた。
此処で互いに一度間合いを離すと……


「オォォォォォォォォォォォォォォォ……!」

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」


一気に気を高めて行く!一夏は『電刃錬気』をも使っているので、次に放たれる一撃は正に必殺の一撃だろう。


「此れで決めるぜ!電刃波動拳!!」

「真空ぅぅぅぅ……波動けぇぇぇぇぇぇぇん!!!」


放たれた二つの極大の気功波はリングの中央でぶつかり合い、互いに譲らず拮抗状態となる……其の力は凄まじく、気功波の余波だけでアリーナのシールドがビリビリと振るえるレベルだ。
マッタク持って互角の押し合いだったのだが……


「クソ……押し切れないか……」


此処で一夏に限界が来た。
最初からフルパワーで放っていた事でリュウよりも先にエネルギー切れを起こしてしまったのだ……リュウは長丁場を予想してエネルギー配分を行って居たのでまだまだ余裕と言ったところだ。
その結果、リュウの真空波動拳が一夏を呑み込んで勝負あり。


「あ~~……負けちまったかぁ……クソ。」

「だが、俺が勝てたのは君よりも俺の方が武に携わった時間が長かった、只それだけの事だ……もしも君が俺と同じだけの時間武に携わっていたのなら、負けていたのは俺の方だっただろう。
 それに、君は此れからマダマダ強くなるだろう……機会があればまた俺と戦ってくれ。」

「勿論……もっと修業を積んでいつの日かまた挑ませて貰いますよ……そん時はきっちりリベンジ決めさせて貰いますから。」


そして試合後は再戦を約束し、勝者であるリュウが一夏の健闘を称えて、本来は勝者に行うモノである『拳を持ち上げる』と言うモノを行い、その瞬間に観客からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こる。


「互いの健闘を称える……武とはこう在りたいモノだな。」

「えぇ、リュウさんと一夏さんの試合、実に良いモノでした。」


此の試合はなのはとクローゼにとっても満足行くモノであり、当然ベルカ王も満足していたのだが……『一個師団じゃ足りないかも』ととっても不穏な事を言っていた。
同時に八神チームとカルバートファイターズの両方が勝った事で、遊星は準々決勝の対戦をシャッフルする事になったのだが、まぁ其れは大丈夫だろう。

そして、二回戦は遂に最終試合となり――


「アインス、エステル、準備は良いか?」

「モチのロンよ!!」

「万事問題ないよ。」

「それじゃあ行くぜ!」


フィールドの第二リングには、優勝候補の筆頭である草薙京、アインス・ブライト、エステル・ブライトの『ロレントチーム』がその姿を現したのだった。










 To Be Continued 







補足説明