KOF二回戦の最終戦であるクリザリッドvsK'の試合は序盤から激しいモノとなっていた。
共に『草薙の力』をNESTSによって得るに至ったクリザリッドとK'だが、クリザリッドがNESTSが生み出した改造人間であるのに対し、K'はNESTSによって捕らえられた『草薙の力』を受け継げる可能性がある一般人が拉致され、強制的に望まぬ力を植え付けられたと言う差異がある――故に、K'は自らの意思では制御出来ない望まぬ力を植え付けたNESTSに多大なる恨みを抱いており、NESTSがライトロードによって壊滅させられた後も、その残党狩りをしていたのだ。


「シャラー!」

「無駄ぁ!!」


K'のミニッツスパイクをクリザリッドはライジングダークムーンで迎撃するが、空中で体勢を立て直したK'はエアトリガーで炎を放ち、クリザリッドもネガティブ・アンギッシュを放って相殺し、先に着地したK'に向かってデモン・ライディングで強襲!
対するK'はクロウヴァイツで迎え撃ち、二つの技がかち合って互いに押し切る事が出来ず、一旦間合いを離す……その戦いは一見すると一進一退の互角の勝負であると言えるだろう。


「互角……でしょうか?」

「いや……K'の方が少しばかり不利だな。
 此処までの試合展開を見るに、K'はクリザリッドと違い赤いグローブを装着した右手でしか炎を操る事が出来ない様だからな……両手どころか全身で炎を制御出来るクリザリッド相手では何れ何処かで差が出る筈だ。」

「右手だけでしか炎を……若しかして、あのグローブは炎の制御装置だったりするのでしょうか?」

「その可能性はあるかも知れん……だとしたら尚の事、あのグローブを破壊されたら其処までだろうな。」


だが、なのはは此処までの試合展開からK'がグローブを装着した右手でしか炎を使っていない事に気付いていた――セカンドシュートやセカンドシェル、セカンドスパイクにエアトリガーは、一見すれば足で炎を操っているように見えるが、実は右手で発生させた炎を蹴り飛ばしたり、足に纏わせて蹴りを放っているに過ぎないのだ。


「因みにグローブが壊れたらどうなるのでしょう?炎が使えなくなるのならば未だしも、制御不能に陥って暴走でもしたら大惨事ですよ?」

「……もしもの時の為にエリアをフィールド付近に待機させておくとするか。」


万が一の事を考え、なのははエリアに通信を入れるとフィールド付近で待機しておくように命じ、エリアも即配置に付く――エリアの最大の水霊術を使えば仮に炎が暴走しても直ぐに鎮火は可能だろう。
そう下準備が行われている中、拮抗しているように見えた試合が遂に動いた。











黒き星と白き翼 Chapter49
『物理的に燃える試合だ!完全燃焼だ!!』










クリザリッドが放った強烈な蹴り上げ『リーサルインパクト』をスウェーバックで躱したK'だったが、直後に繰り出された踵落としは避ける事が出来ずに辛くもガードして対処した……のだが、其処にクリザリッドがデスぺネトレイション・モーメントで突撃して強引にガードを抉じ開けると追撃の掌底を叩き込んでK'を吹き飛ばす。
それは今まで拮抗していた戦いの天秤がクリザリッド側に傾いた瞬間でもあった――吹き飛ばされ、アリーナの壁に叩き付けられたK'のダメージは決して小さくなく、ライフも大きく減ってしまったのだから。


「舐めんじゃねぇぞ、テメェ……!」


だがK'は『此の程度のダージは知ったこっちゃない』とばかりに立ち上がると右手に炎を宿して超高速で突進!K'が己の全力の炎を右の拳に集中させて放つヒートドライブだ。


「見るが良い、我が力を!!」


対するクリザリッドは巨大な火柱を発生させて自身を包み込むと、全身に炎を纏って突進する――エンド・オブ・エデンでK'を迎え撃つ。
突進スピードはK'の方が速く、フィールドのほぼ中央で両者の炎が激突する!
己の全力の炎を右の拳に集中させたK'のヒートドライブと、全身に炎を纏ったクリザリッドのエンド・オブ・エデンは激突した瞬間は略互角で、互いに一歩も退かなかったのだが、押し合いが三十秒ほど続いたところでクリザリッドが全身に纏っていた炎を両手を前に打ち出す形で放ち、K'のヒートドライブを押し切りそのまま炎を浴びせる。
此れによりK'のライフはレッドゾーンに突入したのだが、まだKOされた訳でなく、本人も戦う意思はあるようだが……



――バチィ!!


――ゴォォォォォォォォォ!!




K'の右手のグローブから火花が散った次の瞬間、右手から激しい炎が吹き上がった――今の攻撃で炎を制御するためのグローブが破損して機能不全に陥り、炎が制御不能になってしまったのだ。
アリーナを焼き尽くす程の炎ではないが、其れでも制御出来ない炎はK'自身を焼き尽くしてしまう危険性があるだろう。


「ち、グローブがイカレタか……だが、この野郎相手には暴走する位が丁度良さそうだ。」

「貴様、そんな状態でもまだ戦うというのか……!」

「NESTSの残党は一人残らずぶっ潰す……テメェもDSAAルール貫通して再起不能にしてやるぜ。」


其れでもK'はまだ戦う気満々であり、其れは同時にNESTSに対してドレだけの恨みと怒りを抱えているかが分かると言うモノだ。
だからと言って此れ以上の試合続行が認められるかと言われればそれは否だ。此れはあくまでも試合であり、K'の私怨による私闘ではなく、観客も居るのだから、制御不能となった炎がどうなるか分からない以上、試合を続けさせる事は出来ない。
エリアもすぐさま鎮火しようとフィールドに駆け出したのだが――


「バンカー……バスター!!」


其れよりも早く、何かがクリザリッドとK'の間に落下して来た。


「ふぅ……此処までだぜ相棒。」

「マキシマ……!」


其れは2mを超える巨躯のオールバックと長いもみあげが特徴的な男だった。
男の名はマキシマ……この男もまたNESTSによって生み出された改造人間だったりするのだが、クリザリッドやK'と違い、特殊な能力を移植されたのではなく全身の実に八割を機械化した、所謂『サイボーグ』である。
マキシマもまたK'と共にNESTSの残党狩りを行っており、K'が参加したKOFも観客として観戦していたのだが、K'のグローブが破損して炎が制御不能になったのを見て客席から直接乱入して来たようだ……不動兄妹によって張られたフィールドと観客席の間にある不可視のシールドは、『特殊攻撃無効』の機械の身体で強引に突破したのだろう。


「はい、消火します!」


其処にエリアが駆け付け、K'の右手を水で包み込んで強制消火!
加えてこの水は常に一定の温度を保っている為、K'の右手が炎と同等の熱を発していても蒸発する事はないので、グローブが修理されるまでの間もK'の炎を押さえつけておく事が可能である。
マキシマの乱入とエリアの迅速な消火によって大事には至らなかったが、同時に此処でドクターストップ判定となり試合はクリザリッドの勝利となった。


「クソが……俺はまだ戦える!勝手に終わらせるんじゃねぇ!」

「……大した根性だが、何故そうまでして戦う?……いや、お前は何を恐れている?
 今の試合、お前からは大きな闘志を感じたが、其れ以上に何かを恐れているような感じを受けた――そう、まるで私を倒す事が出来なければ己の存在を保てないとでも言うかのような……」


まだ戦えると言うK'に対し、クリザリッドが試合中から感じたのは闘気以上の恐れの感情だったようだ……其れを指摘されたK'は思わず言葉に詰まってしまった辺り図星なのだろう。


「図星か……大方、NESTSの幹部であった私の事はなにがなんでも叩き潰さねばならぬと思ったのだろうが、私とてNESTSに裏切られた存在だぞ?最早NESTSに対する忠義心など欠片も残ってはいない。
 そんな私を倒した所で無意味だ。」

「なん、だと?」

「NESTSの本部がライトロードの襲撃を受けた時、私は幹部として部下を指揮し、私自身も前線に出て戦ったが……上層部の最高幹部の連中は、私と部下諸共本部を爆破してライトロードごと纏めて始末しようとした。
 ……私は何とか生き残る事が出来たが、信じていた組織に裏切られたと知った時には生きる意味を失ってしまった――だが、そんな私に生きる意味を与えて下さったのがなのは様だった。
 当時十歳だったなのは様は私を下敷きにしていた瓦礫を直射魔法で吹き飛ばすと、まだ息のあった私を回復して下さり、そして『其れほどの力を此処で散らせるのは余りにも惜しい……其の力、私が描く未来の為に使う気はないか?』と仰った。
 十歳も年下の少女だったなのは様だが、その瞳には絶対的な意志の力が宿っていた……故に私は差し出された手を取り、そして今は王国軍の一員としてなのは様の、リベールの為に其の力を使っているのだ――最早私とNESTSは完全に切れている。そんな私を倒した所でお前の復讐心は満たされるのか?」


更に告げられた事にK'は完全に言葉失ってしまった――だが、其れも当然と言えるだろう。
K'はNESTSの残党を狩る事で己を保って来たのだが、最高の獲物だと思っていた幹部が、実はNESTSによって捨て駒にされ、挙げ句の果てには新たに仕えるべき主を得てNESTSとは完全に切れていると言うのだから。


「なんだよ……なら、俺は一体何のためにこの大会に……」

「NESTSへの復讐だけでなく、其れ以外の道を探してみては如何だ?
 なのは様もライトロードへの復讐を誓っていたが、嘗てはライトロードだけでなく全ての種への復讐を誓っていたとの事だったからな……だが、クローゼ様と出会った事で復讐すべき真の相手を見極める事が出来たと仰っていた。
 お前もNESTSの残党を無差別に狩るのではなく、真に復讐すべき相手を見極めると良い――そして、真に復讐すべきにのみ復讐をして、その先は真に己がやりたい事を見付けるが良かろう。」

「テメェ……」

「……ふ、お前さんの負けだな相棒?奴さんの言う事も間違いじゃねぇさ――如何やら俺達は少しばかり復讐心ってモノに囚われちまっていたらしい。良い機会だから此処等で一度、自分達の事を見つめ直してみるのも良いかもな。
 復讐心だけじゃ何も生まないってのは、確かにそうかも知れんからな。」

「マキシマ……ち、不本意だが今回だけは退いてやるぜ。」


此処でK'が折れ、試合は決着した。
K'はマキシマの肩を借りてアリーナを後にしたのだが……


「ようルーキー、中々良い試合だったじゃねぇか?」

「草薙……京。」


選手入場口から控室まで続く通路には京が居た――K'からしたら己が望まぬ力を得るに至った元凶とも言える人物なので、胸中は穏やかなモノではないだろう。


「ま、あの程度じゃ草薙の炎を移植されたとは言い難いが、其れでも見込みはあると思うぜ?……ま、今のお前じゃ俺の敵じゃないが、タップリ修業すれば良い線行くんじゃねぇか?
 来年はチームでエントリーして来いよ……草薙の炎の真髄、味わわせてやるからよ。」

「……上等だ、やってやるよ。」


それでも、俺様全開の京の言葉を聞いたK'の心からざわつきは消え、純粋に京と戦ってみたいと言う感情が沸き上がっていたようだ――不遜な自信家で俺様全開の京だが、其れはあくまでも表向きのショーマンシップであり、本質は相手の実力を認め、そして自己研鑽を怠らない努力家なのである。
K'は自由が利く左の拳を突き出すと、京も右の拳を出してそれを軽く合わせる……此の二人が何れ戦う事になるのは間違いないだろう。

其の後、破損したK'は京から『グローブを修理したいなら、反対側の控室に居る不動兄妹に頼むと良い』言われたのでグローブを修理する為に、逆側の控室を訪れて其処に居た不動兄妹にグローブの修理を依頼したところ、二つ返事で依頼を受けてくれた。
しかも遊星は『依頼料だけで修理費は無料だ』と言い、遊里も『こんなハイテクなモノを弄る機会は滅多にないからね!』と、依頼料の五千ミラだけで修理をしてくれたのだから有難い事この上ないだろう――そして、不動兄妹によって修理されたグローブは当然の如く魔改造が施され、『魔王の攻撃でも破損しない』ほどに強度が増した上に、炎の制御性能も格段に向上していたのだから。
そして、序にマキシマのメンテナンスも行われ、機械部分は駆動が向上し、鉄製だった内部骨格は、鉄よりも強くて軽いファインセラミックに差し替えられ、マキシマの運動性能自体も向上したのだった……マッタク持って不動兄妹恐るべしである。








――――――








此れにて二回戦の試合は全て終了し、次は第三回戦となるベストエイトなのだが、突如として電光掲示板に表示されたベストエイトの組み合わせがシャッフルを開始して決まっていたカードとは異なる組み合わせを表示し、更に試合順もシャッフルされ、三回戦の最終的な組み合わせが決定した。
三回戦の組み合わせはと言うと……


・ザンギエフvsキャミィ
・高幡志緒vsクリザリッド
・郁島空vsノーヴェ
・不動レーシャvsエレナ



と言う組み合わせに。
志緒vsクリザリッド以外は、シャッフル前とは異なる組み合わせとなったのだ……此のシャッフルは、システムの誤作動の可能性が高いのだが、其れによってより見応えのある組み合わせになったのは嬉しい誤算であると言えるだろう――シャッフル前の対戦カードの一つ、『不動レーシャvsザンギエフ』も身長差80cm、体重差125㎏と言うトンデモナイ体格差の試合だったのである意味では注目されていたのかもしれないが。
まぁ、シャッフル後のレーシャvsエレナも身長差53cm、体重差57㎏と中々の体格差ではあるのだが……だが、対戦相手は兎も角として試合順が最後になったのはレーシャにとっては有難い事だろう。試合開始までギリギリまで眠って体力を回復する事が出来るのだから。


「兄さん、手に持ってる其れなに?」

「レーシャの回復用に作って来た俺特製のエナジードリンクだが?」

「因みに材料は何使ってるか教えて貰っても良い?」

「マカ、ガラナ、東方で漢方として使われている人参、スッポン、其れ等から抽出した滋養強壮のエキスにタウリン、カフェイン、アルギニンとローヤルゼリー、ハチミツを加えたモノを濃縮して炭酸で割ったモノだが?」

「めっちゃ効きそうだけど、寝起きのレーシャに其れ飲ませたら劇薬過ぎる気がするんだけど……」

「因みに追加効果として、飲んでから二時間は消費エネルギーが二倍になる代わりに物理攻撃力と特殊攻撃力の威力も二倍になるみたいだな。」

「余計に飲ませられるか!それもうエナドリ超えて普通にドーピングの領域だから!」

「そうか……じゃあこれは、徹夜で疲れているラッセル博士に送っておこう。」

「うわぁお、兄さん天然で容赦ない。」


遊星はレーシャの為に何かトンデモナイモノを調合していたようだが、効果が流石にアレ過ぎるので其れは遊星が使役する精霊の中でもスピード自慢のスピード・ウォリアーによってツァイスのラッセル博士の元に届けられ、徹夜で疲れていたラッセル博士は此のドリンクを飲んで気力も体力も爆発的に回復して、ティータ専用のバトルマシンである『オーバルギア』に『バラエーナー・プラズマ集束砲』、『電磁レールガン』、『無線式ライフルビット』、『無線式ソードビット』、『無線式シールドビット』、『魔法反射装甲』が追加する魔改造を行ったのだが……まぁ、此れは此れで悪い事ではないだろう。

それはさておき、KOF個人戦の部も、いよいよベスト8となる第三回戦!
その第一試合であるキャミィvsザンギエフは、スピードとパワーの真っ向勝負となった。
キャミィの攻撃は一発一発の威力は其処まで高くないが、その代わりに凄まじいラッシュ力があり蓄積したダメージにより相手はいつの間にかKOされているのに対し、ザンギエフの攻撃はスピードでは劣るモノのその全てが一撃必殺級の破壊力があり、決まればその瞬間に試合が決まると言っても過言ではないモノなのだ。

試合開始直後から、キャミィが錐揉み回転するスライディングキック『スパイラルアロー』でザンギエフを強襲し、其処からジャンピング蹴り上げのキャノンスパイク、ステップから肘打ち→裏拳に繋ぐアクセルスピンナックル、スパイラルアローからキャノンスパイクに繋ぐ『スピンドライブスマッシャー』を叩き込むが、ザンギエフは不動の構えで小動もしない。
熊を相手に修業したザンギエフの筋肉は正に鋼の如しであると同時に骨も頑丈で関節の結合も強く、筋肉では覆えない弱点への攻撃も大したダメージにならないと言う割とチートな肉体なのだ。
『此のままでは埒が明かない』と判断したキャミィは、ハイジャンプから急降下しのキラービーアサルトを仕掛けるが、ザンギエフは其れをダブルラリアットで迎撃すると、強引にキャミィの身体をホールドし……


「ファイナルアトミック……バスタァァァ!!」


二連続のスープレックスからパイルドライバー、そしてスクリューパイルドライバーの連続技である『ファイナルアトミックバスター』をブチかまし、キャミィをKOする――其れを喰らったキャミィはダメージエミュレートで『頸椎損傷』と『頭蓋骨折』と『脊髄損傷』が発生していたので、これがDSAAルールでないガチのリアルファイトだったらキャミィは絶命してだろう……恐るべし赤きサイクロン。

そして続く第二試合は、志緒とクリザリッド――またしても炎の対決となった。


「大剣は使わんのか?」

「相手が武器を持ってるなら兎も角、素手の相手に武器を使う事は出来ねぇだろ?……其れに、俺は素手の喧嘩の方が得意だからな。」

「成程な……BLAZEのリーダーの力、見せて貰おうか?」

「なのはさんの最側近って言われてるアンタの実力、見せて貰うぜクリザリッドさん!」


此の試合、志緒は木製の武器は持たずに素手で参戦したのだが、此れは『武器を持たない相手には無手で応じる』と言う志緒の信念故の事だったのだが、志緒はそもそもにして素手の方が武器を使うよりも圧倒的に強いのでクリザリッドの相手をするならば素手でやるのが正解とも言えるだろう。
加えて志緒は武道の心得は無いにも拘らず、戦いの中で独自に気の操り方と高め方を覚え、高めた気を炎として拳に宿す位の事は出来るので、クリザリッドとも互角以上に遣り合う事は出来るのだ。


『三回戦第二試合は、燃える炎の対決だ~~~!高幡志緒vsクリザリッド!バトル、アクセラレーショーン!!』


「おぉぉぉらぁぁぁぁ!!」

「ぬぅぅぅぅん!!!」


そしてその試合は、開始直後からフルスロットル!
互いに炎を宿した拳がぶつかり合い、しかし互いに退かずに押し合いを続けた結果、飽和状態になった炎が爆発し、志緒もクリザリッドも大きく其の身を吹き飛ばされる事になったのだが、その程度では二人とも怯まず、すぐさま立ち上がって距離を詰めると其のまま小細工無しのインファイトを展開する!
互いにノーガードの殴り合いとなったのだが……


「コイツで……眠っとけ!!」


志緒のアッパーカットがクリザリッドの顎を撃ち抜き、更に追撃として繰り出された打ち下ろしの裏拳がクリザリッドの後頭部にジャストヒットし、クリザリッドのライフを削り切ったのだった……NESTSの改造人間ですら凌駕してしまう志緒は相当にトンデモナイ存在であるのかも知れない。








――――――








チーム戦にエントリーした選手の多くは個人戦を観戦しており、其れは京がチームリーダーを務めている『ロレントチーム』も例外ではなく、京とアインスとエステルも激戦が続くKOF個人戦を観戦していたのだが……


「アインス、なんか顔色が悪いけど、大丈夫か?」

「少しばかり気持ちが悪くなっただけだから大丈夫だ京……アリーナに詰め掛けた人が余りにも多いので、少しばかり人酔いをしてしまったみたいだ。」

「そうか?なら良いんだけどよ……体調が悪かったら無理しないで言えよ?」

「本当に体調が悪くなったその時は、そうさせて貰うよ。」


アインスが少しばかり体調不良を引き起こしていた――とは言え、其れは直ぐに治まったようなので取り立てて問題となるモノでもないのだろう……だがしかし、その光景を、髪をオールバックにしてモノクルを掛けた男が満足そうに見ていた事には、誰も気付かなかった……










 To Be Continued 







補足説明