KOFの大会エントリー受付当日、グランセル城の一階ロビーには国内外から腕に覚えのある格闘家達がエントリーの為に押し掛けていた――チーム戦と個人戦のエントリーの総数は相当なモノになるだろう。
エントリー会場がグランセル城のロビーと言うのも話題性があり、多くの報道陣が現場に詰め掛けている……そんな現場で、一等地とも言える撮影場所を確保したナイアルとドロシーの『リベ通凸凹コンビ』は見事と言えるだろう。
そして会場も然る事ながら、エントリー会場にリベール王のなのはとそのパートナーであるクローゼ、其の二人の娘であるヴィヴィオが居ると言うのも超目される要因であろう……属性の異なる美女三人の揃い踏みは何とも言い難い華と迫力があるのだ。


「おい、来たぞ!」

「伝説のチームのお出ましだ!」


其処に現れたのは、京・アインス・エステルの『ロレントチーム』だった。
デュナンによって出来レースと化していた武術大会に風穴を開けて二連覇したチームの固定メンバーが京とアインスとエステルなのだ……此のリベール最強チームとも言える三人の登場に、報道陣が注目しない筈がないのだ。


「ふむ、物凄い注目度だな彼等は?」

「叔父様の私物と化していた武術大会で出来レースを壊した方々ですからねぇ、注目もされると言うモノですよ……其れに、彼等は実力も然る事ながらチームとして華がありますので。」

「まぁ、確かに三人とも容姿も整っているからな。」


次々とシャッターが切られ、其れに応えるように京は指先に炎を宿してから腕を振って其れを振り払い、アインスは魔法を使って腕や顔に赤い紋様を点滅させ、エステルは棒術具をバトンの様に回して見せる……其れが実に絵になっているのだ。
カメラのフラッシュが鳴りやまぬ中、京が代表してエントリーを済ませると、其処には既にエントリーを済ませた八神チームの姿もあった。


「随分と遅かったな京?逃げ出したのかと心配したぞ。」

「誰が逃げるかよ……てか、分かってねぇな八神?主役ってのは遅れて登場するもんだ――が、一番最後ってのも良くねぇ。オーディエンスの『未だか未だか』って気持ちが最高潮に達した所で登場するのがミソなのさ。」

「戯言を……まぁ良い。この大会で俺と当たった時が貴様の命日だ、精々余生を楽しんでおくが良い。」

「テメェこそ、気持ちが空回りして俺と当たる前に負けたりしねぇように気を付けな。それと、悪いが今回も勝つのは俺だ八神。お前の生甲斐を無くしちまうのも可哀想だからな。」

「ふん、ほざくか。」


大会のエントリーの段階であるが、宿命のライバルである京と庵は既に火花を散らしていた……尤も、口での勝負であれば京の方が庵よりも大分上の様だが――この二人のチームが大会でぶつかったら、其れは間違いなく物凄いバトルになる事は間違いないだろう。


「エステル、アインス、大会で戦う事になったら宜しくね♪」

「そうね、全力で戦いましょレン♪」

「お互い悔いの残らない戦いをしような。」


そして、火花を散らしている京と庵とは別に、ブライト三姉妹はなんとも平和であった。











黒き星と白き翼 Chapter46
『開幕!The King Of Fighters!!』










其の後も次々と個人戦、チーム戦のエントリーが行われる中、ロレントチーム並みに注目を集めているチームがあった……其れは海を隔てたエサーガ皇国からやって来た『麻宮アテナ』、『椎拳崇』、『珍源斎』の『サイコソルジャーチーム』だ。
拳崇に関しては一介の拳法家に過ぎないのだが、アテナは自国では知らない人は居ない位に有名なアイドルであると同時に一流の拳法家であり、珍はアテナと拳崇の師匠で御年九三歳にして今だに現役バリバリの拳法家として知られているので注目を集めるのは当然と言えるだろう。


「うわ、あのお爺ちゃんまだ生きてたんだ。」

「格闘家歴は人間では誰よりも長い八十年……普通だったらヨボヨボの爺さんになって隠居してる所なんだが、今だに現役ってのは尊敬に値するぜ。こうなったらいっそ百歳まで現役貫いてほしいモンだ。」

「彼ならば存外やってしまうかも知れないな。」


生涯現役を貫きかねない珍には、京も少なからず尊敬の念を抱いているようだ……八十年も格闘家として現役を続けて来たと言うのは確かに尊敬に値する事ではあると思うが、人間やろうと思えば何歳になっても現役を続けられると言う事なのかも知れない。
そんな注目のチームの次にやって来たのは、年季の入った白い道着と赤いハチマキが特徴的な黒髪の男と、赤い道着と金髪が目を引く男、そして2mを軽く超える大男のチームだった。
彼等こそカルバートからやって来た、『リュウ』、『ケン・マスターズ』、『ジン・ヴァセック』のチームだ。
リュウとケンは同門で、ジンとは格闘仲間であり、ケンはカルバートの格闘王でもあるのだが、ケンが格闘王の称号を得た大会にはリュウもジンも参加していなかったので、ケンのカルバート格闘王は暫定的な称号ではあるのだが、其れでもカルバートの格闘王が居るチームと言うのは生半可なチームでないのは確実だろう。


「アイツ、可成り強いな。」

「アイツって誰、京?」

「白い道着に赤いハチマキの奴。
 金髪とデカブツも相当にやるだろうが、アイツはモノが違う……巧く言葉に出来ないんだが、なんつーか、アイツはテメェの人生を『強くなる事』に捧げてる感じがするぜ――其れこそ、人生此れ修業ってところかもな。」


既にエントリーを済ませた京も、リュウには何かを感じたらしく自然と視線を集中させてしまう――そして、その視線に気付いたのか、リュウもまた京の方に向き直り、少しばかり笑みを浮かべると拳を突き出す。
京も其れに応えるように拳を突き出した後に、サムズアップしてから片目を閉じる……一流の格闘家同士、言葉にせずとも伝わるモノがあったのだろう。京と庵だけでなく、京とリュウが戦う事になったその時もきっと物凄い試合になる事だろう。

こうして次々と大会参加のエントリーが進み、チーム戦個人戦共に全てのエントリーが終了し、大会にエントリーするメンバーが決まった。
チーム戦にエントリーしたのは――


・ロレントチーム(草薙京、アインス・ブライト、エステル・ブライト)

・八神チーム(八神庵、レン・ブライト、シェン・ウー)

・リベリオンチーム(織斑一夏、織斑マドカ、レオナ)

・リベールギャルズ(更識刀奈、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、グリフィン・レッドラム)

・餓狼伝説チーム(テリー・ボガード、アンディ・ボガード、ジョー東)

・極限流チーム(リョウ・サカザキ、ユリ・サカザキ、ロバート・ガルシア)

・女性格闘家チーム(不知火舞、キング、ブルー・マリー)

・スポーツマンチーム(ヘヴィ・D!、ラッキー・グローバー、ブライアン・バトラー)

・SSSチーム(矢吹真吾、草薙柴舟、ショーン)

・サイコソルジャーチーム(麻宮アテナ、椎拳崇、珍源斎)

・クローンチーム(草薙京-1、草薙京-2、KUSANAGI)

・餓狼MOWチーム(ロック・ハワード、B・ジェニー、ケビン・ライアン)

・ベルカガールズ(ミカヤ・シェベル、ジークリンデ・エレミア、ヴィクトーリア・ダーリュグリュン)

・カルバートファイターズ(リュウ、ケン・マスターズ、ジン・ヴァセック)



上記の十四チームを含む合計三十二チームがエントリーし、個人戦では――


・不動レーシャ

・ノーヴェ

・ルガール・バーンシュタイン

・稼津斗

・クリザリッド

・アガット・クロスナー

・高幡志緒

・郁島空

・春日野さくら

・エドモンド本田

・ザンギエフ

・キャミィ・ホワイト

・K’

・エレナ



上記十四名を含む計三十二人がエントリーし、チーム戦と個人戦を合わせた大会参加者は総勢百二十八名と、過去の武術大会と比較しても可成りの参加人数となっていた。
が、其れ以上に個人戦にエントリーした参加者の中に僅か十歳のレーシャが居る事には其の場に居る全員が、其れこそ大会主催者であるなのは達も驚きを隠せないでいた――大会参加に年齢制限は上下共に設定しなかったとは言え、まさか十歳の少女がエントリーして来るとは思わなかったのだろう。


「腕に覚えのある少年少女にも参加して貰いたいと思って年齢制限は設けなかったが、よもや十歳の少女がエントリーして来るとは……いや、私も十歳で大人と互角以上に戦えるようになっていたから、彼女の事を年齢だけ見て実力を疑うと言うのは良くないか。
 アシェルに匹敵する力を持ったドラゴンの精霊を使役すると言うのは、其れだけ鍛錬を積んだと言う証でもあるからな。」

「其れと、レーシャちゃんは身体も小さいので相手は存外やり辛いと思いますよ?身体が小さいと言うのは的が小さいと言う事にもなりますから……捕まってしまったら圧倒的に不利ですが、打撃中心のヒット&アウェイで戦えば、KO勝ちは難しくとも判定勝ちは取りに行けると思います。」

「確かにその通りだな。
 だが、其れよりも稼津斗とルガールの出場は流石に辞めさせた方が良かったかも知れん……トーナメントの組み合わせは演算機によるランダム決定になるが、あの二人が出来るだけ早い段階でぶつかってくれる事を願うしかないな。」

「其れは、確かに。」


稼津斗とルガールの二人のエントリーに関してはエントリー其の物を禁止にすべきだったかも知れないが、其れに気付いたのは二人がエントリーした後だったので、今更『出場しちゃダメ』とは言えないので、この二人に関しては直接対決となるまでは本気を出さない事を期待するしかないだろう――激しい試合が行われる事を予想して、グランセルアリーナには観客に被害が出ないように、フィールドと観客との間に新たに不可視のシールド発生装置(不動兄妹作)が設置され、そのシールドの強度はなのはが本気でディバインバスターを叩き込んでもビクともしないモノだが、互いに殺意の波動とオロチの暗黒パワーを其の身に宿して神の領域に至った稼津斗とルガールが本気を出したらこのシールドでも耐え切れるかどうかは分かったモノではないのである。


「よう、チーム組めたみてぇだな真吾?……そっちの黄色道着は初めて見るが、まさか親父と組むとは思わなかったぜ?」

「いやぁ、ショーンとチーム組む事は出来たんすけど、あと一人をどうするかで悩んでた所で、やっぱりチームメンバーに悩んでたお父さんに声を掛けて頂きまして、こうしてチームを組む事が出来たんですよ!
 草薙さん、大会で戦う事になったら本気で俺と戦って下さい!」

「へぇ……良い面してるじゃねぇか真吾?そんときゃ、全力で相手してやるよ……一回戦で俺達と当たらなかったら、俺達と当たるまで頑張って勝ち進んで来な。」

「相変わらず減らず口だけは達者じゃな……思い上がるなよ京?」

「そんじゃ~な、優勝は無理にしても俺達と一回戦で当たった時以外は一回戦くらいは突破してくれよな――弟子の成長を楽しみにしてるぜ。」

「って、無視かーーー!」


其の一方で、京と真吾は少しばかり雑談をし、京は柴舟の事をガン無視していた……京にとっては柴舟が参戦している事よりも、真吾が自分でチームメイトを見つけて来た事の方が遥かに大事であり、大会で当たったその時は本気で相手をしてやる心算であるようだ。
こうしてKOFの大会参加エントリーは終了し、その夜はグランセル城前の広場にて誰でも自由に参加出来るKOFの前夜祭が行われ、城の人間も、大会参加者も、市民も、そして同盟国より招かれた来賓も大いに楽しんだ。
そこで何故かグリフィンと庵によるステーキ大食い対決が始まり、400gのサーロインステーキを何枚食べる事が出来るかとの勝負だったのだが、庵が四枚だったのに対しグリフィンはなんと十枚をぺろりと平らげての圧勝!しかも勝負後も更に三枚完食したのだから驚きである。
更には、エステルが所謂『原始肉』を骨を持って豪快にかぶり付いていた……リベールの女子は中々に豪快なモノが少なくないようである――そんなエステルを『沢山食べる君が好き』ってな感じで見ていたヨシュアが何とも平和なモノであったが。
ともあれ、前夜祭は大いに盛り上がり、宴は遅くまで続いたのだった。








――――――








そして翌日のAM9:00、花火と同時にグランアリーナにてKOFの開会式が執り行われた。
バンドの生演奏と共に多彩なパフォーマンスが行われる中で選手の入場行進が行われ、チーム戦、個人戦夫々に分かれてフィールドに整列して行く――そして、開会式の最大の目玉である、アリーナに新たに設置された聖火台への聖火点火だ。
選手を代表して大会二連覇中の京が聖火台の前まで進むと……


「おぉぉぉぉ……喰らいやがれぇぇ!!」


大蛇薙で聖火台に火を灯してターンエンド。
此処で闇払いではなく、大蛇薙を使ったのは其方の方が会場が盛り上がると判断したからだろう――格闘家としての実力は一流だが、京は魅せる事に関しても一流であるようだ。


『レディ~ス&ジェントルメ~ン!
 いよいよ待ちに待ったThe King Of Fightersの開幕だ~~~!国内外から集まった腕自慢達による真剣勝負のアルティメットファイト!一体どんな熱いバトルが展開されるのか!俺のハートも今からドッキドキだ~~!』



その開会式の視界を務めるのは、ピンクの派手なスーツとお洒落な口髭、そして『其れ凶器になるんじゃないか?』と思わせる1mほどの立派なリーゼントのナイスガイであった……本名は誰も知らない通称『MCさん』である。


『それじゃあ、リベール王の高町なのはから大会の開幕を宣言して貰うぞ~~~!!』

「リベール王の高町なのはだ。
 此処に集いしは何れ劣らぬ実力者達……個人戦もチーム戦も誰が優勝してもオカシクないと言えるだろう。
 故に選手諸君は己の持てる力を存分に発揮して悔いのない戦いをしてくれ。さぁ、戦いの宴の始まりだ!
 リベール王の名のもとに、此処に『The King Of Fighters』の開催を宣言する!」


そして、なのはの大会開会宣言と同時に花火が上がり、此処にThe King Of Fightersが開催される事になった。
ルールは個人戦、チーム戦共通でDSAAルールとダメージエミュレートを採用し、参加者にはアナライズで解析したHPと防御力によって割り出されたライフポイントが設定され、其れがゼロになったら試合終了。
個人戦の場合はダブルノックアウトになった場合はライフポイントを3000まで回復した上でファイナルラウンドを行い、其処でもダブルノックダウンになった場合は両者敗退となり、チーム戦では三人目同士がダブルノックダウンになった場合は同様の措置となっている。
また、武器の使用はOKだが、刃物類は木製か硬質ゴム製のモノに変え、銃は弾丸を殺傷能力のないペイント弾に変え、弓矢の類は矢先をゴムに変える事が絶対条件となっていた……そうでなければ危険極まりないのだから、この措置は当然と言えるだろう。

こうして、KOFは先ずは個人戦のトーナメントから始まったのだが、主要選手(名前が出ていた選手)は余裕で一回戦を突破した――特にレーシャは二倍以上ある大男を相手にしてヒット&アウェイで徹底して膝を狙って足元を崩すと、顎にハイキックを叩き込んで脳を揺らして自由を奪うと、その巨体をブレーンバスターの要領で持ち上げると、両手で相手の両足をホールドしてから天高く飛び上がると其のまま雷光の勢いで地面に着地して見事なまでの『キン肉バスター』をブチかまして完全KOすると言うインパクトぶっちぎりの試合をしてくれたのだ。小柄な少女が二倍以上の体格の相手をKOしたと言うのは、話題性は充分過ぎるだろう。


参加者最年少のレーシャが思わぬ形で個人戦を盛り上げ、個人戦は早くも第二回戦――ベストエイトを決めるベスト16の試合に突入するのだった。
その二回戦の組み合わせは


・不動レーシャvsルガール・バーンシュタイン

・春日野さくらvsザンギエフ

・エドモンド本田vsエレナ

・カポエラ使いvsキャミィ・ホワイト

・アガット・クロスナーvs高幡志緒

・クリザリッドvsK’

・ノーヴェvsボクサー

・郁島空vs稼津斗



と、この様になった。(試合順不同)
KOFの個人戦は二回戦からが本番であるようだ――果たしてどんな試合が展開されるのか、グランアリーナは熱気の渦に満たされるのだった。









 To Be Continued 







補足説明