ベルカ皇国との同盟が締結してから数日後、なのはは執務室で悩んでいた。
なのはが睨めっこしているのは過去の武術大会の記録と大会のルールなどを纏めた書類だ……武術大会はリベールに於ける一大イベントなので、なのはも盛大に開催しようと考えているのだが、此れまでの大会と違う形で開催したいと言う考えもあり考えが煮詰まっているようだ。


「なのはさん、一休みしませんか?」

「なのはママの大好きなキャラメルミルク作って来た~~!」

「クローゼ、ヴィヴィオ……そうだな、一息入れるとしようか。」


其処にクローゼがバスケットに入ったクッキーを、ヴィヴィオがティーポットに入ったキャラメルミルクを持って執務室にやって来た――クローゼはなのはのパートナーとして、ヴィヴィオはなのはの娘として少しでも力になりたかったのだろう。


「其れで、何を悩んでいたんですかなのはさん?」

「恒例の武術大会についてな。
 リベールが生まれ変わった事を強調する為に、此れまでとはルールを一新し、四対四の団体チーム戦から、三対三の勝ち抜き式のチーム戦に変更し、一対一の個人戦部門も用意しDSAAルールとダメージシミュレートを採用したモノにしてチーム戦と個人戦の重複参加は不可、チーム戦は先に相手チーム三人を倒した方の勝ちと言う所までは考えたのだが――肝心の大会名が決まっていなくてな。
 武術大会では、流石に味気ないだろうと思って幾つか考えたのだが、如何にもシックリ来なくてな?」


だがなのはは大会の仕様を大きく変更する事を確りと考えていたのだが、大会名が思い付かなかったようだ……確かに、リベールの目玉とも言える一大イベントには其れ相応の相応しいネーミングがされるべきだろう。


「確かに大会名も一新した方が良いかもしれませんが……参考までに、どのような大会名を考えたのでしょう?」

「『闘劇』、『ミレニアム・ファイティング』、『リベール・バトルコロシアム』、『頂上決戦!アルティメットファイト!』、とまぁこんな感じだ。自分で言うのもアレだが、とても微妙な感じがしてな。」

「うん、イマイチ。」

「ぐ……実際に言われると結構刺さるな?娘からの一撃だと尚更だ。」

「アハハ……でも、確かにシックリ来ませんね?何か特別なモノにしようとして逆にイマイチな感じになってしまったのかもしれません。
 ふ~~む……では、武闘家の頂点を決める大会と言う事で、『The King Of Fighters』と言うのは如何でしょうか?略称も『KOF』と分かり易いですし。」

「武闘家の王か……確かに良いかも知れないな?では、大会名は『The King Of Fighters』、略して『KOF』とするとしよう。中々ネーミングセンスがあるなクローゼ?」

「ふふ、お褒めに預かり光栄です♪」


なのはが考えた大会名は、イマイチでありヴィヴィオにもストレートに指摘されてしまったが、此処でクローゼがシンプルかつ分かり易く、略称としても覚えやすい大会名を提案し、なのはは其れを即採用して、新生リベールの武術大会は新たに『The King Of Fighters』として生まれ変わる事になったのだった。













黒き星と白き翼 Chapter45
『武術大会開催前の彼是色々Et cetera』










大会名が決まり、大会のルールも大筋が決まったとなれば次にやるべき事は大会の告示を国内外に行う事だが、此れは少しばかり最新技術も使う方向でなのはは考えていた。
大会の告知ポスターやビラの配布だけでなく、不動兄妹とラッセル博士が共同開発した『映像モニター』を使った告知も行おうと考えていたのだ。
映像モニター自体は既に存在しており、飛空艇や船と言った各種航行機器や個人用の通信機には搭載されているのだが、一般家庭用の大型映像モニターと言うのは存在しておらず、この度不動兄妹とラッセル博士が漸く一般家庭でも買える程度に価格を抑えたモノを作り上げ、リベール国内のみならず国外に向けても急速に輸出が行われて、大型の映像モニター『テレヴィジョン』は瞬く間に世界中に広がって行ったのだ。
そして、家庭用のテレヴィジョンと並行してより大型の『オーロラヴィジョン』も開発され、各地で其れを使った宣伝看板も増えて来ているのだ。

なのでなのはは、このテレヴィジョンとオーロラヴィジョンを使っての大会告知は、ポスターやビラ以上の宣伝効果があると思い、其れを使う事を思い付いたのである。
そして、その告知動画の編集を任されたのは何と簪だった。
と言うのも、簪は実は創作物が大好きで、其れが高じて自分でもオリジナルの創作物を作ってしまう程に創作力のある人物であり、であるのであれば大会の告知動画を作る事も出来るだろうと考え、なのはが白羽の矢を立てたのだ。


「過去のリベール通信の武術大会の記事から写真をトレースして、其れを臨場感が出るように繋いで、スタイリッシュなBGMを付けて、そして最後になのはさんの大会告知のメッセージを付け加えて……此れで良いかな?」

「うん、とても良い感じだ簪。」


そうして出来上がった告知映像は、一昨年と去年の武術大会の特集を組んだリベール通信の写真を組み合わせた上で、臨場感のあるBGMを入れて、なのはの大会開催を告げるメッセージを入れたモノとなり、其れが可成りの出来栄えだった。
簪の編集技術も然る事ながら、なのはの『此度、リベール王国にて『The King Of Fighters』を開催する。大会は三対三のチーム戦と、一対一の個人戦の二種類を開こうと考えている。腕に覚えのある者は是非とも大会に参加して欲しい――己の拳、己の武の全てを懸けて其の力を心行くまで発揮し、『King Of Fighter』の称号を掴み取れ!』と言うメッセージもインパクトがあっただろう。
大会を告知するポスターやビラにも同様のメッセージが書き込まれていたので、宣伝効果は抜群と言えるはずだ――尚、大会告知のビラとポスターのデザインも簪が担当し、大会二連覇を達成した京を中心に、アインス、エステルが配置され、背後に庵が背中を向けて立っていると言う此れまた何ともスタイリッシュなモノに仕上がっていた。簪のセンスは相当に高いと言えるだろう。

同時に大会の告知が告げられると同時に、リベール国内だけでなく国外でも大会に参加する為に多くの武闘家が、主にチーム戦への参加を考えた武闘家達はチームメイトを探す為に奔走する事となった。

其れは大会二連覇を果たした京も同じなのだが――


「今回は三対三か……なら、俺のチームは俺とアインス、其れからエステルで決まりだな。アインスもエステルも其れで良いだろ?」

「あぁ、異論はない。」

「アタシも異論はないわ!ヨシュアに良いトコ見せてやるんだから!」

「普通は立場が逆だろ、ってのは言うだけ野暮なんだろうな。」


京はアッサリとチームを決めていた。
武術大会の初優勝を決めた時のチームが、京・アインス・エステルの三人に京の盟友にしてライバルである二階堂紅丸を加えたモノで、二連覇した時のチームが紅丸の代わりに京に憧れて押しかけ弟子となった真吾を加えたモノであり、チームの人数が三人となった今大会で、京がアインスとエステルをチームメイトに指定したのは当然の流れと言えるだろう。


「ちょっと待って下さいよ草薙さん!だったら俺はどうなるんすか!!」

「真吾、お前は今大会自分でチームメイトを見つけるか、若しくは個人戦でエントリーしろ……お前は思った以上に才能はあったみたいだが、其れでも去年の大会でお前が優勝に貢献したとは言い難い。
 だから今回は、お前の力だけで結果を残して見せな――お前が自分の力でチームを組んで、一回戦で俺のチームと当たった時以外は一回戦を突破すりゃ及第点をくれてやるし、個人戦なら、取り敢えずベスト8にコマを進めりゃ及第点をくれてやる。
 だけど、どっちも出来なかった其の時は、お前破門な。」

「草薙さ~~~ん!!!」


その真吾は京とチームを組めなかった事が不満だったみたいだが、此処で京は真吾に対して課題を出した……元々真吾は格闘技に関しては全くの素人で、京に憧れて格闘の道に足を踏み入れた、ある意味でミーハーファイターなのだ。
才能はソコソコあったらしく、京が一度見せただけの技も即座に形だけは完全にマスターしてしまったのだが、如何せんついこの前までは全くの素人だったので、いざ本番となるとビビッて尻込みする事が多かったのだ――其れでも、先のライトロードとの戦いの時の様に、『逃げる事の出来ない戦い』になったその時は、腹を括ってその秘められた力を発揮するのだが。

京としても真吾の才能には気付いていたので、その才能を埋もれさせない為に敢えて厳しい条件を出したのだ――真吾が押しかけて来た時には『面倒な』と思っていたのだが、一緒に居る内に情が移ったのかもしれない。


「京、真吾君の事あれで良かったの?」

「少なくとも、アイツが成長するには此れが正解だって思ってる。
 真吾には才能あるし、格闘のセンスも中々なんだが、アイツは心のどこかで俺を頼っちまってるからな……俺を頼りにしてる限り、アイツは今以上の成長は望めないんだよ――だからアイツは、自分の力だけで大会のメンバーを集めるか、個人戦で勝ち進む必要があるんだ。
 曲りなりも、アイツは草薙の拳を学んだんだ、生半可で終わるってのは俺が許さねぇ……同時に真吾にも知って欲しいんだよ、テメェの力を限界まで出し切って戦う格闘の本当の面白さって奴をさ。」

「師匠の親心か……ちゃんと師匠してるじゃないか京。」

「中途半端ってのは嫌いなんだよ俺は。」


とは言え、真吾にとって京が貸した課題はハードルが可成り高いだろう。
チームを組もうにも、真吾には面識のある武闘家は殆どいない上に、個人戦でベスト8に残れと言うのは運の要素も絡んでくるのだから――個人戦の参加人数が十六人ならば一回戦を突破すればベスト8確定だが、参加人数が其れ以上となった場合には、シード権を獲得するか、或は最低でも二回以上勝ち抜かねばならないので、真吾にとっては可成りのハードモードと言えるだろう。

そんな訳で真吾はチームメイトの獲得に奔走する事になったのだが、見知った顔は既に全滅状態で、頼みの綱であった同じく京の弟子であるノーヴェにも『今回は個人戦でエントリーする』と断られてしまい、最後の望みを懸けて京の宿敵である庵の下にも出向いたのだが、『京の弟子が態々来るとは……貴様を殺して、京を怒らせるのもまた一興かもしれんな?』言われた上で、八稚女をブチかまされそうになった(勿論本気ではなく鬱陶しかったので追い払う為の脅しなのだが。)ので命からがら逃げ出して何とか命を拾ったのだ……詰まるところ、真吾には最早チームメイトの当てがない訳だが――


「はぁ~~~……」


リベールの郊外までやって来た所で、ベンチに座って溜め息を吐く、褐色肌に坊主とドレッドヘアーを融合した独特の髪型をした黄色い道着の少年の姿が目に入った。
其れだけならば如何と言う事は無かったのだが、何かを感じたのか真吾はその少年に声を掛けていた。


「溜め息を吐くと幸せが逃げるっすよ?何か、悩み事ですか?」

「悩みごとっちゃ、悩み事かも……KOFの告知を見て、俺も参加しようと思って師匠にチーム組んでくれって頼みに行ったんだけど、師匠は『俺は今回はリュウとジンとチームを組むから』って、俺とは組んでくれなかったんだよ!
 師匠と戦いたいから俺もチームで参加しようと思ってたんだけど、俺は全然未熟で無名だから組んでくれる相手は居ないし、だったらリベールで誰か組んでくれる人いないかなと思ってダメ元で来たんだけど、やっぱ収穫はゼロなんだよな~~。」

「あぁ、痛いほど分かるその気持ち……だったら俺とチームを組みません?俺も師匠から、別チームでエントリーするか、個人戦でエントリーしろって言われちゃったんすよ――互いに組む相手が居ない弟子って事で。」

「似た者同士でエントリーか……この際だから、其れもアリかもな~~~?なら本気で俺と組もうぜ?俺はショーン、アンタは。」

「俺、矢吹慎吾!宜しく頼むよ!!」

「オウ!」


その少年、ショーンもまた師匠とチームを組もうと思っていたら、その師匠はアッサリとチームを組んでしまい、自分はチームを組む事が出来ずに途方に暮れて所に真吾が声を掛け、似た者同士と言う事でアッサリとチームを組む事に。
チーム戦に参加するにはあと一人必要だが、其れでも組む相手が見つかったと言うのはお互いに有難い事だっただろう。


「でもまだチームとしては未完成っすねぇ……誰か当てあるっすかショーンは?」

「ある訳ないだろ……リベールに来たのだって、『声を掛けれたら若しかしたら一人位は』ってな感じだったんだからさ――もういっその事、三人目は数合わせでその辺のパッと見強そうな人でも入れるか?」

「其れは其れで如何かと思うんすけどねぇ……」


とは言え、真吾もショーンも三人目の当てはない……だからと言って数合わせで適当な誰かをチームに入れると言うのは言語道断と言えるだろう。そんな適当なチームで勝ち上がれるほど格闘技の大会は甘いモノでは無いのだから。


「フッフッフ、話は聞かせてもらっぞ真吾君!そしてショーンとやら!!」

「うわぁ、お父さん!?」

「えぇ、真吾の親父さん!?」

「いや、俺の師匠の草薙さんのお父さん。」

「紛らわしい言い方するなって!!」


其処に現れたのは京の父親であり、『おやじ狩り狩り』と言う可成りヤバめの趣味を持ったある意味で伝説の親父、Mr.OYAZIこと草薙柴舟が現れた――如何やら、この親父もKOFのチーム戦のメンバーを探していたのが誰も見つからなくてどうしようかと思ってた所で、偶然チームを組む事を決めた真吾とショーンを見掛けたらしい。


「実はワシもチームメイトを探しておってな?
 京の奴と組んでやろうかと思ったら、さっさとカシウス殿の御息女二人とチームを組んでしまうし、京のクローン三人は其のまま三人でチーム組んでしまうし、カシウス殿は出場しないとの事で、タクマ殿は副業で始めた焼き肉店の方が忙しくて手が離せんらしくワシも他に組む相手が居らんので途方に暮れておったんじゃよ。
 如何じゃ、ワシと組むのは悪くないと思うぞ?」

「真吾、このおっさんって強いのか?」

「まぁ、少なくとも俺達よりはずっと強いっすよ?……でも、俺達なんかで良いんすか?」

「将来有望な若者と組むのもまた一興じゃろ?……序に、こんな急造チームが大会で躍進したら面白いとは思わんか?京の驚く顔が目に浮かぶぞ?」

「其れは、確かに言えてるかもな?」

「そうっすね……それじゃあ宜しくお願いします、お父さん!」

「うむ!」


そして、話し合いの結果真吾、ショーン、柴舟の三人でチームを組む事が決定し、チーム名も『SSSチーム』となった――真吾、ショーン、最終の頭文字から取ったのだが、同時に『SSS』は最上級ランクに使われるモノでもあるので『最上級チーム』との意味合いを持たせる思惑もあったのかもしれない。
これから伸びる若者と、ピークは過ぎたがまだまだ現役バリバリで老獪な戦い方が出来るベテランのチームと言うのは、若しかしたらKOFの台風の目になるかも知れない……本当に若しかしたらだが。








――――――








同じ頃、八神家には珍しい客が訪れていた。


「レンちゃんがウチに来るなんて珍しいやないの?其れも、兄やんに用があるだなんて。」

「うふふ、今日は庵を誘いに来たのよ。」

「カシウスの娘が俺に何用だ?」


其れはブライト家の末っ子であるレンで、しかも庵に用があると言うのだ。
応接間のテーブルにはなぎさの淹れたミルクティーと、はやてお手製のクッキーが並び、ちょっとしたお茶会の雰囲気が漂っている……それだけに、庵の存在が酷く場違いに映ってしまうが。


「今度開催されるKOF、私とチームを組んでくれないかしら?」

「俺とチームを組む、だと?」

「レンね、アインスやエステルと戦ってみたいのよ――エステルとは家族になる前に一度戦ってるけど、其の時は負けちゃったからリベンジしたいって気持ちもあるの。
 でも、レンには武闘家さんに知り合いは多くないから貴方に声を掛けてみようかなって思ったのよ……貴方にとっても、京と戦う機会が得られる訳だから悪い話ではないと思うの♪」

「確かに大会に参加すれば合法的に京と戦う事が出来ると言う訳か……殺し御法度の格闘大会では京を殺す事は出来んが、其れでも奴と戦えると言うのであれば確かに悪い話ではないな。
 貴様の実力も生半可でない事は俺も知っているから、少なくとも足手纏いにはならんか……良いだろう、貴様と組んでやる。」

「いや、何でそないに上から目線やねん。」

「突っ込むなタヌキ。我が兄ながら、最早こ奴の性格は救いようがあるまい……此の愚兄が下手に出たその日には、世界中で雨が、いいや槍が、否リベール王の最強必殺技が降り注ぐぞ?」

「其れって世界壊滅やろ……そして、同じ事は姉やんにも言えるからな?姉やんが下手に出るも想像出来へんのよ私は。」

「ふ、王たる我が下手に出る筈なかろう!」


レンの目的はKOFのチーム戦に参加してアインスやエステルと戦う為にチームを組む相手として庵を誘いに来たのだ――自分の目的を明らかにしながらも、庵にとってのメリットも提示するあたり、レンは年齢の割に交渉術に長けていると言えるだろう。
結果として庵はめっちゃ上から目線ではあるが、レンと組む事を承諾した……その際にはやてとなぎさの間で若干の姉妹漫才が展開されたが、其れは平和な姉妹のじゃれ合いと言う事で問題はなしだ。


「だが、チームは三人だろう?残る一人に当てはあるのか?」

「なかったら来てないわ♪」


残る三人目にもレンは目星を付けていたらしく、庵に『ついて来て』と言うと飛行魔法を使って飛び立ち、庵も武空術を使ってその後を追い、辿り着いた先は王都グランセル――此処にレンの言う三人目の当てがあるのだろう。


「王都……誰を誘う心算だ貴様?」

「其れはね……」






「人様に迷惑かけて目立とうとしてんじゃねぇこのボケが!お前自身が面白い顔になっとけ!!」

「メダツ!」

「オモシロ!?」






「彼よ♪」


レンが指差した先では、グランセルのカフェで迷惑行為を働いたDQNカップルを容赦なくブッ飛ばすシェンの姿が……男だけでなく女の方も手加減なしでぶっ飛ばす辺りに、シェンの『悪い奴に男も女も関係ない』と言うスタンスが見て取れるが、シェンの鉄拳を喰らったDQNカップルは見事に顔面陥没状態となっていた。


「チンピラ風情が役に立つのか?」

「あぁ見えて彼は嘱託とは言え王室親衛隊の一員だから実力はお墨付き――其れこそ、なのは女王のお墨付きよ?パワーと頑丈さで言えば、レンや貴方よりも上かも知れないわ。」

「足手纏いにならないのであれば構わん……奴との交渉は貴様が行え。俺は誰とも慣れ合う心算はない。」

「その不愛想、少し何とかした方が良いと思うわよレンは。」

「下らん事を言うな、殺すぞ。」

「あら怖い♪」


だがしかし、シェンの実力は確かに高いのでチームを組む相手としては申し分ないだろう。
嘗ては武人として名を馳せた士郎に師事した事もあり、特定の格闘技を修めた訳ではないが実戦で磨きぬいた我流の『喧嘩殺法』と言うのは存外馬鹿に出来ないモノでもあるのだから。

そして其の後、レンの巧みな交渉によってシェンはチームを組む事を快諾してくれた……シェン自身、少しばかり思い切り暴れたいと思っていたので、KOFへの誘いは渡りに船だったのだろう。
こうして庵チームが完成したのだが、此れもある意味で注目のチームであるかもしれない――実力的には相当に高いだろうがね。


同時に、リベール各地で、諸外国でも様々なチームが組まれ、KOFのチーム戦に参加するチーム数は可成りの数に上る事は間違いなさそうだ――少なくともリベールだけで、京と庵と真吾が夫々チームを組み、一夏がレオナとマドカとチームを組み、刀奈とヴィシュヌとグリフィンがチームを組んでの参戦を決めているのだから。



大会開催の告知から一週間後、遂に王城でのKOF参加のエントリーの日がやって来たのだった。









 To Be Continued 







補足説明