ヴィヴィオが張った結界内で行われていたなのはとなたねの姉妹対決は、ダンテが結界内に乱入した事で途中中断となったのだが、トドメを刺される土壇場で命を救われる形となったなたねはダンテを睨みつけていた。


「時にダンテ、お前どうやって結界内に入って来たんだ?」

「リベリオンで結界の一部を斬って強引にな。もっと言うなら、結界内に入って来たのは俺だけじゃねぇ。序に親衛隊の連中も連れて来たぜ?つっても、一夏の坊主が居なきゃ来られなかっただろうけどな。」

「何と言う力技か……そして親衛隊もか。」

「陛下、御無事ですか?」

「あぁ、無事だがお前達はどうやってこの結界内に入って来たんだ?」

「俺の零落白夜で結界の一部を斬って、そんで其処から入って来た。真の零落白夜にはまだまだ程遠いけど、結界を斬って中に入る位なら俺でも出来るぜ。」

「其れも中々の力技ですねぇ……」

「もうちょっと結界強くした方が良かったかなぁ?」


だが、そんななたねを他所に、結界内にはダンテだけでなく王室親衛隊の隊員も入って来て、ネロとなたねを包囲する……リベールの王に刃を向けた相手を捕縛するのは当然の事なのだから。
そして包囲されたなたねもネロも、もう打つ手は無かった。
王室親衛隊の隊員の個々の能力ではなたねとネロには及ばないが、其れでも王室直属の精鋭達が揃ったのならば連携する事でなたねとネロを無力化するのは難しくない。
特に隊長のユリアはカシウスに師事していた時期があり、剣の腕前は王国軍と親衛隊を合わせた中でもリシャールに次いで二番目であり、なのはが王となってから新たに加入したメンバーである、アルーシェ、レオナ、鬼の子供達も極めて高い戦闘力を有している。レオナに至っては、内に眠るオロチの力を覚醒させれば、なたねとネロを上回る事すら可能だろう。


「何故、止めたのです……?」

「血の繋がった家族、ましてや双子で殺し合いなんぞするもんじゃねぇ。
 そんな事をしても、勝とうが負けようが残るのは後悔だけで得るモノは何もねぇ……経験者がそう言ってんだから間違いないだろ?聞いておいた方が良い。」

「経験者、ですか。」


此の状況での抵抗は得策ではないと判断したなたねとネロだったが、なたねは自身の問いに対してのダンテの答えに其れ以上は何も言えなかった……『双子での殺し合い』を、ダンテも経験し、そしてそうなってしまった事を後悔していると言う事が分かってしまったからだ。


「陛下、リシャール大佐に連絡を入れ、彼女達の身柄はレイストン要塞に……」

「いや、今は武器を没収するだけで良い。武器を没収したら謁見室に。」

「よろしいのですか?」

「構わんよ。この状況で暴れるような馬鹿な真似はしないだろうし、仮にしたとしても此のメンバーならば取り押さえるのは容易いしな。」

「そう言うことであるのならば了解いたしました。」

「ヴィヴィオも、もう結界を解除して良いぞ。」

「は~い。バハムート、セメタリー・オブ・ファイヤー!!」

「……結界を解除するには、其れは些かやり過ぎのような気がしますよヴィヴィオ。」


結界も解除(と言うか破壊?)され、親衛隊の隊員は、なたねとネロに武装解除を求め、二人も其れに応じるのだった……尤も、なたねの目の奥には憎悪の炎が宿ったままであり、このまま終わるとは到底思えなかったが。











黒き星と白き翼 Chapter33
『交わらない道を交わらせる~なのはの提案~』










武装解除を求められ、なたねはルシフェリオンを、ネロはブルーローズとレッドクイーンを親衛隊の隊員に渡したのだが……


「ぬぁ!?く……何だよ此のクッソ重たい剣は!持ち上げるのも難しいだろ此れは!一体何kgあるんだよ!大凡振り回せる重さじゃないぞマジで!!」


レッドクイーンを受け取った一夏は、その余りの重量に驚いていた。
一夏は一見すると細身だが実は細マッチョで、自分の恋人達を片腕に一人乗せる位は余裕で出来るのだが、その一夏が持ち上げるのも困難なレッドクイーンの重量は相当なモノであると言えるだろう。


「ギミックに耐えられるように頑丈にしまくった結果、その重さになっちまったんだよな。多分、最低でも70㎏はあるんじゃねぇか?」

「それもう剣じゃなくて只の鉄塊だろ!刃毀れしても、重量で相手を叩き潰せるじゃないか!つーか、此れを振り回すアンタの腕力と、此れをぶら下げても壊れないコートはどうなってんだマジで!!」

「このコート、布じゃなくて革製だから強いんだよ。腕力も、昔からやたらと強かったからな。」


取り敢えず、レッドクイーンは大凡常人が扱えるモノでないのは間違い無いだろう。
何にせよ、此れでなたねとネロの武器は親衛隊が回収した訳だが……


「おいおい坊主、お前さんはまだ武器持ってるだろ?その右腕、其処に刀が収納されてるんじゃないか?」


ダンテがネロの右腕に刀が収納されてると指摘して来た。
ネロの右腕は異形の『悪魔の右腕』なのだが、其処に刀が収納されているとは誰も思わなかったが、ダンテには分かった様だ……自分の気に入った仕事でなければどれだけ大枚を叩いても受けず、仲介人との仲介料と報酬の割合も8:2で、取り分をコイントスで決めるような適当な生き方をしているダンテだが、ヤバい仕事を長年続けて来た事で観察眼は相当に磨かれている様だ。


「私が収納されているの?」

「いや、お前じゃないからな刀奈。」

「まさか、バレちまうはな。つーか、右腕に刀が収納されてるなんて良く分かったなオッサン?」


刀奈が若干のボケをかましてくれたが、ネロは右腕から一振りの刀を取り出した。
その刀は、鞘に収められている状態でも強烈な魔力を放っており、闇色のオーラが見える位である。相当に強力な力を秘めているのは間違い無いだろう。


「その刀は俺の兄貴が使ってたモンだからな。
 でもって、その刀はスパーダの血筋じゃないと使う事は出来ねぇ……俺には嫁も子供も居ねぇから、自動的にお前は兄貴の子供って事になる訳だ。俺は、お前にとっては叔父さんって事になるのか。」

「アンタが、俺の叔父だって?」


ネロの右腕から現れた刀は、スパーダの血筋でなければ扱う事が出来ない代物であり、嘗てはダンテの兄が使って居たモノだと言うのだ……『伝説の魔剣士』であるスパーダの残した刀であるのならば、其れは相当なモノだろう。
一先ず、その刀はダンテが預かる事に……と言うか、他の誰かが回収する前にダンテがネロから受け取った。スパーダの血筋以外の者が触れたら、何が起こるか分からないからだ。


「詳しい話は謁見室でするとしようか?」


各々言いたい事はあるだろうが、先ずは謁見室に移動して、其処で改めてと言う事なのだろう。
そして、超重量のレッドクイーンは、ヴィヴィオが持って行った……デュナンによって生み出された、生物兵器であるヴィヴィオは、パワーに関しても相当なモノであるらしい。ハニーブロンドの美女が、超重量の武器を片手で持っていると言うのは中々に迫力があると言えるだろう。








――――――








謁見室へとやって来た一行は、なのはが玉座に座り、其の両脇をクローゼとヴィヴィオが固め、その前になたねとネロが座し、その周囲を王室親衛隊とダンテが固めると言った布陣だ。


「おいオッサン、アンタが俺の叔父って如何言う事だ?」

「如何言う事も何も、お前の親父は俺の兄貴だったって事だ。お前の親父は、バージルって言うんじゃないか?」

「はぁ?そんな名前じゃねぇよ。大体にして、親父に兄弟がいるなんて聞いたことねえし、その親父も母さんと一緒に十年前にライトロードによってぶっ殺されちまったからな……もう、俺には家族は居ねぇんだよ。」

「十年前に?……って事は、お前さんの親父さんは本当の親父じゃなかった可能性の方が高いぜ坊主。
 十年前って言ったら、俺が魔帝の下僕になっちまった兄貴と戦った時だからな……つーか、バージルの奴、女を孕ませるだけ孕ませてか?……適当な生き方をしてる俺が言える義理じゃないが、中々に最低だなオイ。」


ネロの本当の父親であるバージルは中々に最低であった模様だ。……確かに、女性を孕ませるだけ孕ませておきながら、其れでターンエンドと言うのは余りにも無責任であると言わざるを得ないのだから。……日々を適当に生きてるダンテに最低だと言われるとは、バージルは中々にアレな生き方をして来たと言わざるを得ない。


「俺の親父は本当の親父じゃなかったってのか?……だが、そうだとしても何でアンタの兄貴が俺の親父だって言い切れる?」

「此の刀をお前が持っていた事が何よりの証なんだよ。坊主、お前コイツを何処で見つけた?」

「悪魔が沢山現れて困ってるから何とかしてくれって依頼を受けた時に、悪魔の研究をしてるらしいって研究所を見付けてなたねと潰しに行った時に、其の研究所でだけど、俺が見つけた時には折れてた。けど、俺が手に取ったら折れてた刀がくっ付いたんだ。」

「刀と呼応したって訳か……なら、尚の事確定だ。さっきも言ったが此の刀はスパーダの血を引く奴にしか扱う事は出来ねぇ。
 そんでもって、スパーダの血を引いてるのは俺と兄貴だけで、俺もまぁ女性経験が無い訳じゃないが相手は仕事仲間の奴だし、アイツが子供産んだって話は聞かないし、そもそも子供産んだら俺の所に『アンタの子供だから認知しなさい。序に養育費も払ってね。』って押しかけて来るだろうから、お前は俺の子じゃない。
 ってなると消去法で兄貴の子供しか有り得ねぇ訳だ。」

「マジかよ……」


空中庭園で言った事をより詳しく説明し、改めてネロが自分の兄の子供であると言う事をダンテは伝える……十年間実の父親だと思っていた人物が、実は血の繋がりはマッタク無い真っ赤な他人であったと言うのは中々に衝撃的な事実であると言えるだろう。
尤も、ネロにとっては顔も知らない実の父親よりも、愛情を注いで育ててくれた者こそが父親だと思える訳であり、その父親をライトロードに殺された事で、なたね同様ライトロードへの復讐を誓っている訳なのだが。


「取り敢えず、此の刀は俺が預かっておくぜ?コイツは、人と魔を分かつモンだ……そんな危険なモノを、今のお前さんに任せる事は出来ねぇ。
 俺が管理すべきだろう。
 そんな訳で、此の刀――閻魔刀は俺が預からせて貰うぜなのは嬢ちゃん?」

「好きにしろ。お前の兄の所有物であったのならば、其れをネロから没収しお前に譲渡した所で何の問題もあるまい。
  ……しかし、人と魔を分かつ刀か。……一つ頼まれてはくれないかダンテ?」

「私からもお願いがありますダンテさん。」

「おぉっと、みなまで言うなよなのは嬢ちゃん、クローゼ嬢ちゃん?折角コイツが手に入ったんだ、言われなくてもそうする心算だったさ。」

「おい、勝手に決めるなよ!」

「いやいや、武器は取り敢えず没収なんだ。なら、その没収された武器の一つが俺の兄貴のモノだってんなら、弟である俺が持ってても問題ないだろ?なのは嬢ちゃんもお前から没収した上で俺に譲渡したって事にしてくれるみたいだしな。
 だが、お前が此れを持つに相応しいと俺が判断した時には返してやるぜ坊主。ま、今のままじゃ永遠に俺の手元にある事になるだろうけどな。」

「クッソ、上から目線でムカつくオッサンだな!」


その刀――閻魔刀は、取り敢えずダンテが預かる事になった。
『人と魔を分かつ力がある』と言う事を聞いたなのはとクローゼは、ダンテに何か頼み事があった様だが、ダンテはダンテでなのはとクローゼに言われずとも、その頼み事をやる心算だったらしい。
閻魔刀を得たダンテは目的を果たす為に王城から去り、その場にはなのはとクローゼとヴィヴィオ、そして親衛隊の隊員となたねとネロが残ったのだが……


「二度と私の前に現れるなと言ったが、気が変わった。なたね、お前は暫くネロと共にリベールで暮らしてみては如何だ?」

「なんですって?」

「何だと?」


其処でなのははなたねとネロにとってはマッタク持って予想外の提案をして来た。
なたねもネロも、武器を没収された上での国外追放か、或は牢屋行きになると思っていた……尤も、国外追放を言い渡された場合は、なたねが目晦ましの閃光魔法を使った上で没収された武器を奪取してこの場から離脱し、牢屋行きになったらネロが悪魔の右腕で牢屋をぶち壊し、武器を取り戻した上でリベールから脱出して力を蓄える心算だったのだが。


「お前が復讐に固執してしまっているのは、この十年間復讐だけを考えて視野が狭くなっていたからだろう。
 だから暫くリベールで暮らし、その狭くなった視野を広げてみては如何だ?視野を広げる事が出来れば、自分がドレだけ無謀で無意味な事をしようとしていたかも分かるだろう。」

「無謀で無意味などではありません。貴女が力を貸してくれれば全ては巧く行くのですから……そうです、魔族も神族も人間も、等しく滅びるべきなのです。」

「全ての種が等しく滅びるべきか……ならばなたね、何故お前はネロと共に行動している?全ての種が滅びるべきだと言うのであれば、ネロもまたお前にとって抹殺すべき相手である筈だ。」

「……ネロは悪魔または魔族と人間の混血であり、人間でも悪魔でも魔族でもありません。先程は『自分でも分からない』と言っていましたが、アレは『自分が何者なのか』を聞かれた時の常套句みたいなモノです。」

「右腕がこうなっちまったのも、悪魔の攻撃を受けて傷口から悪魔の血が入ってこうなったのか、其れとも俺には元々悪魔の血か魔族の血が流れてたのかはマジで分からなかったからな。
 さっきのオッサンの話だと、悪魔の血が流れてるって事になるんだろうが。」

「何と言うか少しややこしいですね?」

「其れは否定しません。話を戻しますが、彼は私と同じくライトロードへの復讐を誓っているのです。ネロは殺す相手ではありません。」

「……詭弁であり欺瞞だな其れは。
 ネロだけでなく、此の世界には異種族の混血など履いて捨てるほど存在しているだろうに……其れこそ私もお前も神族と魔族の混血だろう?今でも天界においては神族の混血は存在しない事になっているが、それはあくまで天界に限ればの話だ。
 此れはお前と生き別れてから知った事なのだが、神族の連中は種の純粋度を保つために、母さんのように異種族と結ばれた者は天界から追放するか、或は異種族と結ばれた者が自ら下天していた事で天界には純血の神族しか存在していない。
 だが、人間界に目を向ければ神族との混血は珍しくもない――そう言えば、私がオークションで競り落とした璃音も神族の、其れも熾天使の血を引く者だったな。」

「と言う事は、若しかして私の御先祖様も……」

「アウスレーゼの始祖も、人と結ばれた事で下天した神族だったのかも知れん……そう言う訳で、純粋ではない人間と神族と魔族は其れなりに存在している訳なのだが、お前はネロだけを特別扱いして、其れ以外は全て滅ぼす心算なのか?」

「!!!」


更になのはは、なたねが抱えている矛盾と欺瞞を指摘する。
確かに、全ての種に対しての復讐を謳っているにも拘らず、目的が同じとは言えネロと行動を共にしていると言うのは矛盾した事だろう――真に全ての種に対しての復讐を考えているのであれば、目的が同じであってもネロもまた復讐対象であるべきなのだから。
そして、『ネロは人間と悪魔もしくは魔族の混血だから人間でも悪魔でも魔族でもない』と言うのは詭弁だ――なのはの言うように、今やこの世界には混血の存在が溢れているのだ。なのはとなたねのように、魔族と神族の混血と言うのは超レアケースであるとは言ってもだ。
なので、混血は除外と言う理屈は大凡通らないモノなのだ。


「矢張り気付いてなかったみたいだなお前は。
 それと、お前は私がリベールを取ったのを復讐の為だと思ったみたいだが、マッタク持ってそんな事はない……私は、父さんと母さんの願いを継ぎ、それを実現させる為の始まりの地としてリベールを選んだんだ。
 『全ての種が、種の違いによる差別なく平和に暮らせる世界』……其れが、父さんと母さんの願いであり、それを実現しようとしていた……だが、父さんと母さんは死んでしまった。
 だが、その子供である私達は生きている。ならば私達がすべき事は、無差別の復讐ではなく、父さんと母さんの願いを実現する事ではないのか?全ての種が差別なく平和に暮らせる世界を実現する事が出来れば、私達のような思いをする者を無くす事も出来るのだからな。
 故に、魔族と絶対悪と決めつけて其の存在を認めないライトロードの殲滅は必須だが、無差別の抹殺は必要ないだろう、違うか?」

「……」


そう言われて、なたねは何も言えなかった。
なのはの言った事は筋が通っており、なたねの詭弁を論破するには充分過ぎる威力を持っていたから……なたねだけでなく、ネロまでもが何も言う事が出来なくなって居たのだから、なのはの正論による論破は完璧なモノだったと言えるだろう。


「リベールで暫く過ごし、その視野を広げろ。
 そしてその上で未だ全ての種への復讐を果たさんと言うのであれば、もう私は何も言わん好きにしろ。だが、もしも其れ以外の考えが生まれたのならば私に、私達に力を貸せ。父さんと母さんの願いを叶える為にな。」

「良いでしょう。
 ですが、私の憎悪の炎はそう簡単には消えません……逆に、リベール全土を回った上で、私の復讐は正しい事だと確信して、再び貴女に挑み、そして従わせてみせますよなのは。」

「やってみろ、出来るモノならばな。」


其れでも、まだなたねは己の復讐は正しいモノだと信じており、リベール全土を旅した上でその復讐は正しいと確信して、再びなのはに挑んで従わせる気でいる様だ。
普通に考えたら、こんな危険人物をリベールに放つのは大問題なのだが、武器は没収しているし、ロレントには京とアインスとエステルとレンとヨシュア、カシウス、八神兄妹にシェラザードとBLAZEのメンバー、ボースにはアガット、ルーアンにはカルナとダンテ、ツァイスには不動兄妹とギルドのキリカと、なたねとネロに対抗出来る戦力が揃って居るので問題無しなのだ……若干、ロレントの戦力が過剰な気はするが。

そんな訳で、なたねとネロは武器を没収された上でリベールで過ごす事になったのだった。








――――――








その頃、ダンテはグランセル一のホテルを訪れていた。なのはとクローゼからのお願い、そして己の目的を達成する為に。


「此れはダンテ様、当ホテルに何か御用ですか?」

「よう、元気そうだな爺さん?
 このホテルに用があった訳じゃなく、俺が用があったのはアンタだ。」

「私ですか?」


ホテルを訪れたダンテに対応したのは、ホテルのオーナーとなったフィリップであり、ダンテの目的はフィリップだった――デュナンによって帰天の儀式を強制的に受けさせられ、望まぬ形で悪魔の力を手にしてしまったフィリップを、純然たる人間に戻しに来たのだダンテは。
なのはとクローゼの頼みと言うのも、『人と魔を分かつ力』を持つ閻魔刀で、フィリップを人間に戻して欲しいと言うモノであったのだ。みなまで言わずとも察したダンテは流石一流と言った所か。


「爺さん、アンタ自分の意思で帰天する事は出来るか?」

「其れは、可能ですが……」

「なら、帰天しな。アンタを純粋な人間に戻してやる。其れを可能にするモノを手に入れたんでね。」

「本当で御座いますか!」

「俺は冗談は言うが、生憎と嘘を吐くのは苦手でね……俺の言う事を信じて貰うしかないってのが厳しい所だぜ……其れで、如何する爺さん?俺としては、なのは嬢ちゃんとクローゼ嬢ちゃんの頼み事を果たしてやりたいんだけどよ?」

「ならば、是非とも!」


自分が人間に戻る事をクローゼが望んでいると知ったフィリップは迷わずに帰天し、其の姿が異形のモノに変わる。
と同時に、ダンテが閻魔刀を一閃して斬り付け、そして次の瞬間には帰天したフィリップの姿は元に戻り、帰天によってフィリップにインストールされていた悪魔の因子は霧散したのだった。








――――――








場所は変わって、此処は特殊な結界に覆われて、外部からの干渉を一切シャットダウンした空間だ。
その空間では、生命維持&治療の機能を併せ持ったポッドが幾つも並んでおり、ポッドの中には、ライトロードの構成員が入っていた――十年前のハーメル村への襲撃の際、封印を解かれた『鬼』によってライトロードは致命的なダメージを受け、主力の殆どが死に掛けてしまい、そして軽傷で済んだサモナーのルナミスと、モンクのエイリンを除いて、全員がポッドでの永き治療を余儀なくされてしまったのである。

だが、其れも今日までだろう。



――バリーン!!



各ポッドが『治療完了』を表示したと同時に、治療用ポッドが吹き飛び、その中から治療が済んで力を増したライトロードの主力のメンバーが現れたのだった――ライトロードの復活は、世界に波紋を齎す事になるのは間違い無いだろう……









 To Be Continued 







補足説明