六課とスカリエッティ一味の戦闘は未だ終わりが見えない。

空でも陸でも激しい戦いが続いている。

続いているのだが…

「頼むぞ稼津斗!まとめて吹き飛ばしてくれ!!」

遂に本名で呼んだか…まぁいい、任せておけ遊星――こんな雑魚にやられるほど間抜けじゃないからな。

少なくとも遊星&はやてvsディヴァインの戦闘は、遊星達が優勢である。
と言うか、そもそも反則レベルに強いシンクロモンスターを3体も呼び出し、はやてが疑似ユニゾンしてる状態で負ける事があるのだろうか?
その辺は大いに謎である。

ともあれ、ディヴァインを蹴散らしてさっさと先に進みたいのは事実。
遊星とはやての思いを感じ取ったからこそ、蒼銀の戦士――稼津斗もまた本気を出す。


挑んでくるのを悪いとは言わないが…せめて力量差くらいはちゃんと把握してくるべきだな。
 お前では、遊星と八神の足元にも及ばないさ…精々派手に散れ――虚空裂風穿!!


――ドガァァン!!!


「ぐおわぁぁ!!!」
ディヴァイン:LP8000→0


その一撃は凄まじく、ディヴァインのモンスターを一撃のもとに完全滅殺!
ライフを失ったディヴァインはしばらく行動不能だろう。

「…弱…このおっちゃん、ホンマに何しに出てきたん?噛ませ犬にもなってないやん…」

「さぁな…だが、此れで終わりじゃない――行くぞはやて!!」

「うん!!」

だが、敵はディヴァインだけではない。
ステラを再びライディングモードに変形すると、遊星とはやては施設の外に向かって全速力で走って行った。













遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス98
『MASSIVE WONDERS』











「ちょっとスバル、アンタ先行し過ぎよ!!」

『御免ティア…だけどギン姉が心配で…!』

遊星とはやてがディヴァイン相手に無双をかましている頃、スバルとティアナ、そしてなのはは連絡が取れないギンガの捜索を行っていた。
そんな中でスバルが先走るのは仕方ないだろう。

大事な家族と、大好きな姉と連絡が取れないとなればスバルでなくとも気が逸るというもの。
更に通っている場所のせいで、どうしてもティアナのバイクよりもスバルの方が先行してしまうのだ。


『っと、聞こえっか!!こちらクロウとノーヴェだ!!
 そっちはティアナとなのはか?こっちは現在ギンガを探して通路を走行中、どうぞ!!』


其処に入ってきたのはクロウからの通信。
どううやら、クロウとノーヴェのコンビも、連絡がつかないギンガを探しているようだ。

恐らくはノーヴェもスバルと同じ気持ちなのだろう。


「クロウ君!…こちらスターズ01、高町なのは。
 こちらでもギンガ・ナカジマの捜索中だけど、スバルが先行してる――何処かで落ち合うかもしれないよ。」

『マジですかなのはさん!!…んの馬鹿スバル!!ギンガが心配なのは分かるけど先行するのは拙いだろうが…!』

『全くだぜ…おし、なのは、ギンガの捜索は俺達で引き受ける。オメェとティアナは、他の連中と合流してくれや!』


其れを知ってか知らずか、クロウはギンガの捜索を引き受けると言う。
確かに、今の状況では、隊員1人の捜索に人数を使うよりも、敵勢力との戦いに人員を割くが通りだ。

「……分かった。けどくれぐれも無理はしないでね?」

『わーってるって。つーか俺を誰だと思ってんだなのは?
 この『鉄砲玉』のクロウ様の辞書に、無理とか無茶とか無謀って文字は載ってねーんだよ!
 大船に乗ったつもりで、安心しろって!』

悪戯坊主がそのまま大人になったような笑みを浮かべて言うクロウに、なのはも思わず笑ってしまう。
確かに、クロウが居ればそうそう大事にもならないだろう。

もう1度だけ『気を付けてね』とだけ言って通信を切り、なのはとティアナは進行方向を変えて建物外部に。

外で戦っている仲間にとって、なのはの加入は大きな戦力強化になるだろう。








――――――








上空でのユニゾンアインスと、ユニゾンゼストの戦いは――

「おぉぉぉぉぉ!!」

「むぅ…!!ぐあぁぁぁあ!!!」

アインスに流れが傾きつつあった。
地力ではアインスの方が元々圧倒的に高く、またツヴァイとユニゾンした事で全盛期の力を取り戻しているのだからこうなるのは必然だ。

其れでも、その力の差を経験と戦闘技術で補っていたゼストもまた相当な使い手である事は間違いない。


だが、戦闘が続けば如何ともしがたい実力差はどうしても出て来てしまう。
何よりも、双方ユニゾン状態ではあるものの、融合適合率には大きな差がある。

アインスとツヴァイの適合率が100%であるのに対して、ゼストとアギトの適合率は高く見積もって50%が良いところなのだ。

「もう良いだろう!お前の目的とやらは本当にスカリエッティの下に居なければ成す事が出来ないのか!
 頼む、もう投降してくれ――お前の事も、その小さな融合騎の事も悪い様にはしない。
 お願いだ……もう、これ以上――私に、死者を冒涜するような真似をさせないでくれ…」

「!!…気付いていたのか、俺の身体の事を――

驚いたようにアインスを見やる――気付かれているとは思わなかったのだろう、自分が死者であると言う事が。
そう、ゼストは既に死んでいる存在なのだ。

死後、スカリエッティによって『レリックウェポン』として再生させられた存在である。

「お前の身体からレリックと同じ波長の力を感じたんだ。
 なのに、此れだけ激しく打ち合って尚、お前からは生きている人間特有の呼吸の乱れも、発汗も見て取れない。
 まさかと思ったが、真実だったとはな…」

って言うか思い出したですお姉ちゃん!この人は確か元管理局の人です!
 ゼスト・グランガイツ――もう、何年も前に殉職した…筈のオーバーSランク魔導師です!

「なんとまぁ……」

更に融合状態のツヴァイが、目の前の男が誰であるかを思い出しアインスに伝える。
どうやらゼストの過去やら何やらは、色々面倒な事があるようである。

「ふぅ…ますます、投降して貰わないとならなくなった…」

「そうは行かん…俺は、此処で止まる訳には行かぬのだぁぁ!!!」

待て、旦那!それは!!

「!?」

ま、魔力が膨れ上がってますぅ!!

事情はどうあれ、死して尚利用されるのは忍びない。
是が非でも、投降させ保護しようとした矢先に、ゼストの魔力が文字通り爆発的に膨れ上がった。
魔力カートリッジの使用等と言うレベルではない。

明らかに限界を超えての倍加だ。

「馬鹿な…止めろ、身体が持たないぞ!!」

「目的を達成する時まで持てば構わん……ぬおぉぉぉ!!」

「く…!!」

パンツァーシルト!!

その膨れ上がった魔力で、乾坤一擲の一撃を叩き付け、防御諸共アインスを吹き飛ばす。
吹っ飛ばされたアインスは、軌道上のガジェットをも巻き込みながら地面に激突!

「はぁはぁ…く…流石に負担が大きいか…」

旦那…

「大丈夫だアギト…俺はまだ朽ちる事は出来ん……アイツに、レジアスに事の真意を問うまではな…」

ゼストもゼストで譲れぬ思いがあるのだろう。
或はその思いの強さが、爆発的な魔力の増幅を更に高めたのかもしれない。

とは言え、今の一撃で限界を超えたのもまた事実。
これ以上の戦闘は不可能と悟ったのだろう――ガジェットに紛れるように、ゼストはその場から姿を消したのだった。






さて、吹き飛ばされた方のアインスはと言うと…

「凄まじい一撃だったが……我ながら頑丈な身体だな。」

お姉ちゃん凄いですぅ…

瓦礫や巻き込んだガジェットの残骸に埋もれながらも無傷だった。
まぁ、多少埃や土煙で汚れてはいるものの外傷はゼロである。

「とは言え、この隙に逃げられてしまっただろうな……仕方ないな。
 ツヴァイ、融合状態は維持できるな?アイツには逃げられたが、まだガジェットも多い――殲滅するぞ。」

はいです!

だが、ゼストが逃げたであろうことは容易に想像がつくし、実際この場からは既に離脱している。
なので、すぐさま思考を切り替えて、ガジェットの殲滅に目的をシフト。

融合状態のリインフォース姉妹の前にはガジェットなど塵芥にもならないだろう。


そして、アインスが戦線に復帰したのと略同時に、なのはとティアナも到着し、空の戦いは一気に六課有利な状況へと傾いて行った。








――――――








「ま〜〜た、お前かよパイナップル頭!逃げ帰ったと思ったらまだ居やがったのか。」

ノーヴェとクロウはスバルと合流し、ギンガの捜索を行っていたのだが、辿り着いたある場所で、再びウェンディと対峙していた。
又しても戦うつもり尚だろうか?

だとしたら愚か極まりない。
クロウとノーヴェに終始押されていたのに、更にそこにスバルまで加わったこの布陣には如何足掻いても勝つ事など不可能だろう。

だが、ウェンディは口元に笑みを浮かべてノーヴェを見ている。

「相変わらず口が悪いっすねぇ…てかパイナップルは酷いっすよ?妹に対してあんまりな一言じゃねぇっすか?」

「「「は?」」」

そして発せられたのは聞き捨てならない一言。

聞き間違いでなければ『妹』と、確かにそう言ったのだ。

「お前脳味噌煮えたか?アタシに妹なんざいねぇよアホ。てかお前が妹とか願い下げだアホンダラ。」

「あらら、こりゃ本当に知らない?あはははは!此れは傑作っすね!!」

即座にノーヴェがあり得ないと切って捨てるが、それを聞いたウェンディは心底可笑しいとばかりに笑い声を上げる。
言った何がそんなに可笑しいのだろうか?

「アンタ、自分が何者か知らねぇんすか?…いや、アンタとタイプゼロが戦闘機人だって事は知ってるッスよね?
 でも、自分の名前に疑問を持たなかったんすか――9番目(ノーヴェ)』。」

「!!」

「気付いたみたいっすね?そう、アンタはアタシ等と同じ戦闘機人のナンバーズ。
 ドクターによって偽りの『タイプゼロ・サード』として、他のタイプゼロと共に管理局に保護させた、スパイなんすよ!」

「ノーヴェが…そんなウソでしょ!?」

告げられたのは、トンデモナイ事だった。
勿論ウェンディが口から出まかせを言っている可能性はゼロではないが……確かに『ノーヴェ』は『9番目』を意味する単語でもある。
そしてウェンディは『11番目』を意味する言葉だ。

其れを踏まえると、決して口からの出まかせと断する事も出来ないのである。

「アタシがテメェ等の仲間だと?……馬鹿言ってんじゃねぇ!!
 アタシはナカジマ家の三女のノーヴェ・ナカジマだ!ナンバーズの9番目なんかじゃねえ!!
 大体にして、無理があんだろうが!ガキの頃に保護させてスパイってアホか!!
 アタシ自身が、スパイって事を認識してなきゃ意味がねぇだろうが!!」

だが、ノーヴェは動じない。
ふざけるなとばかりに、ウェンディの言った事を一蹴!

それでもまだウェンディは余裕だ。

「其れはそうっすよ…そうなるようにしてあるんすから。
 でも、此れを喰らわせればアンタは自分が何者かを思い出してこっちに戻ってくるんすよ?
 まぁ、戻ってきてもらうッス!魔法カード『精神操作』!!」

その理由はスカリエッティより渡された1枚の魔法カードだった。
精神操作――相手モンスター1体のコントロールを得る強力な魔法カードの1枚だ。

此れでノーヴェを自軍に引き入れるつもりなのだろう。

そしてそれの発動と同時に…

「ぐ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「「ノーヴェ!!」」


ノーヴェが苦しみ始めた。
カードの発動と同時に、強制的に流れ込んできているのだ――スカリエッティに作られたと言う記憶が。
タイプゼロ・サードとして放置される際に消された記憶が。

「うわぁぁぁぁぁ!」

「ちぃ、させるかよ!!トラップ発動『洗脳解除』!!」

だが、苦しむノーヴェを只見ているクロウではない。
モンスターのコントロール奪取の効果を打ち消すトラップで、精神操作を打ち消そうとする。

更に…

「負けんじゃねぇノーヴェ!!
 オメェ、さっき自分で言ってだろうが、自分はナカジマ家の3女でナンバーズなんかじぇねぇって!!
 そうだぜ、お前はナカジマ家の3女で、そんで俺達機動六課の仲間だろ!!敵のスパイである筈がねぇ!!」

「!!…あ、アニキ…」

ノーヴェの身体を抱き、必死に呼びかける。
まるで、兄が、怖がって震えている妹を元気付けるように。

その効果は絶大だった。
洗脳解除が精神操作を打ち消したのみならず、ノーヴェへの記憶発掘も途中で止まったのだ。

尤も、あまりの衝撃に、ノーヴェは精神操作の効果が消えると同時に気を失ってしまったが。


さて、こうなると残ったクロウとスバルは黙って居られない。
大事な妹分を傷つけられたクロウ、そして妹を傷つけらたスバル……黙って居る筈がない。

「この赤パイン…覚悟しやがれ!今度は手加減しねぇからな!!」

「ノーヴェを苦しませた事は…許さない!!」

明らかな怒り。
流石にこれにはウェンディも冷や汗たらりだが…

「退くぞ、ウェンディ――セカンドとノーヴェは無理そうだが、少なくとも1体は確保できた。」

「チンク姉!!」

新たに現れた小柄な眼帯の少女が撤退を言う。
間違いなく戦闘機人のナンバーズだ。

だが、確保出来たとは一体何のことか?
何やらアクリル製の箱のようなものを持っているが……

「え……?」

その中身を確認したスバルは思考が止まってしまった。
なぜならそこに入ってたのは――

「ギン姉…!」

破壊され、殆ど頭部だけとなった、姉であるギンガであったのだから。

「テメェ等ギンガに何しやがった!!」

クロウもまた、予想外のとんでもない事態に噛みつく。
ナカジマ3姉妹が戦闘機人であると言う事は、マリーから聞き及んでいた。

だとするならば、あの状態でもギンガは死んではいないだろう。
だが、それとこれは別――仲間に対してのこの仕打ちは見逃せないのだ。

「…目的のためだ――死んではいないから安心しろ。
 それに、ドクターがすぐに直してくれる――ナンバーズの13番目としてな…」

「ふざけんなよテメェ………って、おいスバル!如何したスバル、確りしろ!!」

新たに現れたナンバーズ――チンクの物言いに沸騰しかけるクロウだが、そこで隣に居るスバルの異変に気が付いた。
身体を丸め、小刻みに震えている。

ただそれだけならば、あまりの事態に足が竦んだと思うだろう。
だが、そうではない。

震えているのに、ドンドンスバルから感じる魔力が大きくなっているのだ。

「う…う…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


――ドバガァアァァン!!!


次の瞬間、スバルの咆哮と共にその魔力が弾け飛び、室内がスバルの魔力光で空色に染まる。
そして其れの発生源であるスバルは、逆巻く魔力でバリアジャケットが翻り、鉢巻も激しく棚引いている。

何よりもスバル自身が大きく変化している、
今までは青だった双眸が、金色に染まっているのだ。

「返せよ…」

其の金の双眸に映るのは、ギンガをボロボロにした『敵』のみ。
排除し、破壊すべきと認識した相手のみだ。

「ギン姉を――返せよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「!!待てスバル!!」

クロウの制止も聞かず、スバルは特攻!

如何やらウェンディとチンクは、目的を果たしながらも、スバルの中で眠っていた獅子を目覚めさせてしまったようである。

少なくともこの2人は仮に逃げおおせても、全くの無事とは行かない筈だ…








――――――








その頃、ディヴァインを退けた遊星達は、六課に向かっていた。
本来ならば、外で戦闘中のなのは達に合流するべきなのだが、遊星もはやても妙な胸騒ぎを感じたのだ。


『六課に何か良くないことが起きる』と言う漠然とした胸騒ぎが。


だからこそ、其処に向かっているのだ。

「スピードを上げるぞはやて!確りつかまっていてくれ!」

「了解や!いっそのことアクセルで突っ込んでもかまへん!!」

可成り無茶を言っているようにも聞こえるが、其れもまた仕方ない。
それだけ、凄まじい、嫌な胸騒ぎなのだ――これが杞憂であってほしいと願ってしまう程のレベルのだ。



『無事であってくれ!』



ただ、其れだけを願って、遊星とはやては六課に向かっていた。








その六課では、新たに現れた雲魔物を相手取り、しかしザフィーラはまだまだ余裕だった。
シンクロしたシャマルも後方から支援してくれるので、掴み所のない雲魔物が相手でも問題は無いようだ。


だが、それを遠くから眺めているアモンはそうではない。
雲魔物を投入しても、六課を攻めきれない事に、少しばかり相手の力量の高さに感心し、同時に更なる戦力の投入を考えていた。

「雲魔物がまるで通じないとは…恐ろしいな。
 ならば、抗う事すら出来ない力と言うものを見せてやろう!現れろ『封印の使者』『封印の巫女』『封印の祈祷師』!!!」
封印の使者:DEF1000
封印の巫女:DEF1000
封印の祈祷師:DEF1000



デッキを交換し、新たなモンスターを3体呼び出す。


傍目にはただデッキを交換したようにしかみえない。

だが、もしもこの場に本物のデュエリストが居たら気付いたかもしれない。
新たなアモンのデッキから『万物を凌駕する力』が、溢れ出していたと言う事に――

















 To Be Continued… 






 *登場カード補足