「装備魔法『進化する人類』をボルト・ヘッジホッグに装備。
此れにより、ボルト・ヘッジホッグの攻撃力は2400になる。」
ボルト・ヘッジホッグ:ATK800→2400
「レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング。
集いし星が、新たな力を呼び起こす!光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!!」
『ふぅぅぅ…ハァ!!』
ジャンク・ウォリアー:ATK2300
公開意見陳述会前日、六課の訓練場の片隅では遊星がレーシャとデュエルを行っていた。
子供も暇だろうからと、娯楽の手段としてデュエルを教えているのだ。
つまりこのデュエルは模擬戦。
使うデッキも、互いに初心者用のスターターデッキだ。
「ジャンク・ウォリアーはシンクロ召喚成立時、俺の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計を自身に加える!
此れにより、ボルト・ヘッジホッグの攻撃力2400がジャンク・ウォリアーに上乗せされる。『パワー・オブ・フェローズ』!」
『ヌオォォォォ!!!』
ジャンク・ウォリアー:ATK2300→4700
「行くぞレーシャ!ジャンク・ウォリアーで、Xセイバー ウルベルムに攻撃!『スクラップフィスト』!!」
『ダァァァァ!!』
――ドガァァァン!!
「きゃあぁ!!」
レーシャ:LP2000→0
だが、結果は遊星の勝利。
レーシャにとって、途轍もなく高い壁が現れた瞬間でもあった。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス96
『THE PROPHECY』
「あぁ〜〜負けちゃった…パパ、強すぎ!」
「模擬戦でも手を抜くのは失礼だからな。…だが、楽しめただろ?」
「うん!すっごく楽しかった!」
手加減して勝たせるよりは、全力で相手をするほうが伝わる事は多い。
事実、負けたもののレーシャの表情は本当にこのデュエルを楽しんだ者の顔だから。
「物事は楽しむ事が一番だ。
楽しんだ上で結果を出す…ソレが大事な事だ、覚えておいてくれ。」
「「は〜〜い♪」」
遊星の言葉は2人の少女にキッチリ伝わったようだ。
まぁ、此れは遊星自身が幼少の頃にマーサから教わった事だ。
ソレが世代と超えて受け継がれていくのは大切な事である。
「それじゃあ今度は私と!」
「あぁ、構わない…楽しもうか、ヴィヴィオ!」
「はい!」
「行くぞ!」
「「デュエル!!」」
遊星:LP4000
ヴィヴィオ:LP4000
取り敢えずレーシャとヴィヴィオもデュエルの面白さは分ってくれる事だろう。
――――――
「ママとパパお出掛け?お仕事?」
「そうなんよ〜〜…ごめんな〜、大事なお仕事やから外す事は出来へんのや。」
「仕事が終ったら直ぐに戻ってくるから、ソレまで待っていてくれ。」
あっという間に時間は夜。
公開意見陳述会の会場警備に向かうため、六課メンバーは夜勤出動である。
それがレーシャとヴィヴィオには少し心細いようだ。
「ママ…」
「ゴメンねヴィヴィオ、ちゃんと戻ってくるから。」
「うん!気をつけてねママ!」
「はい、了解です♪」
「気をつけて行ってらっしゃい、ママ、パパ!」
「あぁ。戻ってきたら、またデュエルをするか?」
「ホンなら今度は私も混ぜてもらおかなぁ?」
「うん!約束♪」
「あぁ、約束だ。」
「約束や♪」
「……ふっつーに家族だなあいつ等…」
「ですよね…」
「だよな…」
その光景は、娘が仕事に出かける親をお見送りするのとマッタク一緒。
ソレがまるで違和感が無い辺り、ドンだけ馴染んでいるかが良く分かると言うものだろう。
クロウの呟きに、スバルとノーヴェが納得したのも当然かもしれない。
遊星とはやては、戻ってきたらデュエルする約束までしている。
知らない人が見たら、ソレは間違いなく『家族』であった。
「それじゃあ行って来る。」
「行って来るな〜〜♪」
「行ってきます♪」
「「いってらっしゃ〜〜い♪」」
「…俺らも行くか。」
「そうしようぜ…」
「なんか、重要任務への出動とは思えないですよね…」
思うことに差があるようだが、取り敢えず六課メンバーは会場に向けて出動!
何も起こらないことを…カリムの予言が現実にならないことを願って…
――――――
「えぇ、顔のソレって前科者の証だったんですか!?」
「おう、『マーカー』つってな。
今は旧市街地になってる『サテライト』って場所は所謂貧困街でよ、困ってるガキ共が大勢居たんだ。
そいつ等を何とかしようと、セキュリティの押収品から食い物やらカードなんかを頂戴する為に、態と捕まってたらこんな顔になっちまった。」
公開意見陳述会当日、警備中にクロウとティアナは適当に雑談をしていた。
その際に、クロウの顔のマーカーに話が移ったようだ。
気にはなっていたが、今まで聞く機会やら何やらが無かったのだろう。
「子供達の為に……義賊って言うやつですか?」
「まぁ、そんなカッコイイもんじゃねえって。
俺はガキ共を放っておけなかっただけだ、そんな事の他に『デュエルギャング』なんてのもやってたしな。」
マーカーの意味を知って驚いたティアナだが、それでもクロウを色眼鏡で見る事は無かった。
クロウの人となりは此れまでの事でよく知っている。
そのクロウが意味も無くマーカーの刻印をされる様な事をする筈がないと、そう思ったからだ。
事実、ソレは当たりだったのだが。
「其れに、シティとサテライトが統一された後はマーカーは殆ど意味無くなってるしな。
まぁ、コイツはアレだな、一生消えねぇフェイスペイントって所だ!
と、そろそろ始まるみてぇだな…」
「はい…!」
雑談をしているとあっという間に時間は過ぎる。
そろそろ陳述会が始まる時間だ。
雑談時の雰囲気からがらりと変わり、クロウとティアナは意識を鋭くする。
いや、この2人のみならず、警備に当たっている全員がそうだろう。
そうした中で、会場の様子を知るための小型モニターには陳述会の映像が流れている。
様々な人物が意見を陳述する中、新たに現れた1人の男が、なにやら強硬な発言をしている。
内容は管理協の武力強化と言うのが一番ピッタリだろうか?
何れにせよ余り係わり合いになりたくない人物である……特にクロウ的には。
「んだよこのモアイ像みてぇなオッサンは…ちょっとネジ跳んでんじゃねぇか?」
「い、言いますね……確かこの人はレジアス・ゲイズ中将、陸のトップだったかと。」
「ま、確かに偉そうではあるけどな。」
訂正、クロウの中ではこの男――レジアスは絶対相容れない存在と定義されたようだ。
恐らくソレは、別の場所で警備に当たっている遊星も同じであろう。
――――――
陳述会が始まって数時間。
予定ではそろそろ陳述会も終る時間である。
「最後まで気は抜けへんけど、なんやこのまま何も無く終りそうな雰囲気やな?」
「何も無いに越した事はないさ。
尤も、陳述会が終って、会場の人間がゼロになるまでは油断は禁物だがな。」
「ソレはそうやね。」
今のところ異常は報告されていない。
会場周辺に不審な影も無い。
このまま無事に終わるなら其れに越した事はないが…
――ドガァァァァァァン!!!!
「「!!!」」
突然の爆発音!
ソレも会場内の何かが故障して起きたものではなく、明らかに『攻撃』であるものだ。
「襲撃!?そんな…異常は無かったはずや!!」
「ソレもこのタイミングで………まさか!!!」
確かに異常は何も無かった…が、ソレが逆に遊星に最も恐ろしい可能性を示唆させる事になった。
「既に外部から此方の管制システムが乗っ取られていたのか!?
ソレに一切の警報が作動していないこの状況…俺達が警備に就くよりも速く潜入していた奴が居るのか…!」
「なん…やと!?」
完全に裏を掻かれた状況だ。
そして最悪だったのは、今回六課はあくまで『会場警備』しか担当できなかったと言う点だ。
そうでなければ、遊星が会場全体のセキュリティを事前にチェックしてハッキングやら何やらには気付けた筈だ。
だが、今回はソレができなかった。
そっちの方面は別の部隊が引き受けていたから。
そしてこの奇襲の効果は絶大だ。
「アカン…此れは内部に閉じ込められてしもうた…!」
「目的は戦力の分散か…」
会場内部を担当していた、はやてと遊星、そしてなのはとフェイトとシグナムが閉じ込められる結果になったのだ。
勿論この程度ならば総攻撃で脱出する事は可能だが、それでもタイムラグが生まれるのは避けられない。
何より、外の状況が把握できないのでは脱出のための攻撃すら危険が伴うだろう。
「先ずは皆と合流したほうがいい。
アリシアが言うには、フォワードの子達がこっちに向かってるらしいから。」
「そやな…下手に魔力消費して脱出しても、その後の戦闘がきつくなるだけや。
此処は地道に脱出するのが吉やろね。」
なので、地道に外に向かう事に。
フォワード陣も奮闘してくれるなら、脱出後に巻き返しを図る事は難しくはない。
遊星達は各々デバイスを起動し、外に向かって進み始めた。
――――――
その外では、アインスが槍状のデバイスを携えた男と対峙していた。
「よもや今の時代に、古代ベルカの技を使う騎士に出会えるとはな…」
「お前は…」
「リインフォース・アインス……嘗て『闇の書』と呼ばれていた魔導書の管制融合騎だった者だ。」
「!!!」
アインスの正体に、男――ゼストは僅かに驚くもソレを表に出しはしない。
だが、それでもアインスの凄まじい力は其の身で感じている事だろう。
そしてソレはアインスも同じ。
ゼストの『真の強者』たる雰囲気は感じ取っている。
「古代ベルカの本物の融合騎か……よもやアギト以外に居るとはな…」
「マジかよ…」
「尤も、私は融合騎としては既にスクラップだ…融合機能は完全に破壊されていて、特別な一手を使わないと融合は出来ん。
……まぁ、そんな事は如何でも良いことだ……此処から先は、真に勝手ながら通行止めで迂回路も無い…帰ってもらおうか?」
「ソレは出来ん話だ…!」
――ガキィィン!!
ソレを合図に戦闘開始!
アインスのシューティングハートと、ゼストの槍がぶつかり激しい火花を散らす。
籠手のアインスと槍のゼスト…クロスレンジにおいての得意間合いが真逆の2人ゆえ、互いに自分に有利な間合いをとろうとする。
出来るだけ近付きたいアインスと、可能な限り広い間合いで戦いたいゼスト。
互いに遠距離攻撃も出来るが、得意なのは矢張り近接戦なのだ。
「ちぃ、旦那!!」
「おぉっと、貴女の相手は私ですよ!」
「な、邪魔すんなバッテンチビ!!」
「む、チビじゃなくてリインフォース・ツヴァイです!!」
ゼストの助太刀に向かおうとした小さな少女――アギトの前に現れたのはツヴァイ。
姉の戦いの邪魔はさせないと言う事だろう。
「てんめぇ…派手に燃やすぞコラ!!」
「燃やせるものなら燃やしてみろです!」
こっちはこっちで小さいながらも一流クラスの戦闘が開始されたようである。
ソレとは別に、フォワード陣は遊星達と合流すべく、会場内部へと向かっていた。
ガジェットは面倒だが、其処はクロウがBFの物量で略殲滅している。
だが…
「待ちくたびれたっすよマッタク。」
其処に現れたのは真紅の髪の少女。
纏っているボディスーツから察するに、戦闘機人で間違いないだろう。
「つーかアタシ1人でなんて無理じゃねっすか?タイプゼロ3機を回収しろとかドンだけ無理ゲーっすか?
アンタ等もそう思うでしょ?タイプゼロ・セカンドとサード?」
「こっちに振らないでよ…」
「馬鹿かコイツ…つーか、アタシ等の事は知ってるわけだ…」
どこかフレンドリーと言うか気の抜ける相手だが、どうやら目的はスバルとノーヴェであるようだ。
タイプゼロが何を意味するかは不明だが。
「そうなんっスよ〜〜〜けど、しくじるとアレなんで…大人しく捕まってくれねッスかね?」
「捕まるわけねぇだろアホ。」
「っスヨね〜〜……まぁ、そんじゃ……ちと痛い目みてもらうっすよ!!」
「痛い目みるのはオメェのほうだアホ垂れ!!アニキ!!」
「おうよ!!ノーヴェに銀盾のミストラルをチューニング!
黒き衝撃よ、大地を砕いて烈風を吹き荒らせ!シンクロ召喚、駆け抜けろ『BFW−蹴撃のノーヴェ』!!」
「覚悟しろよ、パイナップル頭!」
BFW−襲撃のノーヴェ:ATK2300
戦闘は避けられない。
だが、ソレも即刻クロウがノーヴェをシンクロ化することで状況を有利にする。
「スバル、ティアナ、キャロ、エリオ!此処はアタシとアニキに任せて先に行け!」
「1人でなんて無謀も良いとこだぜ…俺達を止められると思うなよ!!」
その場を引き受け、残りを遊星達の元へ向かわせる。
だが、ソレを追わないところをみると、この少女と言うか敵方にはマダ何かあるのだろう。
それでも構わない。
合流さえ出来ればそこで全てに決着がつくのだから。
「此れが噂のシンクロッすか…その力、見せてもらうっすよ!!」
「特と味わえよ!!」
こっちでも戦闘開始である。
――――――
場所は変わって機動六課。
「む…」
「どうしたのザフィーラ?」
「招かれざる客が来たようだ…」
「!?…間違いないの?」
「あぁ、極薄いが、紛れもない闘気を感じた…」
此方にも呼んでもいない客が現れたらしい。
ソレを敏感に感じ取ったザフィーラは流石だろう。
「シャマル、防護結界を。敵の迎撃には、私が出る!!」
「…分ったわ、けど無茶しないで。」
「ふ…盾の守護獣ザフィーラ、護る為のこの拳は簡単には砕けぬ…!」
――まして、幼き子供が2人も居るこの場を、この状況において私以外に誰が護るのか…守護獣としての勤め、果たして見せよう!
機動六課でもまた、加減不要のガチンコバトルが始まろうとしていた…
To Be Continued… 
*登場カード補足 |