「スピードスペル『Sp−シンクロン・チャージ』
  この効果で、デッキから『マッハ・シンクロン』『ミラージュ・シンクロン』を特殊召喚する!」
 マッハ・シンクロン:DEF0
 ミラージュ・シンクロン:ATK1200



 ある日の六課の訓練風景。
 本日は遊星と、スバル、ティアナが組み、なのはとヴィータとギンガが組んだチームと模擬戦であるらしい。

 意外にもこれでバランスが取れているのか戦いは略互角。
 実力的には劣るスバルとティアナも、遊星のサポートで巧く立ち回れている。

 勿論それだけではなく、ティアナは幻術で遊星のモンスターをコピーし、スバルもシューティングアーツを駆使して戦っている。
 新人達も最近は成長が著しい。

 「行くぞスバル、ティアナ!!スバルにマッハ・シンクロンを、ティアナにミラージュ・シンクロンをチューニング!!」

 「「光射す道となれ!!」」

 「シンクロ召喚!叩き割れ『光速拳−スバル』!貫け『幻惑師−ティアナ』!!」

 その2人を遊星がシンクロ進化!
 この模擬戦もいよいよ佳境に入ってきたようだ。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス95
 『嵐の前の静けさ…?』











 「うわぁ…実際に自分がなると凄いね…シンクロって!」
 光速拳−スバル:ATK2200


 「魔力の底上げなんてレベルじゃないわね…」
 幻惑師−ティアナ:ATK2200


 シンクロ化によって力を増した2人だが、ノーヴェがシンクロした時の様に劇的な外見上の変化はない。
 精々、纏う魔力に風と光が混じったくらいだ。

 恐らくはシンクロはしたものの、遊星のチューナーとは『シンクロ可能』レベルで相性が極端に良い訳ではないのだろう。
 だが、それでもこの強化は心強い事に変わりはない。


 「一気に行くぞ2人とも!スピードスペル『Sp−The Battle Of Ace』
  これでスバルとティアナの攻撃力を、俺のスピードカウンターの数×200ポイントアップする!
  俺のスピードカウンターは12!よって攻撃力は2400ポイントアップする!!」


 「此れなら行けるかも…!」
 光速拳−スバル:ATK2200→4600


 「初勝利…出来るかな…?」
 幻惑師−ティアナ:ATK2200→4600


 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300→5700


 遊星のモンスターも含め、全てが一気にパワーアップ。
 此れならば押し切ることが出来るかもしれない。


 「やってくれるぜ…流石は遊星。」

 「そうだね…けど負けない!!」

 「はい!そうそう負けはしません!」

 だからと言って、なのは達だって怯まない。
 相手が強くなったのならば、ソレには全力で応えるだけなのだ。


 訓練場を迸る魔力。
 いや〜な予感を感じ取ったクロウが『BF』のシンクロと『ブラックフェザー・ドラゴン』を呼び出して起こるであろう衝撃に備えたのは言うまでもない。

 「アニキ…」

 「「クロウ兄さん…」」

 「何も言うな、そんで聞くな……取り敢えず、今使える最大級の防御魔法張れ!
  絶対来るぞ、模擬戦とは思えねぇのがドカンと!!」

 戦闘不参加のメンバーに、防御を張るように言うのだって忘れない。
 用心してし過ぎるという事はないだろう。


 「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動!
  …5枚全てがチューナー!よって5回の攻撃が可能になる!『スターダスト・ミラージュ』!!」


 ――ヴン…


 フィールドではシューティング・スターが5体に分裂し、いよいよと言う所。

 「行くぞなのは!シューティング・スターで攻撃!!」

 「受けて立つよ遊星さん!ハイペリオンスマッシャー!!!」


 「今日こそ勝たせてもらうよギン姉!!」

 「そう簡単には負けないわよ、スバル?」


 「チャージ完了…ファントムブレイザー!!」

 「派手な一発撃ってきやがったな!アイゼン!!」

 『Ja. Schwalbefliegen Claymore.』


 ぶつかる星龍と桜色の砲撃。
 交錯する空色と蒼色の魔力道。
 激突する砲撃と炸裂鉄球。

 全てが超一級!!
 だが、超一級クラスの攻撃の交叉が3つも同時に起こったらどうなるか?

 言うまでもない、力と力の激突点でスパークが起こり…閃光と爆音炸裂!!
 クロウの予想と言うか心配は現実となってしまった。

 発生した衝撃は、戦闘不参加組にも及ぶが防御魔法を張っていたので何とか持ち堪えているようだ。



 「…施設の強化工事してなかったら、これで木端微塵に吹き飛んでるやろね…」

 「一切否定が出来ませんよ、我が主…」

 「皆さん凄いですぅ…」

 此方の夜天主従コンビが意外と余裕なのは、アインスの反則クラスの防御があるが故だろう。
 因みにツヴァイはアインスの肩の上である。

 「お姉ちゃんもツヴァイとお揃いの髪留め付けますか?」

 「良いかもしれないな。色は任せるよ。」

 「はいです♪」

 そして微妙に現実逃避もしていた。
 気持ちは分らないでもない。


 「…エリオ、模擬戦てのは訓練施設がぶっ飛ぶレベルでやるモンだったか?」

 「いえ、少なくとも『あくまでも実戦形式の訓練』だったと思いますけど…」

 「だよな…俺の認識間違いじゃねぇよな…」

 未だ晴れない土煙を前にしてはこう思うのも無理はない。
 まぁ、ソレも少しずつ晴れてきてはいる。



 そしてソレが全て晴れたとき、凄まじい攻防の全容が明らかに!
 なんと言うか凄い事になっている。

 先ず全員がバリアジャケットが損傷。
 そして、腕や顔に掠り傷と土埃の汚れ。

 更にスバルとギンガは互いの拳が相手の顔面ギリギリでの寸止め。

 状況的に見て此れは引き分けだろう――大凡そうとは思えない凄まじい攻撃だったが。


 「ふ、素晴らしい戦いだったな。…ホーガン、今度は私達の番だな?」

 「いぃ!?マジかよ、この戦闘狂!…つっても訓練中だからな…しょうがねえ!
  行くぜ、ノーヴェ、エリオ、キャロ!シグナムとフェイト相手でも勝ちに行くぜ!!」

 此れだけの模擬戦をしてもマダ訓練は終らない。
 続いてはクロウ率いる新人組がフェイトとシグナム相手に模擬戦だ。

 今日も今日とて六課の訓練はハードだが、しかし実の有る物であった。


 …尤も何も知らない新人隊員がイキナリ此れを受けたらトラウマ物だろうが…








 ――――――








 「「「後見人?」」」

 「「こーけん人て何?」」

 本日の訓練も一段落した午後の一時、フェイトとアリシアは、遊星達に保護した2人の少女の『後見人』の話を切り出した。

 「うん。ヴィヴィオには私が、レーシャにはアリシアが後見人になろうと思うんだ。」

 「保護責任者だけじゃなくて、後見人も居た方が、仮に養子縁組とかする場合に面倒がないからね〜〜。」

 既にアリシアはエリオとキャロの後見人にもなっているが、複数の人物の後見人になっていけないわけでもない。
 其れに、この2人もこんな小さな子供を放ってはおけないのだ。

 因みにフェイトはエリオとキャロの保護責任者である。


 「フェイトちゃんとアリシアちゃんが後見人やったら安心できるな〜?
  私はかまへんけど遊星となのはちゃんはドナイや?」

 「俺も異論はない。」

 「私も無いけど…ヴィヴィオ達は如何かな?」

 この2人が後見人と言うならば異議はないが、レーシャとヴィヴィオは如何であろうか?
 先日の『保護責任者』はアリシアが巧く説明してくれたが、『後見人』とは又難しい。

 事実、レーシャもヴィヴィオも頭に『?』が浮かんでいるようだ。

 「「こーけん人…??」」

 「つまり、フェイトがヴィヴィオの、アリシアがレーシャの…そうだな、『2人目の母親』って言う所だな。」

 ソレを巧くまとめたのは流石の遊星。
 先日のアリシアの説明からヒントを得た見事な説明と言えるだろう。

 「アリシアママ?」

 「フェイトママ?」


 「あ〜〜…そうと言えなくもないけど…此れはこれで良いかな?」

 「良いんじゃないかな?そっちの方が2人も分りやすいと思うし。」

 「なら決定!は〜〜い、アリシアママだよ〜〜♪」

 そしてアッサリと適応!この姉妹凄すぎである。
 だが、この遊星の説明に苦い顔をして居る人物が1人…はやてだ。


 ――アリシアちゃんが後見人なんはえぇけど、『ママ』て…私の立場どうなんねん?
    うぅ、アリシアちゃんの方がスタイルえぇし…


 乙女心は複雑である。
 だが、ソレを見逃すアリシアではない!


 「はやて〜〜。…大丈夫、遊星は盗らないから……遊星の嫁ははやてしか居ないでしょ?

 「なぁ!?///

 はやてにだけ聞こえるようにバッチリと爆弾を投下してくれた。
 今日も今日とてアリシアクオリティは全力全開であるらしい。

 「…最近、紅くなって蹲る事が多いが、大丈夫かはやて?」

 「だ、大丈夫や…ちょお刺激が強すぎるだけや…色々とな…」

 「なら良いが……無理はダメだぞ?」

 「そうそう、夫婦は元気で仲良くね♪」

 「だからアリシア、俺とはやてはマダ夫婦じゃないぞ?」



 ――ボンッ!



 「〜〜〜〜///

 そしてトドメは遊星の無意識発言であった。
 だが、こんな発言が無意識で出てくる辺り、遊星にもその気はあるのだろう――多分。


 「はやてママ、大丈夫?」

 「!!…大丈夫やレーシャ。…心配してくれたんか?レーシャはえぇ子やなぁ♪」

 しかし、遊星とはやてにレーシャが加わると本当に家族に見える。
 この3人が『本当の家族』になる未来は、若しかしたら現実のものであるのかもしれない。








 ――――――








 聖王教会は、ミッドチルダでも権威のある教会だ。
 また、機動六課を支援する機関の1つでもある。

 その実質トップである『カリム・グラシア』はなにやら難しい顔で1枚の紙切れを見つめていた。

 「如何なされました、騎士カリム?」

 「あぁ、シャッハ…ちょっとね。」

 其れに声をかけたのは、先日レーシャとヴィヴィオに武器を向けたシャッハ・ヌエラ。
 彼女は聖王教会のシスターでもあるのだ。


 「ソレは前に出た予言ですか?……地上本部の崩壊を示唆したという…」

 「えぇ…更に詳しく占ってみたのよ。
  そしたら、此れが現実になる場合、ソレは今度の『公開意見陳述会』である可能性が高いわ。」

 「!!」

 カリムが難しい顔をしていた理由はトンでもない事だった。
 カリムは『予言騎士』とも言われるほどの高い精度の予言能力を有している。
 ソレが見通した『地上本部崩壊』の未来とはなんとも恐ろしいものある。


 「公開意見陳述会って…それはもう直ぐじゃないですか!」

 「えぇ……私もこれほど自分の予言が外れて欲しいと思ったことはないわ。
  シャッハ、直ぐに機動六課に連絡をとって、当日の警備を要請して。」

 「わ、分りました!!」

 ソレが起こる可能性が有る以上、黙っているわけにも行かない。
 シャッハに命じて、直ぐに機動六課に警備要請を行う辺り、カリム自身、此れが現実になると感じて居るのだろう。



 だが、シャッハが部屋を出て行ったのを確認するとカリムは別の紙切れに目を落とした。
 実はカリムが見ていた予言は1つではなかったのだ。

 そして、先程の予言以上に、此方の方がカリムを悩ませていた。

 「こっちの予言…此れはまさか…」


 その紙にはこう記されていた…



 ――法の番人は怒りの劫火で焼き払われ、聖王と大魔導師は無限の欲望の手に落ちる。
    炎を逃れた者は死力を尽くして奪われた聖王と大魔導師を奪還せんとする。
    だが、欲望の業は深く、『ゆりかご』を太古の眠りから呼び覚ます…



 「聖王…矢張り、ヴィヴィオちゃんは…………!」

 地上本部崩壊以上に絶望的な状況とも取れるこの予言。
 そして其処に記された聖王と大魔導師…余りにもソレの正体は恐ろしいものであるようだ。


 「お願い…今回だけは予言が外れて…。もし此れが現実になったらその時は…!!
















  管理局どころか、ミッドチルダそのものが壊滅状態に陥ってしまうわ…!」



 無慈悲なる予言の結果。



 平穏を焼き尽くす不穏は、静かに、しかし確実に近付いているようであった…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足