「「「いただきます!」」」

 はやてと遊星の部屋では只今朝餉の真っ最中。
 まぁ、何時もの光景だが少しばかり違うのは、遊星とはやての他に小さな少女が一緒にいる事。

 言うまでもなく保護したレーシャである。
 昨晩は所謂『川の字』で眠り、本日はそのまま起床。
 起床時に2人分の重量を受けていた遊星の右腕が痺れていたのは秘密だ。

 そして3人一緒に寝たとなれば、朝食だって3人一緒。


 「美味しーーー♪」

 「はやては料理の天才だからな、遠慮しないで沢山食べるといい。」

 「残さず食べてくれると作った方としても嬉しいからなぁ♪」

 「は〜い!……おかわり!」

 「はいは〜い♪」

 凄まじいまでのアットホームな空気が其処には存在していた。
 因みに本日の朝食は、雑穀米にホッケの開き、鰯の丸干しに味噌汁、胡瓜とキャベツの浅漬けであった。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス94
 穏やかな日の一幕











 時は静かに、そして穏やかに流れていた。

 先日の突然の襲撃が嘘と思えるくらいに。


 本日は六課も訓練は無し。
 先日の緊急出動を考えて、はやてが『休息』を理由に訓練を中止し、その代わりにデスクワークを言い渡していたのだ。

 そんな訳で、本日は昼間からはやては書類整理を行っている。
 勿論遊星も一緒なのは言うまでもない。(尤も遊星の方は、殆どが新型デバイスの企画書などだが。)
 序でにリインフォース姉妹も処理した書類を纏めたりしている。

 そしてなんと言うか速い!
 今や管理局内でも屈指の規模の部隊ともなると、関係書類も目茶目茶多い。
 ソレこそ比喩ではなく、本気で山のような書類が有るのだが……ソレが見る見るうちに減っている。

 左側に積まれた書類の山が凄まじい勢いで小さくなり、逆に右側に処理し終わった書類が積まれて行く。
 そして、その処理済みも随時封筒や箱に収められていく。
 リインフォース姉妹の動きも勿論素晴らしいが、はやてと遊星は次元が違う。
 一般人が見たら、今の2人は腕が6本あるように見えるだろう――ソレくらい光速で仕事をしているのだ。


 ――コンコン


 「はいどうぞ〜〜〜♪」

 「失礼します……あ、お邪魔だった?」

 其処に現れたのはなのはとテスタロッサ姉妹。
 そろそろ休憩時間なので、皆で一息入れようと思ったようだ。

 「いや、かまへんよ?そろそろ休憩やし…後3分で此れも片付くからなぁ♪」

 「俺の方は終った。半分手伝うよ。」

 「お、そら助かるわ。なら後1分やな♪」


 「え゛、あの量を2人でとは言え1分で処理するの!?」

 「アリシア、遊星とはやてに常識は通じないよ多分…昨日の戦闘時にはやての魔導師ランクがえらい事になったらしいし…

 「書類を処理する腕がアクセルシンクロしてる気がする…」


 取り敢えず、はやてと遊星は常識を世界の何処かに置いてきたらしい。


 そしてジャスト1分後!


 「「終了!」」

 宣言通り書類整理完全終了!
 合計数千枚の書類を、モノの数時間で処理するというのは矢張り凄まじい。

 「「「スゴ…」」」

 「流石は我が主と遊星。」
 「2人とも見事ですぅ…」

 称賛しかないのは当然だろう。

 まぁ、丁度いい感じに休憩時間になったので、お茶を淹れて一息。
 なのは達も思い思いにソファーやら椅子やらに腰掛けて休憩だ。


 そして休憩ともなれば雑談も当然。
 色々な話題が出るわ出るわ。

 遊星もその話について行くから凄いのだが。

 「あ、そうだ遊星さん、ちょっと見てほしい物があるの。」

 「俺に?」

 その雑談の最中、なのはが遊星に『見てほしい物』が有ると言う。
 ポケットから取り出したのは1枚のエクシーズモンスターのカード。

 「エクシーズモンスター…『No.101 S・H・Ark Knight』?」

 「昨日手に入れたカードなんだけど、なんか不思議な感じって言うか、強い力みたいなモノを感じたの。
  ハッキリとは分らないけど、でも只のカードじゃないような気がして、遊星さんに見てもらおうと思って。」

 「そうか。」

 なのはからカードを受け取り見てみるが、カードそのものにオカシイ点はない。
 素材も他のカードと同じ質の紙であるし偽造されたカードと言う訳でもなさそうだ。

 因みに『昨日手に入れた』の部分で微妙にテスタロッサ姉妹の顔が引き攣ったのはきっと見間違いではない。
 なにやら曰く付きのカードであるようだ…


 ソレは兎も角、カードを受け取った遊星の顔は真剣そのもの。
 覗き込むはやての顔も同様に真剣だ。

 「………強い力を秘めたカードだな。」

 「精霊カードとはちゃうけど、B+位の魔力は秘めてる感じやね。」

 詳細は不明ながら何かを感じ取る事は出来たらしい。

 「詳しくは分らないが、只のカードじゃない事は分る。使う場合には注意した方が良いかもしれないな。」

 「やっぱりそうなんだ…見せてよかった。」

 強い力であれば、ソレを使うのには注意と責任が必要になる。
 なのはもソレを分っているからこそ、態々遊星に相談したのだろう。

 「それにしても、なのはちゃんがデュエルをするとは知らなかったなぁ?」

 「実はやるんだ。とは言っても中々やる時間はないけどね。……遊星さん今度デュエルしてみる?」

 「あぁ、良いかもしれないな。」

 予想外のデュエリストの出現であった。


 「「デュエルするときはお願いだからT&Hでしてね!?」」

 テスタロッサ姉妹はなのはのデュエルにトラウマでも有るのだろうか?
 本当に昨日何があったのか気になる所である。



 ――コンコン



 「おろ?」

 其処に新たな来客。
 『どうぞ〜』と言うと扉が開き、入ってきたのは…

 「「レーシャ?」」

 「「「ヴィヴィオ!!」」」

 「来ちゃった♪」
 「えへへ…」


 昨日保護した2人の少女!
 そして…

 「スミマセン八神司令、皆さん……2人ともどうしても会いに行くって聞かなくて…」

 機動六課の寮母のアイナ・トライトン。
 流石に仕事場には連れて行けないので、レーシャとヴィヴィオは彼女に預けられていたのだが、如何やら会いたい衝動は抑えられなかったらしい。

 まぁ、アイナも頑張っていたし、レーシャとヴィヴィオも懐いてはいたのだが、遊星、はやて、なのは&テスタロッサ姉妹は別格なのだろう。


 「なはは…そらしゃーないなぁ?まぁ、私も遊星も自分の仕事は終ってるからかまへんよ?」

 「私達も自分のお仕事は終ってるから。」

 だからと言って咎める気はない。
 元々の仕事量が少なかったなのはとテスタロッサ姉妹は仕事を終えているし、遊星とはやてはたった今終らせたところだ。


 「スイマセン…」

 「良いさ。…それじゃあ皆出てきてくれ!
  『ロード・ランナー』『ボルト・ヘッジホッグ』『チューニング・サポーター』『異次元の精霊』!」

 遊星も子供達用のモンスターを召喚し楽しませる。
 楽しませるのだが、まぁお約束的に…

 『イネガァァ…?』

 可也大人しめにナマハゲ出撃。
 何でか出てきてしまうらしい。

 「!!」

 再びソレを見たレーシャは身体を硬直してしまうが…

 「大丈夫、怖くないで?」

 「バーサーカーもお前達と仲良くしたいだけなんだ。」

 はやてと遊星に言われてちょっとだけ頑張る事にした。
 何とか勇気を振り絞って近付けば…


 『がぁぁ…』


 ――なでなで


 ゴッツイ手で頭をなでてくれた。
 この狂戦士、恐ろしく子供好きで有るようだ。

 「あ…」

 『ワリィゴジャネェナァァ…』

 泣かれなかった事が嬉しかったのだろうか?
 バーサーカーはそのままレーシャを持ち上げて肩に乗せてご満悦。

 「あは、凄いね♪」

 『ガァァァァ♪』

 すっかり打ち解けたようだ。
 因みにヴィヴィオはまだ慣れないのかなのはにしがみ付いている…此方は時間がかかりそうである。


 「すっかり馴染んだみたいやな?レーシャの適応力は凄いものがあるな♪」

 「そうだな。……ところであの子達は如何するんだ?
  保護はしたが、親は居ないんだろう?何時までも六課で預かると言うわけにも行かないんじゃないか?」

 ソレとは別に、レーシャとヴィヴィオの今後は確かに大事だ。
 今は六課預かりとなっているが、何時までもそれでいる訳にも行かない。
 保護責任者をきちんと決めて、そちらに任せるのが筋なのだ。

 「それなんやけどな…私はレーシャの保護責任者になろか思ってるんや。」

 「はやてちゃんも?実は私もヴィヴィオの保護責任者になろうかと思ってんだ。」

 だが、はやてとなのはは既に自身が保護責任者になろうと決めていたらしい。
 更に!

 「奇遇だなはやて、俺もレーシャの保護責任者になろうかと思っていたんだ。」

 遊星もレーシャの保護責任者になる心算であったらしい。
 たった1晩だが、一緒に過ごした事で其処に家族愛に似た絆が出来上がったのだろう。

 2人が懐いている事も大きい。


 「保護責任者?」

 「ソレって何?」

 だが、幼い2人にはソレが何なのか理解できない。
 説明しようにも此れは少々難しいだろう。

 「え〜〜と…」

 「な、何て言うのかな…」

 「分り易く説明するのは難しいな…」

 遊星もはやてもなのはも如何説明したものやらと言った感じだ。
 しかし、こう言う時に頼りになる人物が居る!アリシアだ。

 「つまりね、なのはがヴィヴィオのママで、はやてと遊星はレーシャのママとパパになるって事♪」

 少々違う気もするが、ある意味では的を射た説明だ。

 「「そっか〜〜〜♪」」

 ちびっ子2人も納得だ。

 「私がヴィヴィオのママ…」

 「レーシャのママ?…それもえぇなぁ…」

 「パパって柄なのか、俺は…?」

 そして戸惑いつつも、大人3人も満更ではないようだ。

 「なのはママ〜♪」

 「はやてママ〜〜!遊星パパ〜〜♪」

 子供達2人はすっかりその気だ。
 そうなればこの3人が拒む事はない。

 「ママか…せやなぁ…うん!私はレーシャのママやで♪」

 「俺がレーシャの父親か…まぁ悪くないか。」

 「ヴィヴィオのママ…うん、そうだね。私がママだね♪」

 揃って了承である。


 だがしかし…

 「なのはさんは兎も角、遊星さんとはやてさんがレーシャちゃんのパパとママって…まるで夫婦ですね♪」

 アイナ・トライトン爆弾投下!
 それも核爆弾クラスのトンでもない物をだ。

 「んなぁ!?ふ、夫婦って…///

 「何を言ってるんだアイナ…まだ夫婦じゃないぞ?」

 「遊星!?」

 そして、更に遊星が爆弾追加!
 『まだ』って何だ、『まだ』って!何れは夫婦になると言うのか!?

 恐らく素で言ったのだろうが、不動遊星恐るべしである。

 「まだ?まだって事は何れ?遊星にもその気がある?……はにゃ〜〜///

 そしてはやて轟沈!
 しかしながらその顔は幸福に満ち溢れていた!


 「…お姉ちゃん、遊星さんは素で言ってますよね?」

 「ツヴァイ、遊星はあぁ言う奴なんだ、突っ込んだら負けだ。」

 「ですよね。」

 そして何気にリインフォース姉妹は容赦なかった。



 後日、はやてと遊星の連名での保護責任者申請となのはの保護責任者申請は無事受理される事になる。








 ――――――








 「おう、大丈夫かクロウ?」

 「ダイジョバねえよおやっさん。やっぱ俺にはデスクワークは向いてねぇ…」

 その頃クロウは、ナカジマ姉妹と共に、陸の『陸士108隊』で今回の襲撃者について調べていた。
 元々身体を動かさない仕事は不得手なクロウには相当にきつい仕事であったようだ。


 因みに、ナカジマ姉妹の父親であるゲンヤとは、なにやら意気投合し自然と『おやっさん』と呼んでいたりする。

 「しっかし戦闘機人たぁ、スカリエッティの野郎は頭オカシイだろ絶対!?
  俺の世界にも自身をサイボーグ化して生きてた奴がいたが、ソレは絶望の未来を防ぐためでテメェの欲望成就じゃなかった!
  テメェの欲望の為に命を兵器として使うなんざ反吐が出る所業だぜ!!」

 ソレはソレとして調べれば調べるほど本当に反吐が出るような事が次から次へとだ。
 襲撃者の戦闘機人『ナンバーズ』はスカリエッティの手駒である生体兵器。

 しかもその戦闘機人は、スバル達の母親であるクイントの死とも無関係ではないのだ。
 クロウの怒りが沸騰するのも無理はないだろう。

 「マジで頭にくるぜスカリエッティの野郎!やることがキタネェってんだ!!
  命はなんにだって1つだろうが!人の命を好き勝手弄る権利なんて誰にもねぇ!!!」

 「クロウ…その通りだ。こいつぁ見逃しちゃいけねぇ事だ。」

 「おうよ!おやっさん、アンタの妻の仇は、俺達で必ず討ってやるぜ!!
  異論はねぇだろ、スバル、ノーヴェ、ギンガ!!」

 「「「勿論!!!」」」

 クロウの怒りはナカジマ3姉妹にも火をつけたようだ。
 特にノーヴェとスバルの点火は、そのまま六課フォワード陣に飛び火して士気を高める事になるだろう。

 クロウもまた、遊星とは違う形で絆を紡ぐ者であるようだ。

 「ハッハッハ!こりゃあ良い!如何だクロウ、お前さん俺の息子にならねぇか?
  スバル達もお前の事が気に入ってるみたいだし……男1人ってのも肩身が狭くてなぁ?」

 「いぃ!?いや、ソレは流石に…」

 「アニキが家に!?」
 「クロ兄が!?」
 「クロウさんが…」

 「あが……か、考えとくぜおやっさん…」

 如何やらクロウもクロウで将来的に家族が増えることになりそうだ。


 ――ふふ、宜しくねクロウ君。

 
 「!?」
 ――なんだ!?…今何か…いや、それ以上にスバルとノーヴェが1人の人に…なんなんだ一体。


 そしてソレを祝福する人物は、如何やら1人ではないらしい。



 この時クロウが幻視した人物が誰なのかを知るのは、もう少し先の事である。















   To Be Continued… 






 *登場カード補足