休日の緊急出動も、結果的には機動六課の勝利と言う形で幕を閉じた。
 まぁ、確保した相手側の人物は奪還された故に『完勝』とは行かないが。

 それでもレリックを守り、保護した少女2人を医療施設――聖王医療院に搬送できたのは上出来だ。


 「アルカディアムーブメントのディバイン…」

 「あぁ。アイツは地縛神に喰われた筈なんだが…生きていたようだ。」

 で、六課のメンバーは出撃後の緊急ミーティング。
 今回の襲撃と、そして新たに現れた敵の詳細を解っている範囲で…と言う事の様だ。

 「やけど、ぶっちゃけ雑魚やんあの前髪……何の手応えも無かったで?」

 「…お言葉ですが八神司令、司令と隊長陣と遊星さんが組んで勝てない相手は居るんでしょうか?」

 「居る筈ないやろ。」

 「あ、やっぱり。」

 ティアナの疑問は、当然だが、答えは解り切っている事だった。
 此れはフォワード陣全員の総意でもあると追記しておこう。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス93
 ザ・ファースト・コンタクト











 翌日、遊星とはやて、なのはは聖王医療院へとやってきていた。

 目的は保護された少女の様子を見に来たと言う事。
 無論それだけならばこのメンバーで来る必要はマッタク無い。

 六課の裏方メンバーに様子を見てきてもらえば良いのだから。

 だが、何故か3人とも『自分が直接行かねばならない』と、半ば本能的に感じ取ったようだ。
 もっと言うなら、3人とも『シグナーの痣が疼いた』と言う所だろう。

 無論フェイトも其れは感じたが、生憎別件での仕事があるので断念である。


 「此れが聖王医療院…大きいな。」

 「まぁ、バックについてる聖王教会がゴッツイ組織やからね…此れくらいは造れるやろ。
  やけど、只大きいだけやないで?医療レベルもミッドでは最高水準なんやで?」

 「病院といえば聖王医療院てくらいだから♪」

 「其れは凄いな。」

 知る人が見れば、今の遊星の状態に殺意を覚えた事だろう。
 局の有名人である六課司令のはやてと、管理局のエース・オブ・エースのなのはと一緒。
 超絶豪華な両手に花状態なのだから。

 尤もはやての気持ちを知るなのはは、一歩引いた位置に居るのだが。




 ――閑話休題




 「それにしても、2人の女の子は何故そんな場所に居たんだろうな?しかもレリックと共に…」

 「謎や。ぶっちゃけて言うならスカの施設で色々されてた…って事やろうけど…」

 「子供2人だけで脱出したって言うのは無理があるような気がするよね…」

 「確かにな。」

 何れにしても不明要素が多過ぎる少女2名であるらしい。



 会えば解る!
 と思った矢先、医療院の庭で、小さな人影を2つ見つけた。

 片やハニーブロンドに紅と翠のオッドアイの少女。
 片や黒目黒髪の少女……年の頃は大体同じ位と見て取れる。

 2人とも何かを探しているようだ。

 「!?」
 ――ヴィヴィオ?…そうか、あの子はこの時になのはと…


 が、遊星にはハニーブロンドの少女に見覚えがあった。
 嘗ての『砕け得ぬ闇事件』の時に未来から遡行してきた『なのはの娘』と名乗った少女であったはずだ。

 尤も、遊星とアインス以外はあの事件の記憶の大部分をフローリアン姉妹によって操作されているので口には出さないが。


 「如何したの?」

 「探し物か?」

 「もし良ければお姉ちゃん達が手伝ったろか?」

 遊星の気持ちはさておき、そんな子供をこの3人が放って置けるはずがない。
 優しく声をかけてみる……が、2人の少女は警戒しているようだ。

 まぁ、イキナリ見ず知らずの大人に声を掛けられれば警戒もするだろう。

 「あぁ、警戒せんといて?怪しいモンとちゃうから。」

 「「………」」

 はやてが言ってもあまり効果はないようだ。
 さて如何したものか?と、思った時、何か閃いたらしい。

 「そや、遊星。」

 「ん?あぁ、成程な。ステラ。」

 『了解しました。スタンディングモードで限定起動します。』

 はやてが何を言わんとしているのか速攻看破する辺り、遊星の洞察力は流石である。
 或いは此れが阿吽の呼吸と言うものなのかもしれないが。

 兎に角、ステラをスタンディングモードでディスクのみの限定起動。
 となれば何をするかと言うと…

 「頼むぞ『ボルト・ヘッジホッグ』『ロード・ランナー』『異次元の精霊』『チューニング・サポーター』!」

 モンスターの召喚である。
 それも、遊星のデッキの中で取り分けマスコット色の強い『可愛いモンスター』をだ。

 これらの可愛いモンスターに少女達の警戒と緊張を解いて貰おうというのだ。


 「ネズミさん?妖精さん?」

 「小鳥に…え〜と、お鍋マン?」

 『 ゚д゚』

 其の効果は絶大だった。
 一部変な名前で呼ばれてしまったが。

 「「カワイイ〜〜〜♪」」

 さっきの警戒と緊張は何処へやらだ。
 此れなら何とか話も出来そうである。


 「ほな、改めて……ドナイしたの?何を探してたんやろか?」

 「あ…うん、あのねママが居ないの。」

 再び問えば、探していたのは『物』ではなく『人』。
 恐らくは母親と逸れたのだろうが、其れにしては少しオカシイ。

 もしも母親と逸れたのなら、母親の方も2人を探しているだろう。
 場合によっては医療院の方で所謂『迷子放送』を流したって良い筈だ。

 だが其れは無い。
 もっと言うならこの少女2人は如何見ても『姉妹』には見えない。
 となれば母親も2人居るはずなのだが、其の気配も無い。

 しかし、彼女達が嘘を言っているようにも見えない。

 「ソレは大変だね?なら一緒に探そうか?」

 「大勢で探した方が早く見つかるかもしれないしな。」

 「せやなぁ、速攻探し出した方がえぇやろうしね。」

 だからだろう、彼女達の言っていることを否定せず、そして一緒に探す提案をしたのは。
 3人とも何故かこの2人の少女を放っておけなかったのだ。


 「「うん!!」」

 「良いお返事やね♪
  ほな、名前を教えてもらって良いかなぁ?あ、私は八神はやて言うんや、宜しくな。」

 「高町なのはだよ♪」

 「不動遊星だ。」

 「ヴィヴィオ!」

 「レーシャです!」

 そして自己紹介もスムーズに。
 いざ行動開始!と思ったのだが…

 「「!!!」」

 少女2人――ヴィヴィオとレーシャが固まった。
 其れはもう『カチン』と音がしそうな勢いで。

 「「「?」」」

 遊星、はやて、なのはも突然動きを止めた2人に『?』なのだが、原因は直ぐに判った。

 『ワリィゴハイネガァァァ♪』


 毎度お馴染み『ジャンク・バーサーカー(なまはげ)』である。
 またしても勝手に遊星のデッキから出て来たようだ……まぁ、今回は嘗ての反省から、かな〜〜り声色は優しい(?)し笑顔(??)なのだが…


 「う、うわぁぁぁぁん!!」

 「〜〜〜〜…」

 ヴィヴィオは大泣き、レーシャは立ったまま失神である。

 『(゜Д゜)ガーーーン』

 そして、其の光景にジャンク・バーサーカー失意!
 頑張った!今回は頑張ったのだ!!

 だがしかし!だがしかし、巨大なアックスソードを持ち、真っ赤な鎧で身を固めた狂戦士は、子供からすれば恐怖の対象でしかない。
 頑張っても其れは覆せない残酷な現実だったのだ。

 『(ショボ〜ン…)』

 「…お前があの子達の為に頑張ったのは分ったからそんなに落ち込まないでくれ。
  あと、勝手に出てくるのは出来るだけひかえてくれないか…」

 こんな状況でも何時もの姿勢を崩さない遊星を褒めて、尊敬しても罰は当たらないだろう。


 「よしよし、大丈夫だよ。あの人(?)は見た目は怖いけど良い人だから。」

 「ふえぇぇぇ…」


 「お〜い、大丈夫かレーシャちゃん〜〜?宇宙の彼方から戻っておいで〜〜?」

 「!!び、吃驚したぁ…」

 また、なのはとはやても見事なフォローである。


 まぁ、レーシャとヴィヴィオも落ち着きを取り戻し、改めて…


 「その子から離れてください。」

 と言うところで新たな火種が。

 現れたのは修道服に身を包んだ女性。
 恐らくは聖王医療院の母体である『聖王教会』に属する者なのだろう。

 其れならば修道服も納得できるが、問題はその手にある物。
 ソレは紛れも無く『デバイス』。

 トンファー型の双剣とも言うべき形状の戦闘用デバイスを展開しているのだ。

 「…イキナリやなシスター・シャッハ。
  武装展開してこの子達から離れろとはドナイな了見や?」

 そしてはやてはこの女性――シャッハ・ヌエラとは顔見知りであるらしい。
 ピリピリした雰囲気のシャッハに対し、はやても『機動六課総司令』としての態度で対応をしている。

 「その子達は危険な存在なんです!此処で何とかしないと…!!」

 「この子達が危険?俺にはそうは見えないが…なのはは如何だ?」

 「う〜〜ん…危険じゃないと思うな。保有魔力は大きいかもだけど…危険はないよねレイジングハート?」

 『Yes.No problem.』

 遊星となのはもまた2人を危険とは見ていない。
 だが、シャッハの余裕の無い態度から察するに、何か有るのだろうこの2人には。

 「危険では無いって…それは表面上です!その子達は…」

 「エリオ達が保護した子やろ?十中八九、スカと関係ある子やから危険言う気か?」

 「!!!」

 だが、はやてはシャッハの慌て様を看破していた。
 そしてソレはシャッハの態度から、大当たりであった事が伺える。

 「アホ垂れ!なんぼ広域犯罪者と繋がりの可能性ある子や言うても即刻処分しようとする奴があるかい!
  と言うか此れは越権行為やでシャッハ!この子達の身柄預かりは機動六課や。
  六課預かりの子達に、何の許可も無く聖王教会の人間が手ぇ出したとなったら……ヤバいんと違うか?」

 「!!」

 役者としてははやての方が一枚も二枚も上だったようだ。
 一部隊を取り仕切る総司令と、教会のシスターでは差があるのは当然だろう。

 「しかし…」

 「この子達は六課でキッチリ面倒見る。
  此れは六課総司令としての頼みであり、アンタの友人としてのお願いや…」

 「!……分りました。此処は貴女の顔を立てておきましょう。
  ですが、その子達には『極めて危険な因子』があると言う事、それだけは忘れないで下さい…」

 結局はシャッハが折れる事となった。
 それでも忠告は忘れないが。



 「はやて、彼女は?」

 「シャッハ・ヌエラ、六課の後ろ盾の1つ――聖王教会に属するシスターや。
  真面目で優秀な魔導騎士なんやけど、少々生真面目すぎて、頭硬いとこが有ってなぁ…」

 遊星に簡単に答えるが、成程、シャッハは中々『面倒くさい』人物であるらしい。
 尤も、はやての口調からして決して悪い人物ではないようだが…


 「あの…はやてさん?」

 それはそれとして、少女2人は何が何やら。
 レーシャがはやてを呼ばなければ、或いは暫くそのままだったかもしれない。


 「ああ!スマンなぁレーシャちゃんにヴィヴィオちゃん!
  んん、あのな?2人のママは如何やら此処には居ないみたいなんよ、今現れたお姉さんが言うにはな。
  せやから、もし2人が良ければなんやけど、私等と一緒にきぃへん?」

 「一緒に…」

 慌てて対応するはやてだが、ここぞとばかりに六課に来るように話を向けるのは流石である。
 勿論そうなれば、遊星となのはだってはやての意図する事は分る。

 「あぁ、一緒にだ。其処なら俺達以外にも優しい人がお前達を迎えてくれるさ。」

 「皆良い人だから、きっと楽しいよ?」

 なので、六課に誘うように言う。
 3人に下心はない――只純粋にこの2人を安全な場所での暮らしを与えたかったのだ。


 其れが伝わったのだろうか?

 「レーシャ…」

 「行こうか、ヴィヴィ。きっとそっちの方が安全。」

 レーシャが決め、ヴィヴィオも満更でもないようだ。


 「決まりやな♪」

 其れが決め手となり、レーシャとヴィヴィオは六課に。
 保護された2人の少女は、正式に六課預かりと相成ったのだ。








 ――――――








 なったのだが、六課に連れて来た後で少々問題が発生してしまった。
 ソレは、レーシャははやてと遊星に、ヴィヴィオはなのはにやたらと懐いてしまったのだ。

 いや、懐かれるだけならば何も問題はない。マッタクない。
 何が問題って、2人が一般宿舎で寝泊りするのを激しく拒否したのだ。

 レーシャははやてと遊星と一緒が良いと言い、ヴィヴィオもなのはと一緒でなければ嫌だと言うのだ。

 物凄い懐かれ方だが、此れでは一般宿舎に置く事は不可能!


 なので…

 「川の字って言うのか此れは?」

 「やろなぁ…」

 レーシャは遊星とはやてが。
 ヴィヴィオはなのはが各々の部屋へと連れ帰ることになったのだ。

 そして、只今遊星とはやては、2人の間にレーシャをおいて『川の字』でベッドに。
 此れもまたレーシャが一緒に寝たいと言った結果である。


 ――しかしアレやなぁ…此れやとまるで夫婦やん。
    幼子真ん中にしての川の字て…………!!!な、何考えてるんや!!///


 はやては…


 ――まるで家族だな――俺が父親ではやてが母親……?何を考えているんだ俺は…?


 いや、遊星もそれなりに脳内が暴走しているようだった。


 恐らくはなのはの方も、テスタロッサ姉妹とヴィヴィオが打ち解けて、同じように川の字+αで寝ていることだろう。


 保護した2人の少女は、如何やら問題はないようだ。
 恐らくはシャッハの考えも杞憂で終るのだろう。








 と、遊星もはやてもなのはもそう思っていた――今、この時は…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足