折角の休日は一転して緊急事態に。
 休暇を満喫していた六課隊長陣も即時に対応し、ミッド上空に現れたガジェットを掃討開始!
 同時にフォワード隊は、『レリック存在の疑いあり』との事で地下水路に。
 無論そちらでも戦闘は行われているが、結束力が増したフォワード隊は早々やられることはないだろう。
 隊長陣もフォワード隊の力を信じているからこそ、地下を全面的に任せたのだ。



 そして双方で、其の先陣を切るのは矢張りこの2人。


 「集いし闘志が怒号の魔神を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、粉砕せよ『ジャンク・デストロイヤー』!!」

 『ムウオォォォ!!』
 ジャンク・デストロイヤー:ATK2600


 「猛禽を操る漆黒の鷹匠よ、黒き羽を纏め上げ疾風を呼べ!シンクロ召喚、現れろ『BFT−漆黒のホーク・ジョー』!」

 『ハァァァア!!』
 BFT−漆黒のホーク・ジョー:ATK2600



 遊星とクロウである。
 空を翔る赤と地下を駈ける漆黒の前に敵はない。
 空のガジェットは遊星のモンスターに、地下のガジェットはクロウのモンスターに文字通り叩き落されている。

 勿論他の六課メンバーとて負けては居ない。
 はやて、なのは、フェイトを筆頭に、夫々が的確かつ確実にガジェットを掃討粉砕!


 天下無敵の機動六課の前にガジェットなどは塵芥同然。
 此れならば、機動六課の完全勝利で事は終るだろう。


 …相手がガジェットだけであったならば、だが。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス92
 機動六課は無敵也











 「アレがデュエリスト…凄まじいな。」

 そんな六課の戦いを離れたビルの屋上でモニターで観察する人影が幾つか。
 今言葉を発したのは長身で短髪の人物。

 一見すると男性とも思える容姿だが、身体の柔らかな曲線と胸の膨らみが其れを否定している。
 極めて男性っぽいが紛れもない女性なのだ。

 「まぁ、何でも良いだろう?
  目的はレリックの確保だ、邪魔をする連中は排除すれば良いだけのことだろう?」

 そしてもう1人はホビーショップT&Hで遊星とクロウが出会ったエクゾディアデッキ使いの青年。
 よもや彼が如何にも怪しいこの集団の一員だったとは、きっと誰も思わなかっただろう。

 「彼等とは純粋にデュエルで戦いたかったが仕方ない。まぁ、自分の任を遂行するさ。」

 「しくじるなよ、アモン・ガラム?」

 「フン…」

 とは言え、青年――アモンと、この女性――トーレは利害一致程度の関係。
 少なくともアモンからすればそうなのだろう。

 「まぁ、僕の出番は最後だろう?其れまではじっくりと彼等の力を観察させてもらう。」

 それだけ言うと、アモンは3つのデッキケースから1つのデッキを取り出してディスクにセット。
 どうやら3種類のデッキを使い分けるデュエリストであるらしい。


 ――正直スカリエッティやこいつ等は気に入らないが、僕の目的を達成するには今は手を組んでおいたほうが都合が良い。
    精々利用させてもらうさ……利用価値のあるうちは。





 また別のビルでは…


 『は〜〜い、調子はどうですか小父様〜〜。トーレ姉様達の方は動きましたよ。』

 「君か…いや、実に晴れ晴れとした気分だよ。奴に復讐することが出来るのだからね。
  私の方も準備は完了した……いや、ミスター・スカリエッティの技術は素晴らしいよ。
  地縛神に喰われて、そして次元を超えてこの世界に来た死に掛けの私を此処まで再生してくれたのだからね。」

 跳ねた前髪が特徴的な男性――ディヴァインが、モニター越しに眼鏡の女性と話していた。
 眼鏡の女性――クアットロもまたトーレの仲間であるらしい。

 『其れは何より〜〜…小父様も私達の貴重な戦力ですもの。
  折角ですんで、派手にやっちゃってください〜〜。』

 「勿論其の心算さ……まぁ、今回はレリックとやらを確保するのが目的のようだが。
  しかしだ、奴等を足止めするのが私の役目な訳だが――足止め序でに殺した所で問題は無いのだろう?」

 『えぇ、結構ですわ〜〜。……八つ裂きのバラバラにしちゃって構いませんわ。』

 ディバインもクアットロも背筋が寒くなるような酷薄な冷笑を浮かべ行動を開始する。

 「さぁ暴れろ、『マジカルアンドロイド』『メンタルスフィア・デーモン』『ハイパーサイコ・ガンナー』!!」

 マジカルアンドロイド:ATK2400
 メンタルスフィア・デーモン:ATK2700
 ハイパーサイコ・ガンナー:ATK3000



 3体のサイキック族シンクロを呼び出し、自身も飛行用のジェットパックを装備し出撃。
 ディヴァインの狙いはただ1つ、不動遊星の首を取ることだけだった。








 ――――――








 「ぎょーさん出てくるなぁ…こら地下のレリックはガチにあると見て間違いないやろな…」
 ――地下の方にはガジェット以外の敵も現れたようやしね…まぁ、フォワードの皆とクロウなら大丈夫やろ。
    問題はこの異常な数のガジェットや……ドナイしたモンやろなぁ……ん?


 上空で自身も戦いながら部隊に指示を飛ばしているはやては現状の打開策を考えていた。
 ガジェットを全て退け、地下に現れた敵を逮捕し、レリックを確保して、保護した少女2人を無事に医療施設に運ぶ。
 全てを完遂するための策を練っている…その際中に何かを見つけた。

 3体のモンスターを従えながら、高速で飛行する何か。
 ソレは真っ直ぐ遊星の方面に…!


 ――あのモンスターはホテルでの!!狙いは遊星やと!!
 「遊星!!」

 思わず叫ぶが、其処は遊星だ。
 敵の接近など、既にステラが感知済み。

 と、言う事はつまり…

 「迎え撃て『Sin スターダスト・ドラゴン零式』『獄滅龍 メテオ・ブレイカー』『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』!!」

 何時の間に呼び出したのか、最強シンクロドラゴン3体で即刻迎撃!
 『何時の間にどうやって呼び出した?』と問う無かれ、此れが不動遊星なのだ。


 「なに!?」

 思っても居なかったカウンターに襲撃者――ディヴァインは完全に面喰ったようだ。
 まぁ、完全な奇襲と思っていた攻撃が読まれていて、更に超強力なモンスターで迎撃されれば驚きもする。

 哀れ3体のサイキックシンクロモンスターは碌に見せ場も無く、3体の龍に完全滅殺されてしまった、合掌。

 「おのれ、不動遊星!!」

 それでもディバインは折れず、サイコパワーで装備魔法『サイコソード』を実体化して切りかかってくる。
 だがしかし!

 「『くず鉄のかかし』!!」


 ――ガッキィィィン!!!


 遊星の十八番のトラップで此れも防がれる。
 一部で『遊星の防御の硬さはノース硬度120(ダイヤモンドの12倍)』とも言われる防御を崩せる人間が世界広と言えどドレだけ居るのだろうか?
 大いに謎である。


 「矢張りお前だったかディヴァイン!地縛神に食われたはずだが…生きていたのか!」

 「流石に死にかけたがね!だが、ミスター・スカリエッティの科学力で私はこうして生きている!
  ダークシグナーは既に居ないだろうが、私に屈辱を味わわせる要因になった貴様は生かしておかん!!」

 遊星もホテルで戦った相手がディバインだと確信したようだ。


 ハッキリ言ってディヴァインの言う事は逆恨みも良いところなのだが、本人にそんな事は関係ない。
 常に組織の頂点に居た彼にとって、自分に屈辱を味わわせた相手は殺して然るべきなのだろう。

 「くず鉄のかかしは再度発動は出来ないだろう!精々派手に散れ不動遊星!!!」

 再びサイコソードを使っての攻撃。
 確かに『くず鉄のかかし』は、再度発動は出来ない。

 だが、このミッド上空で遊星以外に戦ってる人は誰がいただろうか?


 「させるかアホンダラ!クラウソラス!!」

 飛竜一閃!

 「光よ…ナイトメアハウル!」

 「え?」


 ――ドッゴォォォン!!



 「ぐあぁぁぁあ!!!」
 ディヴァイン:LP0


 そう、六課隊長陣が居るのだ。
 遊星を切りつけようとしたディヴァインに、夜天の主と、ヴォルケンリッタートップ2の攻撃が炸裂!

 哀れディヴァイン、一撃でライフが0になり行動不能。
 果たしてコイツは一体何の為に現れたのだろうか?……取り敢えず、無事ではあるだろう、きっと。


 「はやて、シグナム、アインス!スマナイ助かった。」

 「なに言うてんねん。戦いの場では互いにフォローし合って…やろ?」

 「はやて…あぁ、そうだな!」

 「せや!ほな、このまま一気に全部掃討するで遊星!!」

 「あぁ!行くぞはやて!!『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 フォローに感謝する遊星だが、戦いの場で互いをフォローし合うのは当然の事だとはやては言う。
 無論ソレは遊星だって分っている…ただ、矢張り礼は言いたかっただけだろう。

 そして、すぐさま思考を切り替え、エースチューナー『ジャンク・シンクロン』を召喚!
 ならば行う事は1つだ。

 「はやてに、ジャンク・シンクロンをチューニング!
  疾風に願いが集うとき、其の願いは夜天の力を呼び覚ます!光射す道となれ!シンクロ召喚、翔けろ『夜天の王−はやて』!!」

 「ほなソロソロ終らせよか?」
 夜天の王−はやて:ATK2500


 はやてのシンクロ進化!
 此れで六課の敗北は万に一つもなくなっただろう。

 なのはやフェイトも『シンクロカートリッジ』でシンクロ化している。
 元々雑魚だが、こうなってはガジェットなど只の粗大ゴミにもならないだろう。


 ディバインバスター!!

 プラズマスマッシャー!!

 紫電一閃!!

 ラケーテンハンマー!!


 次々とガジェットが落とされていく。





 また、地下で戦闘を行っていたフォワード陣も、突如現れた少女と、超小型の女の子の確保に成功していた。
 戦闘が激しさを増し、地上に逃げた2人だが、スバルとノーヴェとギンガの執拗な追撃を振り切る事は出来なかった。

 更に2人の逃走経路を、クロウが『ブラック・フェザー・ドラゴン』を召喚して防いだのも大きい。

 地下水路のレリックもティアナとエリオ、キャロの3人がガッチリ確保。
 後は上空のガジェットを掃討すれば其れで終いだ。





 因みにトーレだが…


 「あいつ等が強いのか、それともこいつが弱すぎるのか…どっちだ?」

 八神家トップ3に撃沈されたディヴァインを回収していた。
 本来ならば戦闘が彼女の本分なのだが、貴重な駒を捨て置くわけにも行かないのだ。
 故にディヴァインを回収して戦闘は不参加!

 折角の戦闘能力を発揮できなかったことには同情してもバチは当たるまい。








 さて、再び上空だが…


 『それにしても残念だったねはやて。』

 「残念て何がや、アリシアちゃん。」

 アリシアとはやてがプライベートチャンネルで通信していた。
 仕事中だがプライベートチャンネルなら畏まった言葉遣いも必要無い。

 『だって遊星とのデートだったんでしょ?
  それがこんな形で潰されて……残念だよね?』


 「!!」

 何を言っているのかアリシア・テスタロッサ。
 が、此れがはやての中で何かを弾けさせたようだ。


 ――そうや…此れ遊星とのデートやん。
    遊星のカッコイイとこ見れたし、一生懸命作ったお弁当も食べてもらえた…やけどまだ物足りないやん。
    午後はショッピングとか、夜はホテルの展望レストランとか考えとったのに台無しやん………


 そして…

 ぶっ殺したるわおんどりゃぁぁぁぁ!!!!
 夜天の王−はやて:ATK2500→2500000(魔導師ランクEXSS+)


 攻撃力が1000倍になった。


 女性にとって、思いをよせる男性とのデートは何にも変えがたいものだ。
 其れを邪魔されて黙っていられるか?断じて否!!

 デートを邪魔されたと自覚したはやてに『ガジェット殺すべし』の思考が浮かんだのは仕方ないだろう。


 更に…

 「はやて?そうか、終らせるんだな?
  ならば、スピードスペル『Sp−ファイナル・アタック』!此れではやての攻撃力を倍にする!」

 覚悟しろや、アホンダラ共ぉぉぉ!!」
 夜天の王−はやて:ATK2500000→5000000(魔導師ランクEXSSS++)


 遊星が其処に乗っかり攻撃力は更に倍!
 なんとも恐ろしいことだ。




 此れには、別の場所でレリックを積んだヘリと逮捕した2人、そして保護した少女2人を護送しているヘリを狙っていたクアットロ達も驚きだ。

 「でぃ、ディエチちゃん攻撃中止!至急離脱するわよ〜〜!」

 「離脱?…地下のセインは?」

 「あの子は巧くやるから大丈夫よ〜〜!でも私達は危険すぎるわ〜〜!
  後はアモン君が巧くやるだろうから撤退よ〜〜!」

 「…分った。」

 即時撤退を決め、茶髪の少女――ディエチと共にその場を離脱。
 地下に居たというセインなる人物も脱出はしているだろう。

 トーレもとっくにディヴァインを担いで離脱済みだ。





 「遠き地にて深き闇に沈め……デアボリックエミッション!!


 ――ゴガバァァァン!!!


 そして彼女達が離脱した瞬間、はやての他を寄せ付けない無双の空間攻撃が炸裂!
 ソレは圧倒的な力を持って、ガジェットの大軍を粉砕玉砕大喝采!!!

 ガジェットは一機残らず完・全・撃・滅!!

 管理局最強の魔導師ランクを持つはやては正に無敵だった。


 新たなガジェットが現れる気配はないが…


 『…………』


 空には不気味な雲が。


 「アレは雲魔物!!」

 「往生際の悪い奴等だぜ!!」

 ソレは『雲魔物』と呼ばれるモンスター達。
 大軍で現れ、2機のヘリを覆いつくしてしまう。


 「しまった!!」

 「あ、アカン!!」


 気付いた時には既に遅し。
 雲魔物達は、目的を達成したのか直ぐにいなくなってしまった。

 そして居なくなったのは雲魔物だけではない。



 レリックケースと、逮捕した2人が奪われたのだ。
 幸い、保護した2人の少女はどちらも無事である。

 だが、行方を晦まして逃げたとなると、追撃は難しい。


 最後の最後、土壇場でひっくり返された結果に誰も何も言えないようだ。

 しかし、そんな中でもフォワード陣の顔には笑顔が。


 「なに笑ってんだ?」

 「いえ、此方を見てくださいヴィータ副隊長。」

 訝しげなヴィータの言葉を受けて、しかし冷静にティアナはキャロの帽子を取り去る。


 其処にあったのは1輪の可憐な花。
 が、其れが光を放ち……次の瞬間レリックへと姿を変えたのだ。


 「な!!」

 「私の幻術を応用してみたんです。
  レリックを確保した時に、本物はずっとキャロに持っててもらってたんです。」

 「敵をだますには、先ず味方からってやつだ。
  レリックケースと逮捕された仲間を奪還したのは良いが……連中はアジトで驚いてんじゃねぇか?」

 「そうかも知れないな。」

 「お見事や皆♪ガジェットも掃討したし、此れで任務完了や♪」

 上空から遊星とはやても戻ってきて合流。


 取り敢えず今回の戦いは『六課の勝利』と言う事で間違いないだろう。








 ――――――








 さて、レリックケースを奪還した連中は本拠地であるスカリエッティのアジトに戻ってきていた。


 「へへ〜〜見事に確保!やるじゃんアモン!」

 「仕事は完璧にこなすのが僕の主義だといっただろう?」

 レリックケースを持つ水色髪の少女――セインも上機嫌だ。

 「んじゃあ、早速中身を〜〜♪」

 そしてケースを開けると中には赤く輝くレリックが!
 だが、其れが突然光を放ち、次の瞬間付箋の付いたカードと1枚の紙切れに変わってしまった。

 「な!?」

 「此れは幻術…まさか嵌められた?」

 其処で漸く一杯食わされたことに気付いた。
 あのヘリにレリックなど積まれて居なかったのだ。

 完璧に裏を掛かれた形だろう。


 「やられたな…人の心理を利用した作戦か…見事だな。」

 アモンは其の戦術に感心していたが。

 だが、他のメンバーはそうは行かない。
 特にトーレは余りの結果に、カードと紙切れを奪うように手に。

 しかしだ、此れは取るべきではなかった。

 何故かって?

 カードは『禁止カード』と書かれた付箋が付いた『ツンドラの大蠍』。
 そして紙切れには只一言『バ〜〜〜カ By鉄砲玉』と書かれていたから…



 ――ビリィ!!



 「殺す…」

 トーレがブチキレたのは仕方ない。


 此度の戦闘は六課勝利で間違いない。
 が、同時に六課はスカリエッティの手下――ナンバーズに精神的なダメージを与える事も成功したようである。




 因みに…


 「今日買ったパックで当たったんだが、僕には無用の長物だから君にやろう。」

 「マジで?…おぉ『No.107 銀河眼の時空竜』じゃん!サンキューアモン!」

 こんな遣り取りが有ったとか無かったとか…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足