最高最強のライディングデュエルを見せてくれた遊星とクロウ。
店内はいまだ興奮冷めやらないが、当の2人ははやてとノーヴェと共に店内のカフェに。
丁度良い時間なので昼食を兼ねての一休みだ。
「やっぱりはやては料理の天才だな。」
「気合入れて作ったからな〜〜…食べたって♪」
「あぁ、いただきます。」
クロウとノーヴェはカフェのメニューだが、はやてはお弁当を用意してきていた。
此れだけで、今日の遊星との外出をドレだけ気合入れて来ているかが分る。
「司令はアレだけど、アニキ、遊星さんは…」
「気付いてねぇ…絶対気付いてねぇ…」
最早外野状態のクロウとノーヴェはこの状況を完全看破!
まぁ、遊星にそっち方面で鋭くなれというのは無理が有るだろう……と言うか無理だ、遊星だから。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス91
『急転直下だ色々と!』
「貴女の周りは何時も賑やかね、八神総司令?」
「あ、プレシアさん!もう、普通に呼んでくださいて何時も言ってるやないですか〜〜。」
其のブレイクタイムに現れたのはプレシアとリンディ、そして沙羅。
このホビーショップの共同経営者の3人だ。
「母さん…久しぶりだな、元気そうで安心したよ。」
「10年ぶりね、遊ちゃん♪ うん、元気そうで安心したわ。」
プレシアが少しばかりからかう横で、遊星と沙羅は10年ぶりの親子の対面。
尤もこの2人だと、所謂『感動の再会』にはなりがたい部分があるのだが…不動親子は此れがデフォルトだ。
「しっかし、盛り上がったね〜〜、リニスも美由希も解説実況向いてんじゃない?」
「やってみると意外に楽しいものですね。」
「観客が盛り上がると解説、実況にも熱入るからね。エイミィも来れたら良かったんだけど。」
「キッズルームで子供の面倒見ていますから、流石に無理でしょう。」
次いでリニス、美由希、アルフと店のスタッフ集結。
エイミィもキッズルームに居るらしい。
「解説お疲れ様。久しぶりだな、皆も。」
「えぇ、お久しぶりです遊星さん。」
「あいっ変わらず強いねアンタは。成長限界とか無いのかい?」
「無いと思うなぁ、遊星だし。」
で、この3人とも至極普通に10年前と変わらない会話に。
まぁ、全員遊星が戻ってきたと言う事はなのはやフェイト、アリシアを通じて聞いているのでこんなものなのだろう。
して、会話について行けない人物が1名。
クロウである。
この中でクロウだけがT&Hの関係者と一切面識が無いのだ。(ノーヴェは過去に会った事がある)
「よう、遊星……誰なんだ、この人達は?」
「あぁ、そう言えばクロウは初めて会うんだったな。……何をしてるんだ母さん?」
言われて遊星が紹介しようとしたのだが…
「相変わらずはやてちゃんは可愛いわね〜〜。こう、腕の中に納まる絶妙な小ささが良いのよね〜〜♪」
「ちょ、沙羅さんソレ褒めとるんですか!?」
「褒めてるのよ?遊ちゃんも戻ってきたし……何時お嫁に来てくれるの?早く孫の顔が見たいなぁ〜〜♪」
「んなぁ!?///」
沙羅ははやてに抱き付いてなんかやってた。
すっかりはやては沙羅のお気に入りの存在になっているらしい…
プレシアの『また始まったわ…』と言わんばかりの表情を見る限り、顔を合わせればこんな感じなのだろう。
はやても別に抵抗はしていない……耳元で囁かれた事に真っ赤になって固まってしまったが。
沙羅の言った事が遊星の耳に入らなかったのは幸か不幸か…謎である。
「…取り敢えずはやてに抱きついて何かやってるのが俺の母さんの不動沙羅だ。」
「結構ぶっ飛んだ人なのか?てか幾つ何だオメェの母ちゃんは?」
「37だったか?…一応、親子でおかしくないくらいの年の差にはなったな。」
10年前の年の差と比べれば確かにそうだろう。
外見が変わってない事は非常に謎だが。
「プレシア・テスタロッサよ。この店の店長を務めているわ、宜しくねクロウ君。」
「リンディ・ハラオウンです、プレシアと同様にこの店の店長です。」
「リニスです、プレシアの使い魔でこの店のスタッフです、宜しくお願いします。」
「アタシはアルフ、フェイトの使い魔さ。一応アタシもスタッフらしいから、宜しく頼むよ!」
「同じくスタッフの高町美由希です。」
「クロウ・ホーガンだ。宜しくな!」
自己紹介は(一部を除いて)恙無く終了。
「はやてちゃんは可愛いから、本気で行けば遊ちゃんだって…『不動はやて』…良いじゃない♪」
「あぅ、あぅ…ふにゃぁ〜〜〜///」
はやては未だ弄られていた。
序でに溶けていた、と言うよりも溶かされていた。
顔面灼熱、脳味噌沸騰、頭から湯気が出ているのは多分見間違いではない……不動沙羅恐るべし。
「テスタロッサに高町?プレシアと美由希って若しかして…」
ソレを完全にスルーして話を進めるクロウも中々だ。
シティでの苦労人の日々はスルースキルを大幅に強化していたらしい。
「うん、なのはは私の妹。何時も妹がお世話になってます♪」
「世話んなってんのは俺のほうだけどな。つー事はプレシアはフェイトとアリシアの姉ちゃんか。」
「「「「「え?」」」」」
だが、トンでもない事を言ってくれた。
プレシアがフェイトとアリシアの『姉』と言うとは…
「姉に間違われるとは思わなかったわ…」
「なんだよ違うのか?なら、歳の近い従兄妹か?」
「違うわ…フェイトとアリシアは、私の『娘』よ?」
「…は?」
今度はクロウの目が点になった。
其の胸中を言うならば『なん…だと?』と言う所だろうか?
「娘…?」
「娘。」
「う、嘘だろ!?フェイトとアリシアが19歳で……失礼だが、アンタ一体幾つなんだよ!?」
「今49よ♪」
「嘘だろぉぉぉぉ!?」
自然の反応である。
なんたってプレシアの見てくれは、如何多く見ても『三十代前半』一歩間違えれば『二十台半ば』でも通じるほどに若々しいのだ。
それで居ながらニア50とは信じろと言う方が無理である。
更に…
「因みに私は27♪」
「歳は秘密だけど、24歳の息子が居るわ♪」
「ぜってー嘘だぁぁぁ!!インチキ年齢も大概にしろ〜〜〜〜〜!!!」
クロウ・ホーガン魂の絶叫である。
だがしかし、此れを読んでいる読者諸氏を含め、皆がこう思うであろう――『BF使ってるお前がインチキ言うな』と…
取り敢えずこの世界の女性の肉体老化はあるとこまで行くと止まるらしい。
有り得ない事だが、そうと考えないとこの若々しさの説明は出来ないだろう。
「はぁ、はぁ…興奮しちまった…って、遊星と遊星の母ちゃんは何処行った?」
「何か遊星さんが『話がある』って言ってスタッフルームに…親子水入らずの会話?」
「かもな…んで、如何すんだこの総司令様は…」
遊星と沙羅はプライベートな話があるらしくスタッフルームに。
ソレは良いとして、散々沙羅に弄られたはやてはと言うと…
「遊星と結婚…不動はやて……孫…つまり私と遊星の子供で、子供言う事はつまり私と遊星が……はぅ!」
――ボンッ!ぷしゅ〜〜〜…
恋する乙女の妄想は暴走してついに爆発してしまった。
天下無敵の機動六課総司令もプライベートでは只の女の子であった…
「こりゃ、再起動にゃ時間掛かりそうだな…」
「あの八神司令を此処まで…沙羅さんは何者なんだろう…」
謎である。
遊星の母親としか答えようがないだろう。
――――――
其のスタッフルームで、不動親子は水入らずの会話を楽しんでいた。
「シティに新しいモーメント…1年で完成なんて凄いわね遊ちゃん?」
「俺1人の力じゃない、スタッフの皆が頑張ってくれたおかげさ。
まぁ、メインフレームに補助のためのサブフレームを設定したのは個人的に有効だったとは思ってるが…」
「サブフレームの構想は無かったなぁ…確かにそれならメインフレーム1本よりも安定はするわよね。」
シティでの遊星の活躍を聞いて沙羅も嬉しそうだ。
おまけに自分達が造ったモーメントをさらに発展させ、ソレを強化したとなれば親としての嬉しさも一入だ。
「それで遊ちゃん、本当の目的は?
態々2人きりになって、シティであった事を話すだけって事はないでしょう?
皆の前では言えない事があったんじゃないの?」
「…流石に母さんにはバレるか。」
が、遊星が沙羅に話したい事はソレではなかった。
沙羅もソレを感じ取り、遊星に本当の目的を言い易いように話を聞いて、そして促したのだ。
「遊ちゃんの母親ですもの。ソレで、如何したの?」
「あぁ…実は…その、最近はやてを見ると胸の鼓動が激しくなる事が有るんだ。
この間のホテルアグスタのオークションの時にドレスを着たはやてを見たとき。
そして今日、着飾ったはやてを見て、デュエル中にも感じた事の無い胸の高鳴りを感じたんだが……俺はおかしいのか?」
「あら〜〜〜…ソレはまた…」
遊星の本当の話は、最近感じたはやてに対する胸の高鳴りだった。
普通だったらソレが何なのか解りそうなものだが、生憎其処は遊星である。
そっち方面には抹殺レベルで鈍い遊星である。
全く持ってなんなのか解っていないようだ。
「マッタク遊ちゃんも鈍感ね。遊ちゃん、ソレはね…『恋』よ?」
「鯉?」
「うん、ナチュラルにボケ倒されたことにお母さん吃驚♪
そうじゃなくて『恋』…異性を心の底から好きになってしまう事…遊ちゃんははやてちゃんに異性としての魅力を感じて恋心を抱いたのよ。」
「俺がはやてに?…まさか…」
「そう思う?でも、今まで遊ちゃんは女性に対してそういう反応が出たことがあった?
シティでの仲間の女の子達を見て胸が高まった事は?」
「無いな…」
だが、其処は母親。
遊星の相談をすぐさま理解し、ソレが何なのかを教える。
更に自覚もさせようとしているあたり、沙羅にとっても息子の初恋は見逃せないのだろう。
「つまりそう言うことよ遊ちゃん――貴方ははやてちゃんに初めて『異性』を感じたのよ。
未だ解らない事が有るかもしれないけど、けれど誰かに恋をするって言うのは素晴らしい事なの。
私だって彼に魅かれて、恋をして、結婚して、そして遊ちゃんが生まれたんだから。」
「そう…なのか…」
初めての感情ゆえに戸惑いは隠せない…遊星と言えども。
だが、其の感情が不快かと問われたら其れは否。
高まる胸の鼓動は決して不快なものではなかった。
とは言え恋愛初心者、未だ解らない事が多すぎる。
或いはこれから沙羅に相談する機会が増えるかもしれない。
「モーメントの開発よりも難しい事かもしれないな…」
「沢山迷って答えを出すといいわよ遊ちゃん。」
「あぁ、そうする。……相談に乗ってくれてありがとう、母さん。」
「いえいえ、此れくらいは母親として当然よ♪」
沙羅もこの手の相談なら何時でも受けてくれるのだろう。
頑張れ不動遊星。
人生初めての恋は是非大切にしてもらいたい。
まぁ、はやての事を考えると此れは相思相愛になるのだろうが、今は未だソレを認識する時期ではない。
さて、とても楽しい休暇だが、楽しいままで終らないのはある種の『お約束』と言えるだろう。
『遊星!』
「はやて?…如何した?」
ソレを告げたのははやてからの通信。
はやてはすっかり回復したようだ。
『街中にガジェットが出現した!
それと、エリオとキャロが2人の女の子を保護したらしいんや。
2人の女の子は取り敢えず医療施設に運ぶとして…ガジェットは掃討せなアカン…出れるか?』
「あぁ、俺は何時でも行ける!」
急転直下。
平和な休日は一転して、ガジェット掃討戦へとシフトした。
だが、ミッドの住人に被害が出るかもしれないガジェットの襲撃は見過ごせない。
遊星もすぐさま戦闘モードだ。
『クロウとノーヴェは先に向かってるし、なのはちゃん達にも連絡は入れた。
折角の休暇やけど…行くで遊星!』
「あぁ、直ぐに出よう!!…ステラ!」
『オーライ、マスター。準備完了です。
デュエルモードスタンバイ、スピードカウンターを12で固定、何時でも行けます。』
ステラも準備完了――阿吽の呼吸と言うやつだ。
「スマナイ母さん、如何やら仕事みたいだ。」
「うぅん、良いよ…確りね?」
「あぁ!…相談に乗ってくれてありがとう母さん……行ってくる!」
「行ってらっしゃい!頑張ってね!!」
舞台はミッドチルダ市街上空に。
そしてこの一件が済んだ後、遊星とはやて、なのはに運命の出会いが待っているとは、この時は誰も思いはしなかっただろう…
To Be Continued… 
*登場カード補足