交錯する視線、ソレは目に見えない火花を散らしている事は間違いない。

 「そう言や、オメェとガチでライディングデュエルするのは初めてかもな遊星?」

 「そうだな…だが、やる以上は負けないぜクロウ!」

 「ソレは俺もだ!幾ら遊星でも勝ちは渡せねぇ!!!」

 ネオドミノシティ、旧サテライト出身のダチ公コンビは既にデュエリストの闘気MAX!
 ソレこそソレに反応して、フリーデュエルを行っていた客が2人に振り返るほどだ。


 「…八神司令、デュエリストってナニモンですかね?」

 「己の魂昇華したデッキを作って、強敵とのデュエルを何よりも望む根っからのデュエル馬鹿やろか?」

 何気に失礼な物言いのはやてだが、ソレは全く否定できない。
 究極のデュエル馬鹿こそが=真のデュエリストに他ならない。

 その究極のデュエル馬鹿、シティのトップ3の1番と3番のデュエルが、此処ミッドチルダで始まろうとしていた。


 …この場にかの名物MCが居たならきっと大興奮は間違いなかっただろう。











  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス88
 『六課の休日其之弐』〜最強のダチ公デュエル〜











 やる気が振り切れてる遊星とクロウがはやてに案内されたのは『ブレイブライジングデュエルシュミレーター』。
 一見すると球状の装置の中にDホイールを模したバイク型の筐体が有るのみ。

 が、この装置は『体感シュミレーター』が内蔵されており、実際のライディングデュエルと寸分変わらぬ体感であるらしい。


 「なんか妙なもんだが…室内でもライディングデュエルが出来るって発想は良いかもな?」

 「あぁ、だからこそ俺達で最高のデュエルをして、ライディングデュエルに興味もってもらいたいな。」

 「違いねぇ。」

 2人とも筐体の感じを確かめながら、デッキをセットしてスタンバイOK。
 後は始めるだけだ。


 「準備OKやな?ほな、今からイベントやさかい、スタート合図までまっとってね♪」

 そしてこのデュエルははやてが何時の間にか店側に『イベント』として登録。
 このライディングデュエルはイベント要素を取り入れた派手なモノになるのだろう。








 で、待つ事5分。
 突然店内の照明が真っ暗になり、ある一部分にスポットが当てられ、其処を明るく照らす。

 照らし出されたのはゴンドラ。
 其処には2人の女性がスーツ姿で乗り込んでいる。


 『レディース&ジェントルメン!本日もホビーショップT&Hにようこそ!!』

 『此れよりデュエルイベント『ブレイブライディングデュエル』を開始します。
  最強のDホイーラー2人による、スピーディでスリリングなデュエルをどうぞご堪能下さい。』

 『解説と実況は、T&Hの看板店員である私、高町美由希と、』

 『リニス・テスタロッサでお送りします。』


 その2人は美由希とリニス。
 どうやらこの店の店員兼イベント時の司会進行その他の担当らしい。


 遊星にとっては懐かしい顔だが、今はソレよりもデュエルに集中だ。


 『さてリニスさん、今回のデュエルは注目ですね?』

 『そうですね、片やかの地縛神事件を解決に導いたと言われている不動遊星さん。
  片や、機動六課の新人としてその頭角を現している『鉄砲玉』ことクロウ・ホーガンさん。
  その2人のライディングデュエルは、或いは若しかしたらライディングデュエルに対しての認識を変えてくれるかもしれません。』


 不人気のライディングデュエルでも、大手ショップのイベントともなれば自然と人々の注目も集まる。
 はやてから渡されたメモを参考にした美由希とリニスの司会進行もバッチリ嵌っている。


 『普通に考えれば遊星さん絶対有利ですが…』

 『実力未知数なクロウさんの戦い方も見逃せませんね。』



 真に見事な司会進行に、店内の熱気は知らずと上昇していく。
 これほどまでに盛り上げる必要が有るのかとも思うだろうが…必要なのだ。

 何故か?

 そんなものは当然ライディングデュエルの魅力を、楽しさを知ってもらうためである。
 そしてそれ以前に遊星とクロウのデュエルが盛り上がらなくていいだろうか?


 否!!断じて否!!力の限り否、否、否ぁぁぁ!!!


 究極至極なデュエリストであるこの2人のデュエルが盛り上がらないなどありえない。
 盛り上げるだけ盛り上げれば、更にデュエルは燃える物となりうるのだ。


 「何か盛り上がってきたなぁ?あの2人もオメェの知り合いか遊星?」

 「あぁ、だがリニスは兎も角として美由希まで居るとは思わなかったがな。」

 遊星とクロウも体感デュエルシステムでスタンバイ。
 2人の本体はマシーンの中だが、仮想空間に生成されたアバターとの感覚共有で実際のデュエルレーンに居る体感が出来るのだ。

 仮装空間内の2人はライディングデュエル用のライダースーツを纏い、愛機であるステラとブラックバード(此方もアバター)もスタンバイ。

 コースはベーシックな街中と海岸沿いを通った高速道路。
 遊星とクロウには最も慣れ親しんだコースと言えるだろう。


 『さぁ、仮装空間内の準備もバッチリOK!』

 『シグナルスタンバイ。』


 ――ピン


 モニターに映し出されたレーンのシグナルがレッドを点灯し、同時に2機のDホイールのエンジンが唸る。


 ――ピン、ピン、ピン……ピーーーーッ!!


 『『ライディングデュエル…アクセラレーショ〜〜ン!!!』』

 シグナルグリーンと同時に飛び出す赤と黒。
 アバターとは言えマシン性能は完璧に再現されているので一歩も譲らないデッドヒート。

 充分に加速するための長いストレートの先には直角90度に折れ曲がったファーストコーナー。
 普通、こんなコーナーを曲がる場合には速度を落とすものだ。

 が、超高速の世界で生きるDホイーラーに減速などと言う選択肢は無い。
 2台ともトップスピードのまま突っ込み機体をギリギリまで倒しての高速ドリフト。

 此れだけでも店内は大盛り上がりだ。

 『デッドヒートの結果は…僅かの差で先攻は不動遊星ーー!!』

 『それでは、ホビーショップT&Hプレゼンツライディングデュエル、不動遊星vsクロウ・ホーガン。』

 『デュエル…』

 『『スタートォォ!!!』』


 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000    SC0
 クロウ:LP4000    SC0



 「俺のターン!手札のボルト・ヘッジホッグを捨て、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」
 クイック・シンクロン:DEF1400


 「続いて『ジャンク・シンクロン』を召喚し、その効果で墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300
 ボルト・ヘッジホッグ:DEF800



 「更に墓地からモンスターを特殊召喚した事で手札の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!」
 ドッペル・ウォリアー:ATK800


 初手から大量展開。
 手加減など本より不要!親友同士のデュエルはガチンコが当然だ。

 「全力で行くぜクロウ!
  レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
  集いし思いが、此処に新たな力となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、燃え上がれ『ニトロ・ウォリアー』!!」

 『むぅぅん…ムァ!!』
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800


 「ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材となった事で、俺のフィールドに2体のドッペル・トークンが生み出される。」
 ドッペル・トークン:ATK400(×2)


 「ドッペル・トークン2体とボルト・ヘッジホッグに、ジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す。光射す道となれ!シンクロ召喚、吠えろ『ジャンク・バーサーカー』!!」

 『ワリィゴハ…イネェガァァァァァァァ!!!』
 ジャンク・バーサーカー:ATK2700



 1ターン目から屈指のステータスを効果を持つ2体のレベル7シンクロモンスターを展開。
 ミッドチルダの住民は見た事もない高速展開に驚いている様だ。

 『初手から2体の上級シンクロモンスター!1ターン目から遊星は全力〜〜!』

 『此れに対し、返しのターンでクロウさんが如何動くかも見ものですね?』


 解説&実況の2人もバッチリ仕事を忘れない。
 店内の気温は少しずつ上昇している事だろう。


 「先攻のターンは攻撃できない。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 手札を全て使い切ったが1ターン目から此れならば悪くは無い。
 だが、相手は更なる高速展開を得意とするクロウだ、油断はできない。

 「俺のターン!」


 遊星:SC0→1
 クロウ:SC0→1



 「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合『BF−暁のシロッコ』はリリース無しで召喚できる!」
 BF−暁のシロッコ:ATK2000


 「更に俺のフィールド上に攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合に『BF−下弦のサルンガ』を!
  そして『BF』が存在する時に『残夜のクリス』『疾風のゲイル』を特殊召喚出来る!!」
 BF−下弦のサルンガ:ATK500
 BF−残夜のクリス:ATK1900
 BF−疾風のゲイル:ATK1300


 予想通りの高速展開!
 しかも4体のうち2体はチューナー。
 クロウもまた高速シンクロを狙ってきたのだ。

 「全力は基本だよな遊星!
  疾風のゲイルの効果発動!ニトロ・ウォリアーの攻撃力を半分にするぜ!!」


 ニトロ・ウォリアー:ATK2800→1400


 先ずは弱体化、だがこの効果も予兆に過ぎない。

 「行くぜ!レベル4の残夜のクリスに、レベル3の疾風のゲイルをチューニング!
  猛禽を操る漆黒の鷹匠よ、黒き羽を纏め上げ疾風を呼べ!シンクロ召喚、現れろ『BFT−漆黒のホーク・ジョー』!」

 『オォォォォ!!』
 BFT−漆黒のホーク・ジョー:ATK2600


 「矢張り来たか…だが、お前のシンクロ召喚を待っていたぜクロウ!
  永続トラップ『シンクロ・トレジャー』!フィールドにモンスターがシンクロ召喚される度にカードを1枚ドローできる!」

 だが遊星もクロウの高速シンクロは読んでいた。
 シンクロ召喚に反応してドローできる永続罠で手札を確保する。

 「手札強化カード…流石だぜ。
  だが、ソレがあるからってシンクロを躊躇するクロウ様じゃないぜ!!
  レベル5の暁のシロッコに、レベル2の下弦のサルンガをチューニング!
  黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ!シンクロ召喚、出でよ『BF−アーマード・ウィング』!!」

 『ウオォォォォォ!』
 BF−アーマード・ウィング:ATK2500



 クロウもまた高速展開でBFトップクラスのシンクロモンスター2体を揃えてきた。


 『此れは凄い!クロウさんも遊星さんに負けじと7つ星のシンクロモンスター2体を高速展開!
  しかし、遊星さんもソレに合わせての永続罠カードで手札を2枚補充、序盤から目が離せない展開です。』

 『ゲイルの効果でステータスを半分にされたニトロ・ウォリアーが居る以上、クロウは攻撃に転じるはず!
  その攻撃に対し、遊星はどんな戦術を我々に見せてくれるのか!?此れは期待できそう!!』



 もう、店内の客全員がモニターに釘付けになっていた。
 初めて見る高度なライディングデュエルに皆が虜になっているのだ。


 「先手は貰うぜ遊星!漆黒のホーク・ジョーで、ニトロ・ウォリアーに攻撃!『アサルト・クロー』!!」

 「甘いぜクロウ!トラップ発動『同調停戦』
  俺のシンクロモンスターが相手モンスターに攻撃された時に発動。
  そのモンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!」

 速攻で攻撃を仕掛けたクロウだが、其処は鉄壁防御の遊星、難なく攻撃を捌いて見せた。

 「ち、流石にそう簡単には行かねぇか…カードを1枚セットしてターンエンド。」

 「俺のターン!」


 遊星:SC1→2
 クロウ:SC1→2



 「チューナーモンスター『ターボ・シンクロン』を召喚。」
 ターボ・シンクロン:ATK100


 攻撃を防いだ次のターン、遊星は又もチューナーを呼び出す。
 次に狙うのは言うまでもない…レベル8のシンクロだ。

 「レベル7のニトロ・ウォリアーに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!
  友との絆が集うとき、其の絆は逆境を切り開く。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛来せよ『閃滅龍 スターブレイカー』!!」

 『グオォォォォォ…!』
 閃滅龍 スターブレイカー:ATK2500


 現れたのは漆黒の閃滅龍。
 強烈な効果を持った絆の証しとも言える龍だ。

 「シンクロ・トレジャーの効果で1枚ドロー。
  そして効果を3回使用した事でシンクロ・トレジャーは破壊される。
  だが、スターブレイカーの効果!シンクロ召喚に成功した時、相手の手札かフィールドのカード1枚を選択して除外できる。
  俺はこの効果で『BF−アーマード・ウィング』を除外する!」

 「アーマードが…やってくれるぜ遊星!」

 アーマードは戦闘では破壊されないが効果耐性があるわけでは無い。
 其処を突いた遊星の見事な一手である。

 「今度はこっちから行くぜクロウ!
  ジャンク・バーサーカーで漆黒のホーク・ジョーに攻撃!『バーサーカー・クラッシュ』!!」

 『ワリィゴハ…イネェガァァァァァ!!!』

 アックスソードを振り回し、狂戦士は漆黒の鷹匠に斬りかかる。
 何故にナマハゲかは突っ込んではいけない。


 「何時からナマハゲになったんだよそいつは…ったく。
  でもな遊星、どうやらシンクロ使い同士、考えは似てるみたいだぜ?
  トラップ発動『同調停戦』!コイツでバトルは終了だ!」

 クロウもまた同様のカードでバトルを終了。
 互いに一歩も引かないとはこの事だ。

 「お前もソレを伏せていたのか…流石だな。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!」


 遊星:SC2→3
 クロウ:SC2→3



 「漆黒のホーク・ジョーの効果発動!墓地か手札から『BF』を特殊召喚出来る!
  暗き墓地より蘇れ『BF−暁のシロッコ』!
 BF−暁のシロッコ:ATK2000


 次なるターンでクロウは又しても展開を。
 そうなれば当然、

 「更にチューナーモンスター『BF−上弦のピナーカ』を召喚!」
 BF−上弦のピナーカ:ATK1200


 狙うはシンクロ。
 しかも今度は最高レベルとも言えるレベル8のシンクロだ。

 「レベル合計8…来るか!」

 「応よ!!
  レベル5の暁のシロッコに、レベル3の上弦のピナーカをチューニング!
  黒き疾風よ、秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚、舞い上がれ『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 『ゴォォォォォ…!』
 ブラックフェザー・ドラゴン:ATK2800


 先にエースを呼び出したのはクロウ。
 黒き翼の龍が舞い降り、その黒翼から舞う羽がなんとも幻想的だ。


 「来たかブラックフェザー・ドラゴン…!」

 「オメェとのデュエルに出し惜しみなんざありえねぇからな。」

 親友同士のガチンコデュエルは、どうやらライバル対決以上に激しく熱い物になりそうである。
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 同調停戦
 通常罠
 自分フィールド上にシンクロモンスターが相手モンスターの攻撃対象になった時に発動できる。
 その攻撃を無効にしバトルフェイズを終了する。