機動六課の絆が深まったあの一件から早2週間。
 アレ以来ティアナは無茶をせず、自分の考えをなのはに伝えるようになった。

 なのはもなのはでティアナの相談を受け、無理の無い範囲での自主練メニューを作ってやったりしている。
 少しばかり嫌な思いもしたが、結果としては良い方向に進んだのだろう。


 さて、その機動六課だが、本日は珍しく六課全員が休日である。
 理由としては、最近ガジェットドローンの出現は極端に減った事がある。
 不思議と出現が散発的になり、現れても特に何をするでもなく退却と言う事態まで。

 詳細は不明だが、特に大きな事が起きているのでなければ気分転換もしたくなる。

 ソレで本日の休日なのだ。

 無論非常時に直ぐ出動できる状態にはしておくが、ともあれ今日はお休み。

 エリオはキャロと、スバルはティアナと、なのははテスタロッサ姉妹とお出かけ。

 クロウも又適当に過ごそうかと思っていたのだが…

 「なぁ、アニキは何か予定有るのか?」

 「いや、特に決まっちゃいねぇが?」

 ノーヴェが部屋に来ていた。
 如何やらクロウの今日の予定を聞きに来たらしい。

 「決まってない?……だったら、アタシと一緒に出かけないか?」

 「お前と?…良いかもな。」

 なんとも不思議な組み合わせが出来上がったようだ。











  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス87
 六課の休日其之壱』











 さて、あの一件以来、クロウはすっかり六課フォワード陣の兄貴分に落ち着き、ソレに伴い呼び方も変わって来ていた。

 スバルは『クロ兄』。
 ティアナとエリオは『クロウ兄さん』。
 キャロは『クロウお兄ちゃん』。
 そしてノーヴェが『アニキ』である。

 クロウとしてもこんな感じで呼ばれるのは最早慣れっこなので異論なし。
 すっかり『兄呼ばわり』が定着していた。


 「まぁ、オメェと出かけるのは良いんだが…何処か行く所決めてあるのか?」

 「まぁな。アニキはデュエリストだろ?なら良い場所が有るんだ。」

 「へぇ?ソレは何とも興味をそそられる話じゃねぇか?
  俺達デュエリストにとって良い場所?そうと聞いたら捨て置けないぜ!!おし、早速案内してくれノーヴェ!」

 「おう、任せてくれ!」

 実に息ピッタリである。
 デュエリストにとって良い場所と聞けばクロウは黙っていない!黙っていられるはずが無い!

 ノーヴェをタンデムに乗せ、いざブラックバード発進!
 さて、ノーヴェが言う場所とはどんな場所なのか…








 ――――――








 遊星は、管理局のロビーに1人で居た。
 早い話が待ち合わせだ。

 相手は言わずもがなはやてだが…果たして同室で生活しているのに、出掛けるからといって待ち合わせが必要だろうか?



 必要なのだ。


 遊星は意識していないが、はやてにとって此れは遊星とのデート!遊星とのデート!遊星とのデートである!!
 超大事なことなので3回言ったが、そうなれば恋する乙女としてはお洒落したいもの。

 故に遊星には先に準備して、ロビーで待ってもらうことにしたのだ。
 六課総司令にして部隊長も、思い人を相手にしては只の女の子であった。


 「ゴメンな遊星、待たせてもうた。」

 「いや、そんなに待っていない…」

 時間にしては15分ほど。
 女性の仕度としては短い部類だろうが、現れたはやてを見て、遊星の思考は一時停止した。

 原因ははやての装い。
 黒のフレアスカートに、淡い桜色のブラウス、そして若葉色のストールに足元は白のハイヒールで飾られている。

 シンプルだがはやての可愛らしさと女性としての魅力を最大限に引き出した格好だ。
 極薄く施されたナチュラルメイクもその魅力を更に引き立たせている。

 「ドナイや遊星?似合ってる?」

 「あ、あぁ…良く似合ってると思う。」

 「ホンマ?よかったぁ♪」

 「!?」
 ――又だ…何なんだ、この胸の高鳴りは…


 その効果は確りあった様だ。
 理由は分らずとも、遊星にはキッチリ魅力が伝わったらしい。

 「ほな行こか♪」

 「あぁ…折角の休みだし、楽しむとしよう。」

 とは言え遊星は顔に出ない。
 そんな遊星の腕に抱きつくように自分の腕を絡ませるはやて。
 そのまま休日の外出にレッツゴー!

 場所が場所だっただけに、普段の2人での残業の事もあり『はやてと遊星は物凄く深い仲?』と言った噂が立つのは致し方ない事だろう。








 ――――――








 「「「「あ。」」」」

 が、如何にも遊星&はやて、クロウ&ノーヴェは行き先が同じだったらしい。
 ある大きなビルの前で鉢合わせ。

 「ほう…此れは予想外やなぁ?ノーヴェはクロウがお気に入りと…」

 「違いますから!単純に組み合わせであぶれた者同士ですから!!」

 「ふっふっふ、あぶれた者同士から始まる恋…此れもまた王道やなぁ♪」

 「八神司令ぃぃぃ!?」

 そしてこの組み合わせにおいてノーヴェがはやてに弄られるのは必然であった。

 が、ノーヴェだってタダ弄られているだけではない!


 「そう言う八神司令だって遊星さんとデートじゃないですか!」

 決死のカウンター!
 だが、しかし!!

 「おう、遊星は私の旦那や!こんだけの極上イケメンや、羨ましいやろ!」

 効果なし!寧ろはやてはぶっちゃけた。
 幸い遊星とクロウは別の話をしていたので耳には入ってなかったが。


 「あ〜〜〜…盛り上がってるとこワリィんだけどよ…」

 「此処が目的地なのか?」

 「「あ。」」

 隊長とフォワードはすっかり失念していました。
 と言うよりも、何と言うかオフの時は隊長クラスとフォワードでも意外とフレンドリーな様である。
 公私を分ける、良い事だ。

 「ん、ん…せや、クロウもノーヴェに連れられてきたんやろけど、此処が目的地や。
  ミッドチルダ最大のホビーショップ、『ホビーショップT&H』…デュエリストなら知っておかなあかん店や。」

 「デュエリストなら?」

 「どう言うこった?」

 「ソレは入ってからのお楽しみって事で。」

 ともあれ入らねば分らないので4人で入店。



 其処では…


 「2体のモンスターをリリースし…頼むぜ『バスター・ブレイダー』!!」
 バスター・ブレイダー:ATK2600


 「レベル4のブラッド・ヴォルスに、レベル4の霧の谷の戦士をチューニング!シンクロ召喚『ギガンテック・ファイター』!」
 ギガンテック・ファイター:ATK2800


 「魔法カード『仮面魔獣の儀式』!手札のトライホーンドラゴンをリリースし、出番だぜ『仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー』!」
 仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー:ATK3200


 「マジックカード『融合』発動!手札の魔天老と悪魔の知恵を融合!来い『スカル・ビショップ』!」
 スカル・ビショップ:ATK2600


 店内のいたる所でデュエルが!
 デュエルディスクやデュエルリングを使って皆思い思いにデュエルをしている。

 「デュエルだと!?」

 「此れは…」

 「驚いてくれた?遊星が残したデータからミッドでもデュエルモンスターズを作ってみたんよ。
  そしたら思いのほか大人気でなぁ?今では市民の娯楽の代表格や♪」

 どうやらはやては、10年前に遊星が居なくなったあと、残ったカードのデータからこの世界でデェエルモンスターズを生み出したらしい。

 それは見事に大ヒット!
 あっという間にミッド全体に広がり、結果としてこんな大きなホビーショップまで出来たらしいのだ。

 「ここでもデュエルが……良いな、皆楽しそうだ。」

 「マダマダ未熟な部分は有るが、結構やるじゃねぇか。」

 デュエルを楽しんでいる者を見て、遊星とクロウも何か嬉しい気分になった。
 自分達が大好きなデュエルを楽しんでいる人が居るというのは矢張り嬉しいのだろう。

 更に

 「3体のレベル8モンスターをオーバーレイ!オーバレイネットワークを構築!
  エクシーズ召喚、光を撒き散らせ!『超銀河眼の光子龍』!!」

 『ガァァアァァ!!』
 超銀河眼の光子龍:ATK4500



 「「エクシーズ召喚?」」

 遊星もクロウも知らない召喚方法が出てきた。
 此れには驚きだ。

 「お、驚いてくれたか?此れが私の考えたエクシーズ召喚や。
  2体以上の同レベルモンスターを素材にして呼び出されるエクシーズ。
  その最大の特徴は、素材モンスターは墓地に送られず、エクシーズのオーバーレイユニットになる事や。」

 「オーバーレイユニット…」

 「エクシーズはそのオーバーレイユニットを消費して強力な効果を発動するモンスターや。
  使用回数制限はあるけど…ソレが逆におもろいやろ?」

 「確かに、ちと面白そうだぜ!」

 「あぁ、新しい戦術が構築できそうだな。」

 生粋のデュエリストである2人は即刻未知なる戦術に興味を覚えたようだ。
 はやてとノーヴェの思惑はバッチリ大当たりだろう。


 「ちょっと待てよ!なんだよソレ、インチキだろ!!!!」

 「言い掛かりはやめて欲しいな…インチキなどしていない。」

 「ならなんで俺の負けなんだよ!ライフはまだ有るぞ!!」

 が、なにやら問題が起きたらしい。
 1人の客が長身の青年になにやらいちゃもんをつけている。
 デュエルの不正でもあったのだろうか?

 「どうかしたか?」

 「なんだってんだよ?」

 デュエルの問題となれば遊星とクロウも黙っていない。
 もし不正やイカサマがあったならソレを正さねばならないだろう。

 「待てよ如何したんだ?」

 切り込むのはクロウ。
 まず、切り込むのはクロウの仕事でありその後の対処が遊星の仕事だ、昔から。

 「あ…ソイツが『強欲で謙虚な壺』使ったらいきなりそいつの勝ちだって。
  俺のライフはまだ3000以上有るのにおかしいだろ?ソイツが変な細工したに決まってる!!」

 ソレだけを聞けば確かにおかしいだろう。
 だが、其処はこの2人だ。

 「悪いが手札を見せて貰って良いか?」

 「構わない、後ろ暗い事などないからね。」

 対していちゃもんを付けられた青年はアッサリと手札を見せる。
 それだけ自分は不正をしていないと自信があるのだろうが…その手札を見た遊星は納得した。

 「成程な…クロウ。」

 「あん?……はは、成程な。コイツは確かにイカサマじゃねぇ。」

 2人とも事情が分ったらしい。

 「残念だがお前の負けだな。
  イカサマでも何でもねぇ…アイツの手札には揃っちまったんだよ、最強の5枚がな。」

 「最強の…5枚?」

 「あぁ、彼の手札には『封印されしエクゾディア』『封印されし者の右手』『封印されし者の左手』『封印されし者の右足』『封印されし者の左足』が揃っている。
  これら5枚の…エクゾディアの封印パーツを全て手札に揃えたプレイヤーはデュエルに勝利するんだ。」

 「えぇ!?」

 「ま、エクゾディアの封印パーツは夫々がデッキに1枚しか入れられねぇけどな。
  だからこそ揃えば勝ちってトンでもカードなんだけどよ。」

 青年はなんとエクゾディアを完成させていたのだ。
 成程それなら突然の決着も納得。
 対戦相手の少年はそれゆえにイカサマと思ってしまったのだろう。

 「そんな…マジで。」

 「おう、ま、エクゾディアそろえただけでも大したもんだぜ。」

 「揃えるのは至難の業だからな。」

 そうなれば青年の無実は明白。
 いちゃもん付けた少年は平謝りである。




 「助かったよ…僕が説明した所で『俺ルール』と言われかねないからね。」

 「良いって事よ、デュエリストは見て見ぬ振りは出来ねぇからな。」

 青年は感謝の意を伝えるが、デュエリストにとってイカサマ容疑をかけられたデュエリストを放ってはおけない。
 それが遊星とクロウを突き動かしたのだろう。


 「君達とデュエルをしたい気持ちは有るが…生憎と時間だ。又会う日までだな。」

 「あぁ、だが何時でも来い。俺達は歓迎するぜ。」

 「それは嬉しい事だ…楽しみにしているよ。」

 青年は其のまま店外へ。
 恐らく又会う事も有るだろう。



 ソレはソレとして、確かにこの店のラインナップは豊富。
 デュエルディスクにデュエルリング、果てはカードの開発&販売まで。

 恐らくこの店は経済効果が大幅に上昇しているだろう。
 更に店に連日訪れるデュエリストがこの店での出来事をネットに取り上げ、大繁盛となったのだ。

 だが、少し困った事も有る。
 この店ではスタンディングが殆どであり、高速のライディングデュエルは余り好かれていない。

 確かにライディングデュエルはDホイールを操って行うが故に操作が複雑。
 如何に『体感シュミレーション』を内蔵した装置を設置しているとは言え、それも使いこなせなければ其処までだ。

 結果ライディングは廃れる一方なのだ、


 「ライディングデュエルのシュミレーターは使われてないのか?」

 「ん〜〜〜ライディングは操作が難しいイメージがあるんか敬遠されとるのよ…楽しいのに。
  遊星を連れてきたんは、此処でCPU相手にデュエルしてもらって、ライディングの楽しさを教えて貰おと思たんや。
  まぁ、結果的にはCPUよりも良い相手が居るけどな。」

 はやての視線の先にはクロウ。
 つまりはそういうことだ。

 「つまり遊星さんとアニキでデュエルをしろと。」

 「そのとおりや!冴えてるなノーヴェ。」


 つまりはそういう事。
 ミッドの皆にもライディングデュエルの真の楽しさを知ってもらいたかったのだ。


 確かに良い手だろう。
 だがしかし、ソレをやるのがクロウと遊星。

 ともなれば当然…

 「ライディング体感シュミレーションデュエルか。
  そういや、随分長い事オメェとは本気のデュエルをしてねぇよな遊星!?」

 「あぁ、チーム戦のトレーニングが殆どだったな。」

 2人のデュエリストのデュエルスピリッツは即座に燃え上がる。

 如何やらこの店を訪れる客は、最高のライディングデュエルをその身で知る事になるかもしれない。



 遊星とクロウの間には不可視の雷が舞っている様だった。













   To Be Continued… 






 *登場カード補足