フォワード+クロウvsスターズ隊長組の模擬戦は…

 ハイペリオンスマッシャー!!

 「ブラックハリケーン!!」


 ――ドッガァァァァン!!!!


 …模擬戦と思えないくらい凄い事になっていた。
 なのはが撃てば、クロウのアーマード・ウィングが弾き飛ばす。

 その際に飛ばされる鉄の破片のような物体も、なのはは確り回避。
 どちらも決して退かない。

 「うらぁ…ブッとばせ!!」

 『Schwalbefliegen Claymore.』

 疾風のゲイルに力を半減させられたヴィータも、カートリッジを1発ロードして魔力を回復。

 「「ディバイン…バスター!!」」

 其れに対し、フォワード陣もスバルとノーヴェーがメインアタッカーとして活躍し、今までに無いくらい食い下がっている。
 凡そ模擬戦とは思えないが、ただ1つ――此れが終わった時には全員が大きくその力を伸ばしている事は間違いないだろう。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス81
 黒き翼と騎士と魔導師』











 「やるじゃねぇかなのは、アーマード・ウィングが放つ『楔』を尽く避けるたぁな。」

 「クロウ君も凄いね…私の砲撃と射撃が此処まで防がれたのははじめてかも。」

 言いながら互いに笑顔だ。


 そう、此れは模擬戦であって実戦では無い。
 故にこの強者同士のぶつかり合いには、自然と楽しさが生まれてしまうのだ。

 無論気は引き締めていても、本より強い相手ほど燃えるこの2人に楽しむなとは無理な話だ。

 「だが、アーマード・ウィングとシュラだけじゃお前は倒せそうにねぇ…だから見せてやるぜ俺の仲間達を!
  チューナーモンスター『BF−上弦のピナーカ』を召喚!」
 BF−上弦のピナーカ:ATK1200


 「そして、俺の場に『BF』が存在する時『BF−残夜のクリス』は特殊召喚出来る!」
 BF−残夜のクリス:ATK1900


 其れを示すように、クロウは新たなシンクロ素材を呼び出す。
 其れを見たなのはも、思わず期待してしまうのは仕方ないだろう。

 「新たにシンクロ…しかもレベル7の上級モンスターだね?」

 「おうよ…そしてコイツは遊星も知らない俺の新たな仲間だぜ!!
  レベル4の残夜のクリスに、レベル3の上弦のピナーカをチューニング!
  猛禽を操る漆黒の鷹匠よ、黒き羽を纏め上げ疾風を呼べ!シンクロ召喚、現れろ『BFT−漆黒のホーク・ジョー』!」

 『ウオォォォォォ!!』
 BFT−漆黒のホーク・ジョー:ATK2600



 降臨したのは漆黒の鷹匠。
 黒き羽飾りをその身に纏わせた、上級のシンクロモンスターだ。


 「漆黒のホーク・ジョー?」

 「遊星も知らないモンスターなん?」

 「あぁ…少なくとも以前のクロウのデッキには無かったモンスターだが……」

 「デュエリストの戦術は日々進化するって事やな。」


 遊星も知らないクロウの新たなモンスター。
 クロウもまた、遊星やジャックに負けまいと己のデュエルを進化させているようだ。

 「漆黒のホーク・ジョーの効果発動!
  1ターンに1度、手札か墓地から『BF』を特殊召喚出来る!来い『BF−下弦のサルンガ』!」
 BF−下弦のサルンガ:DEF500


 「全力で行くぜ!レベル4の蒼炎のシュラに、レベル2の下弦のサルンガをチューニング!
  黒き剣閃よ、空を翔る疾風となれ!シンクロ召喚、猛禽の勇士『BF−星影のノートゥング』!!」

 『キェェェェ…!』
 BF−星影のノートゥング:ATK2400



 「凄い…!シンクロモンスターが3体も…!これは負けられないね!」

 驚くなのはだが、此れが逆になのはの『不屈の闘志』に火をつけた。
 例え誰が相手だろうと決して臆さずに立ち向かう強靭な心がなのはの最大の武器。

 其れが入局後も事有る毎に発揮され、数々の事件解決に繋がっていた。
 そして、何時の頃からか局内でなのははこう呼ばれるようになったのだ――『不屈のエース・オブ・エース』と。


 そのエースに火が付いたとなれば此れはもう止まらない。
 模擬戦なのでデバイスのフルドライブこそ制限が掛かっているが、後は特に何も無い。
 カートリッジもハーフマガジン1本(4発)までは使用が許可されているのだ。


 と言う事はつまり…

 「行け、ホーク・ジョー!『アサルト・クロー』!」

 「アクセルシューター!」

 戦闘は更に派手に激しくなる。
 ホーク・ジョーの突撃に対して、なのはは誘導弾で迎え撃つが、その魔力弾を切り裂きなのはに一発!

 が、なのはもレイジングハートで其れを防いで槍術の要領で間合いを広げる。


 完全に互角。
 其れに驚いたのはフォワード陣だ。

 「クロウさん凄い…!」

 「あぁ、あのなのはさんと互角に渡り合ってる……と、ジェットキャノン!!」

 ヴィータの攻撃に対処しながらも、クロウの力量には舌を巻いていた。
 管理局でも『最強の一角』として名高いなのはと互角以上の戦いを繰り広げているとなれば其れも無理ない。

 「けど、相手はあのなのはさんだから油断は出来ないわね…
  よし――ノーヴェ、アンタはクロウさんの援護に!」

 その中にあって、ティアナは冷静に状況を分析してノーヴェに指示を飛ばす。
 フォワード陣の中では戦闘力はあまり高くなく、バックス能力としてもキャロには負けるティアナだが、状況分析判断能力はずば抜けている。

 言わば司令塔としてずば抜けた能力を有しているのだ――本人は気付いていないが。
 その能力は戦闘において極めて有用な力だ、隊を纏める事ができるのだから。

 「OK!クロウさんの負担を軽減してやるか!…行くぞジェット!」

 『All right.』

 ノーヴェもそれに従い、ジェット・エッジで急加速しクロウに合流しようと走る。

 勿論、ヴィータは其れを簡単にはさせない。

 「させるかよ!!」

 『Schwalbefliegen.』

 直射射撃で、進路妨害を試みる。
 だが!!

 「ワリィが、折角の援軍を邪魔されたくはねぇな!」

 「なに!?」

 その射撃は、クロウの『星影のノートゥング』が切り裂いて迎撃。
 状況を見極めて、なのはへの攻撃ではなくノーヴェの進路確保を優先したのだ。


 「助っ人に入ったのに、逆に助けられちまいましたか…」

 「ま、折角の援軍をミスミスなくせねぇからな……行くぜノーヴェ、付いて来いよ!」

 「クロウさんこそ、遅れないで下さいよ!」

 そして即刻意気投合!
 クロウとノーヴェは何処か似たところが有るらしい。

 即興であるにも拘らず、ノーヴェが徹底してなのはに喰らい付いて砲撃を撃たせず、其処にクロウのBFが追撃と言う見事なコンビネーションを発揮している。


 が、面白くないのはヴィータだ。
 無理も無い、疾風のゲイルに不覚を取り、今もまた進路妨害を妨害されたのだから。

 「…おいなのは、そいつ等の相手アタシにさせろ。」

 『え?』

 「良いようにやられっぱなしで終われるかよ!一発ぶっとばさねぇと腹の虫がおさまらねぇんだ!!」

 模擬戦だから言える事だろうが、実にヴィータらしい物言いだ。
 思わず通信先のなのはも苦笑してしまう。

 『ヴィータちゃんらしいなぁ…でも、確かにやられっぱなしは良くないよね!うん、交代!!』

 「おう!オメェは、スバル達に隊長の厳しさってモンをばっちし教えてやれ!!」

 通信を終えて、そのままフォーメーションを交代。


 「お?なんだよなのはと交代したのか?」

 「あたりめーだ!やられっぱなしで済ますかよ!!」

 「へ、そうこねぇとな!行くぜ、ノーヴェ!!」

 「応!」

 相手が代わってもやる事は変わらない。
 この模擬戦を制する、只それだけだ!

 「行け、星影のノートゥング!『ブラック・スライサー』!」

 「ジェットダスター!!」

 星影のノートゥングとノーヴェの同時攻撃がヴィータを襲う。
 だが、其処はヴィータ、其れを確りと防いだ上でアイゼンを振り回して蹴散らす。

 ノーヴェも寸でで直撃を免れ、ノートゥングも吹き飛ばされはしたものの破壊には至らなかったが、それでもヴィータのパワーは証明出来ただろう。

 「舐めんじゃねぇ!!アイゼン、ロード…シンクロカートリッジ!!」

 『Jawohl.Nachladen.』

 そして何かカートリッジをロードした瞬間、姿が変わっていた。
 髪は鮮やかな真紅になり、騎士服は漆黒。

 そう、その姿はシンクロした姿『鋼槌の騎士』だ。
 無論、遊星は何もしていない。
 つまり今のカートリッジにシンクロの効果が内蔵されていたのだ。



 「あっちゃ〜〜…アレの制限は言うてなかったなぁ……まぁ、えぇか何れ明かすつもりやったし。」

 「はやて、アレは?」

 「『シンクロカートリッジシステム』。シンクロ召喚のデータを詰め込んだプログラムカートリッジや。
  アレを使えば、私等も単体で疑似的にシンクロ時の能力を使うことが出来るんや…まだ試作段階やけどな。」

 「そうなのか……なら、後でそれを見せてくれ、実戦投入できるレベルに仕上げる。」

 「助かるわ♪」

 シンクロカートリッジ完成版はきっと直ぐに出来上がるだろう。
 不動遊星恐るべし。



 さて、模擬戦はそろそろ残り時間も10分と言う所。

 「シンクロカートリッジだと?…やってくれるじゃねえか!!」

 「まだ驚くなよ?この状態のアタシは、攻撃対象モンスターの効果を無効にする!
  無敵のアーマード・ウィングも、今のアタシには大したことはねぇ!!ぶっとびやがれぇぇぇぇ!!」

 『Raketen.』


 シンクロ状態の効果を全開にして、アーマード・ウィングをブッ飛ばす!
 無敵のモンスターも、効果を無効にされては抗えない。

 此処に来て初めてクロウのモンスターが消し飛んだのだ。

 「うおぉぉ…!く、やってくれるぜ!!」
 クロウ:LP8000→5500


 クロウも初めてのダメージに機体が揺れるが、転倒はせずに持ち直す。
 だが、その顔に恐れは無い。

 寧ろ、この状況を楽しんでいるようだ。

 「だがやられた礼は返すぜヴィータ!つーか、今ので良いことを思いついたぜ!
  俺はホーク・ジョーの効果で墓地の『上弦のピナーカ』を特殊召喚し、更に『BF−銀盾のミストラル』を通常召喚!」
 BF−上弦のピナーカ:ATK1200
 BF−銀盾のミストラル:DEF1800



 十八番の超高速展開で新たに2体のチューナーを揃える。
 となれば当然行うはシンクロだ。

 「オメェの本気を見せてもらったんだ、今度は俺のデッキの最強モンスターを見せてやるぜ!
  レベル6の星影のノートゥングに、レベル2の銀盾のミストラルをチューニング!
  黒き疾風よ、秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚、舞い上がれ『ブラック・フェザー・ドラゴン』!!」

 『ガァァァァァァァ!!』
 ブラック・フェザー・ドラゴン:ATK2800


 呼び出したのは己のデッキの最強の漆黒のドラゴン。
 圧倒的な存在感で場を制圧するようだ。

 そしてクロウの狙いはそれだけでは無い。

 「呼び出すのはブラック・フェザー・ドラゴンだけじゃないぜ!
  シンクロッてんなら、こう言うのもありだろ?遊星もリインフォースにやってたからな!
  俺はレベル3の上弦のピナーカを、ノーヴェにチューニングするぜ!!」

 「「な!?」」

 感覚で分ったデュエルのルール。
 ヴィータがシンクロカートリッジを使ったことで思いついた戦術――其れがノーヴェとのシンクロだ。

 「ちょ、クロウさん!?」

 「心配すんなって、俺を信じな!
  黒き衝撃よ、大地を砕いて烈風を吹き荒らせ!シンクロ召喚、駆け抜けろBFW(ブラック・フェザー・ウォリアー)−蹴撃のノーヴェ』!!」

 「ほ、本当にシンクロできた…」
 BFW−蹴撃のノーヴェ:ATK2300


 遊星が既に使ってる戦術だが、其れを感覚で覚えてしまうとは恐れ入る。

 シンクロした事でノーヴェはその力を増し、容姿も碧髪蒼眼に変化している。


 「シンクロさせるとはな…流石は遊星の仲間ってトコか?
  だが、それでも今のアタシには及ばねえ!」

 「慌てんなよ、シンクロしたノーヴェの効果が有るぜ?
  蹴撃のノーヴェが存在する時、俺の場の『ブラック・フェザー』と名の付くモンスターは全て攻撃力が800ポイントアップするぜ!」

 「全力で行こうぜ、皆!!」
 BFW−蹴撃のノーヴェ:ATK2300→3100
 ブラック・フェザー・ドラゴン:ATK2800→3600
 BFT−漆黒のホーク・ジョー:ATK2600→3400


 そしてこの局面でこの強化!
 本気の本気である事は確実!

 「…上等だ!やってやる…行くぞアイゼン!轟天爆滅!!」

 『Explosion.』

 エクスプロードシュラァァァク!!


 「ブラック・フェザー・ドラゴン!『ノーブル・ストリーム』!!」

 ディバイン…ブラックバスター!

 全力での一発!
 ぶつかれば、相当に衝撃波が発生するだろう。

 だが、其れがぶつかる事はなかった。


 「頼むぞ『蒼銀の戦士』!」

 『任せろ…絶気障!!


 遊星が『蒼銀の戦士』を呼び出し、その攻撃を止めたのだ。

 「「遊星!?」」

 「2人とも…時間だ。」

 「タイムアップや、模擬戦終りやで?」

 理由は単純時間切れ。
 総攻撃の正にその瞬間にタイムアップとなったために、遊星が止めたのだ。


 「時間…それじゃあしょうがねえ…時間切れ引き分けってやつだな?」

 「だな…けど次は負けねーぞ?」

 「ソレは俺も同じだぜ?」

 模擬戦が終れば、闘気も消える。
 再戦は何れ有るだろうが、その時は更に凄いことになるのかもしれない。








 ――――――








 「ほな、お疲れ様や……今日はフォワード陣もよくやったなぁ?
  勝てんまでも、時間一杯まで全滅せずに持ちこたえたのは初めてやない?」

 「あ、そう言えば…」

 模擬戦後の総評で、はやてはフォワード陣を褒めていた。
 初めての時間切れ引き分けともなれば此れは当然の事かもしれない。

 なんせ今までは最大で10分しか持たなかったのだから。
 其れが、時間一杯とは褒めるより他は無い。


 「其れからティアナも、今回はよく状況をみてたな。」

 「そ、そうですか?」

 「うん。高町一尉とクロウ君の戦いを見て、最も的確な援軍を送ったのはえぇ判断やったで?」

 「あ、ありがとうございます。」

 更に、結果として大きな役割を果たしたクロウ&ノーヴェ組を生み出したティアナを褒める。
 褒めて伸ばすがはやて流らしい。


 「ほな、今日の訓練は此処までや。
  各自確り休んで、もしもの時には直ぐに出動できるようにしておいてや?…では、解散!」

 「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」

 本日の訓練は終了し、フォワード陣は隊員宿舎へ。
 訓練場所には隊長陣と遊星、クロウが残った。



 瞬間、はやての雰囲気が変わった。
 フォワード陣を褒めた優しい隊長では無い……この雰囲気は一部隊を指揮し統括する司令そのもの。

 「ほな、此処からは私等の時間や――司令室に移動するで?」

 「…会議か?」

 「せや……此処の所多発しとる無人機の事件について、新たな情報が来たからな。」

 フォワード陣の訓練が終っても、司令と隊長の仕事はまだ終らない。

 寧ろ、此処からが本当のお仕事だ。



 果たして、司令室では一体どんな情報が齎されるのであろうか…













   To Be Continued… 






 *登場カード補足