「ん…」
只今AM6:00。
一般的には起きるには少し早いかもだが、はやては目を覚ました。
部隊の総指揮官という立場からスッカリ『朝は早起き』が地になっている。
本より9歳の頃から早起きはしていたので無理なことではない。
だが今朝は何時もとは様子が違う。
言わずもがな、隣で寝ている遊星の存在だ。
「…ホンマに戻ってきたんやね…」
昨日は10年の間にあったことを語り、結局日付が変わるまで話してしまった。
語りつくしたわけでは無いが、互いに睡魔に襲われそのまま就寝してしまったのだ。
「10年も待ったんやから、此れくらいはしてもえぇよね?」
少し身体を起こして、遊星の頬に唇を落す。
1秒にも満たないホンの数瞬だが、それでもはやての顔は紅い。
「はぁ…何時の日かホンマに出来る日がくるんやろか?」
ソレの答えは遊星次第だろう。
再びはやては、遊星の腕に頭を預け身体を横たえる。
10年振りの腕枕は捨てがたいものが有るのだろう。
遊星の腕枕を堪能し、はやてが行動を開始したのはそれからたっぷり30分後の事だった。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス79
『先ずは顔合わせです』
さて、隊長クラスの部屋ともなると一般隊員宿舎とは違い、シャワーとトイレのみならずキッチンまで完備されている。
多くはこの部屋を割り当てられてもキッチンを使うものはあまりいない。
だが、はやてはこのキッチンを最大限に使っている。
元々家事が得意な彼女にとってこのキッチンを使わない手は無い。
此れまでにもなのはやシグナム達に自分で作ったおかずを分けた回数は計り知れない。
「どや遊星?味のほうは…」
「あぁ、ドレも美味しい。はやては本当に料理の天才かもしれないな。」
そのはやては只今遊星と朝食の真っ最中。
ご飯に味噌汁、鯵の開き、納豆に焼き海苔といった純和食のメニューである。
本当に美味しそうに食べる遊星に、はやても笑顔だ。
思い人に手料理を褒めてもらえばソレは嬉しいに決まっている。
忙しい日々の貴重なゆったりタイムが、何時もよりも嬉しく感じるのは当然だろう。
そう、忙しいのだ。
新設部隊『機動六課』は兎に角『秒刻み』と言うのが誇張表現ではないほどに忙しい。
新人達の教育に模擬戦、事件捜査や時には現場に出て解決にも当たる。
こと事件捜査や現場に出ての解決に当たる場合は最高評議会派閥の要らん横槍にも注意しなくてはならない。
基本的には新人教育や模擬戦はなのはとヴィータが、事件捜査や現場解決にはフェイトとシグナムが当たっている。
が、総司令官であり部隊長であるはやては部隊全体を把握しておかねばならないために仕事は半端無く多い。
会議に重要書類の精査に六課を支援してくれてる外部機関との連携確認。
隊員達の休暇の割り振りを考え、更に身体が鈍らないように日々の自己鍛錬と偶の模擬戦だって欠かせない。
一部では『八神司令は眠らない』との噂まであるレベル。
それでもはやてが精力的に動けるのは日々が充実しているからだろう。
自分の、自分と仲間達の理想を現実にする為の忙しさなど大した疲労にはならないらしい。
――閑話休題
程なく食事も終り、これからその忙しい一日が始まるのだ。
後片付けを終えた遊星は部屋の外ではやてを待っている。
まぁ、はやても着替える所は流石にと言ったところか。
待つこと数分、六課の制服に着替えたはやてが御登場。
今日は六課メンバーに遊星とクロウを紹介し、それからトレーニングと軽い模擬戦というスケジュール。
隊長クラスにはその後で会議なんかがあるのだが…
「そや、遊星とクロウにも六課の制服用意した方がえぇよね?」
「……俺とクロウに似合うか?」
取り合えず制服の事をふってみる。
確かに六課に所属するなら部隊の制服は着るべきだろう。
が、似合うかどうかは又別。
実はザフィーラは制服ではなく騎士服で過ごしているのだ。
と言うのも、一度は制服を着たことがあったのだが――新人達が思いっきりビビッタのだ。
長身の褐色肌で筋骨隆々の銀髪ワイルド系イケメンのザフィーラだが、六課の制服を着た姿はヤクザの用心棒。
以降ザフィーラは制服を着ていない。
仕方ない、キャロに至っては少し泣きかけていたのだから。
そんなことがあったので『似合うか?』と問われるとはやても考えてしまう。
2人が六課の茶色い制服を着た姿を想像し……
「止めとこか…。クロウは下っ端チンピラみたいになってまうわ…」
「六課所属であることを示すワッペンでも有ると良いかもしれないな。」
「部隊章か〜…うん、考えて見る価値ありやね。」
会話も弾む。
後日、機動六課の部隊章が完成し、隊員全員に配られる事になる。
「今日は六課の子達と顔合わせと言うことだったが、昨日の子達か?」
「まぁ、そやね。他にもおるんやけど先ずは新人さんとな。
あ、それからレティ提督から辞令が降りて、正式に遊星は陸士三佐、アインスは空士三佐、クロウは一等陸士になったわ。」
「そうか…相変わらず仕事が早いなレティは。」
阻止レティの仕事の早さのおかげで、遊星達は正式に機動六課のメンバーに。
これで遊星達が動くのにも問題は無くなったわけだ。
取り合えずレティ提督お疲れ様である。
――――――
屋外の訓練施設に到着すると、はやてと遊星以外のメンバーは全員集合していた。
昨日の子達――スバル達が少し緊張した面持ちなのは、まぁ仕方ないだろう。
「うん、皆揃ってるな。と、固くならんでえぇよ、楽にしてや?」
ソレを解すのも部隊長の大切な務め。
まぁ、新人組――フォワード陣が緊張していたのは総司令たるはやてが現れたのもあるのだが。
「さて、今日は訓練の前に皆に今日付けで六課配属になった新しい仲間を紹介しようと思うんや。」
「あの、八神司令その人達はもしかして…」
「ん、良い勘しとるねノーヴェ。
せや、昨日皆に出動してもらって確保した人達や――まぁ、元々私等とは仲間やったんやけどね?」
「「「「「は?」」」」」
新たな仲間の紹介と言っても、フォワード陣は大体の予想がついていたようだ。
だがそれでも、隊長陣、更には総司令の仲間と聞けば驚くのは無理も無い。
「な、仲間ってどう言う事でしょうか?」
「言葉通りの意味だよティアナ。」
「遊星とアインスは10年前の『地縛神事件』の時にアタシ等と一緒に戦った仲間だ。
つーか、こいつ等がいなかったら多分地縛神事件は解決できなかったかもしれねぇ。」
「「「「「!!!」」」」」
更に衝撃。
『地縛神事件』は管理局内でも『特Aクラスの難事件』として扱われているのだ。
多くの隊員が(解決後に帰還したとは言え)犠牲になった最悪とされる大事件。
ソレを解決に導いた立役者達となれば驚きは更に大きい。
「大げさだなヴィータは、皆の力があればこそだろう?」
「俺は自分に出来ることをしたに過ぎないさ。
地縛神事件を解決できたのは、皆が最後まで諦めずに全力を尽くしたからさ。」
しかも偉ぶらない。
過ぎた謙遜は鼻につくが、遊星もアインスもソレがマッタク感じないのだ。
フォワード陣が尊敬の眼差しを向けたのも道理かもしれない。
「2人とも長期任務で出張中やったんやけど、帰還の時になにか問題起きたらしくてなぁ?
そんで、次元震起こして帰還言うことになってまったらしいんや……何が起きたんや?」
「早く帰ろうと思ってアクセルシンクロ使ったら次元が…」
「アホか!光速超えようとしたら、次元も捻じ曲がるわ!!
アクセルシンクロは任務で訪れた次元世界でも戦闘以外は使用禁止言ったやろ!」
「スマナイ、1秒でも早く皆の顔が見たかったんだ……5年以上の長期任務だったからな。」
そしてこのやりとり。
事前の打ち合わせなど無しで此れである――流石は遊星とはやてと言ったところか。
まぁ、フォワード陣を納得させるには充分な効果があったようだが。
「う、まぁそれなら仕方ないな……ほな自己紹介と行こか?」
流れるように事を進め、クロウに『頼むで?』とアイコンタクトすれば、クロウも『任せとけ!』と返す。
会ったばかりだというのに、この連携の良さははやてとクロウの人柄ゆえだろう。
「それじゃあ私から。リインフォース・アインスだ。アインスと呼んでおくれ。」
「リインフォース?…あの、もしかして…」
「そうですよ〜、リインのお姉ちゃんです♪」
先ずはアインスから。
リインフォースの名への疑問はツヴァイが解消。
まぁ、此れでアインスが『人でない』事は誰にも明らかだが、六課メンバーはそんな事は気にしない。
寧ろ仲間が増えて嬉しいと言ったところだ。
「クロウ・ホーガンだ、遊星とアインスに現地で協力してたモンだ、まぁ宜しく頼むぜ?」
続いてクロウ。
ぶっきら棒な物言いだが、それが逆に裏が無くて良い。
スバルとノーヴェは何処か頼もしさを感じているようだ。
そして最後は遊星。
「ふど………はやて。」
「ん?ドナイした?」
なのだが、自己紹介しようとして途中で止めてはやてを呼ぶ。
如何したのだろうか?
「俺はどっちで名乗ればいいんだ?」
「どっちて?」
「不動か八神か――前のときは『八神遊星』と名乗ったんだが…」
どうやら名前で悩んだらしい。
確かに以前は対外的には『八神遊星』と名乗っていたのだから無理も無い。
「ちょお待ってや……え〜と、レティ提督は『不動遊星』で登録しとるみたいやね。」
「そうか……不動遊星だ、宜しくな皆。」
レティが3人を如何登録したからを確認してから自己紹介。
今回は不動遊星で良いらしい。
さて、遊星達の自己紹介が終れば今度はフォワード陣。
なのはに言われて先陣を切ったのは…
「す、スバル・ナカジマです!宜しくお願いします!」
やや緊張気味だが無難な自己紹介。
だが、ソレは他のメンバーの緊張を解す結果だったようだ。
「ノーヴェ・ナカジマ――まぁスバルの妹だ、宜しくな!」
「ティアナ・ランスターです。
地縛神事件解決の立役者にお会いできるとは光栄です――宜しくお願いします。」
「エリオ・モンディアルです。」
「キャロ・ル・ルシエです、宜しくお願いします!」
次々と自己紹介。
全員の顔と名前を覚えるには十分だ。
「あぁ、宜しくな。」
3人を代表して遊星が言い、顔合わせは終了。
此処からは何時もの日常の開始だ。
「ほな、自己紹介は終ったから、今日のメニューを発表すんで――高町一尉。」
「はい、今日は此れより基礎訓練のフィジカルトレーニングを正午まで。
昼休みを挟んで、午後は模擬戦と、模擬戦の反省会となってます。」
仕事モードではきちんとメリハリをつけて呼び方も普段とは変わるらしい。
発表されたメニューは、まぁ比較的軽めなもの。
昨日初陣を飾ったフォワード陣の疲労を考慮しての事だろう。
だが勿論此れでは終らない。
「良いメニューやね。
やけど午後の模擬戦対戦は私が決めさせてもうらで今回は。」
はやてが午後の模擬戦に関して口出し。
此れは非常に珍しいことだ。
六課において、隊長陣が組んだ1日の予定にはやてが横槍を入れる事は先ずないと認識されている。
そのはやてが口出ししたと言うのは相当に何かあるのだろう。
「その模擬戦の組み合わせやけどな…フォワード陣+クロウvs高町一尉とヴィータ一尉や。」
「ほ、本気ですか八神司令!?」
「この人と一緒に…?」
その『何か』は実にとんでもない事だった。
六課最強の破壊力コンビとクロウを入れたフォワード陣という対決は模擬戦とは言え――
「良いじゃねぇか、やってやるぜ!」
クロウはマッタク気にしていなかった。
「クロウさん!?」
「相手が強くたって関係ねぇな、勝負に絶対はねぇ!
ソレになのはとヴィータだって完全無欠の完璧超人じゃねぇだろ?だったら行けるぜ!」
そして勝つ心算でいる。
自然、クロウとなのは&ヴィータの間には火花が散っているように見える。
『負けず嫌い』の代表格と言えるこの3人ならそうもなるだろう。
模擬戦は午後からだと言うのに、既にやる気は充分。
フォワード陣は困惑しているが、だがクロウの表情に頼もしさを感じている。
午後の模擬戦は荒れた展開になりそうだ。
そしてフォワード陣は知る事になる――デュエリストの強さと言うものを…
To Be Continued… 
*登場カード補足