其れははやてにとっては、物凄く永い時を経た再会だった。

 次元震観測の前に、痣が疼いたのは分った――なのはとフェイトも其れは同様だ。
 若しかしたらとも思った……そして其れは大当たり。

 ヘリから降りてきたのは、大好きな遊星だった。

 我慢は出来なかった…出来る筈もなかった。
 遊星の胸に飛び込み、抱きついてしまった。

 遊星もソレを受け入れて優しく抱き締めてくれた……ソレが嬉しかった。




 「え〜と…誰だ?」

 「八神はやて…我が主にして、遊星と共に戦ったお方だ。
  そして、一緒に居る3人の内2人も遊星と共に戦い、私を呪いから解放してくれた――勇者だ。
  残る1人も、バックスとしてとてもよく働いていた。」

 そしてその横では、クロウがリインフォースからはやて達の事を簡単に説明してもらっていた。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス77
 再会と新たな出会い』











 「えっと、ゴメン…つい興奮してもうたわ…」

 「いや、此れくらいは別に構わないが…」

 数分後、はやては漸く遊星から離れた。
 顔が紅いのは、思わず抱きついてしまった事に対してだろう。


 「はやては仕方ないよね?」

 「うん。だってはやてちゃんは…」

 「遊星にほr…「ハイ其処黙れやーーー!!」、見事な突っ込み♪」

 テスタロッサ姉妹となのはの攻撃もとりあえず鎮圧!
 大人になってもこの4人の関係は相変わらずのようである。


 「マッタク……改めておかえりなさい遊星、リインフォース…無事で何よりや。」

 「あぁ、ただいまはやて。」

 「只今戻りました…我が主。」

 改めて再会の挨拶。
 変な緊張が無いのは良い事だろう。

 「うん♪…んで、そちらの方は…」

 「クロウ・ホーガン。遊星のダチ公だぜ。」

 で、クロウも流れに乗って自己紹介。
 口調は荒いが、嫌味や威圧感を感じないのはクロウの人柄故だろう。

 「クロウさん?…初めまして、八神はやてです。」

 「高町なのはです。」

 「フェイト・テスタロッサです。」

 「アリシア・テスタロッサですっ!宜しくね。」

 「おう、宜しくな!って俺の事はクロウでいいぜ、大して歳もかわらねぇだろうしな。」

 ソレを皮切りに、はやて達も自己紹介をしていく。
 本より社交性の高いこの面子、打ち解けるのも早そうだ。




 さて、一通りの自己紹介が終ったとは言え、それでお終いとは行かない。
 如何に見知った仲とは言え、今は次元漂流者と管理局員と言う立場。
 一応形だけでも『事情聴取』はしておかねばならないだろう。

 「まぁ、立ち話もなんやし私の司令室に行こか?
  形だけでも事情聴取をした言うことにはせなアカンし、シグナム達にもそっちで待ってもらってるからな。」

 「やっぱりシグナム達も居るのか。」

 「皆、変わりありませんか?」

 「なはは、皆元気元気。特にヴィータなんかは元気が有り余ってるみたいやで?」

 「良いじゃねぇか、元気が有るって事はそれだけで大概の事を跳ね返せるってもんだろ?」

 尤も、はやては本気で『形だけ』で済ませる心算らしい。
 まぁ、さっきの少女達が『司令』と言っていた、ある程度の融通が利く地位なのだろう。


 「それにしても、皆大きくなったな…10年も経てば当然だが…
  なにより、はやては歩く事が出来るようになったんだな。」

 「まぁ、あの後少しずつ痺れがなくなってきて、そんで頑張ってリハビリした結果や。
  立てるようになるのに1年、杖使ったり壁伝いしないで歩けるようになるのに1年掛かったけどな。」

 「そうか…頑張ったな。」

 「お見事ですよ、我が主。」

 司令室に移動する間にも会話が弾む。
 特にはやては10年間に色々な事があったから幾らでも話が出てくるようだ。

 クロウはクロウで、なのは達と話している。
 なのは達も遊星に話したい事はあるだろうが、此処ははやての気持ちを汲んだと言うところだろう。

 「やっぱフェイトとアリシアは姉妹なのか。つーと、フェイトが姉ちゃんか?」

 「あ〜〜、やっぱり間違われた〜〜!私の方がお姉さんなの!」

 「な、そうなのか!?…す、すまねぇ!」

 「ふえ〜〜ん…小学校の頃は殆ど同じだったのに、フェイトってば中学で行き成り背が伸びるんだもん〜〜。
  初対面の人は絶対私が妹だって思うんだよね……小さいって辛い…」

 「アリシア…その気持ちは俺も分るぜ!」

 「クロウも?」

 「おう!俺と遊星とジャックもガキの頃は殆ど同じだったのに、俺は此処までしか身長伸びなくて仲間内でも小さくてよぉ。
  流石にアキよりはでかいが、アイツは踵が高い靴はいてるから目線は俺より上だしよぉ!!」

 「あ、アリシア、クロウ?」

 「あはは…みょ〜な友情が発生したの、かな?」

 で、クロウとアリシアに妙な連帯感が…

 「ゴッツ分るでその気持ち!!」

 訂正、はやても加わった。

 「はやてもか!」

 「せや!何ぼ小さい言うてもアリシアちゃんは150超えとるやん!私なんて150にすら届いてへんのやで!?
  せめて少しでも大人に見えるように髪をセミロングにしてみたけど身長は誤魔化せん!!
  この低い身長のせいで、一部の局員からは『ミニ司令』とか『チビたぬ司令』とか呼ばれとるし…ふざけんなやぁぁ!!」

 更に切実だった……まぁ、その渾名はないだろう…

 「はやては元気だな。」

 「…遊星、其れは少し違うと思う…」

 そして遊星はいつでも遊星だった。








 ――――――








 そんなこんなで司令室到着。

 「おかえり遊星ーーー!!」

 その扉を開けた瞬間に飛びついてきたのはヴィータだ。
 大好きなお兄ちゃんに甘えている様な光景は実に微笑ましい。

 ヴィータを片手で支えながら頭を撫でている遊星も相当だが。

 「あぁ、ただいま……皆も、久しぶりだな。」

 「10年ぶりだ…リインフォースも元気そうだな?」

 「元気だよ、将。シャマルとザフィーラも変わりないか?」

 「えぇ、こっちは皆元気よ♪」

 「……特に変わらずだ。」

 騎士達も10年ぶりになる遊星とリインフォースとの再会だ。
 落ち着いた対応は流石は大人同士の再会といったところ。

 ヴィータは…まぁ、仕方ないだろう。



 そして此処でも皆の視線は自然とクロウに集まる。
 遊星とリインフォースは知っているが、クロウとは初対面だからこの反応も仕方ないだろう。

 「遊星君、そちらの方は?」

 「俺の仲間のクロウだ。」

 「クロウ・ホーガンだ。ま、宜しくな。」

 矢張りクロウは何時も通り。
 何時でも何処でもこの調子と言うのもクロウの魅力なのだろう。


 「ヴォルケンリッターが将、シグナムだ。……ふむ、中々出来るなホーガン?機会があれば手合わせ願おう。」

 「鉄槌の騎士ヴィータだ。…うん、遊星の友達ってんならマトモそうだな…見た目はスゲェけど。」

 「盾の守護獣ザフィーラ。」

 「湖の騎士シャマルです。宜しくねクロウ君♪」

 その辺の凄さか、騎士達もクロウをスンナリ受け入れてくれた。
 特にヴィータが人見知りしないでと言うのは相当に凄い事だろう。


 「ほな…ってまだやな。え〜と…お〜い、何処行った〜〜?」

 「はい、此処に居るです♪」

 自己紹介も終りか――とも思ったがそうでは無いらしい。
 はやてが呼びかければ、室内のデスク椅子から女の子がその姿を現した。

 空色の髪と眼の女の子。
 はやて達と同じ茶色の制服に身を包んでいるが……その大きさは30cm程しかない。

 先ず間違いなく普通の人間では無いだろう。


 「妖精か?アイツもお前の仲間なのか遊星?」

 「いや…少なくとも俺は知らないな…」

 遊星にも見覚えがない。
 少なくとも砕け得ぬ闇事件解決時には居なかったはずだ。


 だが、リインフォースは違った。
 この小さな少女が誰であるのか、分ったらしい。

 「我が主…この子はまさか…」

 「流石に分るか?そうや……さ、皆さんにご挨拶やツヴァイ。」

 「はい、マイスターはやて。初めまして、リインフォース・ツヴァイです♪」

 そう、この子はリインフォース・ツヴァイ。
 闇の欠片事件が終った後に、リインフォースがはやてに示した『二代目祝福の風』だ。

 「ツヴァイ…あの時話していた後継機、リインフォースの妹か。」

 「妹って…如何なんでも小さすぎるだろ!…まぁ、似てるッちゃ似てるのか?
  髪と眼の色は、シンクロチューナーになった時のリインフォースソックリだぜ。」

 遊星もクロウも驚いたようだ。
 此れほど小さな女の子が、リインフォースの妹となればソレもまた当然かもしれない。



 「そうか…お前が。…初めまして、ツヴァイ。リインフォース・アインスだ。」

 「え?アインスって……若しかしてマイスターはやてが言っていた、私のお姉ちゃんですか!?
  ふわぁ!初めましてです、お姉ちゃん!」

 そして世にも特殊な関係の姉妹の初邂逅。


 はやてからリインフォース――アインスの事は聞かされていたのだろう。
 ツヴァイはそのアインスに会えたのが余程嬉しかったのか、飛びついて喜んでいる。

 その大きさゆえに、アインスの胸元にしがみ付いている状態ではあるが。

 「ふふ…成程、良い子だ。頑張っているようだな。」

 アインスも胸元に張り付いたツヴァイの頭を少し撫でてやっている。
 顔合わせは大成功といったところだろう。


 「うんうん、仲良いなぁ♪遊星とアインスも戻ってきてくれて嬉しいし、クロウって言う新しい仲間も居てホンマに良い日や。
  さてと……ほな、自己紹介と再会の挨拶も終わった所で本題と行こうかな。」

 はやての雰囲気が変わった。
 先程までの柔和で人当たりの良い女性ではなく、きりっと引き締まった雰囲気は正に『司令官』。

 自然と室内の空気も引き締まる。


 「本題…やっぱり事情聴取か?」

 「いんや…ソレより大事なことや。シャマル。」

 「はい!……通信妨害結界完了です。」

 事情聴取では無い。
 もし事情聴取ならシャマルに通信妨害の結界を張らせる必要は無いのだから。


 「結界?…一体なんなんだ、はやて?」

 「なぁ、遊星……おかしいとは思わへんかった?――何で私等が管理局で働いてるのか。」

 そして発せられたのは唐突な一言。


 が、唐突だが言われてみれば確かにおかしいかもしれない。
 地縛神事件の時に、ゴドウィンから管理局の思惑を聞かされ、はやても騎士達も管理局に良い感情は抱いていない。
 なのはとテスタロッサ姉妹も、ジュエルシード事件の事もあり同様だ。

 リンディとレティの派閥に属する者達(主にアースラスタッフの面々)は別として、
 それ以外の武装隊なんかはマッタク信頼もなにもしていなかったはずだ。

 ソレなのに管理局員。
 しかもはやては一部隊の司令官にまでなっているのだ。


 「そう言われるとおかしいな…何でだ?」

 「其れを今から話すで。」

 遊星もまた気を引き締め、はやての次の一言を待つ。

 はやても、ソレを感じたのか眼を閉じて息を吐くと…

 「私は――私達はな、遊星…」

 ゆっくりと眼を開けながら…



 「今の管理局をぶっ壊すために管理局に入ったんや。」

 成程通信妨害結界が必要な、トンでもない一言を言ってくれた。



 そして、遊星とクロウ、アインスは知る事になる。

 今の管理局が内包する闇を。



 ダークシグナーや地縛神をも上回る、業の深い闇を……















   To Be Continued… 






 *登場カード補足