赤き竜に導かれ、遊星、クロウ、リインフォースの3人は別の世界へと降り立った。
 其処は『ミッドチルダ』――リインフォース曰く管理局の本局が有る世界らしい。

 更にははやて達の魔力も感じると言う事から、遊星が以前訪れた世界と同じ世界軸なのだろう。


 「ミッドチルダ…地球じゃねえのか?」

 「あぁ、ミッドは地球とは異なる世界だ……尤も環境そのものは地球と大差ないがな。」

 クロウの疑問にも的確かつ分りやすく説明しているリインフォースは中々だろう。
 遊星も海鳴ではない事に驚いたようだが、はやて達が居ると聞いてある程度安心したようだ。


 だが、こういう場合は大抵『面倒な』事が起こると相場が決まっている。


 「!!クロウ、リインフォース!!」

 「んだよ、遊星……って、オイなんだこいつ等は!!」

 「無人の……機械兵か?」

 遊星達の前に現れたのは、分りやすくいうならば『ロボット』
 ソレも間違いなく無人で動くタイプの物だ。

 再会よりも前に、先ずはバトルとなるは必至だろう。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス76
 再会前に1バトル!』











 「こいつ等は一体…?」

 「良く分んねーが、少なくとも友好的な相手じゃねぇよな?」

 現れた機械兵は、如何見ても友好的存在に見えない。
 寧ろ遊星達を襲う気満々に見えてしまう。


 「切り抜けるしかないな……クロウ、エンジン全開だ、圧し通るぞ!」

 「はぁ!?圧し通るっつてもこいつ等は如何する!?」

 「この世界では、俺達のデュエルはそのまま戦闘手段になる。
  詳しい事は後で説明するから、今は俺の言うことを信じてくれ!」

 「遊星、クロウ来るぞ!!」

 録に説明も出来ていないが、機械兵は予想通り攻撃を仕掛けて来た。
 遊星達が何かした訳では無いのに襲ってきた所を見ると『特定の何か』に反応して戦闘行動を取るようにプログラムされているのだろうか?


 仮にそうだとしても『はい、そうですか。』と、大人しくやられてやる訳がない。


 リインフォースは飛行魔法で、遊星とクロウはDホイールのエンジンを噴かして機械兵の攻撃をかわす。

 「目的は知らないが、降り掛かる火の粉は払う――貫け、ブラッディダガー!」

 そして襲撃の返礼とばかりに先ずはリインフォースの射撃魔法で数体を撃破。
 尤も、ソレが引き金となって機械兵は遊星達を完全に『排除対象』と認定したようだ。

 だが、そんな事は関係ない。


 「お前達が何者の意志で動いているかは知らないが、俺達は簡単にはやられないぞ!ステラ!」

 『了解、戦闘モードオン、スピードカウンター初期値を5に設定します。』

 「俺のターン!『Sp−エンジェルバトン』を発動し、カードを2枚ドローして、その後手札を1枚捨てる。
  俺はボルト・ヘッジホッグを捨て――そしてチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 「ジャンク・シンクロンの効果で『ボルト・ヘッジホッグ』を守備表示で特殊召喚。
  更に墓地からモンスターの特殊召喚に成功した事で、手札の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!」
 ボルト・ヘッジホッグ:DEF800
 ドッペル・ウォリアー:DEF800



 すぐさまステラを戦闘モードにし、お得意の速攻でシンクロの準備を完了。
 ジャックとの全力デュエルを経て、遊星のデュエルタクティクスは更に磨きがかかっている。

 「レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし星が、新たな力を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!」

 『フゥゥゥ…トゥァァ!!』
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300


 呼び出したのはデッキの切り込み隊長『ジャンク・ウォリアー』。
 この流れなら相当に強化されるモンスターだ。

 「ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材に成ったことで、俺のフィールドに攻守400の『ドッペルトークン』が2体特殊召喚される。」
 ドッペルトークン:ATK400(×2)


 「そして、ジャンク・ウォリアーはシンクロ召喚に成功した時、俺の場のレベル2以下のモンスターの攻撃量の合計分攻撃力がアップする!
  2体のドッペルトークンとボルト・ヘッジホッグの攻撃力の合計は1600!『パワー・オブ・フェローズ』!」

 『オォォォォォ!』
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300→3900



 一気に最上級レベルのモンスターにパワーアップ!
 その勢いのまま、最も近くに居た機械兵を殴砕!

 実に見事である。


 そして、遊星がこれ程までに見事な一手を見せたとあってはクロウも黙ってられない。

 「マジでデュエルが戦いの方法なのかよ……へっ、この俺にはピッタリじゃねぇか。
  え〜と……成程、あの機械兵は敵モンスター扱いか……って事はだ!
  相手フィールドにのみモンスターが存在する時、『BF−暁のシロッコ』はリリース無しで召喚出来る!」
 BF−暁のシロッコ:ATK2000


 「更に、俺のフィールド上に『BF』が存在する時、『BF−黒槍のブラスト』『BF−疾風のゲイル』を特殊召喚出来る!」
 BF−黒槍のブラスト:ATK1700
 BF−疾風のゲイル:ATK1300


 遊星以上の『超速攻』で此方もシンクロの下準備を完了!

 「疾風のゲイルの効果…は、今はあんまし意味ねぇか。
  なら、レベル4の黒槍のブラストに、レベル3の疾風のゲイルをチューニング!
  黒き旋風よ、天空へ翔け上がる翼となれ!シンクロ召喚、出でよ『BF−アーマード・ウィング』!」

 『ハァァァァ!!』
 BF−アーマード・ウィング:ATK2500



 クロウもまた、特攻隊長とも言うべきモンスターを召喚。
 矢張りその勢いを殺さずに、一気に3体もの機械兵を粉砕!

 正に鎧袖一触。
 遊星、クロウ、そしてリインフォース――この3人にとって、この機械兵はさしたる脅威ではないようだ。








 ――――――








 遊星達が機械兵を撃滅している事、その場所に向かっている4人の少女と1人の少年の姿があった。
 5人の先頭を駆けるのはローラーブーツを履いた良く似た顔立ちの蒼髪の少女と赤髪の少女だ。

 「おいスバル、こっちで良いんだよな?」

 「ルートはあってるよノーヴェ、間違いない。」

 赤髪の少女――ノーヴェと蒼髪の少女――スバルはルートを確認。
 実はこの2人は双子である。
 如何やら行き先は遊星達のところのようだ。

 「八神司令が言うには『大丈夫かもしれない』って事だけど、次元漂流者はキッチリ保護しないとね。」

 オレンジ髪の少女――ティアナは冷静に任務を確認する。
 如何やらこの少女達は、八神司令――恐らくははやての部下に当たるのだろう。

 残る2人、紅髪の少年――エリオと、桃色髪の少女――キャロも緊張しながらも付いて行っている。


 目的地までは僅か。
 だが、目的地が近いと言う事は…


 『………!!』

 あの機械兵も居ると言うことに他ならない。

 遊星達のところに現れたのとは少し形が異なる機械兵が、スバル達の行く手を阻む。
 ともすれば、或いは排除するつもりなのだろう。

 「ガジェット!……ったく、うざってぇ!お呼びじゃねぇんだよこのポンコツ!」

 「悪いけど、構ってられないんだ!」

 が、この5人――特に先頭を行くノーヴェとスバルには脅威足り得ないらしい。
 と言うよりも、寧ろ只の邪魔者。
 進路妨害の大馬鹿者以外の何者でもない。

 スバルは拳で、ノーヴェは蹴りで殴殺!
 恐らくスバルの右腕のナックルと、ノーヴェのローラーブーツは『戦闘用デバイス』なのだろう。
 そうでなければ、この細身の少女が機械兵を体術で粉砕など出来る筈も無い。

 「粉砕!」

 「玉砕!!」

 「「大喝采ーーーー!!!」」

 尤もその2人は、今の撃破でテンション上がって居るらしい。
 双子ゆえに似ている部分はあるようだ。


 「…ティアナさん、アレって一体なんなんですか?」

 「司令も偶に模擬戦で広域魔法使った後に言ってますけど…」

 「知らないわ……少なくとも、司令にとっては馴染みのあるセリフなんだろうとは思うけど…」

 そのセリフが、とある『超有名人』の名言であるとは流石に分らないだろう。


 されど油断は大敵。
 機械兵は無数に居るのだ、2体撃破しても後続が来る。

 「マジでうざってぇ……雑草みたいに湧いて来やがって…」

 「ホントだよ…けど、アタシ達新人には良い実戦経験かも。」

 「そのポジティブシンキングは見習うべきだな、アタシもさ!」

 新たに現れる機械兵――ガジェットを、次々と撃破して行く。
 ティアナとエリオもソレに続き、キャロもサポーターとして支援に当たっている。

 この5人は中々のチームワークが出来ているようだ。


 尤も、それでもスバルが言ったように『新人』なのだろう、ソレ故の『荒』もまた目立つ。
 決して大きいものでは無いが、積もり積もれば隙となる。

 其処をガジェットが襲ってきた。


 「な!!」

 「しまった!…逃げろキャロ!!」

 狙いはキャロ。
 後方支援のこの処女が狙われるのは非常に不味い。

 更にキャロは、支援は得意でも自身の戦闘力は高くない。
 ガジェット一機でも充分な大敵だ。

 その魔の手が……


 「スクラップ・フィスト!!」

 「ブラック・ハリケーン!!」

 「ハンマーシュラーク!!」

 キャロに到達する事は無かった。


 遊星達が、こっちに来たのだ。
 奇しくも、全くの偶然だが遊星達とスバル達は邂逅した。

 スバル達にとっては『任務』の目的である者達と会えたわけだ。


 「無事か?」

 「え…あ、はい!」

 「良い返事だぜチビ嬢ちゃん、後は俺達に任せな!」

 遊星が無事を確認し、クロウが落ち着かせる。
 親友の見事なコンビネーションである。


 「一気に決めるぞ、クロウ!」

 「おう!言われるまでもないぜ!」

 そして殲滅宣言。
 シティの暫定トップとナンバー3のデュエリストはいつ何時でも全力で飛ばすのだ。

 「チューナーモンスター『マッハ・シンクロン』を召喚!」

 「チューナーモンスター『BF−空風のジン』を召喚!」


 マッハ・シンクロン:ATK0
 BF−空風のジン:ATK600



 そしてトドメは矢張りシンクロ召喚。
 2人とも夫々チューナーを呼び出し、準備万端だ。


 「行くぞリインフォース!マッハ・シンクロンをチューニング!
  集いし祈りが、此処に新たな希望となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!!祝福の風、『リインフォース・アインス』!」

 「さて、終らせようか?」
 リインフォース・アインス:ATK2500


 「レベル7のアーマード・ウィングに、レベル1の空風のジンをチューニング!
  黒き疾風よ、秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚、舞い上がれ『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 『ガァァァァ!!』
 ブラックフェザー・ドラゴン:ATK2800



 遊星はリインフォースを進化させ、クロウは黒翼の龍を呼び出す。

 攻撃力が3900にまで上昇したジャンク・ウォリアーに、シンクロチューナーとなったリインフォース。
 そしてシグナーの龍の1体であるブラックフェザー・ドラゴン……圧巻のそろい踏みだ。

 「これって…!」

 「まさか、八神司令が言ってた召喚獣?」

 スバル達も驚きを隠せない。
 恐らく話には聞いていたが実際に見るのは初めてなのだろう。


 「此れで終りだ、叩き込めジャンク・ウォリアー!『スクラップ・フィスト』!」

 「吹き飛ばせ、ブラックフェザー・ドラゴン!『ノーブル・ストリーム』!」

 「貫け光よ…ナイトメアハウル!!」

 ソレを他所に放たれた攻撃は、残るガジェットを爆砕。
 余りにもこの3人は強かった。


 「す、スゲェ…」

 「一撃でアレだけのガジェットを…」

 「あの人達は一体…?」

 疑問は尽きない。
 スバル達が保護しようとしていたのは間違いなく遊星達だろう。

 実際、そうであるのだが。

 少なくとも、スバル達は『助け出す』心算でいた。
 が、蓋を開けてみれば助けられたのはスバル達の方だ。

 後少しでも遊星達の介入が遅かったら、キャロはとんでもないことになっていたかも知れないのだ。


 だからと言って呆けてばかりも居られない。
 任務はこなさねばならないのだ。

 「あの…此方は時空管理局『機動六課』のスバル・ナカジマです。
  次元震が観測され、其処に3つの生体反応があったので、保護の目的で来たのですが…取り合えず同行をお願いしてもいいでしょうか?
  一応ですが、次元漂流者は保護・確保した場合、管理局にお連れしなくてはならないので…」

 だが、あくまでも丁寧に対応は基本だ。
 少なくとも、彼女達は『一部』の局員の様に高圧的な態度で迫る事は無いようだ。


 「時空管理局……すまないが、クロノ・ハラオウン執務官に連絡は取れるか?
  彼と俺は知り合いだから、話が通れば早いんだが…」

 「はい!?く、クロノ執務官――もといクロノ提督にですか!?
  す、スイマセンが無理です!わ、私達の上司を介してなら可能ですが、マダマダ私達では直接には…」

 「…そうなのか?…そっちの方が手早くて良いと思ったんだが仕方ないか。」

 で、遊星の言った事に大慌て。
 クロノは相当高い地位に居るのだろうか?

 何れにせよ、遊星やリインフォースの知る時代から進んだ時代である事は間違い無さそうだ。


 「…つー事で、悪いんだが私等と一緒にヘリで六課まで来てもらう事に成るんだが…乗り物平気だよな?」

 「当たり前だろ?俺も遊星もDホイーラーだぜ?」

 トントン拍子に話は進む。
 取り合えず、一行は『機動六課』なる部隊へ連れて行かれるのだろう。


 普通だったら警戒ものだが、スバルの屈託の無い態度と、ノーヴェの裏の無い物の言い方に『警戒必要なし』と思ったらしい。
 スバル達も、遊星とクロノが知り合いだという事実、そしてクロウのサッパリした態度にすっかり警戒心が霧散したようだ。

 特に問題も無く、六課移送は決定。


 1分もしないでヘリが到着し、遊星達はスバル達と共に時空管理局・機動六課へ。




 「へ〜〜〜…結構発展した街なんだな?シティと良い勝負だぜ。」

 「首都のクラナガン周囲は特に発展してるんだ。」

 「治安も悪くないし、過ごしやすいと思いますよ?」

 ヘリ内部での会話も、至極平和な雑談。
 互いに警戒も何も無い。


 会ったばかりだと言うのに、クロウとスバル、ノーヴェはすっかり打ち解けてしまっている。
 この辺はクロウの人柄ゆえだろう。

 遊星やティアナは殆ど喋らないが、険悪では無い。
 寧ろ、クロウ達を見て『ヤレヤレ』と言ったところだろう。




 そして空を飛ぶ事10分。

 ヘリは大きな建物のヘリポートに到着。
 恐らく此処が時空管理局なのだろう。


 先ずはスバル達が降りて、ヘリポートで待っていた彼女達の上官に敬礼。

 「スバル・ナカジマ以下5名、次元漂流者3名を無事確保しました!」

 「ご苦労様、よく出来ました。」

 その上官の1人、であるサイドテールの女性がスバル達を労う。

 「此処から先の事は、私達で処理します。
  貴女達は、隊員宿舎に戻って任務の疲れを癒して下さい。」

 「食堂にも話通しといたから、すきっ腹も癒してあげてね♪」

 更に2人の金髪の女性も労う。
 そして…

 「ほな、皆お疲れ様や。初陣にしても見事な働きやった。」

 最後の1人――小柄な女性が総評して纏める。
 恐らくは彼女が機動六課とやらで最も高い地位に居る存在なのだろう。

 という事はつまり……



 ともあれ、漂流者を降ろさねば話は進まない。
 解散前に、スバル達が遊星達にヘリから降りるように言って、そのままスバル達は解散。


 「此処が時空管理局…」

 「そう、そして機動六課の総本部や。」

 ヘリを降りた遊星の呟きに、小柄な女性はそう答える。
 その声は、一件落ち着いているように聞こえる。

 だが、そうでは無いのだろう。
 女性は…他の3人もだが、何処か緊張しているらしい。


 「え?」

 「まさか…!」

 そして、遊星とリインフォースは目の前の4人に驚いたようだ。
 何故ならその4人はよく知っているから。

 よく知っている少女達とあまりにも似ているから。



 「まさか……はやて、なのか?」

 「うん………10年ぶりやね、遊星、リインフォース!」

 問えば、間違いない。
 目の前の女性達は、成長した八神はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサだった。


 「遊星さん、リインフォースさん…おかえりなさい。」

 「本当に、又会えたね遊星…」

 「2人ともおかえり!皆待ってたよ!」

 口々に遊星とリインフォースの『帰還』を喜んでいる。
 はやては言うまでもないだろう。


 「10年?…こっちではそんなに経っていたのか…」

 「ウン…ずっとずっと、待ってたんやで?」

 「…あぁ、待たせてスマナイ。」


 其処までが限界だった。

 「遊星!!」

 突然はやてが飛び出し、遊星に抱きついた。
 小柄なはやて故に、遊星も難なく受け止める。


 「はやて?」

 「ゴメン…せやけど今はこうさせて…ずっと待ってたんやもん。……けど、おかえりなさい――遊星…」

 「…あぁ、ただいま――はやて。」

 身体を預けてくるはやてを、遊星も優しく抱き締めてやる。
 別れの時と同様に……



 遊星からすれば約1年、はやてからすれば実に10年ぶりに、世界を救った2人の英雄は再会したのだ。


 再び巡り会った絆を紡ぐ決闘者と最後の夜天の主。
 この再会が、新たな物語の幕開けとなるのだった…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足