「此処とは違う地球で、しかもゴドウィンや遊星の母ちゃんまで飛ばされてて更に地縛神にシグナーってよぉ…」

 「俄には信じがたい事だけれど…」

 「遊星は意味のない嘘はつかんからな…其れに5000年の時を超えたシグナーと地縛神の戦い。
  更にイリアステルのような未来からの使者が居ると言う事を考えると、平行世界もあながちないとは言い切れん。」

 コンドミニアムにて、遊星は赤き竜に連れられた世界での事をジャック達に話していた。
 その世界で何があったのか、そして自分と一緒に居るカードの精霊達はなんであるのかも全て。

 「けどよ遊星、おめぇ自分の母ちゃんと逢えてやっぱ嬉しかっただろ?」

 「あぁ、其れはな。…ただ、俺と母さんは飛ばされる前の時間軸が違うから親子と言うほど歳は離れてなかった。
  俺が19で母さんは27だったからな…正直『母さん』と言うよりも『姉さん』と言った感じだったかな。」

 突拍子もない話だが、仲間の誰もが其れを嘘だとは断じなかった。
 遊星の真剣な語り口に、何よりも其の世界で紡いだ仲間の絆の証しのカードがあるのだ、否定は出来ない。


 『そうか…君もこの世界のシグナーなのか。君もまた『小さな勇者』だな。

 「勇者だなんて…遊星達が居たから頑張れたの♪」

 で、龍可とリインフォースは何か仲がよくなっているようだった。
 積もる話は終りを見せず、結局丸一日話す結果になるのであった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス72
 『進むべき己が道は?』











 ――半年後・モーメント開発機構


 遊星がシティに戻ってきて早半年。
 この半年でチーム5D'sの面々も夫々が夫々の道を歩いていた。

 アキは学生、ジャックは修行の旅で、龍可と龍亞は小学生ライフ。
 クロウに至っては何とセキュリティの捜査官見習いだ。

 そして遊星は、このモーメント開発機構で新たなモーメントの開発を行っていた。

 今日は其の起動実験の日。
 研究に研究を重ね、従来のものよりもより安全で高出力のモーメント。

 ゾーンが示した絶望の未来を回避するための一手と成る大事な機関だ。


 「チーフ。」

 「あぁ、始めよう。モーメントメインフレーム『夜天』起動。」

 遊星の号令で新生代のモーメントが起動を開始。
 ゆっくりとそして確実に起動し、ドンドン其の回転数は上がって行く。

 「メインフレーム回転率85%。安定回転に入りました。」

 「よし、続いてサブフレーム『烈火』『鉄槌』『蒼狼』『癒風』『祝福』を起動。」

 安定回転に達したのを確認し、今度は5基のサブフレームを起動。
 このサブフレームこそが遊星が提唱した新たなモーメントの形だ。

 メイン一本で統一するのではなく、サブフレームを使っての安定制御を狙ったマッタク新しい発想。

 其れは見事に大当たり。
 起動したサブフレーム5基も安定稼動に達し、新世代のモーメントは此処に誕生したのだ。

 「リインフォース、モーメントの状況は如何だ?」

 『委細問題ない。全てのフレームが安定稼動をしている。
  マッタク不思議なものだ、この世界で私の成すべきことが未来を担う装置の開発の手伝いだったとはな。

 そしてもう一つ、大きな役割を果たしたのがリインフォースだ。
 カードの精霊と化した彼女は自らモーメントの内部に入り込み、システムのチェックや制御を行っていた。

 夜天の魔導書の管制人格であるリインフォースにとって、此れくらいの事は造作もない。

 赤き竜がリインフォースをシティに連れて来たのは、破滅の未来回避の確率を上げるため。
 未来を担う次世代のモーメントをより安全かつ、安定したものにする為だったのだ。


 メインフレームとサブフレームの名称は、遊星なりのちょっとしたお遊び。

 海鳴での最高の仲間の別称をこの世界にも残したかったのだ。

 『メインフレームを補佐するサブフレームか…我が主と其れを護る騎士達にそっくりだな。

 「だろうな。実は其処からヒントを得たんだ。」

 『矢張りそうだったのか。我が主と騎士達が聞いたら喜ぶだろうな。

 「そうだと良いな。」

 モーメントはメインフレーム、サブフレームともに順調稼動。
 独特の光もドンドン其の輝きを増して行く。


 「……モーメント、メインフレーム及びサブフレーム全機回転率100%。起動……成功です!!」

 そして全機フル回転。
 開発室内は一気に大歓声に包まれる。

 開発メンバーの阿久津が超高速回転(毎秒8回転)しているのは最早お約束だ。


 「やりましたねチーフ!」

 「あぁ、だが未だフレームだけだ。これからこのモーメントの力をシティ全体に渡る様にしないとな。」

 すべき事はまだ有るが、それでも開発成功は喜ばしいこと。
 遊星の顔にも自然と笑みが浮かんでいる。

 「遂にやりましたね遊星…いえ、不動博士と呼ぶべきでしょうか?」

 其処に現れたのはイェーガー。
 治安維持局が解体され、この度初代のネオドミノシティ市長になった男だ。

 「イェーガー……よしてくれ博士だなんて。皆の力を合わせて出来た事さ。」

 「貴方ならそう言うと思いました…ですが、此処に居る誰もが貴方の力と存在の大きさを認めています。
  私個人としては、貴方にはシティで暮らし、永くこの街の為に力を貸してほしいのですが…其れは私が決めることでは有りませんね。」

 「イェーガー?」

 「いえ、つまらない事を言いました…忘れてください。」

 何気ない会話。
 だが、其の中でイェーガーが発した何気ない一言が、実は結構遊星には重く響いていたのだった…








 ――――――








 「自分の将来…か。確かになんとも言えねぇよな。
  俺だって今こそセキュリティで働いてるが、此れが未来永劫続くかと言われりゃ答えられねぇからな。」

 数日後、チーム5D'sの本部として機能していたコンドミニアム、通称『ポッポハウス』にはジャックを除いたメンバー全員が集まっていた。

 遊星の提案で皆で食事でもと言う事で久々の集合なのだ。
 因みにメニューは炭火のバーベキューで、料理を担当したのは遊星。
 はやてから教わった味付けも試した力作である。

 さて、そんな食事の中で話題は『これから』について。
 何気なく遊星がふったのだが、此れが以外に食いついてきた。

 「まぁ、此れもやりがいはあるけどよ…何だかんだ言っても、やっぱり俺にはデュエルが一番合ってるしな。」

 「やっぱりそうよね…けど、私も悩んでいるわ、進むべき道を…」

 将来の事とも成れば悩むのもまた当然だろう。
 まぁ、誰しも悩んで、悩みぬいた末に答えを見つけるわけなのだが…

 「2人ともプロリーグからオファーが来てるんだろう?俺のところにも来た。」

 「遊星にも?」

 「って、まぁ当然か俺にも来てるんだからな……ったく呆れちまうぜ。
  プロに進みてぇ気持ちはある、けど今のこの仕事も途中じゃあ…優柔不断だよな…」

 更にプロからのオファーも来ているのが最大の悩み。
 デュエルの道を進むなら迷わず選ぶべきだろうが、遊星はモーメント開発者として、クロウはセキュリティとして働いている。
 其れを今辞めてプロに進むというのは、気が引けてしまうのだ。

 「私もプロに進むか…それとも今目指している医者への道を進むか迷っているの。
  本当、デュエルしている時みたいにスパッと決められれば良いんだけど、そうはいかないわね。」

 思わず苦笑いしてしまう。
 そして悩んでいるのは、何もこの3人だけでは無い。

 「遊星もクロウもアキ姉ちゃんも、悩んでるんだ…」

 「なんだよ龍亞、お前等も悩み事か?」

 「うん…お父さんとお母さんが『一緒に暮らさないか?』って言ってるんだけど…如何しようか悩んでるの。」

 龍亞と龍可も子供なりに悩みがあったようだ。
 永い事別々に暮らしていた両親と今から一緒に暮らすというのも中々大きな決断なのだろう。

 「それに、俺も龍可もまだ皆と離れたくないってのもあるんだ。」

 「そうか……中々難しいな。……ん?」

 食事しながらだが、色々と難しい話だ。
 そんな中で、遊星が何かに気付いた――と言うよりも気配を感じたと言ったほうがいいだろうか?

 海鳴での2つの事件を通して、遊星の感覚は非常に鋭くなっている部分があるのだ。

 「どうかしたか遊星?」

 「…誰かこっちに……微塵も隠そうとはしない馬鹿正直な闘志は――ジャックか!」


 ――ブロロロロロロロ!!


 言い終わると同時に、遊星の言ったとおりにジャックが現れた。
 真っ白なホイール・オブ・フォーチュンを駆っての御登場である。

 「ジャック、久しぶりだな。」

 「あぁ、久しいな遊星。お前等もな。」

 Dホイールを降りるなり、挨拶もそこそこに良い感じに焼けてる肉を手にとって食べる辺りは流石と言うか何と言うか。
 まぁ、デュエル修行の旅から帰ってきたのだから腹も減っているのかもしれない。


 「時に、お前達は何時まで此処で立ち止まっているつもりだ?」

 「あ?立ち止まってるだと?」

 「立ち止まっているだろう!クロウも十六夜も、そして遊星、お前も!
  俺達は既にチームとして世界の頂点に立った!ならば今度は個人で、どんな形でアレ頂点を目指すべきだろう!
  それなのに何を細々と悩んで立ち止まっている!悩む暇があるのなら一歩を踏み出すべきだろう、俺の様にな!!」

 其のジャックの一喝は結構皆に響いた。
 確かに、ジャックは既にプロ行きを決め、仲間内では誰よりも早く将来の道を決めている。

 故にこの一喝は非常に説得力があるだろう。
 『悩むよりも先ず進め』、至言だろうがそう出来る人間の方が少ないのも事実だ。

 だからこそ人は悩むのだから。


 この一喝で場の空気が微妙なものになってしまうのは仕方ない。


 「…ジャック、デュエルをしよう。」

 が、其れを吹き飛ばすのは勿論遊星。
 デュエルを申し込んで、微妙な空気を動かしてくれた。

 「ほう?修行を積んだ俺に挑むか遊星!」

 「あぁ。悩んだ時には此れが一番だし、デュエルは何時だって俺達を導いてくれたからな。」

 「ふ、そう来なくてはな!!」

 デュエリストにとってデュエルは人生そのもの。
 其れを行うことで悩みを吹き飛ばして解消するのはある意味で最良の手だろう。


 「遊星とジャックが…」

 「「デュエル…」」

 「うっわ〜〜楽しみ!!」

 クロウ達もこの2人のデュエルには興味が沸く。
 現状シティの暫定トップ2のライバル対決は、矢張り燃えるだろう。

 微妙な空気は一変、デュエルへの期待感で一杯になったようだ。








 ――――――








 
――明朝


 チーム5D'sの面々は河川敷の一画に集まっていた。

 これから遊星とジャックのデュエルが始まるのだ。

 「ジャック、お前とこうしてデュエルするのはフォーチュンカップ以来だな。」

 「そうだな…今回は負けんぞ遊星!」

 「俺だって負けないさ。」

 遊星もジャックも既に準備は万端。
 ステラとホイール・オブ・フォーチュンのエンジンも良い感じに温まっている。

 『やる気充分ですねマスター。』

 「あぁ、このデュエル必ず勝とう!」

 『了解です。』

 ステラもすっかりやる気のようだ。

 「デバイスと言ったか?……改めて不思議なものだな…」

 「ジャックのDホイールもデバイスに改造するか?」

 「……考えておこう。」

 若しかしたらシティに気軽に持ち運べるDホイールが生まれるのも遠くないかもしれない…

 兎も角準備は完了!
 龍亞もスタートの合図用にチェッカーフラッグを持って待機している。

 「それじゃあ、始めようかジャック!」

 「来い遊星!!」

 龍亞を見やり…

 「行くよ、遊星、ジャック!!ライディングデュエル…アクセラレーション!!」

 フラッグが上がると同時に猛ダッシュ!
 先ずは河川敷の長いストレート、其処からレーンに入るための最初のコーナーが勝負だ。

 尚、デュエルの様子はクロウのブラックバードのモニターで観戦できるようになっている。



 遊星とジャックは略並走状態。
 マシン性能も略互角でライディングテクニックも互角。

 となれば後は気迫だが其れもまた互角。
 ファーストコーナーは目の前。

 「先行は貰うぞジャック!!」

 其の直前で遊星の気迫がホンの少しだけジャックを上回ったのだろう。
 鋭くコーナーに切り込み先攻を取ったのだ。

 「ほう…悩んでいたにしてはやるな遊星!」

 「デュエルに成ったら悩みは置いておくさ…行くぞ!」


 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000   SC0
 ジャック:LP4000   SC0




 「俺のターン!自分フィールド上にカードが存在しない時、手札の『アサルト・シンクロン』を特殊召喚できる!」
 アサルト・シンクロン:ATK0


 「そして『スターブライト・ドラゴン』を召喚!」
 スターブライト・ドラゴンATK1900


 先攻を取った遊星は、行き成りシンクロの素材をそろえてきた。
 1ターン目からレベル6のモンスターをシンクロ召喚するのか?…否!

 「スターブライト・ドラゴンは召喚に成功したとき、俺のフィールドのモンスター1体のレベルを2つ上げる!
  この効果でアサルト・シンクロンのレベルを2つ上げ、レベルを2から4に変更する!」
 アサルト・シンクロン:Lv2→4


 真なる狙いは此れ。
 此れによりチューナーと非チューナーのレベル合計は8!
 となれば呼び出されるモンスターは1体しか居ない。

 「レベル4のスターブライト・ドラゴンに、レベル4となったアサルト・シンクロンをチューニング!
  集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!!」

 『クァァァァァァ!!』
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 1ターン目から降臨した遊星のエース。
 白銀の星龍、スターダスト・ドラゴン。
 先攻ターンは攻撃できないが、初っ端からの此れは正に全力だろう。

 「カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 そしてリバースを2枚。
 どんな時でも抜かりは無いのが遊星だ。


 「俺のターン!」


 遊星:SC0→1
 ジャック:SC0→1



 一方のジャックは超攻撃型。
 例えリバースが有ろうとも、臆せずに圧倒的パワーで圧して来るタイプだ。
 それ故に、2枚のリバースが有ろうとも攻め手が緩む事は無い。

 「相手フィールドにシンクロモンスターが存在する時、手札の『シンクローン・リゾネーター』を特殊召喚出来る!」
 シンクローン・リゾネーター:DEF100


 「更に相手フィールド上のモンスター…お前のスターダストのレベルを1つ下げ『スター・ゲイザー』を特殊召喚!」
 スター・ゲイザー:DEF0
 スターダスト・ドラゴン:Lv8→7



 「この効果で特殊召喚したスター・ゲイザーは、レベルを下げたモンスターのレベルと同じレベルになる。
  レベルを1つ下げられたスターダストはレベル7!スター・ゲイザーもまたレベルが7となる!」
 スター・ゲイザー:Lv1→7


 ジャックもまた速攻でレベル8のシンクロを可能にしてきた。
 遊星がエースを呼んだのだ、ジャックだって負けていられない!

 「レベル7となったスター・ゲイザーに、レベル1のシンクローン・リゾネーターをチューニング!
  王者の鼓動、今此処に列を成す。天地鳴動の力を見るが良い!シンクロ召喚、我が魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」

 『バオォォォォォォ!!!』
 レッド・デーモンズ・ドラゴン:ATK3000



 真紅の炎を纏って降臨したは紅き悪魔龍。
 ジャックのエース、レッド・デーモンズ・ドラゴン。
 此方も全力だ。

 「遠慮なく行くぞ遊星!
  レッド・デーモンズで、スターダストを攻撃!『アブソリュート・パワー・フォース』!!」

 『ゴォォォォォ!!』


 そして即攻撃。
 紅蓮の炎を宿した拳がスターダストを襲う。

 が、

 「トラップ発動、『スター・エクスカージョン』
  シンクロモンスター同士がバトルを行うとき、互いのモンスターは除外され、3回目の相手のバトルフェイズ終了時に夫々のフィールドに戻る!」

 其れは通さない。
 バトルを行おうとしていた2体の龍は時空の渦のようなものに巻き込まれ其の姿を消す。

 「レッド・デーモンズとスターダストが消えた…?」

 「あぁ、2体は夫々の未来へと消えた!」

 「未来…」

 「このデュエルは只のデュエルじゃない…そう、此れは俺達の未来を占うデュエル!
  俺は見つける、このデュエルで自分の進むべき道を!!」


 そう、このデュエルは只のライバル対決に有らず。
 己の未来を、進むべき道を見つけるためのデュエルなのだ。


 「ならば見つけてみせろ遊星!カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 「あぁ、必ず見つけてみせる!!俺のターン!!」


 遊星:SC1→2
 ジャック:SC1→2



 其のデュエルはまだ始まったばかり。
 果たしてこのデュエルには如何なる結果が待っているのだろうか…?



















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 シンクローン・リゾネーター
 レベル1    闇属性
 悪魔族・チューナー
 相手フィールドにシンクロモンスターが表側表示で存在する時、このカードは特殊召喚出来る。
 このカードはアドバンス召喚のためにはリリースできない。
 ATK100    DEF100



 スター・ゲイザー
 レベル1    水属性
 悪魔族・効果
 このカードは相手フィールド上のモンスターのレベルを1つ下げて特殊召喚出来る。
 この方法で特殊召喚した場合、このカードのレベルは、このカードを特殊召喚するためにレベルを下げた相手モンスターのレベルと同じになる。
 ATK0    DEF0



 スター・エクスカージョン
 通常罠
 シンクロモンスター同士が戦闘を行う場合に発動できる。
 戦闘を行う互いのシンクロモンスターをゲームから除外し、バトルフェイズを終了する。
 このカードを発動してから3回目の相手のバトルフェイズ終了時に、除外したシンクロモンスターを夫々のフィールド上に戻す。