最大の一撃で発生した閃光。
 其れに飲まれたディアーチェとU-D。

 其の光の強さから2人が如何なったのかは分らない。


 「私、見てきます!」

 「なのは…!私も!!」

 「遊星!」

 「あぁ、俺達も行こう!」

 其の閃光の中で何が起きているのかを確かめるべく、遊星、はやて、なのは、フェイトも閃光の中に。
 果たしてディアーチェとU-Dはどうなったのだろうか?












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス70
 『戦いの果てに…』











 閃光の内部、ひたすら真っ白な空間をU-Dは地表に向かって落ちていた。
 エクザミアが停止し、身体は飽和攻撃の影響でボロボロ。

 最早自力で飛ぶことも出来ない状態だ。


 「…私は壊れたのでしょうか?」

 「戯け、壊れてなど居らぬ。」

 そんなU-Dをディアーチャが優しく抱きかかえ落下をとめる。
 U-D程では無いがディアーチェとてボロボロ。
 最大の一撃の余波は半端ではなかったようだ。

 「王…?」

 「シンクロした我の効果でお前を破壊しなかったのだ……まぁ、その代わりに我がダメージを受けたがコレくらいは予想の範疇よ。」

 「……私は…助かったのですか?」

 「うむ。飽和攻撃でエクザミアを停止し、其の間に我が機能の上書きをする。
  どこぞの夜天の小鴉が、夜天の融合騎に対して行った戦術よ――二番煎じゆえ余り誇れぬがな。」

 優しく微笑みながら、ディアーチェはU-Dに状況を説明。
 U-Dも其れを黙って聞いている。

 「レヴィの出力とシュテルの制御、そしてゲイルが残した絆の力があってこその戦術よ。
  他の連中も……無いよりは…いや、違うな…大いに助けてくれた……コレもまた絆か…」

 「王…」

 「我等は元々1つだったが、何の因果か5つに分かれてしまった。
  惰眠をむさぼり、探すのに手間取り…随分待たせた。だが、これからはずっと一緒だ。」

 「……王…」

 「ふぅ…お前は我等が盟主ぞ?王などと呼ばず、名前で呼べ。」

 まるで子供に語りかけるように優しい声色だ。
 口調は何時も通りだが、ディアーチェは真にU-Dの事を思っているのだ。

 「…ディアーチェ…」

 「うむ…其れでよい。
  我が王でディアーチェ、シュテル、レヴィ、ゲイルの3人が我が臣下、そしてお前が我等の盟主だ。」

 「ディアーチェ?」

 「…無理に思い出さずとも良い。思い出す必要も無い――やっと会えた、それだけで充分よ。」

 閃光は少しずつ晴れてきている。
 遊星達との合流も、もうすぐだろう。

 「と、そう言えばシュテルの奴がお前の名を思い出してな。」

 「名前…ですか?」

 「U-D等と言う無粋な名では無いぞ?…ユーリ・エーベルヴァイン、其れが人として生まれたときのお前の名だ。」

 「ユーリ…エーベルヴァイン……はい…いい名ですね…」

 「そうであろう?…さぁ、しばし眠れ。目が覚めたらお前には新しい世界が待っている…」

 「…はい…」

 全ての呪縛と悲しみから解放されたU-D改めユーリは、ディアーチェの腕の中でしばしの眠りに。
 其の表情はとても穏やかだ。


 「U-D!」

 「ディアーチェ!」

 「王様、ヤミちゃん!!」

 「無事だったか!!」

 同時に遊星達が駆けつけ、自体を確認する。
 尤も確認するまでも無く、平穏であるが……

 「うぬ等か…見ての通り我等は健在よ。」

 「「「よかったぁ…」」」

 「…怪我は…いや、大丈夫そうだな。」

 取り合えず一安心だ。


 「U-Dも大丈夫そうだね?」

 「む…それだがな、コイツの事はU-Dなどと呼ぶなよ?こやつの名はユーリだ。」

 「ユーリ?」

 「ディアーチェがつけたの?」

 「リインフォースのときと同じか?」

 で、ユーリの名前に関して少しばかり……結局ディアーチャは詳細は語らなかったが。


 「ほなアースラに戻ろか?疲れたやろ?」

 「そうするか…ユーリを休ませてやらねばならぬからな。」

 「安心してや王様、ちゃ〜〜んとリンディ提督に話し通しとたから。」

 「…ふん、まぁ、其の手際のよさは評価してやろう。」

 「お褒めに預かり光栄やで♪」

 アースラ帰還の時でもはやてとディアーチェは相変わらず。
 此れはコレでいい関係だろう。








 ――――――








 こうして、後に『闇の欠片事件』と呼ばれる一件は解決した。
 其の全てが終った後のアースラでは…


 「はぁ…疲れたぁ…銀十字『回復促進モード』お願い。」

 『了解しました。』


 「や、やっと少し楽になってきた…」

 「あう〜〜…クリス〜…」

 『⊂((。。⊂))』

 「ティオもお疲れ様でした…」

 『にゃ〜〜…』

 未来組がすっかりへばっていた。
 まぁ、訳も分らず時間旅行をして、更に其の先でトンでもない戦いに巻き込まれればこうもなる。
 戦いが終わって気が抜ければ一気に疲労が出てくるのもいた仕方ないだろう。


 「んだよ、未来からの連中はだらしねぇな?」

 「にゃはは、まぁ仕方ないよ。でも、未来からの人なんて不思議な感じなの。」

 「そうだな。だが、あの一番小さい子はお前の娘だそうだが?」

 現地組は余裕そのもの。
 コレも経験の差だろう。

 「うん。本当だったらあんまり関わっちゃいけないんだろうけど…」

 「あ、小さいママ〜♪」

 「は〜い♪」

 「ってメッチャ仲良いじゃねぇかよ!!」

 それでも未来組とは巧くやっているようだ。
 尤も、余り深く関わるのは確かに良くないだろう。
 アミタとキリエからも『未来の人との接触は程々に』と言われているのだ。

 「あはは…なのはちゃんとヴィヴィオは仲えぇな。
  まぁ、私としてはトーマが何で私をあんなに怖がってるかを知りたいんやけどなぁ?」

 「いぃ!?」

 …本当に未来ではやてはトーマに何をしたのやら…

 「ま、其れは言わないほうがいいわね〜。未来の事なんて知らないほうが良いのよ。」

 キリエに注意されてしまうが、分っていても『ちょっとだけ』と思うのは人の性だろう。
 戦闘が終わって、改めてゆっくりと治療とエネルギーの充填をしてもらい、アミタとキリエもすっかり元気だ。

 「未来の事は分らないから良いんです。
  だから、私達が元の世界に戻る際にこの事件の記憶は皆さんの中から消す事になると思います。」

 「事件の事、全部忘れちゃうんですか?」

 「其れはちょっぴり残念〜。」

 で、未来世界へのパラドックス回避の意味を籠めての『記憶消去』。
 余り良いものでは無いが、時間も次元も超えて現れた存在を鮮明に覚えているのも良くない。

 同様に、未来の人間が『話しでしか知らない過去を実際に体験した』と言うのも問題があるだろう。
 これも仕方の無い処置だ――アリシアは特に残念そうだが。

 「全部忘れると言うのも良くないので『こんな事件があった』程度には覚えているようにしますね?」

 「私とアミタは、え〜っと…『管理外世界』だっけ?其処から来たって事になると思うわ。」

 もう、着々と準備も進んでいるらしい。
 が、アリシア以上に記憶の消去を残念がってる者もいるわけで…

 「えぇ〜〜それじゃあアミタさん達のザッパーから得られた未知の技術の記録も廃棄なんですか〜〜!?」

 マリーである。
 技術者である彼女からすればアミタ達の武器から得られた技術情報は正に『宝』だっただろう。
 しかし、記憶消去ともなればそれらも抹消は必然!
 『諦めろ』?…無理な話だろう。

 「仕方ないさマリー、彼女達の技術はモーメント以上に謎な部分も多い。
  事件の大筋以外を覚えていないのにそんな技術記録だけが残ったらおかしな事になる。」

 「うぅ…師匠〜〜…」

 「それにそんなものが残った所でどうせロストロギア扱いさ、面倒な報告書類が増えるだけだ。」

 「クロノ先輩〜〜…あう〜〜残念だけど諦めます〜〜」(T‐T)

 …本気で残念な様である。
 嗚呼マリエル・アテンザに幸あれ…



 と、

 「おい〜〜〜っす!戻ってきたよ、オリジナル!それからあいしあ!」

 「レヴィ!」

 「アリシアだってば!!」


 「シュテルも、戻ったんだ!」

 「はい、おかげさまで。」


 「ゲイルも大丈夫そうだな?」

 「あぁ、今すぐにでも疾走決闘したいくらいだぜ。」

 マテリアルズ登場。
 ユーリとディアーチェも一緒だ。

 「ユーリも、もう良いみたいやね?」

 「はい…色々とご迷惑をおかけしました。」

 「えぇよ、もう終わった事やしね――で、皆はどないするの?」

 ユーリもすっかり元気になったようだが、其れはソレとしてマテリアルズの今後は気になる。
 『闇の欠片事件』の時から求めていた『砕け得ぬ闇』はユーリとして一緒に居る。
 一応当初の目的は果たした訳だが…

 「ウム、それなんだがな……砕け得ぬ闇を手にした暁には、我はこの世界を蹂躙してやる心算だったのだが…」

 「うんうん。」

 「この世界は我等が暴れるにはちと狭すぎるのでな?
  ユーリの復活を記念して、我等は赤毛とピンクの世界へと侵攻することにした!」

 「おぉ〜〜、流石は王様!支配対象は異世界までもやな!」

 「ハッハッハ!当然だ小鴉!!」

 恐らく蹂躙や侵攻は本気で言ってるわけでは無いだろう。
 だからはやてもかる〜い感じで返しているのだ。

 尤もアミタとキリエの世界――エルトリアへの渡航は本当らしい。

 「実はユーリがエルトリアの復興を手伝ってくれるって言うんです。」

 「紫天の書に記録された魔法が、役に立つかもしれないってね?」

 「そうなんだ…偉いねユーリ♪」

 「いえ…そんな…」

 その提案者はユーリ。
 『壊すことしか出来なかった力』を今度は『誰かの役に立つ力』としたいのだろう。
 なのはに褒められて照れているが満更でも無さそうだ。

 「あ、でもそうなるとシュテルとの模擬戦…」

 「ソレはいずれ…そうですね、貴女が大人になった時にでもという事にしておきましょう。」

 「そっか…永遠に逢えない訳じゃないモンね。」

 「俺達のデュエルもお預けか…」

 「そうなるな…だが、今度戦うときには更に磨き上げた俺のフィールをぶつけてやるぜ。」

 「あぁ、楽しみにしている。」

 ただ、そうなるとなのはとシュテルの模擬戦、遊星とゲイルのライディングデュエルはお預けだ。
 今から――ではとてもじゃないが時間がない。
 何時になるかは分らないが、この再戦の約束がそのまま再会の約束になるだろう。

 「う〜〜ん…でもレヴィって復興の役に立つの?」

 「む、しつれーだぞあいしあ!えるとりあには危険でつよーいモンスターもいるんだって。僕はソレをやっつける!」

 「それならエルトリアの人たちの役にも立つね。」

 「ソレに、地下迷宮とかも一杯有るらしいから面白そうだし!」

 「「……結局は其処なんだ…」」

 テスタロッサ姉妹をレヴィはこんな感じだ。
 フェイトもアリシアもすっかりレヴィの性格は馴れてしまったらしい。

 「なんや〜永い事逢えなくなるん?さみしいなぁ?」

 「ふん、我はお前の気の抜けた声を聞かずに済むがな………まぁ、無ければ無いでツマランだろうが…

 「も〜、王様素直や無いなぁ?もうちょっと素直になっても良いやん、私等姉妹みたいなモンやし♪」

 「おぞましい事を言うな!誰と誰が姉妹だ!!」

 「『お姉ちゃん』て呼んでもえぇんよ?」

 「だ・れ・が呼ぶか!!もう、我慢ならん!喰らえ我が覇道の一撃を!!」

 「みゃぁ!おすひゃま、いりゃい、いらい!!」

 はやてとディアーチェも何だかんだで仲が悪いわけでは無いだろう。
 仰々しい事は言っているが、要はディアーチェがはやての頬っぺたを引っ張っているだけである。



 もう逢えない訳では無いが、逢える確証も無い……別れを惜しんでいるのだ。
 それでも時間は止まらない。


 アミタとキリエが言うには、『本来この時間軸に存在しない未来の人物や、異世界の人物が余り長居するのは良くない』との事。
 そうなると平行世界の地球から来た遊星の特異性はものすごいことなのだが…

 遊星の事には触れていない辺り、現地人認識なのだろう。



 未来からの遡行組はアミタ達がエルトリアに帰る途中の次元時間軸の各所で送っていくことになっている。
 次元航行はアミタ制御、時間航行はキリエが制御し、ユーリとマテリアルズは其のサポートらしい。



 アースラ内部で帰還の段取りを決め――







 遂に帰還の時が、別れの時がやってきた…






 一行が集まったのはアースラのブリッジ……ではなく海鳴臨海公園。
 この場所を希望したのははやて、なのは、フェイトとアリシアだ。
 『どうせならお別れは綺麗な景色の見える場所で』との事らしい。

 無論公園全体をシャマルが結界で覆って一般人が入らないようにしているのはお約束。


 「「「「「「それじゃあお世話になりました!」」」」」」

 アミタとキリエ、ヴィヴィオとアインハルト、トーマとリリィは丁寧にご挨拶。
 ユーリとシュテルは無言でお辞儀。

 「フン…まぁ礼を言っておいてやる。」

 「じゃーね〜〜!!」

 ディアーチェとレヴィは何時も通り。
 で、ゲイルはと言うと…

 「こいつをお前に預けるぜ遊星。」

 「カード?……『閃滅龍 スターブレイカー』?此れは…」

 「俺が復活した時に生まれたカードなんだが…お前に持っていて欲しい――お前流に言うなら俺との絆の証ということでな。」

 「あぁ、ありがたく受け取っておく。」

 偶発的に生まれたカードを遊星に託していた。
 遊星も断る理由は無いのでソレを受け取る――デュエリストにとってカードは絆そのものなのだ。


 「それじゃあそろそろ…!ってちょっと待って下さい!何か巨大なエネルギーが!!」


 …そして別れは何時だって突然だ。
 そう――本当に突然なのだ…



 ――キィィィン…


 「「「「!!!!」」」」

 アミタが叫んだ直後に、遊星、はやて、なのは、フェイトの痣が眩く輝きだした。
 そして…


 『クァァァァァァァァァ…』

 「赤き竜!!」

 現れた『赤き竜』。
 遊星をこの世界に連れて来た張本人が、其の姿を現したのだ。

 「赤き竜…コレが…!」

 はやて達も初めて見るソレに驚いているようだ。

 「…そうか…」

 遊星は、何故赤き竜が現れたのか、大凡の自体を分っているようだった。

 「……はやて、皆――どうやらこの世界での俺の役目が終ったらしい……お別れだ。」

 「「「「「「遊星!?」」」」」」
 「遊星君!?」
 「遊星さん!?」

 そう、赤き竜は遊星を迎えに来たのだ。
 遊星を連れて来たのが赤き竜なら、元の世界に帰すのもまた赤き竜と言う事。

 「遊星…」

 何れは別れが訪れる事は分っていた。
 だが、此れは余りにも突然すぎるだろう。

 中でもはやては特にだ。
 突然の別れ――寂しくない筈が無い。

 ずっと1人で居たところにある日突然現れた遊星。
 その日からずっと一緒に居てくれた、何時でもはやての事を考えていてくれた。
 地縛神事件の時には身体を張って助けてくれた、共に戦ってくれた。

 そして何時の頃からか芽生えた淡い恋心…

 はやての中で、遊星はとても大きな存在なのだ。


 「はやて…」

 「大丈夫や、大丈夫やで遊星。
  寂しくない言うたら嘘になるけど――きっと、また逢えるやろ?」

 それでも涙は流さず、笑顔で遊星を送ろうとしている。
 9歳の少女なのに余りにも気丈だろう。

 だが、遊星もそんなはやてに『我慢しなくていい』等と無粋な事は言わない。
 言わない代わりに、しゃがんで目線の高さをあわせ――其の小さな身体を優しく抱き締めた。

 「遊星…!」

 「あぁ、必ず逢えるさ……例え離れ離れになっても俺達の絆は繋がっている。
  この絆が有る限り必ず又逢える、俺はそう信じている。」

 「うん…そうやな…絆が繋がっていれば又逢えるな…必ずな…!」

 はやても小さな腕を背に回して遊星に抱きつく。

 「さよならは言わへんよ……又逢えるからな…」

 「あぁ……いつかまた、な。」

 抱擁を終え、遊星は今度は見送りに来ていた沙羅とゴドウィンを見やる。
 シティに戻るのならば、或いはこの2人もと言う事だろうが…

 「私達は此処に残りますよ遊星。」

 「ドミノシティでは私とレクス君は『死亡』扱いでしょう?
  死んだ事になってる人が居たら、おかしな事になってしまうから。」

 「母さん、ゴドウィン………そう、かもしれないな。」

 沙羅とゴドウィンは要らぬ混乱を避けるためにこっちに残るようだ。
 遊星もその理由は確りと理解しているようだ。


 『クァァァ…』


 赤き竜から光が伸び、遊星に降り注ぐ。
 いよいよと言う所だろうが……其の光は何故かリインフォースにも降り注いでいる。

 「!!待って、なんでリインフォースまで!?」

 当然はやては…いや、ヴォルケンリッターの面子も、なのは達も驚きだ。
 が、当のリインフォースは微塵も慌ててはいない。

 「…成程な…。我が主、どうやら遊星の世界で、私の力が必要な事態が有るようです。
  必要とされているなら私はソレに応えたい……遊星と共に行くことをお許しいただけないでしょうか?」

 何故か…分ったのだ、自分が連れて行かれようとしている理由が。

 「リインフォース…」

 「私は元々があらゆる世界を旅し、其の知識を記録する魔導書です。
  遊星の世界の知識もまた記録できるかと……私の魔導書としての本分を果たさせてはいただけませんか?」

 「………ふぅ…えぇよ、行っておいでリインフォース。
  ずっと人に言われるがままやったんやから、少しくらい我侭言うてもバチはあたらへん。
  やけど約束や――必ず帰ってくるんやで?」

 「はい…誓います、夜天の光に懸けて。」

 そしてはやてもソレを許可。
 珍しく『我侭』を言ったリインフォースに反対に嬉しさを感じていたのだ。

 光はいよいよ強くなる。
 同時にアミタ達の方も渡航のためのエネルギーが高まっている。


 「もう、時間だな……俺は必ず戻って来る!又逢おうぜ皆!!」

 「騎士達と小さな勇者達よ……しばし我が主を頼むぞ!」

 先ずは赤い光が弾け、遊星とリインフォースが赤き竜と共に消えた。

 「エルトリアの復興が出来たら、必ずまた来ますね!」

 「バイバイ、ママ!未来で待ってるね!」

 続いて時間と次元を超える魔導が発動し、アミタやヴィヴィオ達が消えた。

 事件の激しさを考えると余りにも別れはアッサリしていた。
 だが、ソレが逆にいいのかもしれない。


 「又逢おうな遊星……約束やで…」

 右腕の『ドラゴンウィング』を眺めながら呟いたはやての一言は誰の耳にも止まることは無かった。








 ――――――








 こうして終った闇の書を発端とする一連の事件。
 事件後、関係者達はどうなったのだろうか?――少しソレを見てみよう。





 ――2006年・海鳴市・翠屋


 店内にははやてとなのは、テスタロッサ姉妹が集まり軽いお茶会の真っ最中。
 話の内容は『砕け得ぬ闇』事件だ。

 「でも不思議な事件だったよね?ソレに凄かったなぁ…あの変身して戦う格闘技の強い子。」

 「なのははあの子の事お気に入りだね?」

 「うん、もう名前も顔も思い出せないんだけど、凄く印象に残ってるんだ〜。」

 取り留めない会話だが、コレも平穏の証だろう。

 「はやては大丈夫?遊星とリイン居なくなっちゃったけど?」

 「大丈夫やでアリシアちゃん。そら寂しくない言うたら嘘やけど、遊星は又逢える言うてたしリインも必ず戻ってくる言った。
  あの2人は嘘だけは絶対に吐かへんから……せやから大丈夫や♪」

 はやても其の顔に悲しみは無い。
 寧ろ『何時か再会した時の為に、確りした人間になろう』という決意すら感じる。


 この少女達はきっとこれから先、いい成長をして立派な大人になって行くだろう。











 ――新暦79年・ミッドチルダ中央市街地の公園


 「それにしても不思議ですね、2人で同じ夢を見るなんて…」

 「はい。ですがとても貴重な体験だと思います。」

 其の公園で、ヴィヴィオとアインハルトは日課のトレーニングの真っ最中。
 軽いランニング中の会話はどうやら『砕け得ぬ闇』事件の事。
 未来組は『不思議な夢を見た』という感じに記憶操作をされたようだ。


 「ヴィヴィオ〜、アインハルトちゃ〜ん!」

 そんな2人を呼ぶ声。

 「あ、ママ〜〜!」

 其の声の主はなのは。
 13年が経ち、美しい女性へと成長したなのはだ。

 「頑張ってるね、そろそろ休憩にしようか?」

 「うん!あ、ノーヴェ達もそろそろ来ると思うよ?」

 「そう思って、今日のおやつは増量で〜す♪」

 「やったーー♪」

 手にしたバスケットには美味しそうな手作りのおやつが一杯。
 頑張っているヴィヴィオ達の為に作ってきたのだろう。

 「アインハルトちゃんも一緒にどうぞ?」

 「あ…はい、頂きます。」

 此方も平和であるようだ。









 ――新暦82年・ミッドチルダ時空管理局『特務六課』隊長室


 「訓練するのはかまわねぇ…自己鍛錬は大いに結構だ…」

 「けどな…訓練施設壊すなって何度言ったら分るんだオメー等は!!」

 「「「すいません!!!」」」

 トーマとリリィ、アイシスの3人は絶賛お説教の真っ最中。
 3人の真正面に居るのは大人になったはやて。
 小柄だが、此方も大人のなのはに負けず劣らずの美人さんに成長しているようだ。

 そして、トーマ達を怒鳴りつけた人物。
 1人は赤い髪が特徴的な少女――ヴィータだ。
 そしてもう1人は逆立った髪の毛と、顔中のマーカーが特徴的な青年クロウ。
 どうやら未来ではクロウもはやて達とのかかわりがあるようだ。

 「はぁ…局の施設は市民の皆さんの税金の一部でまかなわれとる言うたよね?
  夢で良いコンビネーション思いついたからって試すのは良いけど、壊すのはアカンよ?
  何度も言うてるのにコレで何回目や?…うちの子等はその辺の頭弱いんかなぁ?」

 「ひ、否定できません!!」

 戦々恐々である。
 トーマがはやてを怖がっていたのにはちゃんと理由があったようだ。

 「まぁ、向上心が有るのは良いことやし……そやな、折角やから其のコンビネーション見せてもらおか?」

 「「「へ?」」」

 「この後高町教導官と模擬戦の約束してるんよ?やから一緒にやろか?(物凄く良い笑顔)

 「「「!!!」」」


 ――八神司令と高町教導官と模擬戦て…撃墜されまくるんだろうなぁ…


 事実上の『お仕置き』なのだが、それでは終らない!


 「だったらコンビネーションの長所と短所も分らなきゃだよな?
  ソレが終わったらアタシとクロウがみっちりコンビネーションのチェックをしてやるよ。」

 「ヴィータの攻撃と俺の『BF』に何が有効で何が不利なのかを先ずは覚えろな?」

 更にヴィータとクロウからも。
 此れは覚悟を決めるべきだろう。


 ――マジで?つーかクロウ教官が居たらこっち3人でも意味ねぇよ…
    とほほ…スウちゃん助けて……は、くれねぇよな…自業自得だし…


 嗚呼頑張れ若人よ、其の苦労はきっと将来役に立つ筈だ。









 ――暦不明・エルトリア



 エルトリアでは明けても暮れても復興、復興、又復興!
 それでもコレまでと比べれば明らかに其の復興は進み、星の崩壊も止まり始めていた。

 其の功績者はユーリとマテリアルズ。
 彼女達の存在と魔導が復興を大きく前進させているのだった。

 ユーリとディアーチェは復興計画の立案。
 シュテルは知識面、ゲイルは技術面での協力。
 レヴィは人里に現れたモンスターの退治だ。

 それらは目に見えて効果が現れていた。


 そしてある日、アミタとキリエは小高い丘にある小さな石碑の前に来ていた。

 「エルトリアの復興、大分進みましたね。」

 「そうね…コレなら博士も天国で喜んでくれてると思うわ。」

 其の石碑は2人の父親である『グランツ・フローリアン』の墓だ。
 結局病床から回復する事はなく、彼女達が帰還してから2年後に帰らぬ人となった。

 それでも自分の娘2人が2年の間にエルトリアの再生を目に見える形としてしてくれたことに満足して逝ったらしい。


 「エルトリアの復興はマダマダ掛かります…でも、私達は止まりません。
  あの時力を貸してくれた多くの人達のためにも!」

 「そうよね…地球の皆に恥ずかしくないような世界にしなくっちゃ!」

 「そうです!…今日も頑張りましょうキリエ!」

 「えぇ、エルトリアに綺麗な花を咲かせましょ♪」


 何時の日か、エルトリアは復興し、花と緑が溢れる世界になっていることだろう。








 そして…



 ――2021年・ネオドミノシティ『???』


 ――シュゥゥゥン…


 赤き竜に連れられ、遊星は戻ってきた――リインフォースという仲間と共に。

 だが少しおかしい。
 降り立った場所は見知っているがシティそのものでは無い。

 アチラこちらに瓦礫や何やらが散乱している大きな部屋のようだ。


 『遊星、此処がネオドミノシティなのか?

 「いや…」

 リインフォースも疑問顔。
 遊星自身も何故こんな所に出たのか分らない。


 ――この瓦礫の山は……ソレにこの広さ……まさか!!



 だが、周囲の様子を観察し、此処がどこだか分ったようだ。


 「此処は…アーククレイドル!!」


 シティに戻ってきたのは間違いない。
 だが、降り立ったのはネオドミノシティ市街ではなく、ゾーンとの最終決戦の地――アーククレイドルだった…














   To Be Continued… 






 *登場カード補足