第2チームとU-Dの戦力は拮抗状態となっていた。


 暴走し力を増したU-Dの攻撃は、その全てが一撃必殺レベル。
 だが、遊星の鉄壁のディフェンドタクティクスと、ヴィヴィオの卓越したカウンターブローでクリーンヒットは無い。


 反対にアミタとディアーチェ以外の全員がシンクロし、その力を増したが暴走したU-Dに攻撃が通りきらない。
 一方的に掻き消される事こそ無いが、殆どが相殺されてしまい決定打を撃ち込むには至らない。


 余り時間は掛けられない。


 ――普通に攻撃していたんじゃU-Dには届かない。
    もっと――破壊力の高い思い切りの良い一撃じゃないと…


 その中で遊星は頭をフル回転させて戦術を組上げてイク。
 今の手札、場の状況を計算し、幾多もの戦術が構築され、シュミレートされる。


 ――俺のスピードカウンターは12で固定、そしてこの手札なら!
 「俺は手札からスピードスペル『Sp−エンジェルバトン』を発動する!」


 どうやら状況打開の一手が思いついたようだ。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス68
 『限界の無い可能性』











 「カードを2枚ドローして、その後手札を1枚捨てる!…俺は『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に送る!
  更に2枚目の『Sp−エンジェルバトン』を発動!2枚ドローし、『シールド・ウィング』を墓地へ!
  そして、チューナーモンスター『デブリ・ドラゴン』を召喚!」
 デブリ・ドラゴン:ATK1000


 「デブリドラゴンの効果で、墓地の『シールド・ウィング』を特殊召喚する。」
 シールド・ウィング:DEF900


 「俺のフィールドにチューナーが存在する時、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚出来る!」
 ボルト・ヘッジホッグ:DEF800


 1枚のスピードスペルから一気に展開!
 チューナー入れたレベル合計8。

 間違いなくエクストラデッキに戻した『アレ』を召喚するつもりだ。

 「レベル合計8…!遊星、あの子やな!?」

 「あぁ、この状況を打開できるのはアイツしか居ない!
  レベル2のボルト・ヘッジホッグとシールド・ウィングに、デブリ・ドラゴンをチューニング!
  集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 『クァァァァァァァ…!』
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 烈風を引き裂きながら、星屑の龍が降臨!
 遊星が最も頼りにしている仲間であり、破壊に対して絶対無敵の力を発揮する守護の銀龍だ。

 だが、如何にスターダストと言えど攻撃力は2500――シンクロしたはやてやなのはの攻撃が通りきらないU−D相手には少々心許無い。

 が、遊星の狙いは只スターダストを召喚するだけにあらず。
 この世界に於いて、デュエルモンスターズは無限の力と可能性を秘めた大戦力。
 特に今のように仲間と共に戦う状況では、其れこそ戦術は無限大に存在するのだ。

 「俺は手札からスピードスペル『Sp−スピード・フュージョン』を発動。
  スピードカウンターが5個以上あるとき、モンスターを融合召喚出来る!」

 「融合召喚…特殊召喚の1つやったな?何を召喚するんや?」

 話には聞いた事があるが、はやて達は実際に融合召喚そのものは見た事がない。
 地縛神事件の際に、夜天の魔導書完成の為に訪れた世界でアラクネーが作り出した融合モンスターと戦った事はあるが、あの時は融合モンスターとは知らなかった。

 初めてお目に掛かる召喚方法なのだ。

 「ふ…はやて、この世界のデュエルには無限の可能性がある――お前をシンクロしたようにな。」

 「無限の……成程、そういう事やな?」

 「あぁ!俺はこの効果で『夜天の真王−はやて』『スターダスト・ドラゴン』を融合!」

 何を召喚すると問うはやてに、この世界に於けるデュエルの可能性を言えば直ぐに分ったようだ。

 多くを語らずとも分る――阿吽の呼吸とはこの事だろう。


 「集いし星が夜天を照らし、無限の力を呼び起こす。光射す道となれ!融合召喚、羽ばたけ『魔導龍騎士−はやて』!」

 「スターダストに乗って登場や!一緒に頑張ろな、スターダスト♪」
 『クァァァァァァァァァ!!』
 魔導龍騎士−はやて:ATK4500



 融合が完了し、はやてがスターダストに騎乗した状態でその姿を現す。
 地縛神事件の際に降臨した『星屑龍の騎士』に似ているが、はやての騎士甲冑やスターダストの鎧の色彩が異なる。

 星屑龍の騎士は騎士甲冑も鎧も白銀だったが此方は漆黒。
 星屑龍の騎士が『夜天に輝く星』とするならば、魔導龍騎士は『全てを包み込む宵闇』と言った所だろう。
 何にせよその力は桁違いに強い。

 「よっしゃ!ほな全力で行こか、ヤミちゃん助ける為にもな!
  私は1ターンに1度墓地のシンクロモンスターを特殊召喚出来る!舞い戻ってや『スターダスト・ドラゴン』!」
 『クォォォォォ!』
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 早速その力の一端を解放し、墓地より融合素材となったスターダストを呼び戻す。
 勿論それだけでは無い。

 「スターダストと融合したはやては、1ターンに1度墓地の魔法カードの効果を発動できる!」

 「この効果で墓地の『Sp−スピード・フュージョン』の効果を発動し、スターダストと機皇戦士を融合や!」

 墓地の魔法効果の使用と言う効果でスターダストと機皇戦士を融合。
 呼び出されるのはアポリアとの絆の証である、シンクロモンスターと機皇モンスターの奇跡の融合モンスターだ。

 「「集いし二つの魂が、紡いだ希望を未来へ繋ぐ。光射す道となれ!融合召喚、絶望を砕け『機皇星龍−スターダスト』!」」
 『ゴォォォォ…!』
 機皇星龍−スターダスト:ATK2700



 咆哮を上げ、その身から溢れ出すエネルギーでU-Dの攻撃を相殺する。

 「機皇星龍って…流石は不動博士だぜ!」

 「やっぱ博士は最強だよね!」

 トーマとヴィヴィオも其れに驚きながらも遊星の底の見えない強さに言い様の無い頼もしさを感じていた。


 だが、U-Dはそうでは無い。
 決して諦めずに向かってくる遊星達が理解できない。
 圧倒的な物量差を持ちながら自分を沈め切れない現状――無駄としか思えない攻防の繰り返し。
 それがU-Dを惑わせる。

 「何を呼ぼうと無駄です…私は止められない。」

 「ホンマに駄々っ子やなぁヤミちゃんは……せやけど其れは如何かな?」

 「?」

 「機皇星龍の攻撃力は俺のライフポイント分アップする!俺のライフは15400ポイント、よってその数値分攻撃力が上昇する!」
 機皇星龍−スターダスト:ATK2700→18100


 だが止まらない。
 機皇星龍は効果で攻撃力がとんでもない数値に。

 「更に機皇星龍の効果で、墓地のスターダストと夜天の真王を装備し、その攻撃力の合計値5700を攻撃力に加える!」
 『グオォォォォ…!』
 機皇星龍−スターダスト:ATK18100→23800



 「いい!?攻撃力23800ポイントぉ!?不動博士…なんでも有りかよ!!」

 「有りでしょ?博士ってば生身で宇宙空間平気なんだから今更何しても驚かない!」

 「博士ってもしかしてエクリプスドライバーよりも頑丈!?」


 余りにも物凄い遊星の戦術に、トーマは色々思考が追いつかないご様子。
 ヴィヴィオの落ち着きをみると、ヴィヴィオは遊星の限界突破戦術にはある程度の耐性があるようだ。


 だがマダマダである。

 「これだけやない!
  なのはちゃんとフェイトちゃんが居る時、私の攻撃力はフィールド上に存在する最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力の2倍の数値になる!
  今フィールドで一番強いんは機皇星龍の攻撃力23800ポイント!よって私の攻撃力はその倍――47600ポイントや!!」
 魔導龍騎士−はやて:ATK4500→47600


 「更に魔導龍騎士−はやてが存在する場合、フィールド上のシンクロモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!」


 攻撃力が10倍以上になったはやてのみならず、なのは達も全体強化する効果。
 可能性が導いた戦術はこの拮抗状態を打開するには充分な力だったようだ。


 不撓の魔導師−なのは:ATK3900→4900→5800
 雷光の魔導騎士−フェイト:ATK3600→4600
 不屈の聖王−ヴィヴィオ:ATK5000(効果5回使用状態)→6000
 抗う騎士−トーマ:ATK2500→3500
 コズミック・ブレイザー・ドラゴン:ATK3800→4800



 全員が大幅にパワーアップ!
 これならばU-Dにも攻撃が通るかもしれない。

 「凄い力…これなら!」

 「うん、行ける!」


 「スゲェ…リリィ!」

 『うん、これならU-Dの攻撃を抜けられる!


 「私も、頑張るもん!」


 全員が意気軒昂!
 シンクロしていないアミタとディアーチェですらその力に呼応するように力が増している。



 「こんな…でも…駄目なんです!!止まらないんです!!」

 しかし、U-Dは制御できない力が荒れ狂い止められない。
 その荒れ狂う力を、完全解放し闇色の極大砲撃を放ってくる。

 喰らえば一溜まりも無い――此処が勝負の分かれ目だろう。


 「お前自身で止められなくとも、俺達が止めてやる!何度でも受け止めてやる!
  迎え撃て、機皇星龍−スターダスト!『シューティング・フルメタル・ソニック』!」
 『ゴオォォォォ!』


 ――ドガァァァァァァァァァ!


 其れを看破し、先ずは遊星が機皇星龍でU-Dの攻撃を迎え撃ち相殺する。
 即座にU-Dは第2射を放とうとするが、そうは問屋が卸さない。


 「させぬわ!撃ち貫け我が魔導よ!インフェルノ!!」

 「させません!バルカンレイド…ファイヤー!」


 ディアーチェとアミタが其れが放たれるより早く攻撃し、発射を阻止。


 「これ以上はやらせないぜ!クリムゾン…」
 『スラッシュ!!

 追撃としてトーマが斬撃を飛ばしてからの突進切りでU-Dに攻撃の隙を与えない。

 「捕まえた!」

 「!!」

 更にヴィヴィオが『レストリクトロック』を発動しU-Dを拘束。
 なのは直伝のバインドは、如何にU-Dと言えども簡単に外せる代物ではない。

 そしてこの拘束を使った理由。

 其れはなのはとフェイト。
 魔法陣を展開し、超絶の一撃を放つ準備が完了。

 「バインド拘束…凄いねヴィヴィオ♪」

 「わーい、ママに褒められた〜!…それじゃあお願いします、なのはママ、フェイトママ!」

 「うん!行くよフェイトちゃん!」

 「うん、やろうなのは!」

 「N&F中距離殲滅コンビネーション!」

 「ブラストカラミティ!」

 「「ファイヤーーーーー!!!」」

 桜色と金色の閃光が放たれU-Dを打ち据える。
 更に無数の魔力弾も同時に打ち込まれていく。

 地縛神事件の後、日々の鍛錬で遂に完成した究極コンビネーション『ブラストカラミティ』。
 その威力は凄まじく、強固だったU-Dの身体に確実にダメージを与えている。


 だが、まだ足りない。
 U-Dを止めるには未だこれだけでは足りない。

 「一気に畳掛ける!行くぞはやて!」

 「勿の論や!私らでヤミちゃんを止める、ヤミちゃんを救う!」

 その足りない分をブチかますのは遊星とはやて。
 この超絶ラッシュの締めとなるフィニッシュアタックだ。


 「U-D、この一撃でお前を救う!」

 「やからヤミちゃん…これで少し眠ってや、目が覚めたら貴女の苦しみは無くなってるはずやから。」

 優しく語りかけ、なのはとフェイトのコンビネーションを喰らって動けなくなっているU-Dに攻撃を仕掛ける。
 そう…『救う為の一撃』を。


 「コズミック・ブレイザー・ドラゴンでU-Dに攻撃!『ギャラクシーフォース・ブレイカー』!」

 「切り込め烈風!『ナイト・ソニック・バスター』!」


 ――ドガァァン!!


 その一撃が直撃し噴煙が昇る。
 これならば如何にU-Dと言えど相当に喰らった筈だ。



 事実、噴煙が晴れて現れたU-Dは『満身創痍』とも言うべき状態だった。
 防護服までズタズタに壊れ、U-D自身は頭をたれて微動だにしない。


 が、U-Dの様子が突然目に見えて変わった。

 「そんな…こんな…うぐ…あぁぁあぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 苦しんだと思ったら、その直後で恐ろしいまでの魔力が爆発!
 その爆発で撒き散らされた魔力が燃え上がり、夜空を茜色に染め上げる。

 更にその炸裂の余波は遊星達にも及んでいる。

 コズミック・ブレイザーの効果を使っても尚少しばかり押されるほどの力だ。



 遊星達の猛攻撃は間違いなくU-Dに決定的なダメージを与えた。
 だが、其れが逆にU-Dの『最終防衛機能』を発動させる結果となってしまったのだ・




 ――完全暴走




 今の状態を称するならそうなるだろう。
 飽和状態の膨大な魔力に耐え切れず、遂にU-Dのリミッターがぶっ壊れたのだ。


 猛攻撃を受ける前と比べてもその力は強い。
 其れこそ今までの戦いは何だったのかと思うくらいの力の増加をしているのだU-Dは。

 「ぐぅぅぅぅ…」

 その瞳は真紅に輝き、恐らく理性は残っていない。
 破壊衝動に飲まれ、気の向くままに破壊を行う『殺戮マシン』のような状態。

 だが、それでもその目からは涙が溢れ出して止まらない。

 暴走の影響で理性が飛んでしまって尚、U-Dは望まない破壊を行う事を悲しんでいるのだ。


 「U-Dよ…」

 そんなU-Dにディアーチェは優しく語り掛ける。
 其処に何時もの不遜は見て取れない。

 「うぬの苦しみ…我にも痛いほど分る――だが、諦める事は許さぬ!
  シュテルも、レヴィも、ゲイルも、お前を救うために己を犠牲にしたのだ、あの3人によって生かされたうぬが諦めるなど断じて許さぬ!」

 興奮のせいか口調は直ぐに戻ってしまうがそれでもディアーチェはU-Dを放っておかない。

 其れは遊星も、はやても、なのはとフェイトも、ヴィヴィオとトーマ(リリィリアクト状態)も同意見で諸手を挙げて賛成するだろう。


 「うぐ…うあぁぁぁぁ!!!」

 「うぬの事は必ず救う!救わねばならんのだ、我に全てを託した3人のためにもな!」

 更にバッチリと啖呵切り。
 ディアーチェの魔力も炸裂し相当に迫力がある。







 だからだろうか?
 ディアーチャが啖呵を切った直後に、今までその場に居なかった『何か』がその姿を現す。

 その数は2。
 その何かの1つ目は『クイック・スパナイト』。
 ゲイルの使う汎用チューナーモンスターだ。


 クイック・スパナイト:ATK1000




 そしてもう1つ…



 『グォォォォォォ…!』
 閃光竜 スターダスト:ATK2500




 「あれはゲイルの…!」

 「スターダストそっくりや…!」


 ゲイルのエースモンスター『閃光竜 スターダスト』。



 これこそがきっとゲイルの狙いだったのだろう。


 自分が消える際にディアーチェに渡した魔力――それがディアーチェに新たな力を齎してくれるだろう。


 「此れは…此れがゲイルから渡された力の一端か!…ふふふ、力溢れるわ!」

 その2体をみてディアーチェも満足そうに笑う。
 遊星とはやて達もこの突然の登場には驚きながらも頼もしさを感じている。


 「うぅ…グアァァァァァァァァァ!!!」

 U-Dの力は更に増し、其れは今までの倍は堅い。

 それでも絶望は見えない。


 「ゲイル…そうかお前は全てをディアーチェに…ならば俺はその絆を繋ぐ!――ディアーチェ!」

 「叫ばずとも聞こえておる。…しくじるなよ?」

 「勿論だ!ディアーチェにクイック・スパナイトをチューニング!
  集いし黒天の力が、新たな地平を目指す。光射す道となれ!シンクロ召喚、止めろ『黒天の王−ディアーチェ』!」

 「無敵・無限…我こそが王よ!」
 黒天の王−ディアーチェ:ATK3000


 未来を信じて、遊星はディアーチェにクイック・スパナイトをチューニングしてその力を高める。
 現れたディアーチェは、暗黒甲冑がはやての騎士甲冑と同じカラーリングに。

 その力はシンクロ前とは比べ物にならない。

 鋭い眼光でU-Dを睨みつけている。


 睨まれたU-Dは怯まない。
 もとより怯みようが無い状態なのだが、ディアーチェの進化に呼応するかのように攻撃を仕掛けてきた。






 最終幕は――いよいよファイナルラウンドだ……
















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 魔導龍騎士−はやて
 レベル12    闇属性
 魔法使い族・融合/効果
 「夜天の真王−はやて」+「スターダスト・ドラゴン」
 このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えず、このカードは融合召喚でしか特殊召喚出来ない。
 1ターンに1度自分か相手の墓地のシンクロモンスターを選択し、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚出来る。
 又、1ターンに1度自分の墓地の魔法カード1枚を選択してその効果を発動できる。
 自分フィールド上に「なのは」「フェイト」と名の付くモンスターが1体ずつ存在する場合、このカードの攻撃力は、
 フィールド上に表側表示で存在する、このカード以外で最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力の倍の数値になる。
 このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のシンクロモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
 このカードは1ターンに3度まで相手のカード効果を受けない。
 ATK4500    DEF3800



 黒天の王−ディアーチェ
 レベル8    闇属性
 魔法使い・シンクロ/効果
 チューナー+『ロード・ディアーチェ』
 このカードは1ターンに2度まで戦闘とカード効果では破壊されない。
 相手モンスターを攻撃する場合、このカードの攻撃力は600ポイントアップする。
 ATK3000    DEF2500