復活した喜びを満喫する間も無く、マテリアル達の前に現れた『闇の欠片マテリアルズ』。
 何も言わずに此方を見つめてくるその姿は何とも不気味なものがある。

 勿論だからと言って動じるかと問われれば否。


 寧ろ、復活直後に気分が悪くなるものを見て怒りがこみ上げているようだ。


 「下らん夢風情が…片腹痛いわ!!」

 ディアーチェのこの一言が合図。
 全員が夫々欠片を滅さんと戦闘開始!!


 欠片では相手にならないだろうが、まぁリハビリくらいにはなるだろう。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス63
 『奮闘するマテリアル』











 さて、この戦闘、夫々が自身のマテリアルと対決――と言う訳ではない。

 戦闘スタイルの特異性故に、ゲイルだけは自身の欠片を相手にしているが他の3人は違う。


 ディアーチェはレヴィを、シュテルはディアーチェを、レヴィはシュテルを相手にしている。
 これは単に3人の戦闘における相性ゆえだ。


 略互角とは言え、矢張り各々得意分野は違う。
 夫々の得意分野で相手を圧倒できるのがこの組み合わせ。


 ディアーチェは広範囲攻撃でレヴィのスピードを無意味とし、シュテルはディアーチェの射程外から攻撃。
 レヴィはレヴィで、持ち前の超高速戦闘でシュテルに砲撃を放つ隙を与えない。

 見事なまでの三竦み関係になっているのだ。(この事は、なのは、フェイト、はやての3人にも言える。)



 とは言えあくまでも『有利に戦える』だけで、絶対的なモノではない。
 が、相手は遥かに力の劣る欠片だ相性はモロに戦いに影響する。
 其れが顕著なのはレヴィだ。



 「あ〜っはっは!!所詮は偽者、本物のシュテルんに比べれば、遅い、温い、弱い!
  シュテルんの波動砲みたいな砲撃に比べれば、お前の攻撃なんて水鉄砲だ〜〜!」

 スプライトフォームに換装し、圧倒的スピードで欠片のシュテルを手玉に取っている。

 砲撃も誘導弾もなんのその。
 残像分身ができるほどの超光速で全部完全回避!

 所詮欠片ではマテリアルには届かないという事を見事に証明している。


 「大体欠片のクセにシュテルんを真似ようってのが間違いだ!
  コピー如きが僕を倒そうってのが無理だって!いっくぞ〜〜、パワー極限〜〜!!」

 回避しながら、シュテルの欠片に肉薄しブッ飛ばす。
 追撃は勿論最大出力だ。

 「喰らえ〜!雷刃封殺爆滅剣〜〜!!!

 放たれた蒼雷は、違わず偽りの星光を貫く。


 「!!」


 欠片も何も言えないまま、身体が消えていく。
 レヴィの一撃は、相変わらずの馬鹿威力である。

 「イエ〜イ!強くて凄くてカッコイイ!そう、やっぱり僕最強!!」

 レヴィは問題なく完勝であった。








 ――――――








 シュテルも当然遅れはとらない。
 目の前の欠片ディアーチェを相手に、何時もどおりの冷静沈着な戦いを展開。
 超長距離砲撃を文字通り『連発』するシュテルに、欠片のディアーチャは何もできないようだ。

 「…似ているのは姿だけですか……その程度でディアーチェを語るとは良い度胸ですね?

 …前言撤回。
 実は結構怒っていた。

 まぁ、仲間の容姿をコピーされ、しかも本質的には全くの格下となれば当然。
 ディアーチェが低く見られたようでシュテルは面白くなかったらしい。

 「ディアーチェの攻撃には王の気迫が感じられますが、貴女には其れを感じません。
  所詮は我等を模した偽者…これ以上の戦闘は時間の無駄ですね。」

 言うが早いか、カートリッジを3発ロードして必殺の一撃を準備。
 王を語る偽者にこれ以上の存在は許さないということだろう。

 「走れ明星、全てを焼き消す炎と変われ。真・ルシフェリオォォォン……ブレイカー!!」

 全力全壊の集束砲が、偽ディアーチェを一瞬で葬りさりシュテルの勝利。
 その差は圧倒的だ。

 「王の覇道、我等の悲願、何処の誰にも邪魔はさせません。
  ましてや、コピーに過ぎない欠片如きに負けるわけには行きませんので。」

 欠片が存在していた所に恭しく頭を下げ、しかしシュテルは強気だった。
 単純思考の欠片など、抜群の頭脳を持つシュテルには敵ですらなかったようだ。








 ――――――








 「小賢しいな塵芥が!斯様なスピードで我の攻撃をやり過ごそうなど笑止千万!
  我の範囲攻撃をやり過ごしたくば、最低でも小鴉程度の実力は有して来い!」

 ディアーチェだって余裕そのもの。
 何故か、欠片のレヴィはスプライトへの換装を行わない。

 如何に速いとは言え、速度特化でないのならばディアーチェには動きは全て見えている。
 攻撃が見えているのならば怖くはない。

 射撃は『アロンダイト』や『インフェルノ』で潰せるし、そもそもクロスレンジには近寄らせない。
 相手の得意分野を使わせない戦い方は実に理に適っているだろう。

 おまけに、


 ――ガキィィン!!


 「!?」

 光速移動先で偽レヴィがバインド拘束!
 攻撃を捌きながらも、ディアーチェは罠を張っていたのだ。
 この辺は見事な一手といえるだろう。


 「ふ、所詮は塵芥か――レヴィには遠く及ばんな?まぁ所詮は欠片風情よ。
  意思なき塵芥よ、精々震えろ、そして思い知れ!!」

 足元にベルカ式魔法陣、自身の正面に5つのミッド式魔法陣を展開。

 「紫天に吠えよ、我が鼓動!出でよ巨獣…ジャガーノート!!」

 其処から発射された5つの砲撃が、角度を変えて偽レヴィを打ち据える。
 只の直射砲としても優秀だが、それ以上に着弾時の炸裂効果が大きい。

 攻撃が終った時には其処には何も残っていなかった。

 「無限、無敵、我こそが王よ!貴様等如き欠片が対抗できるなどと思わぬ事だ。」

 ディアーチェも王らしく、貫禄ある勝利だ。








 ――――――








 そしてゲイル。
 デュエルは意外と互角状態だ。

 その原因は相手。
 自身と同じ容姿でデッキも同じだが、感情むき出しのデュエルが逆に恐ろしかった。

 尤もゲイルが怯む事はない。
 事は無いが…

 「そうだ…疾走れ、!もっと早く疾走れ!!
 ゲイルの欠片:LP1200
 ライトニング・ウォリアー:ATK2400


 ゲイルの欠片は中々如何してアレなデュエリストのようだ。
 闇の書の残存魔力の影響を受けたのか、可也の高テンションキャラになってしまっている様だ。

 「まるで闇に飲まれたようだな…」
 ゲイル:LP2900
 マイティ・ウォリアー:ATK2200(戦士の誇り)



 ゲイルも呆れる他はない。
 只我武者羅に速度を上げるだけではフィールが高まらないのはゲイルだって良く知っているのだ。

 「お前のフィールには魂が篭っていない!それじゃあ俺には勝てないぜ!
  俺はチューナーモンスター『ジャンク・メイル』を召喚!」
 ジャンク・メイル:ATK400


 「行くぞ!レベル6のマイティ・ウォリアーに、レベル1のジャンク・メイルをチューニング!
  黒き空を切り裂く雷光の戦士よ、猛る力を解放せよ!シンクロ召喚『ライトニング・ウォリアー』!!」
 『ウオォォォォォォォ!!』
 ライトニング・ウォリアー:ATK2400


 終らせる為に、シンクロ召喚し、雷の戦士を呼び出す。
 ただ、欠片も同じモンスターを従えているので、このままでは相打ちだ。

 が、当然そんな事は分っている。

 「ジャンク・メイルを素材にしたシンクロモンスターは戦闘では破壊されない!
  攻撃力は互角だが、破壊されるのはお前のモンスターだけだ!」

 「!!」

 戦闘耐性を持たせての同攻撃力の相手への特攻は効果が大きい。
 何せ相手の方を一方的に攻撃できるのだから。

 「これで終わりだ!バトル、ライトニング・ウォリアーでライトニング・ウォリアーに攻撃!『ライトニング・パニッシャー』!」

 白色の雷光が炸裂!
 同攻撃力ゆえにライフは削られないが…

 「ライトニング・ウォリアーの効果!相手モンスターを戦闘で破壊したとき相手の手札1枚に付き300ポイントのダメージを与える!
  お前の手札は4枚!よって1200ポイントのダメージを受けてもらうぜ!!『ライトニングレイ』!!」


 ――ビィィィィ!!


 放たれたビームが欠片ゲイルを直撃!


 偽ゲイル:LP1200→0


 残ったライフはキッチリ削られゲームエンド。
 そして欠片もゲームエンドの時間だ。

 ライフを失ったゲイルの欠片はそのまま闇の中へと消えたのだった。

 「良いデュエル…とは流石に言えないな。」

 終ってみれば完勝だが、ふがいない相手とのデュエルは満足には至らなかったのだろう。



 だが、これで現れた『マテリアルの欠片』は全て粉砕。
 少なくともU-Dに挑む準備運動にはなっただろう。








 ――――――








 「うむ、皆無事だな?」

 「はい、怪我一つ無く。」

 「てか楽ショーだった♪」

 「あの程度のフィールじゃ俺には波風も立てられないぜ。」

 夫々欠片を撃破したマテリアルズは一端集合。
 これから向かう相手は人知を超えまくった存在なのだから集団で行くもある意味道理だ。


 「うむ…では行くぞ砕け得ぬ闇を手中に収めに!」

 「御意に。」

 「お〜〜!頑張るぞ〜〜!!」

 「相手にとって不足は無い…燃えてきたぜ。」

 奇しくも今の戦闘が士気を高揚し、全員がヤル気だ。




 だが、



 ――シュテル、首尾は如何だ?

 ――問題ありませんよゲイル。作戦完了まで王とレヴィを抑えておく事は可能です。
    彼方もカードでサポートしてくれるのでしょう?

 ――勿論だ…ディアーチェの為にもしくじりは許されないからな…だが、俺は良いがお前は…

 ――良いんです。戦いは勝率よりも勝機です。その勝機を呼び寄せる為なら…

 ――…分った。必ず成功させよう!

 ――言われるまでもありません!


 シュテルとゲイルがこんな念話通信をしている事は、レヴィは勿論ディアーチェも気付いては居なかった。




 飛ぶこと数分。
 一行の目の前に現れた巨大な魔力球体。


 その内部に見えるU-Dの姿。


 事件の最終章が、今正に幕をあげようとしてた…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足