ジェイル・スカリエッティ:本事件の黒幕にして最重要人物であり広域指名手配犯。
犯罪行為は世界規模のテロリズム・違法医学の実行、その他多数であり全件の把握及び検挙は不可能であると思われる。
量刑も懲役年数確定不能であり、事実上の終身刑で第9無人世界の「グリューエン」軌道拘置所第1監房に収容。
戦闘機人ナンバーズ1、3、4、7:スカリエッティ同様の重犯罪者であり、彼女達の罪状もまたスカリエッティほどではないが重い。
矢張り終身刑同様の懲役であり、スカリエッティと共に「グリューエン」軌道拘置所第1監房に収容。
戦闘機人ナンバーズ5、6、8、10、11、12:重犯罪者ではあるが、捜査協力の意思を見せ、更生の余地があると認められるため更生施設に収容。
5、10、11はゲンヤ・ナカジマ三佐が、6、8、12は聖王教会が更生後の後見人として名乗りを上げている。
戦闘機人ナンバーズ2:本来ならばスカリエッティと共に「グリューエン」軌道拘置所第1監房に収容し、終身刑に服すべき者。
だが、機動六課のシグナム一尉の提案で罪を認めさせる名目で更生施設に収容するが、更生が望めない場合は本来の処分に。
更生が巧く行った場合に限り、シグナム一尉が後見人になる事が決まっている。
レジアス・ゲイズ:スカリエッティと内通して居た事が発覚しているが、事件の最中に死亡したため処分は下されていない。
だが、彼を陸の英雄として葬儀を上げるか、管理局を裏切った犯罪者として葬るかは未だ決定されていない。
オーリス・ゲイズ:犯罪行為はスカリエッティ一味との裏取引の補助と軽めであり、現在裁判中だが執行猶予無しの3年が良い所と思われる。
寧ろ彼女の場合、出所後に本事件で被害を被った者達からの異常な報復に曝されないようにする方が重要である。
アモン・ガラム:スカリエッティと手を組んでいた謎の青年だが、事件後に行方を眩ませ消息不明。
機動六課の不動遊星曰く『いずれまた会う事が有る』との事だが詳しい事は不明で現在も捜索が続けられている。
ディヴァイン:スカリエッティと手を組んでいた謎の人物だが、不動遊星の証言からゆりかご内部での死亡が確認されている。
ゼスト・グランガイツ:数年前に死亡認定された元管理局員であり、本人かそれともクローンの類であるかは不明である。
シグナム一尉より、本事件の最中に死亡したと言う事が確認されている。
――以上、ミッドチルダ全域を巻き込んだ大規模テロ事件、通称『J.S事件』の報告書より抜粋。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス118
『紡ぎ紡がれる絆の輪』
事件から早2ケ月が経過し、大規模な被害を受けたミッドチルダの街も少しずつではあるが確実に復興が進み、元の活気を取り戻しつつあった。
この事件の報道で、デュエルモンスターズのカードが事件解決に一役買っていた事が報じられ、カードの売り上げが伸びたのは予想外だったろうが。
そんな中で、クロウ、ギンガ、スバル、ノーヴェの4人は元ナンバーズのチンク達が収容されている更生施設を訪れていた。
事件後、週に1〜2回のペースで此処を訪れているのだ――因みに本日はゲンヤも一緒である。
「よう、調子は如何だオメェ等?」
「クロウ!……其れにお前達も………いや、調子は悪くはない。」
「そうっすよ〜〜〜、アタシ等は今日も元気バリバリっす!クロクロの頭もバリバリっすね〜〜……触っても良いっスか?」
「あんまグシャグシャ触んじゃねぇぞ?……セットするのに意外と時間かかるんだからな?」
「うい、了解っす!」
「あ……ウェンディ、ずるい……」
事件後、様子を見る為に足しげく通っていた甲斐があってか彼女達(特にウェンディは)すっかりクロウ達と打ち解けていた。
初めて来たときにクロウが『オメェ等にも本当のデュエルってモンを教えてやるよ』と構築済みのデッキとブースターパックを持って来た事も大きいだろう。
仕方のない事だが、更生施設に娯楽の類などある筈もない……精々図書館の書物が良い所だ。
だが、クロウ曰く『んな窮屈な環境じゃ更生しようにもその気が起きねぇだろ』との事で、デュエルに関するモノを差し入れたのだ。
そしてその結果は上々。
デュエルと言う娯楽を通して、更生組は此れまで知らなかった世界を知り、そして確実に更生の道を歩んでいた。
「時にチンク、そろそろ聞きてぇんだが……お前、あのカードは一体何処で手に入れたんだ?」
さて、今日ここに来たのは様子見意外に目的が有る。
その一つが、チンクがクロウとの戦闘時に使った『シグナーの竜』に酷似したモンスター達の事だ。
本音を言うならば、直ぐにでも聞きたい事だったのだが『更生施設に入れられてスグじゃ落ち着く暇もない』と、今まで待っていたのだ。
義理人情が服を着て歩いているような好漢であるクロウは気配りもちゃんとできるのだ。
「何処でか……正直な事を言うと私にも分からないのだ――ドクターから『最強の戦力だ』と言って渡されただけだからな。
だが、ドクターが言うには『無限に存在する可能性の世界からコピーしたカード』と言う事らしい……それ以上は何も。」
「そうか……つーかなんだよその理論?まるで、俺と遊星が居た世界も無限に分岐してるみてぇな言い方じゃねぇか?」
全くの偶然だが、クロウのこの一言が現実であると言う事は誰も知らない。
そう……無限に分岐した世界の一つでは、遊星とクロウは幼馴染ではなく『ある大会』で知り合ったライバル同士であるなどと言う事は……
「まぁ、小難しい事は俺にゃわからねぇが……チンク、お前はそのカードをどうしたい?」
「……もし許されるなら、私はこのカードを持っていたい――ドクターがくれたとかじゃなくて、私と共に戦ってくれた仲間だからな……」
「そうか……なら問題ねぇ、そのカードはお前が大事にしてやんな。」
其れは其れとして、それらのカードをどうするかはチンクの思いに任せる事にしたらしい。
チンクにとって、共に戦ったカード達は確かに『仲間』と言う存在になって居たようだ――ならば、其れを取り上げる理由は一切ないのだ。
「へぇ……やるなクロウ……お前さんはホントに良い兄貴分だぜ――だからよぉ、尚の事『アノ話』を考えちゃくんねぇか?」
「お、オヤッさん!?」
「チンク、ディエチ、ウェンディの3人は更生プログラムが終了したら家で引き取る事になってんだ。
家族が増えるのは結構なんだが、娘6人に親父1人ってのは肩身が狭いなんてもんじゃねぇ……頼れる『長男』が欲しいんだが……やっぱダメか?」
其れを見たゲンヤからの提案にクロウも焦ってしまう。
『息子にならないか?』と言うのは前にも言われた事だが、その時はその場での冗談だろうと思っていた――が、如何やらゲンヤは本気であるらしい。
これから増える家族……確かに纏め役となる長男は必要となるだろう。
何よりも、ギンガ、スバル、ノーヴェの3人がクロウの事を『兄』と慕っているのだ……其れを考えての提案だったのだ。
「俺は……」
――如何したいんだろうな?……本来なら一度はシティに戻るべきだろうと思うんだが……俺は――此処に残っても良いと思ってる。
……そうか、きっとそうなんだな……見つけたぜマーサ、俺が進むべき道を……俺が進むべき道は――
「そこまで熱烈なスカウト受けたら、受けねぇのは鉄砲玉のクロウ様の名が廃るぜ!
いいぜ、オヤッさん!その話受けてやろうじゃねぇか!!妹が6人?上等だぜ、昔は更に多くのガキ共の面倒見てた事だってあるんだからな!!」
――コイツ等の家族になる事なんだなきっと……そして、チンクとディエチとウェンディを導いてやる事なんだろうな。
そして、クロウは見つけた――ずっと迷い続けていた『自分の未来のヴィジョン』を。
決してシティを捨てるとかそう言う訳ではない……『コイツ等と家族をやるのも悪くない』と言う思いが、クロウにこの選択をさせたのだ。
「本当か!!ありがとよクロウ!息子が欲しいと願って早十数年……漸く願いが叶ったぜ!!」
「ったく大袈裟だなオヤッさん。」
合計8人の家族となる『ナカジマ家』は、この日が誕生の瞬間であったらしい――そして、この一件がチンク達の更生を早めたのは言うまでもないだろう。
――――――
同じ頃、更生施設の別室にはシグナムが訪れていた。
此処に収容されているのはシグナム自らが更生施設送りを決定したドゥーエだ。
「……気分は如何だ?」
「……良く分からないわね……だけど少なくとも、収容された時の様な『嫌な気分』でない事だけは確かだわ……何でかしらね?」
「さぁな……」
会話が長く続かないのは何時もの事だが、今日は少しだけ違っていた。
「……如何してあの時、私を殺さなかったの?
貴女の力量なら、あそこで私を殺す事くらいは造作もない事だった筈――なのにどうして、私を殺さずに生かしておいたの?」
突然の問い……確かに、あの時あの場でシグナムはやろうと思えばドゥーエを斬り殺す事など簡単だった。
にも拘らずそれそしなかったと言う事が、ドゥーエには理解が出来なかった。
「………お前が、今の主に出会う前の私と同じだったからだ。」
「え?」
「私は人間では無く、夜天の魔導書の守護騎士プログラムだ。
此度の主、八神はやてに出会うまでは、その時々の主の命に従い、只只管に魔導師から魔力を略奪するだけの破壊者だったのだ……
だが、優しき主と出会い、信じ合える友と出会い、私は――私達は変わる事が出来た……お前にはその『変わる可能性』があると思ったのでな。」
その答えは、シグナムの一種の勘だった。
何の疑問も持たずに『悪行』を言われるままにこなしていた過去の自分と、スカリエッティに言われるがままのドゥーエを重ねたのだろう。
「もう、スパイと言う名のスカリエッティの捨て駒で居る必要はないだろう――お前はお前として生きる事が許されるはずだ。」
「私として……」
「……焦る事はない――良く考えてみると良い。
近い内にまた来る――その時は、もっと色々な話が出来る事を願っている。ではまたな『ドゥーエ』。」
「……あぁ、またな『シグナム』。」
奇しくも、この時が初めて互いに名を呼び合った時であった。
――スパイは体の良い捨て駒か……確かに、もうその役目を続ける必要はないのかもしれないね……
同時に、ドゥーエの中ではこれまでに思った事のない考えが浮かんできているようだった。
――――――
時間が解決した後、はやては少しばかり憂鬱な気分だった。
事件が解決したことそのものは喜ばしいが、其れは同時に遊星との別れが近い事を意味していたからだ。
遊星が紅き竜の力で、『成すべき事を成すために』この世界に再び現れたと言うならば、事件が解決したらシティに戻るのは当然の事なのだ。
其れは分かっているのだが、10年越しの思いが伝わり、そして思いが重なったはやてにとってこの別れは10年前以上に重いモノだ。
もう一度会えたと言う事が奇跡――そう、思わずには居られなかった。
だが――
「ん?何を作っとるんや遊星?」
「あぁ、はやてか……」
局内を適当にぶらついていたはやては、無意識に遊星が最近入り浸っている『技術開発室』へと足を運んでいたらしい。
事件後、遊星は此処で毎日のように作業を行っていた……その大半はヴィータの僕と化したガジェットの再調整と改修である。
搭載AIをヴィータに殴られてバグった状態を『正常』の状態に再設定し、外装を人型のソレに直していたのだ。
これ等のカスタムガジェットは、数年の後に開発される『ラプター』と呼ばれる自立型の人型人造魔導師の原型となるのだが、其れはまた別の話だ。
だが、はやてが気になったのは其れとは別に作られている何かの装置だ――如何やら転送装置のようだが此れは一体何なのだろうか?
「遊星、此れは?」
「あぁ、ミッドチルダからネオドミノシティへの転送を可能にした転送装置だ。」
其れは何ともトンデモナイ物だった。
よもやミッドとシティを繋ぐ転送装置をこの短期間で開発してしまうとは、不動遊星の頭脳は相変わらず無限チートのバグキャラの如くだ。
「ミッドとシティを繋ぐやって!?」
「あぁ……前に海鳴からシティに戻った後で、俺はずっと2つの世界を繋ぐ事が出来ないかと考えていたんだ。
だが、基礎理論の構築は出来ても次元間を結ぶ事が出来なかったんだが、ミッドとシティを結ぶ事はそれほど難しくなかった。
恐らくはミッドが『次元の海』に存在している場所だからだろうが、此れなら後はシティ側からミッドへの道を繋げば自由に行き来が出来るようになる。」
「ホンマに!?」
瞬間、はやての顔が明るくなる。
若しかしたら二度と会えないかもしれないと思っていたところに、此れは朗報以外の何物でもないだろう。
「心外だな?俺ははやてに嘘を吐いた事はないと思うんだけどな?」
「……言われてみれば確かにないなぁ?――やったらホンマに世界は繋がるんやね?離れ離れにならなくて済むんやな!?」
「あぁ……一度は赤き竜の力でシティに戻らないといけないが、其れでもどんなに長くても1年あればシティとミッドを完全に繋ぐ事は出来る。
だから、待っていてくれないか?俺は必ずここに戻ってくるから。」
「最大で1年……10年待ったのに比べれば大した事ないな――待っとるよ遊星、レーシャと一緒にな♪」
「あぁ……それで、2つの世界が繋がったその時は――レーシャも入れて皆で一緒に暮らさないか?」
「ふえぇぇ!?」
更なる爆弾投下!!
思いが繋がった時以上の不意打ち原爆投下である――一緒に暮らさないかとは、つまりはそう言う事であるのだろう。
「ゆゆゆ、遊星!?其れってつまりそう言う事なんやろか!?」
「……俺はその心算だったんだが……?」
「ホンマに不意打ちやなぁ遊星は……しかもそのくせ言う事は飾り気無しの弩ストレートや。
……せやけど、もっとロマンチックな言葉は有るんやろうけど、これ以上に素敵なプロポーズは、きっと存在せんのやろうね。」
思わぬプロポーズに驚き、はやては遊星の胸に顔をうずめるように抱き付き、遊星も其れを抱き留めてやる。
「私でよければ喜んで……」
「はやて『で』いいんじゃなくて、俺ははやて『が』良いんだ……」
「うん………せやったら余計に嬉しいで……♪」
見つめ合い、そして2つの影は1つに重なる………遊星とはやての絆は更に特別なモノとなったのだ。
そして、さらに1週間が経ち――機動六課が一時解散する時がやってきた――――――
To Be Continued…
*登場カード補足
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