スカリエッティは捕縛され、ナンバーズも全員確保……レーシャとヴィヴィオを操っていた者は完全KOされ、ゆりかごの動力炉の破壊は時間の問題。
だが、ゆりかごが停止して居ない以上ガジェットは次々と市街地に現れて来る。

しかしそれもまた最後の足掻きでしかない……いや、足掻きにすらならないだろう。


「主はやて、リインフォース!!」

「シグナム!!」

「将!……その姿は!!」

「……新たな私の友だ……今は私と融合している。」

アギトとユニゾンしたシグナムがはやてとアインスに合流したから。
遊星のカードである『祝福の風リインフォース』と融合して疑似ユニゾン状態にあるはやてと、ツヴァイとユニゾンし本来の力を取り戻しているアインス。
其処に、最高の相性を持つ友と融合したシグナムが加わったらもう敵など居ない。

「ほな、最終章の開幕ベル代わりに、いっちょ派手なのいこか?」

「はい…参りましょう!」
はいです!

「御意に……最大の一撃で!!」
ぶちかましてやる!


ベルカの力を宿せし夜天の主従に迷いなし。一撃必殺の魔力が集い唸りを上げてスパークする。

「響け終焉の笛……ラグナロク!!!

「遠き地にて深き闇に沈め……デアボリックエミッション!!

「全てを焼き尽くし、そして喰らえ……火竜一閃!!!

放たれた拡散直射砲と超広域魔法と極大の炎熱砲!それは破壊の濁流となりガジェットを次々と破壊していく……其れこそ残骸が残らないくらいに。
攻撃が終わると其処にはガジェットは1体も居なくなっていたが、ゆりかごは矢張り健在のまま。

「シグナム、アインス……此処は任せるで?私はちょっとゆりかごに行ってくるわ!」

「「お任せ下さい!!」」

其れが気になり、はやてはゆりかごに……はやての心情を察した臣下も何も言わずに主を送り出す。
――尚、この後直ぐにまたガジェットが湧いて来たが、ユニゾン状態にあるヴォルケンリッタートップ2の前には全く敵ではなかった。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス117
『LimitOver!LimitBreak!!』











「レーシャ……」

「お父さん……まだ終わってない……私がこの姿のままじゃ、おわってないよ……きっとヴィヴィも同じ状態だと思う…」

「……あぁ、お前とヴィヴィオに埋め込まれたレリックを破壊しなければ、お前達を解放してやる事は出来ないからな。」

最終決戦の場では、最後の仕事が行われようとしていた。
レーシャとヴィヴィオを操っていたウーノとクアットロは倒したが、其れとは別に2人に埋め込まれたレリックを破壊しなければならないのだ。

洗脳が解けたレーシャはそれほど難しくなくレリックの破壊は出来るだろう。
だが、洗脳が完全に解けきってはいないヴィヴィオは如何だろうか?


「違うの……ママだけどママじゃない……一緒に居たいけど居たくない……如何すればいいの?……分からないよぉ…!!」

不安定な精神は其れを現すかのように相反する感情がぶつかり合い、如何しようもなくなっているようだ。
しかし、そんなヴィヴィオにもなのはは優しく問う……本当の母親の様に。

「不安だよね?怖いよね………だけどヴィヴィオ、貴女は本当は私に如何してほしい?貴女は本当は如何したいの?」

「ふえ?……ママ……貴女は……私のママ…」

「うん…そうだよ。」

「私は……私はママと一緒に居たい…!だけど、身体が言う事を聞かないの………お願い…助けて、ママ…!」

その甲斐あってか、僅かばかりの落ち着きを取り戻し、ヴィヴィオは己の望みを口にする。

「助けるよ……何度だって必ず!!」

なのはも其れに応える。
それと同時に――

「なのは!!」

「ヴィヴィ!!」

遊星とレーシャが玉座に!遊星が『旅の鏡』のアビリティカートリッジを使ってこの場に転移して来たのだ。

「遊星さん!レーシャちゃん!!」

「……レーシャ……!!」

「……話は後です!なのはさん、私とヴィヴィにバインドを!まだ身体が完全には自由じゃないから……また襲い掛かっちゃうかもしれない…!」

だが状況はゆっくり話をしていられるモノでもない。
レーシャの申し出に頷くと、なのはは2人をレストリクトロックの多重掛けで動きを封じ込める。

「レーシャ、ヴィヴィオ……今解放してやる!」

「2人とも……少しだけ、痛いの我慢できる?」

体内のレリックを取り出すには、外から極大の魔法ダメージを与えて砕くより他に方法はない。
ヴィヴィオ1人のレリックを砕くにしても、なのはの最大集束砲クラスの魔法は必須と言える……其れほど厄介な代物なのだレリックは。

其れが2人分ともなれば、更なる威力の魔力攻撃は必須!
如何に非殺傷とは言え、実際喰らう魔力ダメージは『少し』などと言う生温いモノではない筈だ。

「「……うん!!」」

其れでもレーシャとヴィヴィオは頷いた……もう一度、大好きな人が待つ世界に戻る為に。

「……レーシャ、ヴィヴィオ……お前達の覚悟、確かに受け取った!」

「今、助けるからね!!」

助ける為に最大の攻撃を放つ覚悟と、助かる為に最大の攻撃を受ける覚悟は決まった!

「トラップ発動『エンジェル・リフト』
 このカードで墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚する!頼むぞ『フォーミュラ・シンクロン』!」
フォーミュラ・シンクロン:ATK200


その先駆けとして、先ずは遊星が墓地のフォーミュラ・シンクロンを呼び戻す。
此処でシンクロチューナーを呼び出したと言うのは……つまりそう言う事だ。

「なのは!」

「うん!」

「クリアマインドォォ!」


――ゴォォォォ!!


「レベル8シンクロモンスター不撓の魔導師−なのはに、レベル2シンクロチューナーフォーミュラ・シンクロンをチューニング!
 集いし不屈の魂が、希望の未来を切り開く!光射す道となれ……アァクセルシンクロォォォォォォォ!!!!!


――バシュン!!


「撃ち貫け『エース・オブ・エース なのは』!!」

「不屈の心は、何時もこの胸にある!」
エース・オブ・エース なのは:ATK3300


デュエルと絆が紡ぐ無限の可能性……其れがなのはを更なる高みへと押し上げる。

新たな力を手にしたなのははハニーブロンドの髪に紅と翠のオッドアイ……奇しくもヴィヴィオと同じ特徴をその身に宿していた。


そして当然これだけではない。


「私は私の効果を発動!1ターンに1度エクストラデッキから『なのは』以外のシンクロ、融合、エクシーズモンスター1体を特殊召喚する。
 もう一度力を貸して!!『No.101 S・H・Ark Knight』!!」

『―――――』
No.101 S・H・Ark Knight:ATK2100



己の効果で、ゆりかご突入の際に活躍してくれたエクシーズモンスターを呼び出す。
其れを見た遊星も、更なる戦術を繰り出す。

「スピードスペル『Sp−スピード・フュージョン』!俺のスピードカウンターが5個以上ある時、融合モンスターを融合召喚する!
 このカードでエース・オブ・エース なのはと、No.101 S・H・Ark Knightを融合!!
 集いし不屈と未知なる力が集う時、其れは此処に新たな希望となる!光射す道となれ!融合召喚『バスター・ストライカー なのは』!!」

「この力で……必ず助けるよ!」
バスター・ストライカー なのは:ATK4000


更なる進化!
融合によって強化されたなのはの背に8枚の機械仕掛けの翼が現れ、その周囲には12個のブラスタービットが浮かびんでいる…その姿は神の如きだ。
だが此れでもまだ足りない……尤も遊星には更なる秘策があるのだが……

「トラップカード『シンクロ・デモリッション』
 俺のフィールドのシンクロンスター1体をエクストラデッキに戻し、その素材モンスターを墓地から呼び戻す!
 コズミック・ブレイザー・ドラゴンをエクストラデッキに戻し、蘇れ『スターダスト・ドラゴン』『リサイクル・ウォリアー』『フォーミュラ・シンクロン』!!」
コズミック・ブレイザー・ドラゴン:ATK3800
         ↓
スターダスト・ドラゴン:ATK2500
リサイクル・ウォリアー:DEF1000
フォーミュラ・シンクロン:DEF1500



その秘策の一端として、コズミック・ブレイザー・ドラゴンを素材モンスターに分離する。

「続いて私の効果で、墓地のモンスター1体を特殊召喚する!お願い『獄滅龍 メテオ・ブレイカー』!」

『グオォォォォォ…!』
獄滅龍 メテオ・ブレイカー:ATK3500


更になのはが今度は墓地のモンスターを蘇生させ、闇の星龍を呼び戻して来た。
此れで仕込みは9割完了……残りは矢張り遊星だ。

「スピードスペル『Sp−フラットレベル・アフター4』を発動!
 俺のスピードカウンターが6個以上ある時、俺のフィールド上のモンスターを2体まで選択して発動。
 選択したモンスターのレベルは、エンドフェイズまで4となる!この効果でスターダストとメテオ・ブレイカーのレベルを4とする!」
スターダスト・ドラゴン:Lv8→4
獄滅龍 メテオ・ブレイカー:Lv10→4



そして此れで全ての準備が整った。

「新たな境地…オーバートップ・クリアマインド!!」


――轟!!


究極の力を発動し、遊星の身体とステラ・エクィテスの機体が黄金に染まる……そして遊星の背に現れる赤き竜の紋章…!

「スターダスト・ドラゴン、獄滅龍 メテオブレイカー、リサイクル・ウォリアーの3体に、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!
 集いし星が一つになる時、新たな絆が未来を照らす。光射す道となれ!リミットオーバー・アクセルシンクロォォォォォォォォォォォ!!!


――キィィィン…!!


「進化の光、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!!」

『グガァァァァァァ……!!』
シューティング・クェーサー・ドラゴン:ATK4000


呼び出したのは、最強にして進化の頂点に君臨する大宇宙を統べる白銀の巨竜……遊星の絆が生み出した最強のシンクロモンスターだ。
他を圧倒するその姿は正に龍神……全ての準備が此れで整った。

「行くよヴィヴィオ、レーシャ!私の効果で、相手を攻撃する時、仲間のモンスターは全て攻撃力が倍になる!!」
バスターストライカー なのは:ATK4000→8000
シューティング・クェーサー・ドラゴン:ATK4000→8000


「此れが私の全力全壊!!」

『Starlight Breaker.』

「スターライトォォォ…ブレイカァァァァァァァァ!!!!


「この一撃で終わらせる!天地創造撃……ザ・クリエーション・バースト!!!


放たれた最強最大の『救う為』の一撃!
破壊と創造の光は一つとなり、レーシャとヴィヴィオに埋め込まれた『呪いの力』を対消滅による力で消し去っていく…

「「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

「「う……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」


――キィィィン……ドガバァァァァァァァァァン!!!


臨界に達した飽和エネルギーは大爆発を起こし、盛大に粉塵を舞い上げる。
非殺傷とは言え、2人は無事なのだろうか?

「レーシャ!」

「ヴィヴィオ!!」

粉塵が晴れるのもまたずに、遊星となのはは攻撃で出来たクレータに近付き……そして見つけた、大ダメージを受けながらも必死に立っている2人を。
身体は限界の筈なのに、レーシャもヴィヴィオも膝を折る事なく、支え合うようにして立っているのだ。

「が、頑張ったよ……」

「約束したもん……強くなるって……!」

必死に笑顔を浮かべるレーシャとヴィヴィオに、遊星となのはが駆け寄りその小さな身体を優しく抱きしめてやる。

「あぁ……よく頑張ったな……偉いぞ。」

「ヴィヴィオ……よく頑張ったね…」

絆を紡ぐ決闘者とエース・オブ・エースの限界突破の一撃と、レーシャとヴィヴィオの頑張りで、ゆりかごの最大決戦は遂に決着が付いた。
だが、今度は此処から脱出しなくてはならないのだが……玉座の入り口は此処に入った時に閉じられ、頑丈にロックされている。

何時もならぶち破れば良いだけなのだが、限界の限界まで超えた遊星となのはの魔力は最早空っぽ。
ステラも、もう走るので精一杯と言う状況だ……救助を待つより他に手は無かった。








――――――








同じ頃、動力炉では……

「コイツで止めだ……轟天爆滅!エクスプロード・シュラァァァァク!!!

『Explosion.』

『ロリ姉御につづけぇ!!』
『覚悟は良いなくず鉄がぁ!!』
『ひゃっは〜〜!殺してやるぅぅ!!!』


ヴィータの最大の一撃と下僕ガジェットの波状攻撃で、遂に動力炉が吹き飛んでいた……実にいいタイミングである。


「お!動力炉ぶち壊したんやな?」

「流石はヴィータ副隊長!!」

更に其処にはやてと、別働隊ゆりかごに向かっていたスバル、ノーヴェ、ティアナが合流!

「はやて!其れにお前等も!!」

「市街地の方は大丈夫や……動力炉の方の破壊はOKみたいやな?
 せやったら、遊星となのはちゃんを助けに行くで?
 あの2人が負けるなんて事はないやろけど、勝っても力使い果たして脱出するのも難義するやろうからな。」

流石ははやて、思い人と親友の事をよく分かっている……此れも愛情と友情のなせる業だろう。
無論ヴィータ達に異を唱える理由は無い。

すぐさま、玉座に向かって移動を開始………当然の如く、ヴィータの僕となったガジェット達も付いてきているが。

「…ヴィータ、アレはどないしたん?」

「適当にぶっ叩いたら誤作動起こして、アタシの言う事聞くようになっちまったんだよ…」

まぁ、敵ではないのだから問題はないだろう。
兎に角、動力炉が吹っ飛び、機動の鍵である聖王が沈黙した状態ではゆりかごがどうなるか分からない……全速力で玉座に向かう。


その途中でなのはに倒されたディエチを回収し、一行は玉座の前に。

因みにだが、現在スバルの左手にはギンガのリボルバーバックルが、ノーヴェの両足にはブリッツキャリバーが装備されている。
ギンガはこの時の為に、己のデバイスを2人の妹に託したのだ……スバルには更なる力を、ノーヴェには破損したジェットエッジの代わりに。

「見えた!ふぅぅぅ……振動拳!!!

ぶっとべぇぇ!!!

『Schwalbefliegen Claymore.』


玉座の扉に向かって、先ずはスバルとヴィータが楔を打ち込む一撃を放ち、一層目の扉を破壊し二層目の扉にヒビを入れる。

「喰らいや…クラウソラス!!

ディバインバスター!!!

ファントムブレイザー!!!

続くはやて、ノーヴェ、ティアナのトリプル直射砲が楔の撃ち込まれた扉を完全に破壊して風穴を開け、玉座からの脱出口を造り上げる。


「美しき援軍到着や!助けに来たで、遊星!なのはちゃん!!!」

「はやて、皆!!!」

「はやてちゃんにヴィータちゃん……其れにスバル達まで!!」

「話は後です!直ぐに脱出しましょう!」

全員が合流し、はやてはレーシャを抱いてステラのタンデムに、なのははヴィヴィオを抱いてティアナのバイクのタンデムに。
そのままエンジンを吹かし、一気に今来た道を駆け抜ける。





そして……






『!!!ゆりかご内部から何か……シグナル確認!
 八神司令、スターズメンバー、不動遊星及びレーシャとヴィヴィオ……確認しました!!』



ゆりかごの突入口から伸びたウィングロードとエアライナーを通って、ゆりかご内部に突入した全員が帰還した。
すぐさまアルトがヘリで回収し、全員がようやく一息……いや、一息ついたのは遊星とはやてだけだ。

「まぁ、激戦やったしね?」

「あぁ……だが、此れで全て終わりだ。」

なのはとヴィータ、スバルにノーヴェにティアナ、そしてレーシャとヴィヴィオは緊張の糸が切れたのだろう…シートに腰掛けて眠ってしまっている。

だが、此れで本当に終焉だ。
全員が脱出した直後、ゆりかごは大爆発を起こし、其処にクロウが自分のモンスターで総攻撃を仕掛け、ゆりかごは跡形もなく消え去った。


「……約束は守ったぞ、はやて?」

「やな……お疲れ遊星…そして、お帰りなさい。」


こうして、後に『J.S事件』として名を残す事になる、ミッドチルダ史上最大の大規模テロ事件は幕を下ろしたのだった…













 To Be Continued… 






*登場カード補足



Sp−フラットレベル・アフター4
スピードスペル
自分のスピードカウンターが6個以上ある時に、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターを2体まで選択して発動する。
エンドフェイズまで、選択したモンスターのレベルは4になる。