天気は雲一つ無い快晴。
機動六課の本部があったこの広場では、本日『機動六課の解散式』が行われようとしていた。

管理局の体制を変えると言う名目の下に結成された機動六課だが、其れを果たす目途が付いた今、何時までも存在していていい部隊でないのも事実。

ランク保有制限を抜ける為にはやて、なのは、フェイトにはリミッターを掛けては居るが、実際の保有戦力は六課だけで管理局を制圧できるのだ。
其れゆえの解散………強すぎる力は新たな争いの火種にしかならないのだから。


『そんな訳で、機動六課はその役目を終え、一時解散する運びとなりました。
 せやけど、もしまた何か起きた時には再び六課を再結成する事があるかも知れません……その時は、また皆の力を貸してもらうで?』

解散式での挨拶をするのは六課の総司令であるはやて。
思えば、六課が本格起動してから1年……長いようで短い時間だったが、其れでも充実した時間だった事は間違いないだろう。


『一つだけ覚えておいて……六課は解散しても私達の絆はなくならへん。
 新しい配属先で挫けそうになった時には、この六課の仲間の事を思い出してや……きっとどんな困難も乗り越えられる筈や…私はそう信じてる。』


演説の最後をそう飾ると、盛大な拍手が巻き起こる。



そして…


『クァァァァァァッァァァァ〜〜〜〜!!』


遊星とはやてに一時の別れが訪れようとしていた…












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 ラストクロス
『新たな始まり〜そして未来へ…』











「赤き竜…」

「やっぱり現れたな……遊星とクロウをシティに戻すんやろ?」

はやての演説が終わると同時に現れた赤き竜は何も答えず、その代わりに遊星達の痣が輝きはじめ、そしてその身体を離れて赤き竜に取り込まれる。



……遊星達はシグナーとしての役目を果たし、シグナーとして生きる使命から解放されたのだ。


「痣が……」

「どうやら、本当に終わりみたいだな…」

痣が消えた腕を見て一様に呟くが、だからと言ってこの状況に混乱して居る訳ではない――寧ろ痣が何れ回収される事を予想していたのかもしれない。


兎に角焦る事はなく、全ての痣をその身に取り込んだ赤き竜を見上げている。



「遊星……」

「そんな顔をしないでくれ……俺は必ず戻ってくるから。」

「うん…せやけど、分かっててもやっぱ寂しいのは隠しきれへん……」

壇上から降りてきたはやては、少しばかりのワガママとばかりに遊星にもたれ掛かるが、遊星も其れを確りと抱き留めてやる。
この光景を見ただけで、大量の砂を吐いた六課のスタッフが居たのだが、別に其れを詳しく語る必要もないだろう。

まぁ、こんな『Loveオーラ120%』にあてられたティアナはグロッキー寸前だったのだが、其れを遊星とはやてが知る由もない。



1分以上の抱擁を交わした遊星とはやては、身体を離しいよいよ赤き竜の力で遊星はシティに戻されようとしていた。
だが、同じくシティからやって来たクロウは一切帰る素振りを見せず、それどころかスバルやノーヴェと雑談を交わしている。

「クロウ、そろそろ……」

『シティに戻るぞ?』と言う意味を込めて、遊星はクロウを呼ぶが、クロウは赤き竜の波動の近くには来ない――シティに戻る心算が無いようだ。

「ワリィ遊星、俺は此処に残る。
 シティを捨てるとかそう言うんじゃなくてよ、俺は此処でコイツ等の兄貴になる事にした……それに、ミッドとシティは繋がるんだろ?」

「勿論繋げるが……良いのか?」

「あぁ〜〜〜……取り敢えず、牛尾の旦那にはこれ渡しといてくれ。
 んで、マーサとガキ共の方は……ん〜〜〜〜〜〜……適当に何とか言っといてくれ、お前なら其れ位できんだろ?」

「んな適当でいいのかよアニキ!」
「其れは流石に適当過ぎだよクロ兄!!」
「挨拶位はしてくるべきかと思いますよクロウ兄さん?」


余りにも適当な物言いのクロウに、思わずノーヴェ、スバル、ギンガが苦言を呈してしまったのは仕方ないだろう。
だが、此れはクロウ也の照れ隠しと言うか、要するにそう言う物なのだ。

牛尾に渡してくれと言ったのは、所謂『辞表』だが、此れを受け取っても牛尾は意外な顔をする事は無いだろう。
牛尾とて、何時までもクロウがセキュリティの真似事をしているような奴ではない事くらい理解している――何れ辞める時が来ると予想はしている筈だ。

また、マーサにしてもクロウが此方に残ると知っても『そうかい……其れがアンタの選んだ道なら、確りと進むんだよ』と言ってくれるだろう。

そんな2人に対して『ミッドで暮らす』とは言い辛く、また自分の道を見つけたと言うのが何処となく気恥ずかしい感じがするのだクロウは。

「あぁ、渡しておこう。マーサにも……適当に言っておくさ、バレルだろうけどな。」

「牛尾の旦那は兎も角、マーサにはバレそうだなぁ〜〜…」

そんなクロウの心情が分かるからこそ、遊星は多くを語らずにクロウから辞表を受けとり『任せておけ』とばかりに笑いかける。
クロウもまた『任せちまってワリィな』と言った感じの苦笑いだ。

「んで、ドンくらいだ?」

「長くても1年……ミッドからシティへの片道なら既に出来てるが、シティからミッドへの道は繋がっていない。
 だがそれも、此方で作ったデータを反転させれば簡単にできる……どんなに難航しても1年あれば2つの世界は完全に繋がる事になる。」

遊星は其れだけ言うと今度はレーシャに向き直り、しゃがんで目の高さを合わせる。

「レーシャ、俺は一度自分の家に戻らなくちゃいけない。
 だが、必ずここに戻って来る……其れまで、はやてと一緒に待っていてくれ――出来るな?」

「うん……待ってるよお父さん……お母さんと一緒に。」

寂しくないと言ったらウソになるが、レーシャは遊星が嘘を吐かない事を知っている。
だから、『必ず帰って来る』と言うならそうなのだと信じ、はやてと一緒に待つ事を決めた――だから涙は見せずに笑顔で遊星を見る。

「いってらっしゃい、お父さん。」

「あぁ……行ってくる!
 はやて、今は一方通行だから、あの装置のシグナルはグリーンだが、シティとミッドが完全に繋がった時にはシグナルが青になる…それまで…」

「うん!シグナルのチェック、欠かさず行っとくで?遊星の出迎えはレーシャと一緒にしたいからなぁ♪」

「ふ……そうしてくれ。
 待たせたな、赤き竜よ!シティに戻るのは俺だけだ……さぁ、連れて行ってくれ。」

『クァァァァァァァァァァァァ……!!!』

咆哮一発……赤き竜から真紅の光が溢れ……そして、其れが治まった時、遊星の姿はその場から消えていた。


「ふぅ……なんや、思った以上にアッサリやけど、取り敢えず何時でも出来るようにミッドの式場1つを1年間貸し切らんととアカンな?」

「式場って………えぇ!?そんなトコにまで話が進んでるのはやて!?」

「ままままま、まさか……何時かはそうなると思ったけど、遊星さんと結婚!?」

「他に何があるんや、フェイトちゃん、なのはちゃん!」

で、遊星が居なくなった瞬間にはやてが爆弾投下!
2人の関係は見ている方が確実に砂を吐くレベルになっているとは言え、よもやトントン拍子に結婚にまで話が進んでいるとは予想外だったらしい。

其れに親友2人は驚き、ヴォルケンリッターの面々は『やっとか』と言った感じで、沙羅は『若いって良いわねぇ』等と言っている。
で、クロウは何やら遠い目で空の彼方を見つめている。

「クロ兄、如何したの?」

「いや……どこぞの奥手な黒薔薇の魔女様が此れを知ったらどうなるかと思ってな…」

「「「???」」」

「こっちの事だ、深く気にすんな…」
――奥手すぎるのも問題だよなぁ……ったく、デュエルの時みたく積極的に行けば良いのによぉ……ま、はやての方が恋愛は上手だったか。


遊星を思っているもう1人の女性の事を思い浮かべ、しかしクロウは面倒な事には成らないだろうと、そう思っているようだった。








――――――








――シュゥゥゥン……



「戻って来たか……ステラ、今の時間は?」

『マスターとクロウが赤き竜の波動に包まれた時から15秒後です。』

遊星は無事シティに戻り、スグサマ現状を確認――今回も前回同様に此方では余り時が経って居ないようだ…此れも赤き竜の力だろう。
同時に時間の差異……遊星にとっての1年がはやてにとっての10年だったのも赤き竜の力によるところが大きいだろう。

早い話、赤き竜が『遊星の力が必要な時代』を選んで飛ばしたと言う事だろうから。



だが、その力はもうない……ミッドとシティの時間差は存在し得ないのだ。
ならば、きっとシティからミッドへの道を繋ぐのも難しくはないだろう。


「取り敢えずは牛尾とマーサだな……果たして2人ともどんな顔をするだろうな?」

『Mr.牛尾は予想していた事態であっても驚き、Madam.マーサはクロウの思いを読み込んで納得の表情を浮かべるのではないでしょうか?』

「そうだな。」

ステラの意見に頷くと、遊星はエンジンを吹かし、一日が始まり始めたシティの市街に向かって一直線に進む。
牛尾とマーサへの説明やら何やらの他に、1日でも早くミッドとの道を繋がねばならない……愛する人を待たせるのはあまり良い事では無いのだから。








――――――








J.S事件が一応の解決を見せ、機動六課が解散した後、時空管理局は大幅な体制の見直しをせざるを得ない状況になって居た。
元機動六課の面々の告発に加え、ドゥーエがスパイ活動中に盗み出したデータから、此れまで市民が知る事もなかった管理局の裏が暴露されたのだ。

勿論市民は怒り、その矛先は管理局に向かうと思われた……が、そうは成らなかった。
J.S事件解決の立役者であり、ミッドチルダ全域を護った機動六課の面々が会見を開き、総司令だったはやてが『管理局を抜本から改革する』と宣言。
同時に此れまで管理局で一元化していた政治や司法、軍事と言ったモノをそれぞれの分野で細分化して再構成する事を提案して来たのだ。

更に、スカリエッティと内通していた者達への厳罰も公表し、市民の怒りを見事に抑え込み、管理局を新体制に持ち込む事に成功していた。
はやては魔導師としての実力だけでなく、政治的な手腕も見事なまでに磨き上げていたらしい。


なお、新管理局の総合局長にはレクス・ゴドウィンが就任し、その下に各分野の最高責任者として、リンディやレティが就任している。






さて、今回の事件にかかわった者達だが…


なのはは六課解散後に古巣の教導隊に戻り、教導官として新人魔導師の教育を行っている。
自身の経験も交えての教導は分かり易い上に実戦的と評判だが、時たま模擬戦に熱が入って『全力全壊』してしまうのが偶に傷。
もっともそのおかげで鋼の精神力を手に入れた魔導師が大量生産される事になるというのは、今のなのはには知る由もない。


フェイトは事件後執務官の任に戻り、多忙な日々を送っている。
J.S事件は解決しても、ミッドで起こる犯罪を根絶する事は出来ず、日々色々な事件が起き、その対応に追われている。
だが、忙しくとも充実しているのか、フェイトの表情には常に充実した日々を送る満足感が浮かんでいた。



アリシアは六課解散後に管理局を退局。
退局後は『ホビーショップT&H』のスタッフとして店を手伝い、イベント時には美由希、リニスと共に『T&H看板3人娘』として大人気。
デュエルの解説の巧さも有り、今やT&Hには欠かせない存在となって居る。



クロウはゲンヤと正式に養子縁組を交わし『クロウ・H・ナカジマ』として、ナカジマ家の長男となった。
同時に『民間協力者』から正式な局員となり、なのはの誘いで教導隊の教官に就任して、なのは、ヴィータと共に新しい世代の教育を行っている。
なお、クロウの鬼展開からの波状攻撃は、なのはの直射砲と同レベルで訓練生に恐れられているとかなんとか…



ドゥーエは、シグナムとの面会を重ねるごとに『人間味』が増し、最近では『裏のない笑顔』を見せるまでになって居た。
其れだけでなく、シグナムの世間話に『其れは流石にないんじゃない?』などの突込みや合いの手を入れて来るようになるまでになっていた。
これにより本来の処分は完全に取り消され、更生一本の道を歩む事となって居た。
また、本人の希望で出所後はシグナムの直属での管理局への入局を希望しているらしい……此れも良い変化なのだろう。



ノーヴェは事件後にスバルやギンガと相談して独立機動部隊『N2R』を組織。
新たに家族となるチンク、ディエチ、ウェンディの事を考えて立ち上げた特殊部隊だが、どちらかと言うと嘱託部隊の色が濃い。
有事の際にはスバルの所属する湾岸警備隊特別救助隊と連携して物事に当たるようになっている。
これに伴い、ノーヴェ自身もまた正式な管理局員から嘱託魔導師へと自らの扱いを変更している。(此れには正局員のままでと言う意見もあったのだが)



ゴドウィンは、新管理局の総合局長に就任したとは言え、日々に変わりはない。
書類整理などをしながらゆったりまったり日々を満喫……時折T&Hに顔を出してデュエルを楽しんでいる姿が目撃されるらしいが詳細は不明。
ともあれ、彼が総合局長になった事で管理局が真に市民を護る組織として機能しているのも事実。

尤も、ゴドウィンとしては此処までの事を滞りなく行ったはやての政治手腕を大いに評価していたのだが…








そして――


「今日も緑やなぁ……」

「残念…」

はやては今日もレーシャと共に、遊星が残していった転送機をチェックしていた。
遊星がシティに戻ってから既に9カ月が経過していたが、その間もずっと装置のシグナルは緑色のままだったのだ。



因みに、はやては事件後最も忙しい日々を送ったと言えるだろう。
組織の再編に、総合局長と各分野の最高責任者の選定と任命……機動六課設立の時の比ではない業務を精力的にこなしていたのだ。

其れでもこの激務を僅か半年で殆ど完了したと言うのを見る限り、はやての優秀さは疑う余地もないだろう。





そしてそれとは別に、今日の様に転送機のシグナルチェックをするのは最早日課だ。
遊星がシティに帰ったあの日から、転送機のチェックを欠かしたことは無い――其れはレーシャもまた同様だ。


「ん〜〜〜…タイムリミットの1年まではまだ1シーズンあるし、気長に待った方がえぇな。
 『果報は寝て待て』『急いては事を仕損じる』や……其れに遊星は絶対戻ってくる言うたんやしね……転送機のチェックは欠かせへんけどね。」

「気長に……でも、そろそろお父さんに会いたいよお母さん…」

「其れは私もやでレーシャ……はぁ、10年と比べれば短いとはいえ、やっぱり待つのは楽やあらへんよ遊星…」


待つのに疲れたなどと言うつもりはないが、其れでも会いたい気持ちはドンドン大きくなって止められないのもまた事実。
だが、其れでも待つしかないのだ……


「まぁ、アレやな……良い女は待つ事が出来る言うてことやな……また明日こよか?」

「うん…そうだね。」

今日もダメ……そう思い、はやてとレーシャがその場を去ろうとした瞬間だった。


――ピン


「「!?」」

転送機のシグナルが緑から青に変わったのだ。
其れはつまり、ミッドチルダとネオドミノシティが完全に繋がった事の証―――となれば……


――ギュゥゥゥン……



「ふぅ……如何やらちゃんと繋がったようだな。」

其れは遊星が帰還して来る事に他ならない。
見慣れたライダージャケットとは違う、グレーのジャケットに身を包んだ遊星は転送機の前で手を握り開き、転送が巧く行ったことを確かめて居るようだ。


「あ……あぁ……遊星……!!」

「お…父さん…!!」


はやてとレーシャも遊星の姿を確認すると、感極まったのか遊星に向かって一直線に突貫!
遊星は驚くも、2人を確りと受け止め抱きしめてやる。


「ただいま、はやて、レーシャ……随分待たせてしまったな…」

「えぇよ……未だ約束までは1シーズンも残ってるしな………取り敢えず、おかえり遊星……」

「おかえりなさいお父さん…」

「あぁ……ただいま。」


多くの言葉は必要ない……遊星とはやてとレーシャには他の誰よりも強い絆が紡がれているのだ、もうすぐ正式に家族となる3人には。


きっと、いやこの絆が切れる事は絶対に無いだろう。



此れから、遊星とはやても、そしてその仲間達も此れまでとは違う道を歩むのだろう……そう、鮮やかに彩られたVivid(鮮烈)な日々を…


そして絆の決闘者と夜天の主は、生涯を共に歩んでいくのだろう……その絆を胸に抱きながら。











〜Fin〜



 








遊戯王5D's×魔法少女リリカルなのは
絆の決闘者と夜天の主



原作:魔法少女リリカルなのはA's、魔法少女リリカルなのはA'sPORTABLEシリーズ、魔法少女リリカルなのはStrikerS
 遊戯王デュエルモンスターズ、遊戯王デュエルモンスターズGX、遊戯王5D's、遊戯王ZEXAL





STAFF



企画・原案:吉良飛鳥


文章更生:kou


オリジナルカード設定:吉良飛鳥&kou並びにオリカ投稿掲示板に投稿してくださった皆様。



ストーリー構成:吉良飛鳥&kou



Specialthanks:読んでくださった読者の方々。



Thank you For Reading



Presented By 自由気侭



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