「あらあら頑張ります事〜〜〜……所詮は負ける運命だと言うのに滑稽ですわね〜〜〜。」
「……油断するなクアットロ、管理局の魔導師だけならば兎も角、未知の力を持ったデュエリストが一緒では此方の勝ちも絶対とは言えないのだから。」
「も〜〜〜、慎重ですわねウーノお姉さまは……。
でも、相手が未知の力を持っていると言うのはゾクゾクするわ……其れを撃ち破って相手に絶望を与えられたら最高ですもの…
ねぇ、そう思うでしょうディヴァインおじ様?」
「実にいい考えだクアットロ……他者の絶望は最高の美味――君も分かってるじゃないか。」
ゆりかごの最下層にあるコントロールルームで、ウーノとクアットロ、そしてディヴァインはモニターに映る映像を愉快そうに眺めていた。
通路を進む遊星となのは、そしてエンジンルームでガジェットを蹴散らしながら動力炉に攻撃を加えているヴィータの映像をだ。
「ククク……希望を手にしようと奮闘する者を、絶望の底に叩き落とすのを考えると途轍もなく愉快な気分になるモノだ。
クアットロ、白い魔導師の方は君に任せよう……不動遊星は私が絶望へと叩き落としてやる…!」
「は〜〜い、頼りにしていますわよおじ様♪」
「任せておけ…」
其れだけ言ってコントロールルームから出て行ったディヴァインを見送ると、クアットロは今までからは想像もできないような冷笑を浮かべた。
そう、文字通り『背筋が凍る笑顔』と言う奴だ。
「まぁ、精々頑張ってねおじ様――――所詮貴方はドクターの望みを叶えるための捨て駒に過ぎないんだから…」
「ゼストよりは良く出来たレリックウェポンでも、所詮は失敗作――不動遊星を抑える事が出来るはずがない…僅かでもダメージを与えられれば僥倖でしょう。」
「そう言う事ですわ……お姉さま、其方は?」
「完璧に……後は不動遊星の到着を待って『大魔導師』を覚醒させるだけ。」
「流石ですわ…こっちもエース・オブ・エースの到着を待って『聖王』を目覚めさせるだけですもの……うふふ、楽しくなりそう…」
ゆりかご内部には、例えようのない濃密な『悪意』が満ち満ちていた…
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス114
『悪意の果てに目覚めし者達』
遊星と別れたなのはは、一路ヴィヴィオが居るであろう『玉座』に向かって邁進していた。
当然その道にはガジェットが衛兵宜しく数えきれない程現れるが、その程度では今のなのはは止められない!止められる筈がないのだ。
「鬱陶しいなぁ……レイジングハート、ブラスター1解放!」
『All right.Blaster1 release.(了解。ブラスター1を解放します。)』
余りの物量にうんざりしながらも、なのはは自身の力を爆増させるブラ―スターをレベル1で起動し能力を底上げする。
元々の能力が高いなのはがシンクロし、其処にレベル1とは言えブラスターを発動したらどうなるか?……言うまでもない、ガジェットは只のゴミだ。
「一気に行くよ!」
『A,C,S Standby.Strikeframe.(A,C,S準備完了。ストライクフレーム展開。)』
更にA,C,Sを起動し、自身を弾丸と化して通路を進んでいく。
エース・オブ・エースの名を欲しいままにしたなのはは、正しく管理局最強の魔導師と言っても誰も文句は言わないだろう――事実なのだから。
このまま一気に玉座へ!
とは行かないのが世の常。
進行方向の先から、なのはは僅かな気配を案じ取った……そう、戦闘機人の気配を。
そしてそれは間違いではなく、進行方向の先ではディエチがイノーメスカノンをなのはに向けて構えている。
正面から強大な一撃で叩き潰す心算なのだろう……この通路では逃げ場はない故に有効な戦法であると言えるだろうし、実際有効だ。
だが、なのはとてそんな事は分かっている、分かっているからこそ退かない。
「戦闘機人……突破するよ!ブラスター2を解放!」
『All right.』
更にブラスターをレベル2に移行し、一撃撃破を狙う。
「おわり…だ!!」
それと同時に放たれたディエチの一発!
その砲撃の大きさは、なのはのディバインバスターと同等クラスと言っても決して大げさではない一撃であり、並の魔導師なら一撃撃沈確定だ。
だがしかし、砲撃はなのはの十八番であり代名詞とも言えるモノ。
その砲撃で果たしてなのはが撃ち負けるだろうか?―――答えは断じて『否』!
「ふぅぅぅ……ハイペリオンスマッシャー!!!」
ディバインバスターをも凌駕する極大直射砲を放って、ディエチの砲撃を真正面から受け止める。
いや、受け止めるだけではない、拮抗したのはぶつかったほんの一瞬で、其処から物凄い勢いでなのはの砲撃がディエチの砲撃を押し返していく。
「な!!私の砲撃が……押し戻されて……う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
――ドォォォォン!!!!
ディエチの砲撃を飲み込んで威力倍増したハイペリオンスマッシャーは、そのままの勢いでディエチを吹き飛ばす。
幾ら非殺傷設定とは言え、幾ら戦闘機人とは言え、オーバーSの魔導師を一撃で沈黙させる砲撃が直撃しては堪らない――戦闘不能は確実だ。
「ぐ…」
倒れ伏すディエチを更にバインドで拘束して動きを封じ込めターンエンド。
魔導師になってから10年と言うなのはと、起動して間もないデュエチの覆しようのない経験の差が出た攻防だった。
「全部終わったら助けに来るから……其れまで大人しくしてね?」
「今の砲撃……お前、本当に人間か…?」
思わずそう呟いてしまったのは仕方ないだろう。
今のなのはの砲撃は、如何考えても魔導師ランクS+が放つ砲撃の威力を遥かに凌駕しているのだから。
「人間だよ……ヴィヴィオを助ける為に限界なんてものを捨て去った、只の人間だよ。」
「限界を捨て去った……何て奴だ……」
だが、なのはの言った事を聞いて『何て奴だ』と言いながらも、ある意味で納得してしまった。
確かに限界を捨て去ったと言うならば、データ以上の威力を秘めた攻撃が出来ても不思議ではない……そして、其れが最大の『差』だとも。
「……悔しいな。」
「ん?」
「砲撃には自身があったのに、まるで通じないで一方的に……こんな気持ちは初めてだ……」
「………悔しいって思えたなら、貴女はまだ踏み外してしまった道から元に戻れるかもしれない……その気持ち、忘れちゃダメだよ…」
悔しいと漏らすディエチに其れだけを言って、なのはは先へと進む。
残されたディエチには、なのはの放った言葉全てが、頭から離れなくなっていた……
――――――
「一体、ドレだけのカードを兵器として利用しているんだスカリエッティは……!!」
一方、レーシャの下へと向かう遊星の前にはガジェットに混じって多数のデュエルモンスターズのモンスター達が現れていた。
何れも碌に効果も持たない下級モンスターゆえに遊星の敵ではないが、問題は其処ではない――只の消耗兵器とされている事が問題だった。
遊星やクロウもカードを使って戦っているが、しかしそれは共に闘う『仲間』或は『相棒』として戦っている。
だがスカリエッティのやり方はどう贔屓目に見ても、カードを弾薬などと同様の消耗品と同等の扱いだ――此れが遊星には許せなかった。
「カード達を只の兵器として使う等、俺は絶対に認めない!
行くぞ!レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
集いし星が、新たな力を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!!」
『フォォォォ……覇ぁ!!!』
ジャンク・ウォリアー:ATK2300
「更にトラップ発動『同調階級砲』を発動し、ジャンク・ウォリアーに装備!
このカードは発動後、装備カードとなりフィールド上のシンクロモンスターに装備される。
そして装備モンスターの攻撃力は、装備モンスターのレベル×200ポイントアップする!
ジャンク・ウォリアーのレベルは5!よって攻撃力は1000ポイントアップする!!」
ジャンク・ウォリアー:ATK2300→3300
新たにジャンク・ウォリアーを呼び出し、更にミッドに来てから手に入れた新たなカードを使ってその攻撃力を強化!
先に召喚していた3体の龍に加えて、この強化ジャンク・ウォリアーの存在は遊星の戦線を更に強固なモノとする――下級モンスターは敵にもならない。
「ジャンク・ウォリアー、進路上のガジェットとモンスター達を一掃しろ!!撃ち抜け『スクラップ・ラグナロク』!!」
『デリャァァァァァァァ!!!』
――キュイィィィン……バガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
遊星の命令通りに、ジャンク・ウォリアーは装備されたキャノン砲から極太のビームを放って進路上の敵を完全撃滅!!
レーシャ救出に燃える遊星に敵などいない……おまけにモンスターの兵器使用は、遊星の怒りの炎にガソリンをぶっかけただけである。
「待っていろレーシャ、必ず助ける……そして、一緒に帰ろう――はやての許に!」
すっかり綺麗になった通路を、遊星はスピードを上げて突き進んで行った。
――――――
「ったく次から次へとうざってぇ……ウラァ、テメェもぶっ飛びやがれーーーーー!!」
――カキィィン!!……バッゴォォォン!!
予想よりも遥かに堅い動力炉のシールドと、次から次へと台所のゴキブリの如く湧いて来るガジェットに対し、ヴィータは戦い方を変えていた。
動力炉を自分で殴るのではなく、現れたガジェットを『弾』として動力炉にぶつけると言う方法に切り替えていたのだ。
ANFキャンセラーが搭載されたアイゼンを装備し、更にシンクロ化したヴィータにとってガジェットの背後を取るなど造作もない事。
瞬間加速で背後を取ると、そのまま野球選手宜しく、ラケーテンハンマーでホームラン!
此れならば、ガジェットの破壊と動力炉への攻撃が同時に行えて一石二鳥!鉄槌の騎士改め鋼槌の騎士は、バトルセンスも抜群である。
同じ頃、フェリシアにブッ飛ばされていたスカリエッティも、まさかガジェットがゆりかご破壊に使われているとは思ってもいなかっただろう。
「おら、弾丸足りねぇぞ!もっと持って来い!!」
――カキン!カキン!カキン!カキン!カッキーーーーーーーーーン!!!
現れては打ち、現れては打ち、動力炉でヴィータは正に『リリカル無双』状態。
「そう言えば、此れを止めたとして、こんだけのデカ物をどう処理すんだ?……遊星が次元航行艦に改造すりゃ問題ねぇか。」
兎に角ヴィータは余裕であった。
――――――
「レーシャ……」
「お父さん……」
「ヴィヴィオ…!!」
「ママ……!!」
動力炉でヴィータが無双をかましている頃、遊星となのはは、夫々レーシャとヴィヴィオの許へと到着していた。
レーシャもヴィヴィオも玉座の様な物に縛り付けられ身動きが出来ない。
当然、遊星もなのはも直ぐに助け出そうとするが――
――バチィ!!!
「「!?」」
レーシャとヴィヴィオの前には不可視のバリアが張られているらしく先に進む事が出来ない。
『辿り着きましたか不動遊星…』
『来ましたわね、エース・オブ・エース……ディエチちゃんじゃ足止めにはならなかったようですわね〜〜……ホント役立たず…』
更に其処に聞こえて来たウーノとクアットロの声……其処に込められた悪意に、遊星となのはが思わず顔を歪めたのは仕方ないだろう。
「レーシャを解放しろ!この子をお前達の野望に巻き込むな!!」
「ヴィヴィオを解放して!この子はゆりかごの聖王なんかじゃなくて、只の女の子なんだから!」
叫ぶが、そんな事を聞く連中ではないだろう。
『其れを聞くとでも?』
『精々絶望しなさい〜〜……そう、助けようとした子達との殺し合いをしてね!』
――キィィン…パリィィィ!!
「「きゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁ!!!!!!」」
悪意たっぷりの一言を放ったと同時に、レーシャとヴィヴィオの前に何かが現れ、2人の体内に吸収されていく。
……其れはレリック!ウーノとクアットロはレリックをレーシャとヴィヴィオに埋め込む事で『レリックウェポン』として遊星となのはに向かわせる心算だ。
更にヴィヴィオはそれによって魔力値の上昇と身体強化を行い『ゆりかごの聖王』として使用する心算なのだろう。
「レーシャ!!」
「ヴィヴィオ!!!」
その融合によって生じた光に、遊星となのはも目をハッキリと開ける事が出来ない……だが、魔力が強大に上昇して居る事だけは感じ取れた。
そして、光が治まると、其処にレーシャとヴィヴィオの姿はなかった。
「……!!此れは…プレシア…!!」
「……………」
遊星の前には、鞭を携えた黒衣の魔女が。
「!!……ヴィヴィオ………!」
「………違う…お前はママじゃない!!!」
なのはの前には、ハニーブロンドの髪をサイドテールに纏め、漆黒のバリアジャケットに身を包んだ女性が。
スカリエッティ一味の切り札とも言える『過去の最強』と『現代の最強』が、降臨した瞬間だった――
To Be Continued… 
*登場カード補足
同調階級砲
通常罠
このカードは発動後装備カードとなり、自分フィールド上のシンクロモンスターに装備される。
装備モンスターの攻撃力は、装備モンスターのレベル×200ポイントアップする。
装備モンスターは、バトルフェイズ中に相手の表側表示モンスター全てに攻撃出来る。
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