動力炉の破壊をヴィータに一任し、遊星となのははゆりかご内部を現在全速力で疾走中。
ゆりかご内部にだって、当然ガジェットは配備されており、内部の警備兵宜しく侵入者に対して攻撃を行い排除しようとして来る。

「次から次へと…流石は敵の最終兵器の内部と言ったところか?だが、お前達の相手をしている暇はない。
 ロード・ランナー、ボルト・ヘッジホッグ、スピード・ウォリアーの3体に、ジャンク・シンクロンをチューニング!
 集いし闘志が、怒号の魔神を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、粉砕せよ『ジャンク・デストロイヤー』!!」

『ウオォォォォォ!!』
ジャンク・デストロイヤー:ATK2600



「ガジェットを蹴散らせ、『タイダル・エナジー』!!!」


「レイジングハート、ショートバスター10連射!!」

『All right Master.Short buster.(了解しましたマスター。)』


――ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!



だが、ガジェット如き天下無敵の決闘者と、史上最強のエース・オブ・エースの前には障害にすらならない。
遊星の呼び出したジャンク・デストロイヤーのエネルギー波と、なのはの10連発ショートバスターの前に敢え無く屑鉄にされてしまった――哀れ。

遊星にもなのはにも、助け出さねばならない大切な存在が居る故に、その気合いの充実度は半端ではない。
特になのははシンクロ状態であると言えば、その思いの強さが分かるだろう。

「このまま一気に王座の間まで!」

「あぁ……フルスピードで行こう!!」

不屈の心をその胸に――2人の最強は目的地に向かって、更に速度を上げたのだった。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス113
『ファイナルステージ:ゆりかご』











そうして疾走する最中、遊星は突然奇妙な感覚に襲われた。
一瞬――本当にコンマ5秒にも満たない一瞬だが、確実に意識が何処かに飛ばされた様な感覚を覚えた。

だが不安や気持ち悪さは感じない――理由は直ぐに分かった。

「そうか……お前も、今どこかで大きな戦いに臨んでいるんだな。」

デッキの中の『蒼銀の戦士』から強い波動を感じたから。
そして、そのカードのオリジナルとなった『彼』が、遠い異世界の地で大きな戦いに臨もうとしている事が分かったらから。

「お前との約束通り、俺は俺の居るべき世界を護る。
 だから、お前もお前の世界を護れ稼津斗――行って来い、戦友。」

そう言って蒼銀の戦士のカードを取り出すと、明らかに今までとは違うカードとなって居た。
奇しくもこの時、その異世界で稼津斗が、遊星と他の仲間達の手によって闇の底から這い上がっていたなど、この遊星は知る由もないが。

「遊星さん?」

「ふ、大丈夫だなのは……戦友から、少しばかり力を分けてもらっただけさ。」

「?」

勿論、遊星に何が有ったのかなのはは分からない。分からないが、遊星の闘志が更に燃え上がったと言う事だけは理解できた。
そして、なのはにとってみれば其れが分かれは充分だ。

なのはと言う存在は、戦場に居るだけで仲間の士気を上げる存在だが、なのはもまた仲間の士気が高いほど己の士気が高まるタイプなのだ。
だから、遊星の闘志が燃え上がったのは、なのはにとっても嬉しい事なのだ――全力を超えた全力を出す事が出来るようになるのだから。

新たに現れたガジェットをいとも簡単に粉砕し、2人は先へと進んでいった。








――――――








一方、動力炉の破壊を任されたヴィータの方は、そろそろ目的地に到着しようとしていた。
無論此方にもガジェットは出て来たが、AMFキャンセラーを手にした鉄槌の騎士の前には大した脅威ではなく『文字通り』粉々にされてしまった。

「AMFキャンセラーがなかったら、ちときつかったかも知れねぇ…沙羅とプレシアには感謝しねーとな。
 そろそろ動力炉に到着しても良い筈なんだが――つーか、遊星の奴は何時の間にゆりかご内部のスキャンなんてしていやがったんだ?」

携帯型多機能端末(遊星作)の光学ディスプレイで動力炉の位置を確かめながら、ヴィータはぼやく。
如何やら遊星は移動しながらモンスター達を使ってゆりかごの内部構造と部屋割りを調べていたらしく、そのデータを送って来たのだ。
高速移動と戦闘を行いながらゆりかご内部の構造把握……相変わらずのトンでもなさを全開で披露してくれた遊星であった。

「ま、遊星なら此れ位は楽勝だよな……と、此処が動力炉か…」

遊星だから、と納得したヴィータの目の前に現れたのは重厚な扉。
明らかに『重要な場所』を防護している防御壁が現れた――そう、此処が動力炉だ。

「へっ!大層な扉だが、んなモンでこのアタシを止められると思ってんのか?
 この鉄槌の騎士に砕けねぇモンはこの世に存在しねぇ!行けるなアイゼン!!」

『Kein Problem.(問題ありません。)』

だが、如何に分厚い扉であろうとも、攻撃力と言う一点に限ればヴォルケンリッター最強のヴィータの前には大した脅威ではない。
鉄槌の騎士は、いつ何時だって立ち塞がるモノはその手で粉砕して来た――今回は其れがゆりかごの動力炉なだけだ。

だが――


『Eine magische Reaktion wurde ausfindig gemacht.(危険な魔力反応を検知しました。)』

いざ扉を破壊して突入!と言うところでゆりかごの警戒音声。
どうやら、最強兵器は内部セキュリティも中々に優秀ならしい。

『Wir gehen in die Verteidigungssituation ein. Alles, was sich dem Kern annahrt, wird unbedingt zugig angegriffen.
 (防衛モードに入ります これより動力炉に接近するものは、無条件で攻撃されます。)』


近寄らば斬る…つまりそう言う事なのだろうが、其れを聞いてもヴィータは小動もしない。
それどころか、幼い容姿に不釣合いとも言える程――いや、幼いから故の獰猛な笑みを浮かべ扉を睨みつける。

「あ?近付いたらブッ飛ばすってか?……やってみろよ、出来るモンならな!
 こちとらテメェと違って数えきれねぇ人の命背負って戦いに臨んでんだ、警告如きにビビってられっかよ!!
 テメェこそ、アタシを攻撃するって言った事を後悔しやがれ!!アイゼン、ロード『シンクロカートリッジ』!!」

『Jawohl Nachladen!(了解、装填します!)』

シンクロカートリッジをロードし、鉄槌の騎士は鋼槌の騎士へとその姿を変える。
シンクロ時に弾けた魔力の余波が、通路の壁や床に罅を入れているのを見る限り、シンクロした以上の力が発揮されているのかもしれない。

「鉄槌の紅騎士改め、鋼槌の黒騎士……テメェを粉砕してやるぜ!!」

『Schwalbefliegen Claymore.』

来るなら来いとばかりに、爆発効果を持った鉄球で扉を一撃粉砕!
だが、同時にそれはゆりかごのセキュリティを作動させる事に他ならない。

『Jagdflieger, aufbieten!(艦載機、全機出動!)』

艦内に入り込んだ『異物』を排除しようと、ゆりかご内に積み込まれたガジェットが一気に溢れ出してくる。
恐らくは遊星となのはの方にも言って居る筈だ。

「へ…ガラクタが何機来ようとアタシの敵じゃねぇ!!
 邪魔する奴は、遊星の制作物の材料にしてやるから掛かってきやがれ!!」

『Raketenhammer.』

現れたガジェットを、グラーフアイゼンを振り回して纏めて完全粉砕!大撃滅!完全滅殺!!
シンクロしている事を除いても、ヴィータの騎士としての強さを如実に表す結果となった。


そして、ガジェットをいとも簡単に粉砕したヴィータは、その勢いのまま動力炉に乾坤一擲の一発をぶちかます。
だが、其処は最重要機関である動力炉――幾重にも強固な魔導障壁が重ね掛けされているらしく、ヴィータの攻撃を弾いてしまう。



「ち…やっぱ堅ぇ……だが、一発でダメならぶっ壊れるまで何発でも打ん殴るまでだ!!!」

だからと言って攻撃の手は休めず、手にしたアイゼンを只管振って動力炉を殴りまくる。
鋼槌の黒騎士と化したヴィータが攻撃を続けているならば、動力炉の破壊はそう遠くはないだろう。








――――――








新たに出て来たガジェットを撃滅しながら進んでいた遊星となのはは、ある分岐点で立ち止まっていた。
いや、2人ならば分岐点でそれぞれ分かれて進むのが常套手段だが、問題は其処ではないのだ。

「遊星さん、此れって…」

「挑発なのか、罠なのか、それとも自信の表れなのか正直迷うところではあるな…」

問題は其処に張られていた張り紙。

分岐点に張られていたのは、

『右:聖王の間
 左:大魔導師の間』

と行き先を記した張り紙だった。

ハッキリ言って意味不明此処に極まれりだ。
一体何処の世界に誘拐した相手の居場所を教える奴が居ると言うのか?

或は行き先を記した罠とも思えるが、遊星となのはは此れが罠であるとは思わなかった…理屈ではない、歴戦の『勘』と言うモノだろう。
此れを張り付けた奴は本気で行き先を示したのだと確信していた。

「自信あり…なんですかね?」

「さぁな……だが、態々行き先を表示してくれたんなら、其れに乗らない手は無い。
 俺は左の道を、なのは右の道で良いだろう?」

「異論なしです遊星さん!――行こう、そして助け出そう、私達の『娘』を!」

だが、迷わない。
行き先が分かっているならば寧ろ好都合とばかりに、あっさりと如何するかを決定!

なのははヴィヴィオを、遊星はレーシャを助け出す――ただそれだけの事なのだから迷う事などは無いのだ。


「そうだ、なのは……此れを持って行け、ヴィヴィオには効果がある筈だ。」

「このカードは――!成程、確かにヴィヴィオには効果覿面だね。」

此処からは別行動となるなのはに、遊星は1枚のカードを渡す。
如何やらヴィヴィオに対して有効なカードであるようだがその詳細は不明。
だが、なのはも受け取ったカードがヴィヴィオに対して有効であると言う事は理解できたようだ。

「其れじゃあ此処からは別行動だな――なのは、必ずヴィヴィオを助け出せ、其れがお前の役目だ。」

「勿論!遊星さんこそ、レーシャちゃんの事を助けてあげてね?」

「あぁ、勿論だ!」


――コツン


拳を合わせ、なのはは右の道に、遊星は左の道に夫々進む。
その先に待っているであろう、己が助け出すべき存在を目指して。







「矢張りガジェットは配備されているか…」
――力を貸してれ、アポリア、パラドックス…そしてゲイル!!


進行進路上に現れたガジェットに対しても、遊星は慌てない。

「頼むぞ、『獄滅龍 メテオ・ブレイカー』『Sin スターダスト・ドラゴン零式』『機皇星龍 スターダスト』!!」

『ギシャァァア!!!』
獄滅龍 メテオ・ブレイカー:ATK3800→4100


『ガシャァァァァ!!』
Sin スターダスト・ドラゴン零式:ATK2700→3000


『ゴォォォォアアァァァァ!!』
機皇星龍 スターダスト:ATK2700




レーシャへと至る道を選んだ遊星の前には数えきれない程のガジェットが!
其れに対し、遊星は友と紡いだ絆の証である強大なドラゴンを呼び出して其れに対抗する。


最終決戦の幕開けは近い…
















 To Be Continued… 






*登場カード補足