スバルとノーヴェの渾身の一撃は、間違いなくギンガを直撃していた。
だが、ギンガは倒れず、それどころか濃密なまでの闇の力をその身に宿していた――ダークシンクロによって。
「ギンガ?」
「ギン姉…?」
「うぅ…ああぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁっぁぁ!!!!」
そして、瞳の色が反転しただけではなく、ギンガの身体は更に変化を始めた。
顔の半分は、金属製の仮面の様な物に覆われ、リボルバーナックルを装着した左腕は完全に機械のソレになり、更には4本の機械の腕が。
元々のギンガの腕と合わせ、腕の数は合計6本…まるで阿修羅だ。
「マジかよおい…なんつ〜力だよ…アタシ達でなんとかなんのか此れ?」
「分からない…だけど、出来るかどうかよりも、やるかやらないかの方が大事だとアタシは思うんだけど…ノーヴェは如何?」
「あ?舐めんなよスバル…アタシだって同じ考えだ。
『出来ないかも?』って諦めたら何も出来はしねぇ…だけど『必ずやり通す』って意志があればどんな事だって出来る…間違ってねぇよな?」
「一切間違ってないよ…ならさ…」
「おう…やってやるぜ!!なにより、姉貴の目を覚ましてやるのは、アタシ等妹の役目だからな!!!!」
だが退かない…退くはずがない。
元々スバルもノーヴェも『うだうだ考える暇があるなら先ず動け』を地で行く性格なのだ…ならば相手がダークシンクロしたギンガでも其れは変わらない。
市街地の最終戦――史上最強の姉妹喧嘩も、いよいよ大詰めだ。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス110
『黒き力の起こす奇跡』
其れとは別に、ギンガのダークシンクロ化に驚いたのは言うまでもなくクロウだ。
遊星からダークシンクロの事は聞いてはいたが、実際にこの世界で初めて見る事になるダークシンクロに驚きは隠しきれない。
「ダークシンクロって…スカリエッティの野郎は何を考えてやがる!
あんなもんに手を出したら、命が幾らあっても足りねぇってのによ………て、まさか!!だからギンガを実験台に使ったって言うのか!?
容易に治す事が出来る戦闘機人のギンガだから……だとしたら、ぜってー許さねぇ!!!」
――ドォォォォォォン
自らの推測が真実であったなど、クロウに確かめる術はない――だが、だからこそスカリエッティへの怒りも人一倍爆発してしまった。
義理人情に手足が生えたとでも言うべき人情の人であるクロウにとって此れは断じて許せるものではない。
いや、許してはならない事だ。
己の仲間を利用し、そして己の仲間に仲間殺しとでも言うべき事をさせるなど、断じて許せるものではない。
まして、『造り直しの可能な戦闘機人』だからと言う理由でダークシンクロの実験体としたとなれば、其れはもう打ち首獄門モノの所業だ。
「つってもアジトにはフェイトが居るし、ゆりかごには遊星達が居るからなぁ?
此処は、市街地は俺達が護り通さなきゃカッコがつかねえ!!フルスロットルだ、行けるよなブラックバード!!」
『任せとけよ大将!俺達にエンジン全開以外は有り得ないだろう!』
クロウの思いに相棒のブラックバードも応える――DホイーラーとDホイールは一心同体!どんな時でも共にあるモノなのだ。
エンジンを吹かし、ダークシンクロと化したギンガへと向わんとするクロウを、
「待て…クロウ・ホーガン。」
チンクが呼び止めた。
クロウを行かせないために呼び止めた、と言う訳ではない。
「チンク?」
「アレはドクターがNo13と化したギンガ・ナカジマを完全な戦闘マシーンとするために植え付けた能力だ。
如何にお前達が強かろうと、アレを倒すのは容易ではないだろうが――ドクターが何か奇妙な事を言っていたのだ。
『黒き力に白き力は及ばないが、質の異なる黒い力を防ぐ事までは出来ないか…』と…そう言っていた。」
「はぁ?んだよ其れ…」
如何やらチンクはダークギンガ攻略の術をクロウに伝えようとしたらしい……その理由は恐らく本人も理解していないだろうが。
「分からん。だが、此れが最大のヒントであり、アレの弱点だと思うのだ……多分な。」
「弱点か……良く分からねぇが、弱点があるって事が分かっただけでも儲けもんだぜ!ありがとよチンク!!」
「礼など要らん……只の気紛れだ。」
素直ではないチンクの物言いだが、その口元には笑みが浮かんでいる。
チンクの中で『スカリエッティへの忠誠』を上回る感情が育っているのは間違いないだろう。
「それにお前に何かあっては私のリベンジも出来んからな…必ず無事でいろよ、クロウ・ホーガン!!」
「言われるまでもねぇ……お前とのリベンジデュエルは楽しみにしてるぜチンク!!……行くぜ、ブラックバード!!!」
『飛ばすぜ大将!!』
その感情は確りとクロウに伝わっていたようだ。
クロウもチンクに『リベンジは楽しみにしている』と言い、ブラックバードを一気に加速させスバルとノーヴェの援護に。
その場に残されたチンクには清々しいほどの笑顔が浮かんでいた…
―――――――
ダークシンクロとはどれだけ強い力なのか?…スバルとノーヴェはそう思わずにはいられなかった。
BFとシンクロした事で絶対的な力を手にした2人でも、ダークシンクロギンガを抑える事は出来ていないのだ。
「ちぃ…こりゃさしずめ『戦闘御行う度に攻撃力が1000ポイントアップする』って感じの効果か?…トンでもねぇなオイ!」
「しかも元の攻撃力が9999も有るから簡単には抜けないし…」
闘う度に強くなっていくダークギンガに、スバルとノーヴェの2人は諦めないが、限界が近づきつつあった。
如何に戦闘機人とは言っても、その身に宿るエネルギーは無限ではない――常に全力で動いていれば限界が訪れるのは当然の事なのだ。
現実に2人は肩で息をしつつあった。
「目を覚ませギンガ!!」
『グオォォォォォォ!!』
――ドゴォォォオオォォォォン!!
其処にクロウ到着!
進化した己のエースで一撃を喰らわせるが、ダークギンガは矢張り無傷だ。
「アニキ!」
「クロ兄!!」
「俺も手伝うぜ、スバル、ノーヴェ!!」
更に其処にクロウが合流!最強レベルの黒き龍を従え、最大級の姉妹バトルに参加して来た。
其れにスバルとノーヴェは驚き喜ぶが、だからと言って状況が好転した訳ではない――ギンガは今の戦闘で更にその力を増大させたのだから。
「うがぁぁぁあぁぁぁっぁっぁ!!!!」
破滅の拳闘士−ギンガ:ATK19999→20999
既に2万を超える攻撃力――此れではシンクロ化した六課フォワード陣の力を集結しても、倒す事は容易ではない。
まして、スバルとノーヴェだけでは、例えクロウが援軍で来たとしてもキツイ事は間違いないだろう。
「ガァァァアアアアアアア!!!」
――ドガァァアァァァッァッァア!!!
更にダークギンガは理性を失った状態なのだ――陽動も何も通じない、純粋なまでの戦闘専門個体となって居る。
放たれた一発に、スバルとノーヴェも吹き飛ばされてしまう。
だが、其れでも赤と青の双子は膝を折らない――大ダメージを受けて尚、止まる意志は無いのだ。
「酷いなギン姉…妹が相手なんだからもう少し手加減してくれても罰は当たらないと思うんだけどなぁ…」
「まぁ、今のは有効な一発だけどな。」
決してあきらめない!――その心が、最後の覚醒を呼び覚ますに至った。
――キィィィン…!!
「「!!!」」
突然、スバルとノーヴェの右腕に紅い痣が現れて点滅している。
最後のシグナーの証である、ドラゴンレグスがスバルとノーヴェの右腕に現れたのだ。
「んな!2人で1つの痣を共有とか、そんなのアリなのかよ!?」
如何に双子同然とは言え、スバルとノーヴェに同じ痣が現れた事に、流石のクロウも戸惑っていた。
だが、この土壇場で新たなシグナーの覚醒は、僥倖と言うべきだろう――戦力が強化されたのだから。
だが、そんな状況にあってもクロウは頭の中で様々な事を考えていた。
先程のチンクの言葉が本当だとするならば、幾らシグナーとして覚醒したスバルとノーヴェでもダークギンガを抑えるには至らないだろう。
――あの状態でもギンガを倒せるとは思わねぇ……だからって如何すれば良いんだ?
……チンクが言ってたヒント…質の異なる黒ならダークシンクロに勝てるって…だが質の違う黒なんてのは存在すんのか…?
クロウの焦りと疑問も尽きない。
質の違う黒の意味があまり理解できていないのだろうが…
――質の違う黒…!!…そうか、そういう事か!!
だが、悩んでいたクロウも何かに気が付いた。
――以前ノーヴェとスバルの姿に、見覚えのない女性が重なって見えていたと言う事に。
その答えは…
「スバル、ノーヴェ、俺に全部任せてくれ!!!」
「アニキ!」
「クロ兄!」
スバルとノーヴェの意見の詳細は聞かず、クロウは新たな戦術の先に答えがある事を確信したようだ。
そして、クロウが決めた覚悟はスバルとノーヴェにも伝わっている――ならば迷う事など有り得ない。
「質の異なる黒…つまりこういう事なんだろ?
レベル7の鉄拳のスバルと、レベル7の蹴撃のノーヴェ、2体のレベル7シンクロモンスターをオーバーレイ!!
黒き轟風よ、今衝撃となりて乾いた大地を駆け抜けろ!エクシーズ召喚『BFMW−激闘のクイント』!!!」
「目を覚ましなさいギンガ!!」
BFMW−激闘のクイント:ATK???
そのクロウが選んだ新たな戦術はエクシーズ!
スバルとノーヴェの2人をオーバーレイして呼び出されたのは、クロウが何時ぞや見た女性――スバルとノーヴェとギンガの母であるクイントだった。
「礼を言うわねクロウ君…君のおかげで、私は限定的とはいえまたこの地に戻ってくる事が出来たから。」
「礼なんぞ要らねぇよ…俺は俺がすべきことをしただけだからな。…行くぜクイント!!」
「そうね…ギンガの目を覚ましてあげなきゃ。」
そしてクロウとクイントには不思議と信頼関係が出来ていた――まぁ、クイントの魂は以前にクロウに娘達を頼むと言ったのである意味で当然だろう。
「クイントの効果発動! 1ターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを取り除いて発動!
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は、フィールド上の最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力の倍になるぜ!!」
「貴女の目を覚ますわよ、ギンガ!!」
BEMW−激闘のクイント:ATK???→41998
「更に、それだけじゃねえ!
クイントは戦闘を行う相手モンスターの効果を無効にする――此れで終わりだぜギンガ!!」
「!!!!」
破滅の拳闘士−ギンガ:ATK10999→9999
効果を無効にされて尚すさまじい攻撃力のダークギンガだが、クイントの攻撃力は更にその上を行っている。
極めて強力なダークギンガも、シグナーの新たな覚醒と、其れをトリガーとして現れたクイントの前にはその力は無意味でった。
「眠りなさい、ギンガ……!!」
「ガァァッァァアッァッァァァァアァァァ!!!」
そして炸裂した最大級の格闘系直射砲。
それはスバルとノーヴェの放ったダブルディバインバスターの威力をも上回り、ギンガに埋め込まれていたレリックとダークシンクロデータを粉砕した。
攻撃はあくまでも非殺傷ゆえにギンガがこの一撃で死ぬ事はない。
だが…
「お母さん…?」
「目が覚めたみたいね…」
ギンガは確りと自我を取り戻していた――諦めない心がギンガを取り戻したのだ。
余りにも強い攻撃を受けた故に直ぐに動く事は出来ないだろう――それ以前に担架モノの大重傷なのだギンガは。
「お母さん、クロウ兄さん……あはは…ダメですね私――みすみす敵の手駒になってたなんて。
だけど、2人の――いえ、六課の皆のおかげで目が覚めました………此れを、ノーヴェとスバルに渡して下さい…きっと必要になるから。」
駆けつけた救護班に担架で運ばれながらも、ギンガはクロウに更なる可能性を残していってくれた。
ギンガが残していったモノは待機状態のリボルバーバックルとブリッツキャリバー。
其の2つをスバルとノーヴェに渡してほしいと言う事はつまり、スバルとノーヴェにはまだ役目があるのだろう。
だが、其処までが限界たった。
ギンガは持てる全てを妹達に託したのだ。
「この2つ、ありがたくもらっておくぜギンガ!!」
其れを受け、クロウはスバルとノーヴェに其れを渡す事をギンガに約束する。
そして、此れは同時に市街地での戦闘の終了を意味していた。
戦闘機人達とギンガを制すれば残るはガジェットのみ…ならば大した脅威ではない――市街地もまた機動六課が勝利をおさめたのだった。
因みに、フェイトを心配してスカリエッティのアジトに転移したエリオが見たのは、稼津斗の『闇の呪縛』で拘束されたスカリエッティとトーレとセッテだった。
―――――――
時間を少しだけ巻き戻そう。
スバル達がギンガ相手に激闘を繰り広げている頃、ゴドウィンとアモンのデュエルは戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
「外がざわついていますね……恐らくは六課の皆がやってくれているのでしょう…六課の皆ならば負ける事はないでしょう。
そうなれば、此方にも何れは援軍が来る事になりますね…私には嬉しい事ですが――其れでも君はデュエルに臨むのですか?」
「当たり前だ…僕は止まる事は出来ない!」
「……ならば、この場で叩くより他に、君を抑える方法は無いようですね……良いでしょう、私のターン!!!」
市街地戦闘の裏バトルが、今ここに幕を開けたのだった…
To Be Continued… 
*登場カード補足
BFMW−激闘のクイント
ランク7 闇属性
戦士族・エクシーズ/効果
レベル7の「BFW−鉄拳のスバル」+レベル7の「BFW−蹴撃のノーヴェ」
1ターンに1度、このカードのオーバレイユニットを1つ取り除いて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力の倍の数値になる。
このカードと戦闘を行う相手モンスターの効果は無効になる。
ATK? DEF3000
破滅の拳闘士−ギンガ
レベル−8 闇属性
戦士族・ダークシンクロ/効果
「ギンガ・ナカジマ」-ダークチューナー
このカードは破壊されない。戦闘を行う度に、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードは相手にダイレクトアタックする時、与える戦闘ダメージは半分になる。
ATK9999 DEF9999
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