地上部隊の仮本部に現れたゴドウィンは、静かに――しかし、射抜くような鋭い視線でアモンを見やっていた。

「管理局員か……破壊による再生は成功しないだと?」

「えぇ、成功する事は有りませんよ、絶対にね。」

ゴドウィンもアモンも冷静な態度は崩さないが、アモンは突如現れたゴドウィンに言いようのない――ある種の脅威を本能的に感じ取っていた。
目の前の男は只者ではなく、自分以上の修羅場を潜り抜けて来た――そう思わせるだけの迫力と威厳がゴドウィンには備わっていたのだ。

「私も嘗ては世界を浄化する為に、破壊による再生を試みた事がありました。
 ですが、其れはあえなく失敗しましたよ……生きて未来を紡ごうとする者達の『前に進む意志』の力によって。
 其れこそ、光と闇の2つの神の力をこの身に宿して尚、未来をつかみ取ろうとする者達の意志の前では無力でした…貴方の目的は成就しません。」

「戯言を…お前が何を成そうとしたかなど知らないが、僕には僕の目的が有る。
 全ての人が、差別も不自由も無く生きる事の出来る世界を造るためならば、僕はどんな犠牲だって厭わない!」

「そうですか…では、仕方がありませんね…少しばかり頭を冷やして頂くとしましょうか。」

あくまでも己の目的を果たす事に固執しているアモンに、ゴドウィンも『話し合いは不可能』と取ったのだろう、すぐさまデュエル状態を起動だ。
アモンもまた、デュエルで決着を付けるならそちらの方が面倒はないと思ったのか、デュエルディスクを起動してデュエルモードに。

「…君には酷かもしれないでしょうが――このデュエルで、私は君の心を一度破壊します。」

「大した自信だな…だが、僕はもう誰にも負ける事は出来ない…そう、誰にも…絶対にな!!」


「「デュエル!!」」


ゴドウィン:LP4000
アモン:LP4000



破壊による再生を否定する者と、破壊による再生をなさんとする者のデュエルの火蓋が、この地上部隊仮本部で切って落とされたのだった。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス109
『完全制圧を遂行せよ!!』











市街地での戦闘は、クロウがフォワード陣をシンクロ進化させたことで、一気に激化の一途を辿っていた。

「はぁ、はぁ…まさか、ベエルゼウスを従えて尚、此れだけのダメージを受けるとは…!」

「ハッ!この俺が、破壊できねぇ攻撃力4000のモンスターを相手にしただけで屈すると思ってんのかよ?
 幾ら破壊されないっつっても、戦闘ダメージは取るし、効果ダメージだって無効にゃできねぇだろ?
 シンクロ化したフォワードの奴等が居る限り、俺達が負ける事は絶対にねぇ!!」

「ほざくな!!貴様等なんぞに負けていられるか…行け、ベエルゼウス!!」

其の一幕である、クロウとチンクの戦いは、互いに最上級レベルのシンクロモンスターを従えてのガチンコ勝負となっているようだった。

互いにレベル10のシンクロモンスターを従え、そして全力を賭しての戦い――激化しない方がオカシイと言うモノだろう。

再びベエルゼウスで攻撃を仕掛けるチンクと、其れを迎え撃つクロウ。
此れが普通のデュエルならば、攻撃力で勝るブラックフェザー・フルメタルに攻撃するのは自殺行為であり、只の自滅攻撃だ。

だが、この戦いはデュエルのルールをある程度適応しながらも、モンスターの攻守の値がそのまま適応されると言う訳でもない。
最も重要なのは、モンスターを従えるモノの魔力と言うところだろう。

その力がモンスターのステータスに上乗せされ、攻撃を強くする事も有り、また戦闘での破壊を防いでくれる事もあるのだ。
魔法技術と言うモノが発達した世界ならではのデュエルモンスターズでの戦い方と言ったところだろう。

「ったく…まだ分からねぇのかオメェは!!!迎え撃てブラックフェザー・フルメタルドラゴン!!『超黒炎波ノーブル・エクストリーム』!!!」

だが、それならば尚の事クロウに負けはない。
ドレだけ訓練をしても、魔法や魔導の仕組みなんかはサッパリ分からないクロウだが、魔法は思いの力が作用すると言う事は理解していた。

もっと端的に言うならば、魔法は精神力が形になったモノだと。
ならば、愚直なまでに前に進むことを続けるクロウは、最大限に己の魔力を引き出し、自分の仲間であるモンスターに与えているのではないだろうか?


――ピキ…ピキ…


「!!馬鹿な、不死のベエルゼウスが…!!!」

其れを示すように、黒翼の鋼龍が放った黒き炎が、不死の筈の魔王超龍の身体を少しずつ、しかし確実に破壊し始めたのだ。
無論ベエルゼウスも攻撃は続け、2つの頭から放たれる闇色のブレスがブラックフェザー・フルメタルに放たれている。

だが、その攻撃はブラックフェザー・フルメタルにはギリギリ届いていない――他ならぬクロウが発するデュエリストの闘気が魔王の攻撃を防いでいた。

「貴様…其れは一体!!」

「良く分からねぇが、多分これが前に遊星とデュエルした時に、アイツが使った『フィール』って奴なんだろうな。
 恐らくは具現化したデュエリストの魂や闘気が此れなんだろうよ……だから、コイツがある限り、相手が誰だろうと俺は屈しねえ!!
 此れで決めるぜチンク!!スピードスペル『Sp−ファイナル・アタック』!!
 俺のスピードカウンターが8個以上ある時、俺のフィールド上のモンスター1体の攻撃力を倍にする!!
 コイツで攻撃力を倍加させるのは、当然『鎧翼黒龍 ブラックフェザー・フルメタルドラゴン』!!!」

『グオォォォォォォ!!』
鎧翼黒龍 ブラックフェザー・フルメタルドラゴン:ATK6500→1300



「こ、攻撃力13000だと!?」

更に此処で、攻撃力が10000を突破!
其処にクロウの魔力とデュエリストの魂の力『フィール』が上乗せされたら果たしてどうなるのか?



――ドガァァァァァァァァァァン!!



言うまでもない。
ブラックフェザー・フルメタルドラゴンの黒い炎は、破壊されない筈のベエルゼウスを貫き焼き尽くしたのだ。
そしてその衝撃はチンクにも及んでいる……この攻撃の衝撃を受け、チンクは右腕が吹っ飛んでいた。

「やっぱ治りきっちゃいなかったんだな…もう良いだろ…幾ら戦闘機人だからって…幾ら治せるからって、それ以上自分を苛めんな!!」

「この程度…例えこの身朽ちようとも私は!!」

「ふざけんな馬鹿野郎!!テメェがぶっ壊れて死んじまったら、テメェを慕ってるあのパイナップル頭とかが悲しむんじゃねぇのかよ!!
 オメェはアイツ等の姉ちゃんなんだろ?だったら、妹達を悲しませるような選択はするんじゃねぇ!!!」

勝負は決したにも係わらず、尚も戦おうとするチンクをクロウが一喝した。
チンクには、彼女を姉と慕う妹達が居る――もしもチンクが死んでしまったら、彼女達は間違いなく悲しむだろう…其れをチンクに言ったのだ。

「オメェがあいつ等の事を妹だと思ってんなら、もう止めにしろよ…それに、スカリエッティの野郎にそこまで義理立てしなくたって良いだろうよ。
 今はもう、大人しく投降してくれねぇか?お前が俺にリベンジしたいってんなら、お前が完全に治った時に何時でも相手にはなるからよぉ…!!」

「クロウ・ホーガン……」

其の効果はあったらしく、チンクの目からは闘争の色が消えていた。
或は、クロウの言葉で昂っていた精神が落ち着きを取り戻したのかもしれない。


「分かった…降参だ…投降しよう。」

ともあれ、戦闘機人ナンバーズ5番、チンクは此処で確保となった。








――――――








ティアナもまた、オットーとディードの2人を相手にして、しかしマッタク余裕であった。
シンクロした事で、思考が恐ろしいほどクリアーになり、同時に感覚も野生の捕食動物並に鋭くなっていた。

「其処!!」

物陰に隠れて機会を窺う2人に対して、的確に魔力弾を放ち、奇襲の機会を与えない。
同時にこの攻撃は布石でもある――2人を捕縛する為の!


――ガキィィン!!


「!?」

「バインド!!」


牽制の為の魔力弾の真の目的は、オットーとディードの足を止める事にあった。
動きを制限すれば、バインドで拘束するのも楽になるから。


「クロウ兄さんには本当に感謝しなきゃダメよね…兄さんが私をシンクロ化してくれなかったら、こうも巧くは行かなかった筈だもの。」

薄く笑みを浮かべ、ティアナは市街地上空で戦っているであろうクロウに感謝し、同時にこの場での勝利を確信していた。


――キィィィン…


最大級の一撃…其れを放つ心算なのだろう。クロスミラージュに凄まじいまでの魔力が集束している。

「自分じゃ気付かなかったんだけど、なのはさんが言うには私には『魔力集束』の才能が有るんだってさ。
 しかも、その一点だけはなのはさんと同レベルだって…だから、教えてもらった!なのはさんの最強の魔法を!不敗の絶対奥義を!
 私は其れでアンタ等を倒して確保する!クロスミラージュ!!」

『OK.Starlight Breaker.』

「なのはさん直伝!全力全壊!スターライトォォォォォォ……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

そして放たれた、なのは直伝の、集束砲と言う攻撃における絶対無敵、天下無双、史上最強、不敗の奥義『スターライトブレイカー』!
拘束されたオットーとディードの2人に、此れを躱す手段も軽減する手段もありはしない。

放たれた橙色の砲撃は、2体の戦闘機人を問答無用で沈黙させたのだった。








――――――








更に、シンクロ化したエリオは、正に鬼神の如き強さを如何なく発揮していた。

フォワード陣の中で、スバルとノーヴェに次ぐアタッカーであるエリオは、幼いが故にフェイトとシグナムから教わった戦闘技術を次々吸収していた。
最大限ぶっちゃけた事を言うならば、エリオはフォワード陣の中では潜在戦闘技術力は誰よりも高い…高くなっていたのだ。

そのエリオがBFの力を受けて、シンクロ進化したらどうなるのか?


言うまでもない、其れは最強と言っても良い幼き騎士の覚醒に他ならないだろう。
現実に、シンクロ化したエリオはガリューを完全に圧倒しているのだから。


「そんな…ガリューが…」

「余所見をしている余裕があるんですか?」

そして、キャロもまたシンクロ化した事で召喚士として、またサポーターとしての力を大きく増大させていた。
フリードとヴォルテールもその力がブーストされ、正に『守護龍』としての力を思うがままに発揮している。

「だけど…私は負けられない。お母さんを目覚めさせるためにも。」

「…理由はどうあれ、貴女がしている事は見過ごす事が出来ません!ヴォルテール!!!」

『ガアァァァァアッァァァァ!!』

大切な人達を護りたい…その思いが弾け、最強の守護龍ヴォルテールが、最大の一撃である『大地の咆哮』をルーテシアが召喚した白天王に放つ。

無論白天王とて簡単にはやられず、その攻撃を魔法陣で防ぐ。
其の防御は強固にして堅牢……何時ものキャロならば、ヴォルテールをもってしても貫く事は出来なかったかもしれない。

だが、今のキャロはシンクロでその力を数倍に高められている――これまでの訓練で培った力が120%発揮されている状態だ。

その力を受けたヴォルテールの攻撃に耐えられるものなどはそうそう存在しないだろう。
ヴォルテールの一撃は、白天王を防御毎貫き撃滅!

同時にエリオも…

紫電一閃!!!!

『!!!』

シンクロの力を全開にしてガリューを撃滅!
クロウが行ったフォワード陣とBFのシンクロは、クロウが思った以上の効果を上げているようだ。








――――――








そして、ナカジマ姉妹のガチバトル。
スカリエッティの手駒と化したギンガだが、しかしシンクロ化したスバルとノーヴェには脅威となる相手ではなかったらしい。

元より、日々の鍛練を怠らず高みを目指していたスバルとノーヴェだ…操られているだけの相手など、例え姉であっても脅威にはなり得ないのだろう。


「ノーヴェ、大丈夫?」

「まだまだ余裕だぜスバル!…つーか、いい加減目を覚ませよギンガ!!
 お前は、敵方に利用されて、其れで終わって満足なのか?……違うだろ絶対に!!」

スバルとノーヴェの言葉も操られているギンガには届かない。
思考は完全にスカリエッティが制御しているのだろう。

だが、其れは逆にスバルとノーヴェには絶対の好機となるのだ。
意志なき力の暴走ならば。其れを抑えるのは不可能ではないし、化学的、魔法的な何かが作用しているのは間違いないのだ。


「ノーヴェ!!」

「おうよ!!」


だが、ギンガを正気に戻して助け出すには、新たに埋め込まれたな何かを取り出さなくては危険が大きい。
其処でスバルとノーヴェが思いついたのが、何時ぞやなのはにならった結界破壊術。
其れを使えば突破は容易いだろう――現実に、スバルとノーヴェは瞬く間に合計30体のガジェットを葬り去ったのだから。


ならば残るのはギンガのみ!
とは言っても、其処で安心するのは愚者の愚行に過ぎない。

「目を覚ましてギン姉!!」

「目ぇ覚ませよギンガ!!」

「!!」

「「一撃必殺!ディバイン…バスターーーーーーーーーー!!」」

油断はせずに放たれた、略ゼロ距離の直射砲――戦闘機人とはいえ、此れを喰らえば一たまりもない筈だ。




いや、このダブルバスターはギンガを沈黙させるだけの破壊力を有していたのは間違いない。


だが――


「「無傷!?」」

粉塵が晴れたところにいたギンガはまるでダメージを受けていなかった…肉体的には。
スバルとノーヴェの一撃を受けて、立っていたこと事態が称賛モノだろう――だが其れだけでは終わらない。


「うぅ…ああ…うあぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁあっぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ギン姉!!」

「ギンガ!!」


そのギンガから、12個の黒い球体が現れてギンガを包み込んでいく。
そして―――


「オウオアァァッァァッァァアッァァァアァァッァァッァァアァァッァァ!!!!!!」
破滅の拳闘士−ギンガ:ATK9999



現れたのは瞳の色が反転したギンガ。
如何やったのかなどは一切分からないが、スカリエッティはギンガを手駒にする際に、如何やら碌でもない力を譲渡してくれてしまったようだ…















 To Be Continued… 






*登場カード補足