「『フルメタル・デモリション』!『テイル・ウィップ』!!『ブラック・レイジ・エントリー』!!!」
「『アサルトクロー』!『ブラックハリケーン』!!『ノーブルストリーム』!!!」
ミッドの上空でかち合う、計6体の闇属性モンスターの攻撃。
ステータスで言うならばクロウの従える黒翼軍団とブラックフェザー・ドラゴンの方が上だ。
だが、チンクの従える機械竜、妖精竜、玄翼竜は相当に強い力を秘めたカードなのか、負けずに互角の戦いを行っているのだ。
「ちぃ…龍可と龍亞のエースモンスターに酷似しちゃいるが別物って事か。
だが、やっぱりあいつ等のエースと俺のエースをパクられんのは良い気分じゃねぇ!…此処で叩きのめすぜチンク!」
「やってみろクロウ・ホーガン!この前とは違い、簡単にはやられんぞ!!」
モンスターの攻防のみならず、チンクはランブルデトネイターでクロウを攻撃!
だが、クロウだって其れを簡単に喰らう男ではない。
「あのナイフか……アビリティカートリッジ『アクセルシューター』ロード!ドライブイグニッション!!」
『撃ち落とすぜ大将!!』
アクセルシューターのアビリティカートリッジをロードして、ランブルデトネイターを完全相殺!
「む…やるな、クロウ・ホーガン!」
「オメェもな!アクセルシューターのアビリティカートリッジ持って来てなかったらやばかったぜ?」
それでも何処か、互いに認め合ったうえでの戦闘と言う感じが否めないのは、クロウもチンクも立場が似通っているからなのかもしれない。
クロウは六課フォワード陣の兄貴分的な立場であり、チンクもナンバーズの姉的な立場にあるのだ。
故にクロウは弟分と妹分の為にも、チンクは妹達の為にも――――負ける訳には行かないのであった。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス107
『市街地防衛戦U』
激しい攻撃の応酬は続く……寧ろ終わる気配がない。
風が吹き荒れ、力がぶつかり、黒い炎が交錯する――おまけに投擲ナイフや射撃魔法までもが飛び交っているのだ――激戦状態と言っても過言ではないだろう。
「ちぃ…俺と双子達のエースをコピーしたみてぇなモンスターは、正直気に入らねぇが…だがそいつ等が強いのは間違いねぇ。
でもって、そいつらを従えてるチンク、オメェも大した奴だ…鍛えれば良いデュエリストになれるかも知れねぇ。」
「お前ほどのデュエリストからそう言われるとは、誇っても良いかもしれないな?」
「好きなだけ誇れよ。このクロウ様が実力を認めた奴なんぞ数えるほどしか居ねぇからな!
けどよ、だらこそ聞きてぇんだチンク……オメェはなんでスカリエッティなんかに従ってやがるんだ?
お前は割かし真面な奴っぽいから聞くんだけどよ――絶対脳味噌逝かれてやがるだろ、スカリエッティの野郎はよ!!」
そんな中でクロウはチンクに問う…何故スカリエッティに従うのかと。
少なくとも、クロウが見る限りでは、チンクがスカリエッティの計画に諸手を上げて賛成しているとは思えない。
寧ろ、チンクは妹達を大切に思って、その上で最終的には妹達と一緒に同じ家で暮らす事を考えているのだ。
だがそれでもチンクには譲れぬ思いがある。
「何故だと?…愚問だな、ドクターが其処に居るから従い、ドクターの命令をこなしていたのだ。
私達は所詮ドクターの駒に過ぎないのだろう…だがそれでもドクターは私をこの世に誕生させてくれた…私にとっては父親なのだ!
ならば、父の望みを叶えない娘がいる筈はないだろう!!」
「!!んの大馬鹿野郎!!
野郎が親父だってんなら尚の事止めなきゃだめだろうが!!家族が間違った事をしようとしてるのを止めるのも家族の役目じゃねぇのかよ!!」
スカリエッティに従う理由を聞いたクロウは思わず声を荒げてしまう。
家族の望みを叶えてやりたい……其れ事態は間違った事ではない。
だが、望みそのものが大きく間違っていて、尚且つ不特定多数の関係ない人達に被害、迷惑を与えるモノならば其れは止めねばならない――家族なら尚更。
クロウとて、サテライト時代は随分と社会的に見て『間違った』事はして来た。
だが、其れはあくまで生きる為であり、そして自分で生きる術を持たない者達の為であった。
其れにクロウも悪い事は悪いと認識してやっていたし、ばれて捕まった時にはちゃんと相応の裁きを受けて来た……その結果がマーカーだらけの顔な訳である。
「何故止めねばならんのだ?ドクターのしている事の何が如何間違っているのだ!!」
「んな事も分からねぇのかアホンダラ!!
管理局に対して牙を剥くなら、管理局だけ攻撃すりゃあいいだろうが!!無関係なミッドの市民まで巻き添えにしてんじゃねぇ!!」
瞬間、クロウのモンスター達の力が大幅に上昇した。
デュエル的な言い方をするならば『元々の攻撃力が倍になった』と言うところだろうか?
この世界においては、デュエルモンスターズのモンスターの強さはカードステータスのみだけでなく使用者の魔力も影響してくる。
激昂した事でクロウの魔力が一時的に爆発的な上昇をし、其れがモンスター達に力を与えたと言う事なのだろう。
「吹き飛ばせアーマード・ウィング、漆黒のホーク・ジョー、ブラックフェザー・ドラゴン!!」
『覇ぁぁ!!』
『ダァァァ!!』
『グオォォォォ!!!!』
クロウの命に従い、アーマード・ウィングはパワー・ツールを、ホーク・ジョーはエンシェントを、ブラックフェザーは玄翼竜をそれぞれ粉砕する。
特にブラックフェザーはカードステータスが互角の相手を葬っている事から、クロウの魔力上昇は間違いないだろう。
「ぐわぁぁあ!!……まさかドクターの用意した3体の決闘竜がやられるなど…!
だが、私には更なる切り札があるぞ!トラップカード『反逆同調−リベンジシンクロ』!
私のシンクロモンスターが戦闘によって破壊されたとき、破壊されたモンスターと同じ属性、同じレベル、同じ種族のシンクロモンスターを特殊召喚する!
私がこの効果のトリガーとしたのは『玄翼竜 ブラック・フェザー』!!」
「つ〜事は闇属性、レベル8のドラゴン族シンクロが来るって事かよ…!!」
「ドクターの邪魔はさせん…例えこの身が朽ちようとも!!現れろ『魔王龍 ベエルゼ』!!!」
『ウガァァァァァァァァァァァ!!』
魔王龍 ベエルゼ:ATK3000
だがチンクも考えていたようだ。
トラップとのコンボで呼び出されたのは、何とも禍々しい姿の魔王龍……その姿は勿論だが、何より発せられている闇の力がハンパではない。
「魔王龍 ベエルゼ!?…んだよこのカードは…」
流石のクロウも未知のモンスターに驚きは隠せない。
明らかに違うのだ、今まで戦っていたモンスター達とは。
「驚いたか?…だが此れだけではないぞクロウ・ホーガン!チューナーモンスター『ゾンビキャリア』を召喚!」
ゾンビキャリア:ATK400
「更にチューナー…まさか!!」
「そのまさかだ!! 私はレベル8の魔王龍 ベエルゼに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング!!
全ての欲をその身にやつせ!そして世界を覆い尽くせ蠅の王!全ての世界は我等の手に!シンクロ召喚、蹂躙せよ『魔王超龍 ベエルゼウス』!!」
『ギシャァァァァ!!!』
魔王超龍 ベエルゼウス:ATK4000
クロウの予感は的中……更なる強さを持った禍々しい龍が現れてしまった。
効果は不明だが、攻撃力4000は流石に脅威だろう。
「べ、ベエルゼウス…の、効果発動…!」
だが、ベエルゼウスを呼び出した途端、チンクの様子がおかしくなった。
何かに浸食されているかの如く、言葉が途切れ途切れになり、身体がふらついている。
「チンク?……まさかベエルゼウスの闇に喰われたってのか!?」
その異変の原因は、すぐさまクロウが看破した。
カードの力は絶大で、闇の力は容易く人を引き込み喰らうと言う事を知っているクロウだからこそ気づけたのかもしれないが。
「相手、モンスター…1体の攻撃力…を…吸収し―――――我が力とする!!」
チンクの口調が変わった…闇に喰われたのだ。
見れば瞳の色は反転し、肌には不気味な鱗模様の様な物が現れている。
「ブラックフェザー・ドラゴンの力は頂くぞ!」
ブラックフェザー・ドラゴン:ATK2800→0
何と言う極悪な効果だろうか?
対象モンスターの攻撃力を0にし、その力をプレイヤーの糧としているのだ……ライフ4000設定の通常デュエルなら瞬殺の効果だろう。
「ブラックフェザー・ドラゴン!!」
「此れで終わりだクロウ・ホーガン…『ベエルゼウス・ジェノサイダー』!!!!」
無慈悲なる一撃が放たれ、クロウとモンスター達は閃光に包まれた…
――――――
同じ頃、廃ビル内では…
「ちょこまか逃げ回んじゃねぇパイナップル!!」
「嫌っす!そんな攻撃受けたら病院送り確定じゃないっすか!!」
ノーヴェがウェンディ相手に無双状態を展開していた。
シンクロカートリッジでシンクロ化し、ウェンディを圧倒だ。
元より近接格闘ならば、ノーヴェはウェンディの数倍の腕前がある故に、徹底的に相手に張り付けばノーヴェの得意間合いは維持される。
何とか距離を取りたいウェンディに、徹底的に張り付く事で、ノーヴェはウェンディを事実上、無力化する事に成功したのだ。
「幾ら何でもハードすぎじゃねぇっすか!?」
「はぁ?アタシの猛攻なんぞ六課の中に置いてはノーマル難易度だ。つーかなぁ、お前の相手がアタシってのはある意味ラッキーなんだぞ?
もしなのはさんがお前の相手をしてたらなぁ『四肢をバインドで拘束されて身動きを封じられた上で手加減不要の集束砲をかまされてピンクがトラウマになる』
って言う状況になってたぞ?…冗談じゃなくて割とマジで。…ティアナの頭を冷やそうとしたなのはさんはガチで怖かった…」
「アンタ等の部隊長は何者っすか!?」
「管理局の白い魔王・高町なのは様だ!よ〜〜〜くその名を脳味噌に刻み込んどけ!!」
戦闘には似合わないセリフの応酬だが、ノーヴェもウェンディも真剣そのものだ。
格闘をメインに射撃弾なんかで牽制もしてくるノーヴェは、ウェンディにとっては難敵であるのは間違いないだろう。
「つーかよ…いい加減落ちろパイナップル…アタシはスバルよりも更に気が短いんだ。」
「!?」
「後で色々聞かせてもらうが、今は大人しく眠りやがれ!!!
一撃必殺全力全壊!!ディバイィィィン……バスタァァァァァァァァァァ!!!!」
そして何度目かの接近で放たれたディバインバスター。
如何に戦闘機人と言えども、略ゼロ距離で此れを喰らったら堪らない。
黄色の直射砲が治まった時、其処に居たのは完全に意識を刈り取られてKOされたウェンディだった。
「コイツは此れで良しと…ティアナの方は大丈夫か?」
ウェンディは制したが、まだティアナは戦っている。
ならば如何するかなど考えるまでもない――助太刀に入るだけだ。
ノーヴェはアビリティカートリッジの『レストリクトロック』をロードし、ウェンディの身体を床に縛り付ける――此れでしばらくは安全だろう。
ウェンディに一応の処理をしたノーヴェは、友の居る戦場へと向かって行った。
――――――
エリオとキャロもルーテシアの一団を相手に互角以上の戦いを展開していた。
地雷王とガリューのコンビには、エリオが全力を持って対抗し、地雷王は今しがた撃破したばかりだ。
其れでも疲れ知らずのガリューを相手にするのは骨が折れるが退く気はない。
カートリッジを3発ロードし、ガリューに向き合う。
そしてキャロもまた全力だ。
ルーテシアが呼び出した最強の召喚魔『白天王』に対し、キャロも切り札である最強の召喚龍『ヴォルテール』を呼び出していた。
「どうして…何で闘わなくちゃいけないの?
話せば分かる事はある筈なのに……どうして、どうして戦うばかりなの!!」
「其れしか方法は無いから……消えて!」
出来れば力は使いたくない……だが言葉は届かない――となれば戦う以外に道は無い。
「消えません……貴女は此処で止めます!!」
「止める?…馬鹿を言わないで……彼方達だって子供なのに戦場に出ている。
彼方達の保護責任者は、彼方達を態の良い道具としか思ってないかもしれないのに…」
ルーテシアが指を鳴らすと、大きなスクリーンが現れ映像を映し出す。
其処に映し出されたのは、スカリエッティに拘束されているフェイトと麒麟。
だが、キャロと(駆けつけた)エリオはフェイトが苦戦していると言う事よりも、スカリエッティのセリフの方に意識が向いていた。
マルでフェイトが自分達を道具のように扱っていると言っていたから。
だから気が付けば通信回路を開いていた。
「違います!!違いますよフェイトさん!僕達は自分の意志でこの道を選んだんです…決してフェイトさんが誘導した訳じゃない!!」
「私もエリオ君も、フェイトさんに恩返しがしたかった…だからフェイトさんと共に戦う道を選んだんです…此れは私達の意志!
それに、フェイトさんは何時だって私達の事を第一に考えてくれてました…フェイトさんは私とエリオ君のお母さんです!!」
そして自分達の偽らざる心を伝えた。
更に、プレシアとアリシアも通信を行い――フェイトは持ち直した。
「僕達も頑張ります!だから、フェイトさんも負けないでください!!」
「勝って、そしてまた皆で会いましょう!!」
『母さん…エリオ、キャロ…うん!!私はもう大丈夫…負けないから!!』
モニターの向こうのフェイトはもう大丈夫だろう。
其れを確認し、エリオとキャロはルーテシアに向き合う。
ルーテシアの傍にはガリューが戻ってきている……第2ラウンド開始は確実だ。
――――――
「はあ、はぁ…ギン姉…」
「……………………」
その一方で、ギンガと戦っているスバルはボロボロだった。
バリアジャケットはところどころ破損し、スバル自身もすり傷や裂傷が至る所に見受けられる。
……如何に覚悟しようとも、矢張り身内が敵として現れた事を完全に割り切るのは難しいモノが有るのだろう。
たった15歳の少女ならば尚の事難しいだろう。
だが、ギンガとて無傷ではない。
スバルが必死の反撃をしたのだろう……矢張り防護服が裂け、すり傷や裂傷が出来ている――スバルと比べれば圧倒的に数は少ないが。
「あはは…洗脳されてもギン姉は強いね……アタシの攻撃は全然通用しないや…
だけど、だけどねギン姉…アタシは、ギン姉が敵のままなんて嫌だよ…ううん、アタシだけじゃない――ノーヴェとお父さんも。
だからギン姉…アタシは絶対に自分からは倒れないよ……ギン姉はアタシの家族だから…大切な家族だから……だから闘うんだ!!」
――轟!!
助けるための戦い……スバルはこの土壇場で、もやもやを全て断ち切ったようだ。
持ちうる全てのカートリッジをロードしギンガと向き合う。
「おっと、1人で行くなよスバル!アタシもギンガの救出に協力させてもらうぜ!」
更に其処にノーヴェが!
廃ビル内での戦いを終え、3人の戦闘機人を拘束して此処に駆けつけたのだ。
「ノーヴェ!!」
「ったく、やられてんじぇねぇよ姉貴。
だが、安心しろよ?此処からはアタシも手伝ってやるからさ……取り戻そうぜギンガを…アタシ等の姉貴を!!」
「うん!!!」
ノーヴェが来たことで、スバルの気持ちにも余裕が出来たようだ。
やるべき事は只1つ…ギンガの奪還其れだけだ。
そしてさらに!
「つ〜〜〜…流石に効いたぜ今のはよ…俺を倒すには至らかったがな!
てかよく吠えたぜお前等!!ミッドチルダは絶対に落とさせねぇ!!気合入れていくぜ!!」
ベエルゼウスの攻撃を受けたクロウも無事だ。
其れでも相当の衝撃だったのか、ジャケットは破損し、バンダナも吹き飛んで髪が下りているが兎に角無事だった。
だが、其れに驚いたのはクロウの相手をしていたチンクだ。
アレだけの攻撃を受けたにもかかわらず、クロウは戦闘不能に陥っていない。
それどころか…
「馬鹿な…何故――いや、それ以上にそのモンスターは一体何だ!?」
クロウは新たなモンスターを従えていた。
其れは宛ら『ブラックフェザー・ドラゴン』を漆黒の金属鎧で武装したかのごとき外見だ。
「さてな?…まぁ力は直ぐに明らかなるぜ。」
だがあくまでもクロウは答えない……敵方に情報をくれてやる義理などないのだから。
市街地での戦闘も、そろそろクライマックスだろう。
――――――
「クラウソラス!」
「貫け…」
《ナイトメアハウル!》
クロウやスバルが激戦を展開していた頃、はやてとアインスはガジェット相手に無双をかましていた。
共に力が最大限に発揮される状態故に手加減も何もない。
が…
《主はやて…陸の方に出向いてもよろしいでしょうか?…嫌な予感がするので…》
シグナムからの念話通信。
突然ではあるが、歴戦の強者であるシグナムが感じた嫌な予感と言うのは気になる。
だからはやては迷わずに了承した…此れもまた信頼だ。
「分かった…任せるでシグナム!」
《お任せを!!》
簡単な念話通信だが、それで十分だ。
ミッドチルダ市街地での戦いはまだ終わらない…
To Be Continued…
*登場カード補足
魔王超龍 ベエルゼウス
レベル10 闇属性
ドラゴン族・シンクロ/効果
チューナー+「魔王龍 ベエルゼ」
このカードは戦闘及びカード効果では破壊されない。
1ターンに1度、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力を0にする。
その後、自分は攻撃力を0にしたモンスターの元々の攻撃力分のライフを回復する。
ATK4000 DEF4000
反逆同調−リベンジシンクロ
通常罠
自分フィールド上のシンクロモンスターが戦闘で破壊されたときに発動できる。
自分のエクストラデッキから、破壊されたモンスターと同じレベル、属性、種族のシンクロモンスターを特殊召喚する。
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