ミッドチルダ市街地に現れた無数の――ざっと見て3桁は下らないであろうガジェットを前に、しかし機動六課に焦りはなかった。

「鉄くずが…アインス、ツヴァイとユニゾンや!私達の広域空間攻撃でガジェットを殲滅する!
 倒しても直ぐに補充はされるやろけど、此れだけの大群を葬り去れば、相手さんの出ばなを挫く事は出来る筈や!」

「その通りですね…ツヴァイ、ユニゾン行けるな?」

「はいです!!」


はやての号令を受けてアインスがツヴァイとユニゾンし、夜天の管制融合騎としての真の力を呼び起こす。
更にそれだけではない。

「遊星から預かったカード…さっそく使わせてもらうで!
 魔法カード『融合』発動や!これで、私に『リインフォース・アインス』を融合するで!」

はやてが遊星から渡されたカードを使って『疑似ユニゾン』状態へと変貌する。


「全力全開――いや、全力全壊だったか?俺だって負けてられねえ!
 出番だぜ『BFT−漆黒のホーク・ジョー』『BF−アーマード・ウィング』『BF−アームズ・ウィング』!!!」
BFT−漆黒のホーク・ジョー:ATK2600
BF−アーマード・ウィング:ATK2500
BF−アームズ・ウィング:ATK2300



そして、其れに呼応するようにクロウが黒翼の上級シンクロモンスターを3体も呼び出す。
ガチすぎると言うなかれ……ミッドチルダを焼くわけには行かないのだ。
故に最初から手加減不要の全力全壊は至極当然の事なのだ。


「「遠き地にて深き闇に沈め…デアボリックエミッション!!」」

夜天の主従による、超広域空間殲滅魔法――其れが市街地での戦闘開始のゴングだった。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス106
『市街地防衛戦T』











――ドガァァァァァァァァァン!!


夜天の主従による、圧倒的な殲滅魔法の効果は絶大と言って良いだろう――なにせ、攻撃が終わったその場所にガジェットは只の1体も存在していないのだから。

だが此れだけで安心できるものではない。

「やっぱり来よったな…」

上空にはさらに追加のガジェットが。
先手を打った空間殲滅は成功したが、其れは思った以上の効果を生み出すには至らなかったらしい。

「…よし、ティアナとノーヴェ、エリオとキャロは夫々タッグを組んで行動してや。
 スバルは魔力を温存しながら増援ガジェットの殲滅やけど――ギンガが出てきた場合には、スバルが対処するんや……行けるな?」

「!!…はい!!!」

「うん、良い返事や♪
 ホンなら此れで散開!もてる力の全てを出して!限界なんて突破して敵を討つで!!」

「「「「「「「「おーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」

其れでも総司令『八神はやて』は一切ぶれない。
管理局に入局して以来、自分の思い通りにならなかった事など、数えはじめればキリがないし、数える心算は無い。

だがそれらの経験が、はやてを若干19歳で司令と言う立場に至るまでの糧となった事は間違いない事実だ。


経験に裏打ちされたはやての力ある言葉は、其れだけで部隊所属の者達に大きな力を与えてくれるのだ。



その最強の総司令の号令を受けたメンバーは言われた通りのタッグを組んで散開。

「フォワード陣は此れでOKやな。
 私とリインフォースとシグナムは引き続きガジェットの掃討!クロウ君は…」

「皆まで言うなよ。ガジェット共をブッ飛ばしながら、フォワード連中のサポートだろ?
 ただ、スカリエッティの野郎がデュエリストの能力を警戒して、俺を単体撃破しようとして来る可能性も0じゃねぇからな。
 俺を狙って戦闘機人が来やがったら、そっちを集中的にやらせてもらうけどよ。」

「其れでかまへんよ。
 まぁ、後は状況に合わせて臨機応変に言う事でな――!」

「オウよ!!行くぜ!!」

隊長陣とクロウも夫々散開し、戦闘状態に入っていく。
はやても其れを確認すると、全方位に向かって射撃魔法『バルムンク』を乱れ射ちし、ガジェットを葬り去っていく。

だが、ガジェットは倒せど倒せど現れる。
市街地の戦いは、殲滅戦と消耗戦の様相を呈してきていた。








――――――








隊長陣が奮闘しているよりも上空で、エリオとキャロはガジェットを排除していた。
兎に角、地上付近から遥か上空まで、ガジェットが現れる場所は本当に多岐に渡っているのだ。

その為、フォワード陣の中で唯一『飛行』する事が可能な、エリオとキャロのタッグが上空戦闘を担当していたのだが…

「………これ以上はさせない。」

「……………」

「貴女は…!」

「この前の――休日の時の戦闘で…!!」

2人の前に、以前の休日……ヴィヴィオを保護した日に起きた戦闘に現れた少女と、その使い魔と思われる戦士が立ち塞がった。
話し合いが通じる相手ではないだろう――少女の目は完全に正気を失っているのだから。

或はスカリエッティに強力な暗示のようなモノでもかけられているのか……何れにせよ戦闘は避けられない。

「…数の上では2vs2で、どちらも召喚士と前衛のコンビ……純粋に力の差が出そうだね。」

「うん……だけど、負けない!!」

『グルルル…』

勿論エリオとキャロも、目の前の少女を説得して投降させられるとは思っていないし、そもそも言葉が届かないのでは説得など土台無理な話だ。
ならばどうするか?

言うまでもない、機動六課スターズ分隊隊長にして管理局のエース・オブ・エース、高町なのはの伝家の宝刀『高町式肉体言語術(O・HA・NA・SHI)』をするまでだ。

エリオとキャロはヤル気充分。
フリードもまた、敵対者を威嚇するかのように低い唸り声を上げている。


「ガリュー…」

「………」

そしてそれは少女――ルーテシアも同じだ。
使い魔のガリューに戦闘に入る事を伝え………

「彼方達を倒す……貴方達を倒せば、お母さんは目を覚ますから……出でよ…地雷王!!!」

『『『『『キシャァァァァァァァ!!!!』』』』』

戦闘開始の合図とばかりに、5体の巨大な甲虫を召喚。
此れで数の均衡は崩れたが、

紫電一閃!!

『ガァアッァァァ!!』

そのうち2体を、エリオが切り裂き、フリードが焼き尽くす。
幼いながらも騎士として成長を続けているエリオと、アルザスの飛竜としての力を覚醒したフリードにとって大型の召喚虫はそれ程驚異の敵でもないようだ。


「…ガリュー、赤毛の槍使いを…」

「………」

其れを見たルーテシアは、ガリューにエリオの相手を命じ、ガリューも地雷王1体を従えエリオに向かってくる。
エリオもガリューが一騎打ち(ガリューは地雷王を従えているのでそう呼んで良いかは疑問だが。)を仕掛けて来たのを理解するとフリードから飛び降り構える。

エリオは飛ぶ事が出来ないが、其処はデバイス調整とメンテナンスを行っているのが遊星とマリーだ。
何回かメンテナンスを重ねる中で『飛行能力が有った方がエリオの戦闘の幅が広がる』と言う理由から、ストラーダに簡単な飛行能力を付加していたのだ。

これによりエリオは単体でも空中戦が行えるようになっている。


「キャロ、僕はあの2体を相手するから…」

「うん!私はこの子だね?」

「頼むよ……多分その子は強烈な暗示に掛けられてる…だから助けるんだ、僕達の手で!」

「うん!!!」

絶対の約束を交わし、少年と少女は夫々の相手と戦闘を開始した。








――――――








「やっぱし潜んでやがったか……数は分かるかよ?」

「このビル内には3人ね……尤もギンガさんは居ないみたいだし、他の戦闘機人が別の場所に現れる可能性も有るけど…」

「ギンガはスバルが担当だし、それ以外の奴はアニキや司令が何とかしてくれんだろ……アタシ等は此処にいる奴等をブッ飛ばす!」

「単純明快な答えですこと……性格は全く違うけど、やっぱアンタとスバルは間違いなく双子だわ。」

主に地上付近のガジェットを掃討していたノーヴェとティアナは、現在テナント募集中の無人ビルの中にいた。
ノーヴェが、戦闘機人としての感覚と言うか、そう言ったモノで戦闘機人の存在を感じ取ったからだ。

ビル内に入ってティアナがサーチすればズバリビンゴ。
3体の戦闘機人がビル内に潜んでいたのだ。

恐らくは此処から奇襲を掛ける心算だったのだろうが、それを見つけたら如何するか?……聞くまでもない…速攻撃破&確保だ。
特にノーヴェはその思いが強い。

「あのパイナップル……上等だぜ、この間の借りを返してやる!!」

その3体のうち1体は、この間自分に煮え湯を飲ませてくれたウェンディだったのだから。
血が出そうなほどに拳を固く握りしめ、ウェンディを睨みつけている……間違いなくブッ飛ばす気満々である。


「気持ちは分かるけど、熱くなって先走るんじゃないわよ?
 あくまで私達の任務は市街地の防衛とガジェットの掃討と戦闘機人の確保なんだからね?」

「分かってるって……けど、戦闘機人確保するにゃあ大人しくさせなきゃダメだろ?無理だろ?
 連中を確保する為に、本気でブッ飛ばすなら何も問題ねぇよなぁ?無い筈だよなティアナ?」

「もう良い、分かった……取り敢えずあの赤毛パイナップルに関してはアンタの好きにしていいわ。」

任務遂行は当然だが、ノーヴェはそれと合わせてウェンディをフルボッコにしないと気が済まないらしい。
やる気満々、寧ろ『殺る気』満々である。

だが、呆れた態度をとっては居るが、ティアナは此れは此れで良いかもしれないと思っていた。
ノーヴェがウェンディを引き離してくれるならば、自分は残る2人に集中すればいいのだから。

それに、ノーヴェの方に残る2人の内1人でも向かってくれたら御の字だ。
其の1体を即刻確保して、ノーヴェのサポートの回る事が出来るのだから。

「あのパイナップルは絶対鎮めるが……如何するよ?此処で機会窺ってたら、多分あいつ等はアニキ達に奇襲掛けるぞ?」

「なら出鼻を挫くまでよ……アンタの直射砲で始めましょうか?」

「OK…上等だ!!」

幸いウェンディ達はノーヴェ達に気付いていないが、だからと言って何時までも身を潜めていては、奇襲の機会を与えてしまう。
其れを潰すには、此方の存在を知らせて奇襲を食い止める方が早い。

「ふぅぅぅ……あいさつ代わりだパイナップル…喰らえ!ディバイィィィィン…バスタァァァァァ!!!!

『Divine Buster.』


なのはの必殺の直射砲を独学で習得し、そして自分用にアレンジしたノーヴェの最大魔法が炸裂。
そしてそれは同時に、3体の戦闘機人との戦闘の開始を告げるゴングでもある。

「んな!?いたんすか!?」

「この前の借りを返すぜ、パイナップル!!」

そしてバスターの着弾で起きた粉塵を隠れ蓑に、ノーヴェがウェンディに逆奇襲。
無人ビル内でも、激しい戦闘の火蓋が切って落とされたようだ。








――――――








地上と上空の丁度中間――中段空とでも言うべき場所でスバルは対峙していた……愛する姉であるギンガと。

「ギン姉…」

「………」

スバルの呼びかけにもギンガは一切反応を示さない。
如何やらクロウの予想通りに、スカリエッティの手駒として再調整を施され、ナンバーズの一員となってしまっているらしい。

「アタシの声は、今のギン姉には届かないんだね………」

分かっていただろうが、ショックだろう。
笑合いながら日常を過ごしていた姉が、今は全ての感情を失った状態で目の前に『敵』として現れているのだから。


「でもギン姉、アタシはギン姉を助ける!スカリエッティの支配からギン姉を解放する!!
 その為に……アタシはこの場でギン姉をブッ飛ばす!!!」

闘気と魔力が爆発し、スバルの足元に空色のベルカ式魔法陣が展開される。

「…………」

其れに合わせるようにギンガ――No.13の足元にも蒼のベルカ式魔法陣が展開。


「行くよ、ギン姉!!!」

「……………!」

戦闘開始の合図は渾身の拳打。
今ここに、史上最大の姉妹喧嘩が勃発した――恐らくはそう言っても過言ではないだろう。








――――――








「こそこそ隠れないで正面からか?そう言うのは嫌いじゃないぜ俺は。」

「お前の力を認めればこそだクロウ・ホーガン……お前を物陰から闇討ちで仕留めても気分が良くないからな。」

また別の場所では、クロウとチンクが対峙していた。
チンクは前回の戦闘で、クロウの介入のせいで大ダメージを負ったようなものだ……故にクロウを自らの手で倒したいと思う気持ちが強いのだ。

正直な事を言うなら、修理と調整はギリギリの状態だったのだが、それでも彼女は出て来たのだ…クロウと戦うために。


「あくまで決着は正面切ってか?…いいねぇ、そう言うのは俺好みだぜ!
 テメェ、スカリエッティの部下にしちゃ、随分ガッツが有るじゃねぇか――眼帯娘じゃ呼びにくいからよ、名前教えてくれねえか?」

「…私が一方的にお前の名を知っているのに、お前が私の名を知らないのは不公平だな。
 私の名はチンク…ドクターの配下たる戦闘機人集団のナンバー5…チンクだ!」

「チンク…悪くねぇ名前だ…んじゃまぁ、名前が分かった所ではじめっか!!」

クロウもチンクの名前を知り、この隻眼の少女と戦うことを決める。
まぁ、何がどうあっても戦う以外の選択肢は存在していないのだが…


「お前を倒すにはそれ相応の力が必要だ…だから使わせてもらう!!
 来い『機械竜 パワー・ツール』『妖精竜 エンシェント』『玄翼竜 ブラック・フェザー』!!」

『キヨォォォォ!』
機械竜 パワー・ツール:ATK2300


『カァァァ!!!』
妖精竜 エンシェント:ATK2100


『グルルルルルルル…』
玄翼竜 ブラック・フェザー:ATK2800



その戦いを有利に進める目的で、チンクは3体のシンクロモンスターを呼び出す。
何れもステータスは上級レベル…これならばクロウを倒せるかもしれないが…

「な!!…テメェ…何処でコイツ等を手に入れやがった!!」

クロウが逆上していた。



無理もない。
チンクが呼び出した3体のモンスターの内2体は、仲間のエースに酷似し、残る1体は己のデッキの最強モンスターに酷似していたのだから。


「テメェ…舐めた事しやがって!!
 ブラックフェザーの偽物が居て堪るかよ!!俺はチューナーモンスター『BF−下弦のサルンガ』を召喚!」
BF−下弦のサルンガ:DEF500


「そして、レベル6のアームズ・ウィングに、レベル2の下弦のサルンガをチューニング!
 黒き疾風よ、秘めたる思いをその翼に現出せよ!シンクロ召喚!舞い上がれ『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

『ゴアァァァァッァ!!』
ブラックフェザー・ドラゴン:ATK2800



デュエリストとして、己のエースの真似をされるなど断じて許せるはずがない。
チンクが呼び出したのとは違う、クロウの…クロウだけの黒翼竜が降臨!!


奇しくもこれが合図となり、戦闘を開始。


市街地での戦いは『質』にモノを言わせて押し通る事は、どうやら不可能であるらいい。






住民避難率は100%……此処からは手加減無用の戦いである…


















 To Be Continued… 






*登場カード補足