黄金と蒼銀――2つの眩い雷光を纏った麗しき死神剣士は、その圧倒的な力を持って、無限の欲望とその配下に相対する。

「「フェイトとアリシアがシンクロして――フェリシアってところかな?」」

不敵な笑みを浮かべ、死神剣士改めフェリシアは、手にした雷光の刃をスカリエッティ達に向ける。
同時に拘束から解放された麒麟も、武器をスラッシュアックスから太刀に換装して極悪モンスター達と対峙している。

空間を支配するのは、圧倒的な力を持った雷。
フェリシアの発する雷と、麒麟が発する雷がこの空間を完全に支配しきっていた。

「此れは此れは…こんな手を使ってくるとはね。
 だが、それも所詮は無駄な事…マジックカード『シンクロキャンセル』!此れで君は再び1人に戻るのだよ!!」

其れでもスカリエッティは余裕を崩さず、シンクロに対する最大の天敵とも言える『シンクロキャンセル』を発動する。
此れを喰らえば、幾ら何でもシンクロは解除され元に戻ってしまうが――


「「そんなものは私には通じない。」」

フェリシアのシンクロ状態は解除されず、全くの無傷であった。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス105
『It's Dual Sparking!!』











「馬鹿な…何故シンクロ状態が解除されないのだね?
 シンクロキャンセルは、シンクロモンスターを分解する効果を持つ魔法カード…シンクロモンスターに対しては天敵とも言える効果を持って居る筈だ。」

其れに驚いたのは、他でもないスカリエッティだ。
シンクロキャンセルを使えば如何に強力なシンクロモンスターと言えども分解してしまう事が可能だ。

其れを使えば、テスタロッサ姉妹のシンクロ体であるフェリシアも難なく分解できるはずだった。


だが、実際には全く分解できていない。
それどころか力はさらに増しているように見える。

「「残念だけど、この状態になった私は、一切の魔法効果を受け付けない。
  そしてそれだけじゃなく、魔法カードが発動する度に、私の攻撃力は上昇していく!!」」

其れはフェリシアの『モンスター効果』とも言える力だった。
一切の魔法効果を受け付けず、しかも魔法が発動する度にパワーアップしていくとは空恐ろしい力だ。

この力のおかげで、フェリシアはシンクロキャンセルで分解されず、更にその力を底上げする事が出来たのだ。


「「ジェイル・スカリエッティ、貴方にはもう万に一つの勝利も有り得ない…このまま叩き潰す!」」

フェイトとアリシア…フェリシアの雷のおかげで、私も力が漲って来た!…覚悟しろ禁止カード共!!

能力が大幅に上昇したフェリシアと、フェリシアが発する雷で強化された麒麟は夫々の相手向かって猛突進。
自らの手で幕を下ろす心算なのだろう。


だが、スカリエッティとて簡単にやられる相手ではない。

「良い攻撃だね…速攻魔法『リミッター解除』
 戦闘機人はある意味で機械族だからねぇ…此れの効果を受けるには充分だ…」

戦闘機人を完全に道具として見ているとしか思えない発言だが、ある意味で的を射ている。
機械の内部フレームを有する戦闘機人は、成程『機械族』であると言えるのかもしれない。
そうであるならば、『リミッター解除』は最大級の効果を発揮してくれるだろう――恐らくはデメリットの対策だってしてあるのだろう。

だが――


――轟ォォォォォォォ!!



「「「!?」」」

リミッター解除の効果が成立した瞬間、フェリシアの力が更に上昇したのだ。

「「言った筈だよ…万に一つの勝利もないって。
  私は、相手が効果によってその攻守を上昇させたとき、同じ効果を私自身に発生させる。
  スカリエッティ、貴方がリミッター解除でその2人の能力を倍加させた事で、私の力もまた同様に倍加したんだよ。」」

「馬鹿な…!!!」

正に圧倒的な力。
此れが実際に存在しているカードだったら間違いなく使用制限が掛けられるほどの強力さである。
其れも此れも、フェイトとアリシアの姉妹の絆と信頼があったからこそ得られた力なのだろう――だからこそ其の力は何にも負けはしない。

「「速攻で終わらせる!!」」

突撃して来たフェリシアの姿が消えた―――その次の瞬間、セッテの持つブーメランブレードが文字通り粉々に砕け散り…


――バチィ!!


強烈な雷撃がセッテ自身を吹き飛ばし、一撃で戦闘不能に。

素早いとか、そんなレベルではない……全く目視する事が出来なかったのだ。戦闘機人である彼女ですら。


目にも映らないフェリシアの速度――其れは正に『雷神の化身』と言っても過言ではなかった。








――――――








さて、場所は変わって、稼津斗とセイン&時空龍の戦いは結構いい勝負になっていた。
如何に稼津斗と言えど強大な龍と、セインの死角からの攻撃は厄介なモノがあるようだ。

やるじゃないか…え〜〜と……そう言えば名前を聞いてなかったな?

「セインだよ。ナンバーズの7番目のセイン。……アンタも名乗れよ。」

そうだな――カード名『蒼銀の戦士』、本名を氷薙稼津斗と言う…宜しくな。

フェリシア&麒麟の方と比べると、此方は同じ戦闘でも随分と和やかな雰囲気だ。
勿論飛び交う攻撃は何れも凄まじいモノばかりなのだが、此方は向こうでの決着が付くまでの『楽しむ』戦い故の差なのだろう。

現実に戦闘中であるにも係わらず、お互いに名を名乗る余裕があるのだから。

改めて、本当によくやる――このドラゴンのカードは、相当にお前のお気に入りのようだな?
 カードへの愛着があり、それと共に戦いたいと言う意思が無ければ、如何に強力なカードと言えども此処までの力は引き出せないぞ?

「お気に入り…そうかも知んない。
 だってカッコいいじゃん時空龍!何て言うか、こう…漆黒の鋼で覆われたような見た目が如何にも強そうじゃん?」

まぁな…そのせいで少しばかり『機械族』の様な外見にもなってるが。
 いっそ、ドラゴン族と機械族のダブルタイプモンスターでも良かったんじゃないだろうか?

「あ、言えてるかも。」

もう一度言おう、戦闘中である。
こんな会話をしながらも、攻撃の手は互いにゆるんでいないのだ。

だが、矢張りそいつは厄介だから沈んでもらおうかな?

セインと時空龍の波状攻撃は、如何やら相当に厄介であるらしい。
なので、先ずは時空龍をどうにかする事に決めたようだ。

一瞬で間合いを詰め、手刀で首を落とそうとした瞬間―――時空龍が消えた。
セインが時空龍諸共壁の中に潜り込んだのだ。

攻撃から護るなど、どうやらセインにとって時空龍のカードは相当にお気に入りであるらしい。


其れを見た稼津斗は思わず微笑をこぼした。
セインは悪人ではないと完全に判断出来たから――彼女は善悪の判断が付かないだけだったのだと分かったから。

ならばまだセインを踏み外してしまった道から助け出す事は出来る。
故にこの場は全力でセインを倒そう――そう心に決め…


覇ぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁ!!!!!


――轟!!!


その名の通り、銀髪蒼眼の姿に…カードに描かれている通りの姿に変身する。

行くぞセイン、時空龍……この姿になった俺は今までよりも少し強いぞ?

真の力を解放し、壁の中のセインに告げる――此方も決着の時は近い。








――――――








「「覇ぁぁぁぁぁぁ!!!」」

「ぐ…うおぉぉぉぉぉ!!!」

フェリシアの猛攻は更に激しさを見せていた。
セッテを一撃のもとに葬り去った彼女は、間髪入れずにトーレに攻撃を開始!

力の差は言うまでもないが、其処は流石にナンバーズ最強の戦闘能力を持つとされているトーレだけに何とか持ち堪えていた。
元々自身も高速戦闘を得意とするトーレにとって、フェリシアのスピードはギリギリではあるが付いて行けるものではあったのだ。

だが、あくまでも付いて行けるだけだ。
フェリシアの雷速戦闘は、最早直撃を喰らわない様にするのが精一杯だ。

無論、完全に防戦一方と言う訳ではなく、動きが確実に止まる攻撃の瞬間に合わせてカウンターを仕掛けるのだが当たらないのだ。
フェリシアのスピードは、相撃ち覚悟のカウンターですら許さない程であったのだ。

「「この一撃で終わらせる!!」」

黄金の剣と、蒼銀の剣を1つにし、フェリシアはバルディッシュをザンバーフォームへと換装。
そしてその状態で矢継ぎ早に9回…目にも映らない速さでトーレを斬り付けた。

「が…馬鹿な…其れだけの質量の剣を持ちながら、一切速度が落ちないなど…」

「「スピードこそが私の全て…其れを最大に生かした究極奥義『テラー・オブ・ミッドチルダ』…終わりだよ。」」

正に圧倒的!!
戦闘機人など、フェリシアの前には塵芥にすらならないようだ。

うおぉぉぉぉぉ…真・抜刀気刃斬りぃぃぃ!!!!

麒麟もまた、フェリシアの雷の影響で超強化され、5体の禁止モンスターを圧倒!
雷速の攻撃が、遂にゴヨウ・ガーディアンとダークダイブ・ボンバーを斬り伏せ粉砕したのだ。

混沌帝龍――お前達もこのままぶった斬るよ。

残るは3体の混沌の龍…其れを倒すために、麒麟は右手に太刀、左手に大剣と言う無茶苦茶極まりない二刀流を展開。
だが、其処には迷いも何もない…3体の龍は覚悟を決めるべきだろう。




そしてフェリシアは…

「「おぉぉぉぉっ!!!!!」」

「むぅ…!!」

渾身の一撃をスカリエッティに炸裂させていた。
だが、スカリエッティは倒れない――この一撃を白刃取り状態で抑えているのは称賛に値するだろう。

「素晴らしい一撃だ…だが、ドレだけ支えてくれる仲間が居ようとも、君が異端である事は変わらないのだよフェイト嬢。
 君はアリシアのコピーであり、それ以上でもそれ以下でもない……其れは君自身が一番分かって居る筈だ。」

「「確かにフェイトはアリシアのコピー…其れは変わらないかもしれない。
  けれど、フェイトがフェイトとして生きるその道は誰にも否定できないし、否定する権利などない!
  フェイトとアリシアは2人で1人で、1人で2人――私は迷わない、もう何があっても絶対に!!!」」

「ふふ…ふあはははっはは!!其処まで吠えるか!!ならばやってみるが良い!
 君達が何時何処まで家族などと言う関係を続けて行けるかに興味が湧いた……私は己の欲望に従ってそれを見届けようじゃないか!」

狂喜の笑い声を合図にするように、フェリシアは一旦間合いを離し――そして再び急接近。

「「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」


――バゴォォォォン!!!


そしてそのままザンバーの刀身で殴りつける。
如何に非殺傷とは言っても、この一撃は相当に堪える筈だ……事実、崩れた壁の前に座り込むスカリエッティは今の一撃で満身創痍だ。

「「ミッドチルダにおけるガジェットを使ってのテロ行為と、戦闘機人の違法開発、そしてレリックの強奪の罪で貴方を逮捕します。」」

言うが早いかバインドで拘束。
先に倒したトーレとセッテも同じような状態だ。

更に…


此れで終わりよ…超雷撃双刃撃滅斬!!!!』

『『『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』』』


無茶苦茶二刀流の麒麟の超乱舞が、3体の混沌帝龍を粉砕・玉砕・大喝采!!
幾ら禁止指定のモンスターであろうとも、意志なき存在では精霊には勝てないと言う事をまざまざと見せつけた結果であった。


終わったか…

そして、その場に稼津斗も合流。
肩には気を失ったセインを担いでいる……どうやら本気を出して、完全にKOしたようだ。

尤も、初めて自分で選んだ戦いに満足したのか、気を失ったセインの顔には笑みが浮かんでいたが。


「「取り敢えずここは、多分これで終わったと思うんだけど…」」

お前と麒麟は限界だろうな…まぁ、仕方ないだろう?…市街地とゆりかごはアイツ等に任せるさ。

スカリエッティのアジトでの戦闘は勝利であり、黒幕も確保した。
だが、ある意味で無理やりのシンクロをしたフェイトとアリシアと、強制ブーストで力を上げていた麒麟は結構ギリギリなのだ。

その証拠に――


――シュゥゥン



フェリシアのシンクロが解けて、フェイトとアリシアの2人に分離し、しかも寝息を立てている…相当に力を使ったらしい。
だが、限界でも良い――自分達のやるべき事はやったのだ。

ならば後は仲間を信じて待てばいいだけの事だ。
戦闘が終わったスカリエッティのアジトでは、この戦闘での最優秀選手であるテスタロッサ姉妹が、静かな寝息を立てていた…








――――――








時を巻き戻し、場所を市街地へ移そう。


市街地の上空には数えきれないほどのガジェットが展開されていた――如何見ても3桁は下らないだろう。
此れを見ると、市街地の防衛に戦力を注ぎ込んだのは間違いではなかったと、はやては自分の決断を褒めたくなった。

「敵はガジェットだけやない、恐らく戦闘機人も何体か来てるはずや――恐らくはギンガもな。
 せやけど、敵の正確な数は分からへん――先ずは散開し、ガジェットの破壊を最優先に!
 戦闘機人が来たその時は…手加減なんぞ必要あらへん……己の全力を持ってして叩き潰したれ!!行くでみんな!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」

「へっ…誰が来ようと関係ねぇ…この鉄砲玉のクロウ様が居る限り、ミッドチルダは焼かせないぜ!!」

気合は充実。
ミッドチルダ市街地での戦いも、戦闘の火蓋が切って落とされた――

















 To Be Continued… 






*登場カード補足