艦内のエマージェンシーコールを聞きつけ、機動六課の面々は全員がブリッジに集結している。
全員が此方の予想よりも早く仕掛けてくる事を予測してたのか、誰の顔にも焦りは見てとれない。

決戦を前に、六課の面々は最高のメンタル状態を得ているようだ。

「仕掛けて来たな…市街地の状況をモニターに出して!」

「了解!」

はやての命を受けて、緊急配備された嘗てのアースラスタッフがミッド市街の状況を光学モニターに映し出す。

其処には複数の戦闘機人と無数のガジェットの姿が!
更に、その戦闘機人の中には攫われたギンガの姿まである……クロウの予感は如何やら当たってしまったようである。

「ギンガ!!」
「ギン姉!!」


其れが現実になった事に、スバルとノーヴェも流石に動揺は隠せない。
幾ら覚悟をしていたとしても、実際に目にしたら心が揺れるのは道理だ。

「あんの腐れマッドサイエンティスト…ギンガを手駒にしよったんか……外道が…」

「あぁ…許す事は出来ないな……俺達の手で引導を渡してやろう!」

だが、其れもまた機動六課の面々に火を点ける事となった。
仲間が利用されているとなれば黙って等居られない。

完全な奇襲攻撃を受けて尚、機動六課の面々の心は、小波も立たない程に落ち着き、そして澄んでいた。












遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス102
『絶望への反抗』











とは言っても、奇襲を掛けて来た以上は其れに対処しなくてはならない――放置してミッドの街が焼かれるなどあってはならない事だから。
既に避難命令はミッドの全域に出ているだろうが、其れで避難が完了したと言う事ではない。

先ずは市民を安全な場所に……それがはやての、六課全員の思いだ。

だが、市民の完全避難を待っていたら街は焦土と化すだろう。
此処は打って出るしかない……はやてがそう決断するのに時間は必要なかった。

「見た通りや皆!敵さんは奇襲を掛けて来た……迎え撃つで!
 フォーメーションはさっき言うたとおりや!
 皇国の荒廃この一戦に在り!各員一層奮励努力せよってやつや!全力全壊の手加減抜きで行くで!!」

隊員を鼓舞し、士気を高めるのも総司令の重要な役割だ。
はやてのこの一言で、フォワード陣の気持ちは間違いなく高揚していたのだから。

「待ってください指令!ミッド市街上空に転移反応をキャッチ!……な、何と言う魔力…!!」

しかしながら、敵の切り札が絶妙のタイミングで現れるのもまたお約束と言えるだろう。
アースラスタッフがキャッチした転移反応……其処に現れたのは正に『切り札』と称するに値する最強最悪の兵器――ゆりかごだった。

「ゆ、ゆりかごやとぉ!?…もう起動に成功してたんか…此れは予想外や…」

「だが、まだ武装は使えないようだな……完全起動の前に叩き潰すしかない。」

奇襲は予想していたが、ゆりかごの起動は完全に誤算だった。
まさかこれだけの短期間に起動できるようになるとは誰も思っていなかっただろう。

だが、起こってしまったことを悔やんでも仕方ないし無意味だ。
此処は遊星の言うように、完全に起動する前に叩き潰して機能を停止するのが上策だろうが――そうなると予定していたアジト突入組を分けなければならない。

特にゆりかごは心臓部である動力の破壊は必須。
更にレーシャとヴィヴィオの救出を考えると遊星となのはは鉄板であり、ヴィータもまたその能力の高さから動力の破壊を担当するだろう。

しかしそうなるとスカリエッティのアジトに突入するのはフェイト1人と言う事になる。
幾らフェイトが最上級クラスの魔導師だとしても、スカリエッティのアジトに単身で乗り込むなど無茶と無謀もいいところだ。

だが、だからと言って防衛組の人数を減らす事は出来ない。


俺がスカリエッティのアジトに乗り込もう。

其処に名乗りを上げたのは『蒼銀の戦士』こと稼津斗。
精霊化して出て来たらしい。

私も行こうかな?

更には麒麟も。

「ちょお待って!!2人とも遊星のデッキから離れて大丈夫なん?」

問題ない。
 俺達カードの精霊は、カードから離れて行動する際にカードの持ち主が必ずしもそばに居なければならないと言う訳じゃない。
 加えて、本体であるカードが破かれたり燃やされたりしない限りは俺達に『死』が訪れる事もない……突入には妥当な戦力だと思うが?

増援はありがたいが、カードの精霊がデッキから離れても大丈夫かと思うのは当然だろう。
はやてもそれを思ったのだが、稼津斗に言わせれば全く持って問題はないらしい。

極端な話、遊星がやられなければ稼津斗と麒麟が倒れる事は先ずないと言う事になるのだ。
更に精霊化して戦闘を行う場合はカードのステータスからも解放される。
カードに記された攻守の値ではなく、精霊本来の力を解放して戦う事が出来るのだ……此れは強いだろう。

「…任せていいか2人とも?」

あぁ、アジトの方は俺達に任せて、お前と高町はあの子達を助け出して来い。

「あぁ、勿論だ…!!」

「うん、必ず…!!」

そして遊星が稼津斗と麒麟のアジトへの突入を任せた事で、人員問題は解決!
其れを確認したはやては、1度ブリッジ全体を見渡し、目を閉じて大きく深呼吸をし…

「ほな、行こか。」

ゆっくりと目を開け、決して大きな声でもなく強い調子でもないが、ハッキリと『意志』の籠められた声で告げた。

「フォワード陣は私とシグナムとリイン姉妹と一緒にアルトの輸送機で市街地の護衛戦に!
 遊星とヴィータとなのはちゃんはルキノの輸送機で可能な限りゆりかごに近付いてから突入し、ゆりかごの停止と人質2名の救出!
 フェイトちゃんと稼津斗さんと麒麟は、アースラの転送装置でスカリエッティのアジトに直接転移!親玉の確保や!!」

今度は反対に語気を強めて各々の任務を伝達していく。
その姿は19歳の若司令ではなく、数多の死線を潜り抜けてきた歴戦の司令官そのものだった。

「どう転んでも此れが最終決戦になるんは間違いない――絶対勝つで!!
 そして、勝つだけやない……全員必ず生きて戻って来るんや!!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

「言われるまでもねぇぜ!!」

フォワード陣とクロウもやる気は十分!
隊長陣も其れは同じだろう。

『此方アルト・クラエッタ、出撃準備完了しました〜!!』

『同じくルキノ・リリエ、此方も何時でも出れます。』

それと同時に2機の輸送機も出撃準備が完了。
最終決戦への準備は全て整った。

「よし…機動六課、全員出撃や!!」

「行くぞ皆!!」

「「「「「「「「「「「「おーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」








――――――








「市街地の方は任せるぞクロウ。」

「おうよ!このクロウ様に…てか俺等に任せときな!
 だからよ、こっちの事は俺等に任せてオメェはあのガキ共をキッチリ助け出して来い!」

「あぁ、勿論だ。」


――カツン


2機の輸送機がスタンバイしているドッグブリッジで親友コンビは出撃前の最後のやり取りをしていた。
多くは語らないが、其れで良い――15年以上の付き合いになる2人には最小限の言葉で事足りるのだ。


「ほな、頼むでヴィータ。」

「任せとけよはやて、ゆりかごの動力炉如きアタシとアイゼンで完全にぶっ壊してやるぜ!!」

『Ja.』

はやてとヴィータも其れは同じだ。


出撃前の挨拶を済ませ、それぞれ自分が乗る輸送機に。
残っているのは遊星とはやてだけだ。

「…気を付けてな。…絶対戻って来てや…」

「あぁ、約束する。」

互いに危険な戦いに出向くのは変わらない。
はやてが身体を預ければ、遊星も其れを優しく抱き留めてやる。

そして………何方からともなく唇を重ねた
僅か数秒でも、其れで充分だった。

「ほな、また後でな?」

「あぁ、後で…必ずな。」

最後に拳を合わせ、無敵の決闘者と最強の夜天の主はいざ出撃!
護るべき者、愛すべき者を得た2人に敵はないだろう。








――――――








出撃したは良いが、ゆりかご突入組は初っ端から難関に差し掛かっていた。

「ガジェットの数が多すぎます…これ以上の接近は不可能です!!」

ゆりかごから現れた無数のガジェットが進路を遮り、輸送機ではこれ以上近づくのは不可能となっていたのだ。
それ以前に一刻も早く此処から離脱しないと輸送機とルキノも危険だ。

「後部ハッチを開けてくれルキノ、其処から打って出る!」

「遊星さん…了解しました、後部ハッチ解放、何時でも行けます!」

だが其れなら其れで打って出るまで。
輸送機の後部ハッチを解放し、遊星、なのは、ヴィータの3人はガジェットの前に踊り出る。

「押し通る!!頼むぞ、『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』『シューティング・スター・ドラゴン』『セイヴァー・スター・ドラゴン』!!」

『『『キュオァァァアァァ!!』』』
コズミック・ブレイザー・ドラゴン:ATK3800
シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300
セイヴァー・スター・ドラゴン:ATK3800



「うざってぇんだよテメェ等は!!まとめてぶっ飛びやがれぇぇぇ!!!」

『Schwalbefliegen Claymore.』


「道を…開けてぇぇぇえ!!」

『Divine Buster.』


遊星は最強レベルの星龍3体を呼び出し、ヴィータは鉄球を使用しての炸裂射撃、そしてなのはは必殺の直射砲でガジェットを迎撃。
沙羅とプレシアの魔改造が施されたデバイスには『AMFキャンセラー』とも言うべき機能が追加されている。
それ故にAMF搭載型のガジェットとて脅威にはなり得ないのだ。


だが、それでも数の暴力とはよく言ったモノで、次々と現れるガジェットに碌に進む事が出来ないでいる。
此れではゆりかご突入前にガス欠などと言う事になりかねない状況だ。


――このままでは…だが如何すれば?………ん?そう言えばなのはのあのカードは………
「なのは!あのカードを使え!『No.101 S・H・Ark Knight』のカードを!!」

「遊星さん!?…うん、分かった!!」

そうならない様に如何したモノかと考えていた遊星が思いついたのは、以前になのはから見せてもらったエクシーズモンスターのカードだ。
精霊カードではないが強い力を秘めたカード…そのカードを使うときは今だと直感的に思ったようだ。

「お願い…力を貸して!『No.101 S・H・Ark Knight』!!」

『―――――』
No.101 S・H・Ark Knight:ATK2100



起動音とも咆哮ともつかない音をまきちらしながら現れたのは、宛ら巨大戦艦の如きモンスター。
ゆりかごと対峙する様は、其れこそ世界大戦の最終幕を思わせる。

「道を切り開いて!」

『――――――』

なのはの願いに呼応するようにS・H・Ark Knightはその身をガジェット達に向け…


――ゴギュゥゥゥゥ…


その全てを吸い取ってしまった。
いや、それだけではない――新たに現れたガジェットも『餌が来た』的に吸い込む、吸い込む、兎に角吸い込む!

『…不味い…』

何か聞こえた。
だが、此れで進路は確保できた。
ガジェットが現れた先からS・H・Ark Knightに吸収されているのならば、進行上の障害は無い。

時折吸収されなかったガジェットを潰しつつ、遊星達はゆりかご目がけてまっしぐら!

「どけ!!」

「邪魔だよ!!」

「ぶっとべ…うらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

邪魔者を叩きのめしながら突撃し、遂にガジェット排出口からゆりかご内部に。

市街地組も恐らくは戦闘に入っているだろうし、アジト突入組もスカリエッティのアジトに到着しているだろう。




御託は要らない。
全員が己の成すべき事を成し、そして生きて帰る――其れだけだ。


「此処がゆりかごの内部…」

「アタシは動力炉を破壊する…しくじんなよ、遊星、なのは!!」

「あぁ、任せておけ。」

誰1人迷いなどない。
最終決戦――いざ開始だ。

















 To Be Continued… 






*登場カード補足