事件№16785レーゲン・ファミリー事件について

指名手配中だった凶悪犯罪集団『レーゲン・ファミリー』は、管理局の捜査網を潜り抜けながら、管理外世界や無人世界を荒らし、
滅ぼす等の凶悪行為を重ね、その途中で『第97管理外世界』へと立ち寄った。
そのレーゲン・ファミリーに対して現地の魔導師『高町なのは』をはじめとした魔導師と『八神統夜』と名乗る魔導師他数名が応対し、
これを退け、結果レーゲン・ファミリーを逮捕するに至った。(高町なのは及び、現地の魔導師については『ジュエルシード事件』及び『闇の書事件』の報告書を参照とし、
八神統夜については『次元漂流者』であり、現地で帰還の為の手段が講じられている事から深くは記述しない事とする。)
現地での戦闘に於いて余程の事が有ったのか、首領であるキシュア・レーゲン及び幹部連中はトラウマによるPTSDを発症しており、
真面な事情聴取は不可能であったが、意識を取り戻した一般構成員への取り調べで此れまでの犯罪歴が明確になり、
また此れまでの捜査で得られた様々な、状況証拠並びに物的証拠から起訴は可能である。
ただ、起訴内容が内容だけに形式的な裁判が成されるだけで懲役100年を超す有罪になる事は明白であると思われる。
尚、彼等がPTSDを発症するに至った原因については筆舌に尽くしがたい物があるので報告書への記述は避ける此処とする。

時空管理局執務官クロノ・ハラオウンの事件報告書より抜粋













side統夜


事件が終息を迎え数日、俺達は未だに高町家にお世話になっていた

今日も目がさめると俺は鍛錬をするために道場へ向かい、道場の扉を開けた瞬間…景色が変わった。その様子に道場にいる全員が驚きの表情を見せる


統夜「へ?」

そこは俺の入りたかった道場ではなく…今の時間とは全く逆の世界、つまりは常夜の世界だ。

しかし、それならまだよかった



なんで…大地に剣が刺さってるのさ

統夜「……ちょっと待って…なのはちゃん…これは、一体…如何言うことなのかな?」

俺は何処ぞの魔術師殺しみたいに問いかけるとなのはちゃんはテヘッと可愛らしくポーズをとって


なのは「レイジングハートの記録映像見ながら練習したら出来ちゃった♪」

ヴィータ「相変わらず…なのははスゲーな」

シグナム「まさか、統夜の固有結界を真似てしまうとは」

統夜「……ここまでの魔法の才能だ、確かに出来ないことはないとは思ってたよ?確かに、某赤い皇帝みたいに魔力で黄金の劇場を再現できる英雄もいるからね」

なのは「うんうん、やっぱりやろうと思えばできるんだよ〜」

その言葉についに俺の中の何かが切れた


統夜「出来るか‼︎‼︎‼︎‼︎」

突然の大声にその場の全員が驚く

なのは「へ?」

統夜「アホか!?普通、感覚で固有結界なんて再現できるわけないだろうが!?主人公補正にも限度ってもんがあんだろ!?
    完全に八神の歴代当主をバカにしてるよね!?ってか侮辱してるよね!?しかもなんだよ!『練習したら出来ちゃった♪』って!
    普通、練習するだけで出来るものじゃないから!」

恭也「落ち着いて、統夜くん」

統夜「これが落ち着ける状況か!?どんだけ魔導に天才的な才能があろうが普通は出来ないから‼︎やろうと思っても普通は出来ないから!!
    しかも、なんで剣まで刺さってるのさ!?これ俺の結界の中にあったやつだよね!?なんでここにもある訳!?
    ってかなんでなのはちゃんが剣製もどきを出来るわけ!?実は魔導師じゃなくて魔術師なんじゃないの!?」

その後も俺のツッコミと言うか…文句というか、そうゆうのが続いた。その際軽くなのはちゃんをディスってたような気がするがシグナム達も恭也たちも何も言わなかった。

統夜「夜天の主ならある程度の魔導を使うことは可能か…一応、結界魔法の究極系的な感じで納得するとしよう。
    名前はNight heaven’s blade works《夜天の剣製》こんなところでしょ。あんまりこの魔法は使わないようにね。
    世界そのものを侵食して別の世界に書き換えるなんて普通はありえない魔法なんだから」

なのは「うん、私のとっておきだよ‼︎」


その言葉とともに常夜の世界は閉じてゆく
常夜は消え去り、道場へ戻ったところで俺は恭也を見る

統夜「さて、一稽古頼むとしようか恭也?」

恭也「そうだな、俺もお前とやる稽古…いや、模擬戦は楽しい。今回は何を使うんだ?」

統夜「あぁ、今回使うのは…………………









    二刀流だよ」







稽古も終わり朝食を済ませた俺と騎士達となのはちゃん達とともにグランツ研究所へ足を運んでいた。

俺はグランツ博士の研究室に入るなりグランツ博士の横に座る

統夜「さて、調子は如何ですか?」

俺の問いにグランツ博士はこっちを振り向きニヤッと笑いながら答える


グランツ「いやぁ、確かに時間軸の計算は難しいけどなかなか楽しめたよ。その結果がこれさ!」


俺のウインドウに数式の羅列が送られてくる

俺はそれをSEEDを発動させた状態で高速で目を通していく

統夜「なるほど…これで俺の割り出した空間軸の答えに当てはめて……シュテル、少し手伝って」

シュテル「はい」


シュテルが俺の横について出されたウインドウを操作する


なのは「私の世界のシュテルもあんなに頭いいのかな…」

その問いにははやてにくっつかれているディアーチェが答える


ディアーチェ「まぁ、シュテルは理のマテリアルだしな…我ら騎士の中では戦術を作り出すものだ。
        故に、頭がいいのは当然なのだが…お前の話を聞く限りどうとも言えんな…我らがいない時点でシュテルが理のマテリアルであるとも限らんからな。
        しかし、シュテルが完全に消えたかという点では問題はなかろう。
        奴の持っていたであろう『無限連環機構エグサミア』はたとえ管理局どもがアルカンシェルをぶっ放したところで完全にはなくなりはせんよ。
        修復には相当時間がかかるであろうが数十年、数百年後かもしれんが復活するのは道理よな。何故ならば無限連環機構なのだから」

その答えは不確かなものではあるがシュテルは生きてる…という希望を与えるには十分だった


そして数10分後

統夜「さて、答えも出たことだし。予定どうり明日には帰れそうだね」

シュテル「そうですね、ご助力ありがとうございます。博士」


真面目そうに感謝の言葉を述べているシュテルだが周りにいるネコたちのせいで台無しになっている

そんなシュテルを見てアミタさんが大急ぎでネコたちを退けるのを見てグランツ博士は笑いながら俺とシュテルに言葉を返す


グランツ「いやいや、統夜君たちのおかげで時間軸の計算という面白い事を経験できたからね。この研究が完成すればいつでも私たちは会えるかもしれないよ?」

統夜「ははは、そうなる頃には俺たちは何歳なんでしょうね」

グランツ「少なくとも僕はお年寄りかな?」

統夜「おそらく俺も成人してますね」

グランツ「まぁ、僕が死ぬ前には完成させてみせるよ。何しろ君という科学面でのライバルがいるからね。
      既に一度異世界から帰還しているという君には追いついてみせるさ」

統夜「そうですか。俺も楽しみにしてます」

俺はグランツ博士と握手を交わし、その場を後にした



その後、再び高町家へ戻ると、家の前にフェイトとアリシアがいた


なのは「あれ?フェイトちゃんにアリシアちゃん?どうかしたの?」

フェイト「あ、なのは。それに統夜さんも」

アリシア「おはよ〜みんな〜別に用とかあった訳じゃないんだけどね〜みんなと話したいな〜ってて思ったから来てみたんだ〜」

なのは「あ〜なるほど。それじゃあ家に入ろうか」


そう言ってなのはちゃんはドアを開けて家の中へ入っていく
それに続くように俺たちも家に入りリビングへ上がっていく

フェイトやアリシアはレヴィやシュテルと割と仲良く話していて、はやてはディアーチェにベッタリだった。しかし、ディアーチェも満更ではなさそうだから別に構わないが

そんな中俺となのはちゃんは事件後に関することについて語り合っていた


なのは「でも、正直統夜くんの強さには驚いたよ〜100体くらいいた魔道兵器をすぐに片付けちゃうんだもん」

統夜「いや、俺からしたらなのはちゃんの使ったブレイカーの方が驚いたよ。あれは俺が食らってもトラウマもんだよ」

なのは「にゃはは〜でも、私としてはアレは完全に感覚で集めてたからね~
     まぁ、それが結界を維持してる統夜くんの魔力と統夜くんの使ってた剣が砕けたことで世界にばら撒かれた魔力を集めて、
     尚且つ大地に刺さってた剣まで集めれたんだから驚いたものだよ〜」

統夜「集めたなのはちゃんが驚いたなら他の人は悪魔としか思わないだろうね。それを食らう人は悪魔どころか魔王に見えるかもしれないけど…」

なのは「悪魔とか魔王とか…統夜くんって割と酷いこと言うよね…?」

統夜「そうかな?多分みんなそう思ってると思うよ?」


俺がそういった瞬間、その場の空気が凍った

なのはちゃんは静かに話し合ってたシュテルやフェイト達の方を見つめるが見つめられた本人達はワザとらしく口笛を吹く始末だ。
特にレヴィ、お前はワザとらしすぎる。ドンだけ焦ってんだ?


なのは「まぁいいの。それよりも事情聴取の時のクロノくんも面白かったよね〜」

統夜「確かに、固有結界を使ったって言った時は相当驚いてたしブレイカーの話をしたら震えが止まらなくなるし。俺としては見ててとても悦を感じられる物だったね」

なのは「うんうん、悦を感じられるのはどうかと思うけどね」

統夜「あとはリンディさんだね。あの人だけは世界を超えてもブレないな。
    あの異常味覚は既に末期だ、抹茶に角砂糖16個とか日本人を侮辱してるな。お茶飲むの辞めればいいとさえ思えるよ。クロノは普通の味覚なのに…」

なのは「うん…クロノくんは普通の味覚だね。でも、リンディさんは仕方ないよ…お母さんが矯正したがってるけど…私的には無理だと思うの…だって末期だもんね」

統夜「あぁ…末期だもんな」

俺となのはちゃんは何処か遠い所を見ながらそう呟いていた



そして暫く二人して遠い目をしていたが二人とも飽きたので別の話題になった

なのは「そういえば統夜くんの世界ってどんな感じなの?」


なのはちゃんのその質問にアリシアが真っ先に反応しコッチに来た


アリシア「あ!それは私も知りたい!」

統夜「うーん、まぁあんまし面白い話ではないけどね?」

フェイト「それでも聞きたいなぁ」

レヴィ「ふふーん!こっちの世界でははやてお姉ちゃんは凄いんだぞ!」

はやて「へぇ〜そんなに凄いん?」

統夜「確かに俺から見てもはやては凄いな。なんだかんだと彼奴は投影魔術を徐々にだが習得し始めてる。属性は俺やフェイトと違って銃だけどね」

フェイト「そっちの世界の私は統夜さんと同じとこが出来るんだ?」

統夜「うん、確かフェイトが初めに投影したのがロー・アイアス。トロイヤ戦争の中で語られている英雄アイアースの盾だね。
    そして次にゲイ・ジャルグ。フィオナ騎士団の一番槍ディルムッド・オディナが使っていたとされる呪いの魔槍だね」

なのは「フェイトちゃんも相当な規格外なの…」

アリシア「そっちの世界のフェイトって一体何者?」

統夜「それはノーコメントで」

ディアーチェ「ふむ、それに兄上はフェイトとの恋仲でもあるしな」

フェイト「ぶっ‼︎‼︎」


その言葉にフェイトは思わず吹き出した

統夜「ディアーチェ……」

ディアーチェ「別にいいではないですか、隠すようなことでも無いと我は思うのだが…」

アリシア「因みに!何方から告ったの?」

統夜「いや、其処までは言わないけど」

ユーリ「フェイトの方からだと本人が言ってました〜」


次々と俺の個人情報が我が騎士達から暴露されていく


アリシア「ほ〜意外と積極的なんだね〜」

統夜「ったく、なんだってこんなことに……」

レヴィ「あと、よく一緒に寝てるよね!」

フェイト「っ!?」


その言葉にフェイトは耳の先まで紅くなる


アリシア「え!?本当に!?」

レヴィ「うん、逆に一緒に寝ないとフェイトが不貞腐れちゃう位だよ?それではやてお姉ちゃんは『最近は統夜兄ぃと一緒に寝れへんわ』って文句言ってるけど」


その次ははやてが顔を紅くした


アリシア「へぇ〜統夜はモテモテなのかな〜」


アリシアはグイグイっと俺の方に近づいてくる


シュテル「モテモテ…と言うか。兄さんは私達女の家族には好かれてますね。其れこそほとんど異性に近い感じで」

統夜「少し待て!それは初耳だ!」

シュテル「ん?私達がブラコンなのは兄さんが優しすぎるからですよ?家事スキル万能、優しい、強い、この三拍子揃えば好きにならないはずがないでしょう」

統夜「お前ら家に帰ったら覚えてろ。徹底的に叱ってやる」

シュテル「え?なんでですか?別に法に触れてないので構わないと思いますが?」

統夜「そうゆう問題じゃない。何故この場で言ったかだね?」


今の俺は相当いい笑顔に違いない。そう信じられる


なのは「まぁ、お兄ちゃんを好きになるのは悪いことじゃないんだし怒ることじゃないと思うな〜」

統夜「確かにそうだね。だけど、割と大変だということに気がついたよ」


本当に驚いた…もう二度と一緒に風呂になんて入ってやるか

統夜「さて、俺の暴露話は置いといていよいよ明日帰れるのか。思いがけないこともあったけどなかなか有意義に過ごせたよ」

なのは「そうだよね…明日帰っちゃうんだよね。せっかく友達になれたのに…」

統夜「そうだね〜だけど、もう会えないわけじゃないんだよ」

なのは「え?」

統夜「運命というのはね、なかなかに面白いもので一度出会ってしまった…という以上二度と会えないという事はまずありえない…と思うんだ。
    正直な話俺は聖天の書が座標を覚えてしまえばいつでも来れるからね」


俺はふわふわと浮いている聖天の書を指で弾きユーリの方に飛ばすとユーリが聖天の書をぎゅっと抱きしめる」


聖天の書『そうですねぇ、この世界の座標を記録するのは構いませんが…それだと私のストレージがまた窮屈になりますよ?』

フェイト「魔導書が喋った!?」

統夜「こいつはなんか特別なんだ。インテリジェント型の魔導書だからね。魔法を使うときはだいぶ役にたつよ



…普段の性格が残念すぎて困るけどね」


なのは「あはは〜、でも、また会えるかもしれないならその可能性を信じてみるよ!」

統夜「そうだね。俺も可能性に賭けてみようかな」





そして夜

その日はテスタロッサ姉妹が流れで泊まりとなった


桃子「それじゃあ、私の夜ご飯食べていくのは今日の夜でお終いなのね〜」

統夜「えぇ、一週間の間本当にお世話になって」

桃子「いいのよ、こうやってみんなと家族みたいに暮らせたんだもの。私としてはとても楽しかったわ。
    何より娘達とはよくご飯を作ったりするけど男の子とは一緒に作ったことなかったから」

統夜「いえ、俺はせめて何か手伝えることがないかと思った結果、料理しかなかっただけですよ。まぁ、それでも貴女は越せませんが…」


俺はそう言いつつも調理を続けていく


桃子「あら、貴方みたいな若い子に越されるような腕してないわ。でも、私の知ってる中ではダントツでトップよ?」


桃子さんも調理をしながらではあるが言葉を返してくれる


統夜「そうでないと困ります。ただでさえ普段から20人前に近い量を作らなきゃいけないのに味の細かさまで求められるんですよ?」

桃子「20人前ね。結構食べる人がいるのね?」

統夜「えぇ、腹ペコ王やレヴィ、ヴィータがその筆頭です。あ、腹ペコ王と言うのはアルトリアのことです。そいつが一番食べますね」

桃子「でも、たくさん食べて喜んでくれるのは嬉しいものよ?」

統夜「確かに、そうなんですけどね。でないと料理なんて作れませんよ」



そして、それから二時間弱たった頃全ての料理が完成した


なのは「うわぁ〜すごく豪華…」

フェイト「これ、全部二人で作ったんですか?」

桃子「ええ!統夜くんは流石と言ったところね。途中から料理勝負的なことになっちゃって気がついたらこんな事になってたわ!」

統夜「俺からしたらいい経験になりましたよ。こっちの世界の桃子さんとはあまり関わりが無いものですから」

桃子「あら?そうなの?それならその世界の私は勿体無いわね〜近くにこんなにいい人材がいるのに〜」

統夜「いやいや、そんなことないですよ。それに接客は得意でなくて…」

ユーリ(嘘だ…前に蒼空に統夜の接客は完璧だって言ってたのに……)

シュテル「それよりも早く食べませんか?見ての通りレヴィが我慢の限界みたいなので…」


その言葉に全員がレヴィの方を見るとレヴィはヨダレを垂らして料理を直視していた


「………………………………………」


暫くの沈黙

桃子「そうね、それじゃあいただきましょう!」


桃子さんのその言葉を始めとして全員が箸を持ち


「いただきます‼︎‼︎」

食事を始めた





一時間後、15品以上あった料理は全て無くなりみんなは満腹感に腹を満たされていた

俺と桃子さんは洗い物をしつつ会話していた


桃子「う〜ん、統夜くんの料理も美味しかったわ〜これは免許皆伝ね」

統夜「嬉しいですが…なんの免許ですか」

桃子「え?もちろん私が料理の腕を認めた証よ?」

統夜「へぇ〜それって俺の他に誰かいますか?」

桃子「う〜ん、まだ一人目よ」

統夜「お、では俺が第一号ですね?」

桃子「そうよ〜免許証とかはないけど料理の腕に自信は持っていいわ。この私が保証するもの」

統夜「それは、ありがとうございます」

俺は素直にお礼を言いつつも手元は休めない

そんなこんなで洗い物も終わり、風呂にも入って時間は過ぎた

そして、俺は1日目と同じように道場で月を眺めていた


統夜「この世界はなかなかに面白いものだったな…」

そう、小さな事件なんかもあったが、それでも楽しいと思えた。それもこの世界の小さな夜天の王のお陰だ

統夜「俺がいない世界…それでも、はやては幸せそうに生きてる…それだけ知れれば俺は良かったかな…」

口からその言葉を俺は自分に呆れながら否定する

違う、と

統夜「この世界はなのはちゃんがいるからこそ成り立ってる…そして、あの世界は…どうなんだろうな」

時々考える…本当に俺があの世界にいて良かったのか
俺がいなければフェイトやはやてが魔術という危険なものに手を伸ばさなかったのではないのか?そう思わずにはいられない

統夜「結局俺は…今までしてきたことに後悔してるのかもな…こんなこと…みんなの前じゃ絶対に言えないことだ」

きっとシュテルやはやてに怒られるだろう
「今までやってきたことは決して間違いじゃない」とそう言われる気がしてならない

そう思ってた時、不意に声が聞こえた


なのは「へぇ〜それじゃあ今のことは私しか知らないんだ?」

統夜「なのはちゃんか…ダメだよ?早く眠らなきゃ」

なのは「それ、統夜君にだけは言われたくないよ?」

統夜「ははは、それもそうか…」

俺は乾いた笑いをあげるとなのはちゃんは不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んだ


なのは「どうかしたの?」

統夜「いや、大したことじゃないんだ。ただ、俺はあの世界にいても良かったのかなってたまに思うんだ。
    もちろん、はやてやシュテル達が家族として居てくれ幸せではあるんだけどね?なんていうかさ、不安なんだ。俺がいる事であの子達に迷惑をかけてないかがね」


俺の言葉になのはちゃんは暫く考えて口を開いた


なのは「本当はね。私も同じようなことを考えたことはあるんだ。
     私は産まれてからずっと足が不自由で、何処に行くにも初めは誰かに車椅子を押してもらわなきゃならなかった。
     その内私は本当に生きてていいのかな?って思うようになった時期もあったんだ。
     周りの人に迷惑かけてないかな?本当は嫌なんじゃないかな?って思ってたことが私にもあったよ」

統夜「それでも君は立ち上がったんだよね?」

なのは「うん、その内私の家にはやてちゃんが来て、私とずっと一緒にいてくれたんだ。
     迷惑じゃない?って聞いたら『そんなことあらへんよ?寧ろ、なのはちゃんの面倒見るのは楽しいで?』って言われてそう考えるのはやめたんだ」

統夜「そっか…それじゃあ。俺も考えを変えるべきなのかな…いまあるこの生を楽しんでもいいのかな…」

なのは「うん!命は誰にだって一つしかない。たった一度だけの人生なんだから楽しまなきゃ損だよ?」

統夜「…そうだね。俺も此れからはこんなことは考えずに生きていこうかな。今度会えた時になのはちゃんにエヘンと胸を張れるように、ね」

なのは「寧ろそうなってないと怒るよ?」

統夜「そうだね。怒られないように努力するよ」

俺はその後、少し月を眺めたが立ち上がる

統夜「さて、もう夜も遅いしそろそろ寝ようか」

なのは「ふあ〜ぁ、そうだね。私も眠たくなったよ」

そして俺となのはちゃんはそれぞれの部屋に入り眠りについた











翌日の昼ごろ

俺たちは再びグランツ研究所へ来ていた。
理由は簡単だ。期間の準備が整ったから

俺はグランツ博士に許可を貰い、研究所の庭に水銀を使用した魔法陣を描いていた

なのは「見たことない魔法陣なの…」

統夜「あぁ、これは『八神の大きな魔術に使用される魔法陣』だよ。八神では大体空間移動や英霊の召喚の際に使用されるものだね」

グランツ「ふむ、なかなかに興味深いものだね。これはここに残していくのかい?」

統夜「ええ、元の世界に戻ったら回収できませんから…処分の方法については任せます。
    残してもいいですし、廃棄してくれても構いません。ですが水銀ですので扱いには注意してくださいね?」

俺がグランツ博士にそういった頃には魔法陣は完成していた

統夜「グランツ博士、計算の答えを俺に下さい」

グランツ博士「うん、分かったよ」


グランツ博士から渡された紙にはX軸とY軸の数値が記されていた


統夜「よし」

俺は紙を魔力を使用して浮かせ、左手にナイフを投影する

フェイト「どうかしたの?剣なんて出して」

統夜「ん?いや、なんでもないよ?」

俺はそう言いつつもナイフで指を少し切る


なのは「っ!?」

俺は指から出た血を魔法陣の上に垂らすと魔法陣は赤く輝いた

統夜「なのはちゃんには最初に言ったよね?魔術師の本質は生ではなく死だって…大魔術の使用…主に空間転移や英雄の召喚には術者の血が必要な場合もあるんだ。
    まぁ、この魔法陣は八神の血を引くものにしか使えないけど…」

なのは「それは前に話したけど…傷を塞がなきゃ」

統夜「あぁ、問題ないよ。もう塞がってきたから」

フェイト「え?」


俺は塞がった傷跡を見せる


はやて「ほんとや…完全に傷が塞がっとる」

ディアーチェ「兄上は不死という言葉そのものだからな…」

なのは「にゃはは…これ以上統夜くんに驚くことはしないの」


と、そんな会話をしていると魔法陣の輝きがさらに増した

統夜「っと、長話が過ぎたようだね…そろそろ座標を刻まないと…」

俺は魔法陣に魔力を流しこの世界の座標と元の世界の座標を組み込んでいく

それは数分で完了し魔法陣には一回きり転移できる座標が刻み込まれる

統夜「さて…そろそろお別れかな」

俺は作業を完了し全員の方を振り返った


なのは「はい、これお土産。向こうの私とも仲良くしてね?」


なのはちゃんは俺に翠屋のシュークリームを渡してくれる

統夜「ありがとう…それに関しては頑張ってみるよ」

フェイト「あの…そっちの私とは…仲良くしてね?」

統夜「もちろん…フェイトはいろいろ頑張ってな?」

ディアーチェ「はやて…一週間という期間ではあったが我は楽しかったぞ?これからも元気でやれよ?」

はやて「うん!王様も元気でな?」

アミタ「あ!シュテルさん…すみませんまたネコが」

シュテル「いえ、いつもの事ですからお気になさらず」

レヴィ「アリシア!ヘイトの仲良くな!」

アリシア「まっかせといて!」

ユーリ「キリエ、また今度会ったら遊びましょうね?」

キリエ「もっちろん、待ってるわよ〜ん」


それぞれが言いたいことを言い終えたみたいなので俺はシュークリームをシュテルに預ける


シュテル「どうかしたのですか?」


俺は無言でなのはちゃんに近づく

なのは「えっと、どうかしたの?」

統夜「一週間もお世話になって、最後にシュークリームまで貰ったんだ。俺からも一つプレゼントをあげるよ」

俺は昨日の夜作ったペンダントをなのはちゃんの首にかける


なのは「え?これは?剣十字型のネックレス?」

統夜「あぁ、そのネックレスはただのネックレスじゃなくて一級品の魔術礼装だよ。
    そのネックレスをかけてる間は魔法を使うときに消費される魔力が半分カットされる。魔法の威力はそのままで、だけど消費される魔力は半分って感じだね」

なのは「そんな凄いもの貰ってもいいの?」

統夜「あぁ、構わないよ。俺が持ってても使わないものだしね」

なのは「ありがとう!統夜くん!大事にするね!」

統夜「うん、それとその礼装の名前は『蒼天の誓い』だよ」

其処まで伝えた時、魔法陣の輝きが更に増した

統夜「そろそろか…そうだなのはちゃん。俺たちから最後に言いたいことが」

既に転移の準備は始まっていた


なのは「え?」


最後に伝えたいこと…それを言い終えれるか心配になる程俺たちの体は透け始めた

統夜「次に俺たちが出会える時まで貴女と名誉ある騎士達の道が華やかな勝利の色で彩られるように…聖天の騎士達と主が祝福します。どうかお元気で」

その言葉と同時に俺と聖天の騎士達はこの世界から消えた











sideなのは



最後に統夜くんは私達に祝福を残して帰っていった

私は彼から貰った礼装を両手で優しく握り天に向かってそっと呟く

なのは「貴方たちこそ私と再開できるまで勝ち続けて…バイバイ、聖天の王と至高の騎士達」

そして、私達と統夜くん達の不思議な一週間は終わりを告げた













 To Be Continued…