Side:はやて


此れは、マッタク持って予想外の展開やったな……ザフィーラが押され気味の引き分けで、ヴィータは略完封に近い状態でKO負けとは。私の
守護騎士と同等、或はそれ以上の強さを秘めてるって言う事やな、ロック君とテリーさんは。

でも、そう言う事なら、残るレオナちゃんと京さんには俄然期待が高まってまうわ此れ。
レオナちゃんは京さんやテリーさんでも簡単に勝つ事は出来ない手練れって事やし、師匠が上げてくれた資料を読む限り、京さんは『炎を払う
炎』を使えるみたいやからね。

此れだけの人材は喉から手が出るほど欲しい!!
此れは、模擬戦なんとしないで、クロノ君とリンディさんに推薦状書いて貰った方が早かったかも知れへんね。所詮は、結果論なんやけどな。

まぁ、其れは其れで京さん達が納得しなかったも知れへんからね……結局は、此れが正解やったんやろうな。

何れにしても、残り2試合も荒れ模様は確定やな。
レオナちゃんvsフェイトちゃん、京さんvsシグナム……どっちのバトルも、只では済みそうにないからね?……今の内に始末書覚悟しとこか。



「望むなら、始末書を物理的になかった事に出来るよ?」

「いや、要らへんから!!
 てか、始末書そのものを吹き飛ばしても、局のデータバンクには残っとるから、吹き飛ばしても無意味やからね!?」

「……残念なの。」



私が言うのもなんやけど、なのはちゃんはどうしてこうなった!!――不屈の純粋美少女が、10年経ったら稀代のバトルジャンキーって笑え
るかぁ!!



「あんまり騒ぐと血圧上がるよはやてちゃん?」

「誰のせいで血圧上がってると思ってんねんこのアホ垂れぇ!!」

はぁ……取り敢えず、残りの試験終わらせてまおか……何か、どっと疲れが出た気がするわ。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round8
『京vsシグナム~歴戦の焔~』











No Side


残る試験はレオナと京。
先ずは、3番手のレオナが模擬戦のフィールドに入り、先に入っていたフェイトと対峙する――その顔は、何時もと変わらず冷静そのものだ。

対するフェイトも、眉すら動かさずにレオナを凝視する――見る事で、相手の実力を計っているのだろう。
だが、見られたレオナは表情を崩さない――僅かな表情の変化から、相手に戦略を読まれる事もあるから、戦場では感情を顔に出すなと言
うハイデルンの教えは確りと身に刻まれている様だ。


「それじゃあ、宜しくレオナ。」

「此方こそ、宜しくお願いするわフェイト。」


そんな中で互いに挨拶。
クールな女性同士のバトルだが、その内容は可也熱い物になるのかも知れない。


「ほな行くで?レオナvsフェイト!Ready……Go!!」



――推奨BGM:Rumbling on The City


そして、はやての号令で始まったバトル――そのバトルで先に仕掛けたのはレオナだった。フェイトよりも早く動いて先手を取って来たのだ。
完全にタイミングを外すことが出来たレオナは、フェイトをグランドセイバーで斬りつける。


「く……!!」


だが、フェイトも直撃はゆるさないとばかりに身体を捻って躱すが……マントの一部が、鋭利な刃物で切られたかのように切れていたのだ。
此れには驚かない方がオカシイだろう。――無手の相手が、布を素手の手刀で切り裂く事など出来ないのだから。だがしかし、現実にフェイト
のバリアジャケットは破損しているのだ。

だからこそ、フェイトは今まで得られた情報から分析をして行く。

レオナの手刀は強力だが、そうであってもバリアジャケットを簡単に切り裂くと言うのは、如何考えても普通はあり得ない事なのだが――


「(彼女の手の周りに何らかのエネルギーが収束した感じはなかったから、此れは魔法攻撃じゃない。
  だけど、私のバリアジャケットのマントは、生半可な攻撃じゃ傷付かないから、只の手刀で切り裂かれるとは思えない……一体何が?)」


もしも、手刀にロックやテリーが使っていた『気』が纏わりついていたのならば話は早かったのだが、レオナの手にはそう言った物がまるで見
当たらないし、何らかのエネルギーを感じる事も出来ない。
だからこそ、フェイトは此処は攻め込まずに、持ち前のフットワークの軽さで直撃を受けないようにしながら『見』に回って、レオナの攻撃の本
質を見抜こうとしているのだ。


「慎重なのね?……でも、戦場ではそれが正解。
 未知の相手と戦う時は、下手に攻めるよりも、先ずは相手の事を知る事が大事……貴女は、大切な事を良く分かっていると思うわ。」

「此れでも、一応分隊長を任されているからね。
 でも、それを言うなら、貴女は随分と強気に攻め込んでくるんだね?……幾ら、前の2試合で魔法を見たとは言っても、戦うのは初めてだと
 思うんだけど?」

「私が居た世界にも魔法を使う者は居た。
 其れに、京の炎や、極限流の『気』、果ては麻宮アテナの『超能力』まであったから、魔法が相手でもあまり違いはない……」

「貴女の居た世界も、不思議が一杯なんだね。」


攻めるレオナと、守るフェイトの戦いは、更に激しさを増していく。
それに比例するかのように、フェイトのバリアジャケットには切り裂かれた痕が刻まれて行くのだが――


――ユラァ……


「!!?」


何度目かの攻撃の際に、レオナの手刀が僅かにぶれて見えたのだ。――まるで、気圧の違う場所にある物が歪んで見えたかのように。
其れを見たフェイトは、初めて攻撃を躱さずに、バルディッシュの刃の部分でレオナの手刀を受け止めた。


「初めて躱さずに受けた……?」

「私が自分で受ける事は出来ないけれど、バルディッシュなら貴女の攻撃に耐える事が出来る。
 まるで本物の刃物の様に鋭い貴女の手刀……その切れ味の正体は、手刀其の物じゃなくて、手刀によって発生した真空の刃!!」

「……正解、良く分かったわね。」

「よく見てないと分からなかった……攻撃前に手刀がぶれて見えたのに気付かなかったら、きっと分からなかった。
 ぶれて見えたのは、攻撃のモーションが早すぎて、微妙な残像と、高速攻撃で其処だけ気圧が異なったから。――当たってるよね?」

「よく見て居るわ……でも、攻撃の正体が分かった所で、貴女では勝てない。」


其れはレオナの攻撃の正体を見切ったからだが、それでもレオナは動じることなく、フェイトに『勝てない』と告げると、更に攻撃を激しくして攻
め立てる。
無論フェイトも、今度は避けずにバルディッシュで応戦する。此処からは、レオナの手刀とフェイトのバルディッシュによる剣戟だ。


「私では勝てないって……大きく出たね?」

「貴女を見くびってる訳ではないわ。貴女は確かに強い――だけど、『今のままの貴女』では、私を倒す事は無理。良くて、時間切れの引き分
 けと言う所。」

「此の試合は、貴女の力を見る物だから、私が勝つ必要って言うのは無いんだけど……其処まで言われたら、本気を出さないと失礼だね?」


此処でフェイトはギアをマックスまで上げ、最高速度でレオナに攻撃を仕掛けていく。
管理局内で『雷神』とまで言われるフェイトの最高速度は、真・ソニックを発動してない状態であっても軽く音速を超えるレベルだけに、常人が
付いていけるレベルではない。

現にレオナも、フェイトのマックススピードには反応できても付いて行くことは出来ず、攻撃を喰らっているのだから。


「この素早さは凄い……此れが貴方の本気。
 頼る心算は無かったけれど、このスピードについて行くには使わないと無理みたいね……」


――轟!!!


其れを不利と見たレオナは、己の意志で自らに眠るオロチの力を解放し、其の力を引き出す。
瞬間、レオナの髪と瞳は赤く染まり、攻撃力と移動速度が大幅に上昇し、フェイトのマックススピードについて行くようになった――オロチの力
とは、かくも凄まじい物なのだ。


「私の本気のスピードについて来るって……!」

「貴女のスピードは凄まじい……だから、力を使った。――そして、これで終わり。」


――ガスゥ!!


言うが早いか、レオナはカチあげ式のエルボーでフェイトのガードを上げると、流れるような動作でストライクアーチに繋ぎ……


「さよなら……」


――ガッ!!ズバァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


トドメにVスラッシャーを叩き込む!
攻撃力と素早さは六課でも最強クラスのフェイトだが、逆に防御力に関しては最低レベル故に、此の連続技を真面に喰らってしまっては堪ら
ないだろう。
それでも、KO判定になっていないのは、流石と言う所だろうが。


「……まだやる?」

「ううん、此れで充分――貴女は強いねレオナ……貴女が味方だと、とても頼もしいよ。」

「貴女もとても強かった。
 そして、教えられた。頼る心算は無くても、制御出来る力なら、時には頼る事も必要だって。」


だが、此処でフェイトが降参。
と言うよりは、レオナの実力は分かったので、これ以上の戦闘は必要ないと判断したのだろう。この辺もまた、フェイトの人柄が分かる判断で
あると言えるだろう。

レオナvsフェイトの戦いは、レオナの優勢勝ちと言った結果で幕を閉じた。








――――――








そして、試験の最終戦である、京vsシグナムは、試合が始まる前から、京もシグナムも闘気がマックスレベルに高まっていた。
京からは紅蓮の炎が、シグナムからは真紅の炎が上がっているように見えるのだから――京もシグナムも、相当に気合が入っているようだ。


――ボッ!


そんな中で、試合開始前にもかかわらず、京はシグナムの鼻先をかすめるように炎を飛ばす……が、シグナムは動じない。


「……此の程度じゃ動じないか――本気で行くぜ!!」

「受けて立とう!来い、草薙!!」

「京vsシグナム!This is gonna be a match to remember!Go Fight!!」


――推奨BGM:ESAKA Ver.KOF'98


はやての号令と共に試合開始!!
京もシグナムも、互いに切り込み、剣戟の如き攻防を繰り広げて行く――それこそ、この戦いは近接型の魔導師には良い資料になるだろう。
その戦闘で先手を取ったのは京だ。
肘打ちから、裏拳、轟斧 陽へと続く連続技でシグナムから先手を取ったのだ。


「あめぇな?」

「ふ、本気を出せ!」

「……燃やすぜ!!」


だが、攻め込まれたシグナムもまた、その攻撃を全て点をずらす事でダメージを最小限に留め、もっと打って来いと京を軽く挑発する余裕。
其れに応えるかのように、京は指先で炎を弾けさせると、再び猛ラッシュを開始!其れも、今度は全力を出した超絶ラッシュ攻撃をだ。
加えて、此のラッシュは一切の無駄のないフットワークを持って繰り出されている為に、止めるのが非常に難しい――KOFを何度も制覇してい
る京の強さは、此のフットワークにあると言う専門家も居る位だ。


「見事な動きだな草薙?お前ほどの奴は、中々居ないぞ?」

「お褒めに預かり光栄だが、其れを的確に防いでるアンタも相当だと思うけどなシグナム。」


それでも直撃を許さないシグナムもまた、軽快なフットワークで京の攻撃を防御し、受け流しているのだ――が、此処で京が動いた。


「オラ!!」


此れまでの打撃ラッシュから、行き成りシグナムの胸倉を掴んだかと思うと、其のまま強引に一刹背負い投げをブチかましてシグナムを強制
的にダウンさせ、更に起き上がりに重ねるように奈落落としを繰り出す。


「させん!」


その奈落落としはガードしたシグナムだが、京は着地と同時に八拾八式で足元を払い体勢を崩し、其処から七拾五式・改へと繋いで……


「ボディが、お留守だぜ!!」


荒咬み→九傷→七瀬の連携でシグナムを吹き飛ばす。
京のお得意コンボを喰らったら、流石のシグナムでもただでは済まないだろうが、そう簡単にやられないのが歴戦の騎士だ。


「今の攻撃、申し分ない。ならば、その礼をせねばな。」


吹き飛ばされながらも、レヴァンティンをシュランゲフォルムにすると、チェーンエッジを京の腕に巻き付け、自分が吹き飛ばされた勢いを利用し
て、強引に自分の元へと引き寄せる。


「うお!?マジかオイ!?」

「先程の礼だ!」


其処から、袈裟斬り→払い斬り→横蹴り→穿空牙へと繋げて――


「紫電一閃!」


斬り上げから紫電一閃で京を斬り飛ばす。


飛竜一閃!!

「おぉぉぉ……喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


更に追撃として飛竜一閃を放つが、京は空中転身で体勢を立て直すと、大蛇薙で此れを迎撃!!
紅蓮の炎と、真紅の炎がぶつかり合って弩派手に爆破炎上し、演習場の床全体に罅や亀裂が入り、場所によってはコンクリートが完全に吹
っ飛んでいる……はやての始末書は確定だろう。

だが、戦っている2人にそんな物は関係ない。


「うおぉぉりゃぁぁぁ……燃えろぉ!!!」


爆炎が晴れると同時に、京がシグナムを琴月 陽で燃やせば――


「舐めるなぁ!煌龍!!」


シグナムも煌龍で反撃し、京に強烈な炎を浴びせる。
正に一進一退の攻防――おまけに互いに炎使いであるが故に、普段ならば必殺となる攻撃が炎耐性のせいで効果が薄いのである。
だからこその削り合いなのだが、京にもシグナムにも焦りは微塵もない。それどころか2人とも戦いながら、顔には笑みが浮かんでいるのだ。


「よもやこれ程とは……これ程心躍る戦いは、高町と一対一で戦った時以来だぞ草薙!」

「アンタも大したもんだぜシグナム?
 アンタほどの力があれば、KOFの決勝本戦でも活躍できると思うぜ?――アンタの実力はテリーや紅丸と同等か、それ以上だからな!!」


其れは強者と戦える事に歓喜する笑みだ。
京もシグナムも、この戦いを楽しんでいるのである――だから、攻防はどんどん激しくなっていく。
だが、其れは同時に決定打に欠ける事でもあり、時間だけが経過する。


「残り3分!」


互いに決め手を欠いたまま、残り時間は3分を切った。
まぁ、此の試合の内容だけを見るならば京の実力はシグナムと同等以上だと言うのは示されたのだから、採用は間違いないだろうが、そんな
物とは別に、時間切れ引き分けを良しとするような京とシグナムではない。

だからこそシグナムは先に仕掛けた。


「セイ!!」

「ちぃ!!」


強烈な横蹴りで、京をガードごと吹き飛ばすと、すぐさまレヴァンティンをボーゲンフォルムに換装して、狙いを定める。


翔けよ、隼!

『Sturmfalken.』


放たれた矢は、炎の隼となって京に直撃し大爆発!!
如何に炎使いとは言え、此れだけの一撃を喰らったら無事では済まないだろう――シュツルムファルケンは、かつて闇の書の闇の防壁を貫
いた程のモノなのだから。

此れには、流石に終わったかと誰もが思った――スバルを除いて。


「京兄は、まだ負けてないよ。」

「はぁ?何言ってんだスバル?シグナムさんの一撃、完璧に決まっただろうが!」

「うん。だけど、京兄はまだ終わってない。」


そのスバルのセリフに呼応するかのように、爆炎がその勢いを無くし、一点に向かって収束していく――まるで、なのはがブレイカーを放つ為
に魔力を収束したが如くに。
その収束の中心点に居たのは京。炎は、京に向かって集まって居たのだ。


「良い炎だった……見せて貰ったぜシグナム、アンタの力をな。
 だから今度は俺が見せてやるぜ、俺の力を!――否、見せてやる、草薙の拳を!!


炎の中から現れた京は不敵に笑うと、気合一発、草薙流の神技である『最終決戦奥義・無式』を発動!
巨大な火柱で攻撃し、更に自身を炎で包み込むと、多段式の毒咬み→罪詠み→罰詠み→鬼焼きの連続攻撃を叩き込んでシグナムを文字通
り燃やす!!

如何にシグナムと言えども、此れを真面に喰らっては堪らない。
KOされなかったのは流石だが、騎士服の上着は消し飛び、インナーとスカートもボロボロになっているのを見れば、無式がどれだけ凄まじい
威力であったのかが伺われるだろう。


「タイムオーバー!其処までや!!」


だが、此処でタイムアップ。
結果は引き分けだが、京の力は存分に示されたと言える――六課屈指の強者であるシグナムと、寧ろ押し気味で引き分けたのだから。


「へへ、燃えたろ?」

「あぁ、存分に燃えさせて貰った――今回は勝ちを譲るが、次はこうは行かんぞ草薙?」

「上等だ、何時でも相手になってやるよ。ま、アンタとの戦いは楽しかったから、俺としても望むところだけどな。」


京とシグナム、2人の炎使いの戦いは、後に管理局で伝説と謳われるバトルになったのだった。








――――――








Side:京


ふぅ……何とか終わったな。
相手をKOしたのはテリーだけだが……俺達の力は如何だい、はやて?少なくとも、アンタ等にとってマイナスになる物じゃねぇと思うけどな?



「マイナスどころか、超絶プラスやで此れは!!
 KO判定取ったんはテリーさんだけやけど、ロック君もレオナちゃんも京さんも、ホンマトンでもないで!?てか、フェイトちゃんのスピードに付
 いてくレオナちゃんに、シグナムと同等以上にやり合う京さんは何モンやねーん!!!
 此れはもう問答無用で合格や!誰が何と言おうと、部隊長権限で合格決定!異論は認めるけど、全部無視して空の彼方に蹴り飛ばす!」

「トンでもねぇ暴論だなオイ。」

だけどまぁ、合格ってんなら良かったぜ。
アレだけやって不合格ってのは、幾ら何でも笑えねぇし、此処で合格しなかったら、スバルがガッカリしちまうだろうからな。
ともあれ、全員合格って事で、此れからは同じチームの仲間だから宜しく頼むぜスバル、ノーヴェ!



「うん!よろしくね、京兄!」

「ま、アンタが味方なら頼もしいか……宜しくな、京!それと、テリーさんと、ロックさんと、レオナさんもな。」



此れで、新生機動六課って所だな?――此処からは、俺達含めた此のメンバーでチームだから、息を合わせてバッチリ行こうぜ!!













 To Be Continued…