Side:京
嘱託になるための試験てのが、模擬戦だけってのは、正直助かったぜ。
筆記試験があっても落ちる気はねぇが、流石にこの世界の歴史的な事が問題で出て来たら、答える事は出来ねぇ……つーか、先ず無理だと
思うからな。
だが、模擬戦での実技試験ってんなら話は別だ。――戦いなら、俺達の本来の力をタップリと発揮する事が出来るからな!!
「ほなら、この模擬戦に出るんは、フェイトちゃんに、シグナムとヴィータ、其れとザフィーラやな。」
「ちょ、何で私じゃないのはやてちゃん!?」
「なのはちゃんが出張ったら、遠距離から大量破壊兵器並みの砲撃をバカスカ撃ちまくって終わってまうやろ!
京さん達は格闘家なんやで?昨日提出された記録映像を見る限り、多少の飛び道具は使えるみたいやけど、基本はクロスレンジでの格闘
やろが!その真価を発揮させんとドナイすんの!
って言うかなぁ、なのはちゃんはノッてくると手加減できんようになって、模擬戦でも本気になるやん!ぶっちゃけ、なのはちゃんが模擬戦や
る度に施設が半壊して、私に要らん始末書が回って来るんやボゲェ!!」
「え?そうだったの?……それなら、言ってくれれば私がちゃんと処理(始末書を物理的に消滅)するのに。」
「そんな思考やから、私が処理せんとアカンのやろうが~~~!!だから魔王とか言われるんや、なのはちゃんは!!!」
「てへ♪」
「褒めとらんわ、ドアホーーーーー!!!」
……何だか良く分からねぇが、あのなのはってのは、可愛い顔して相当な危険人物みてぇだな?――後で、スバルにどんな奴か聞いとくか。
それにしても、アンタも苦労するなはやて?……上に立つ者ってのは、部下の管理もしないとだから、大変って事が良く分かったぜ。
リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round7
『此れがKOF出場者の実力也!』
んで、その模擬戦場に来た訳なんだが……誰が誰と戦うかとかは決まってんのかはやて?俺は、別に誰が相手でも構わねぇけどよ?
だが、決まってねぇってんなら、ロックの相手はその犬耳の大男にしてやってくれないか?
「ザフィーラは犬よのうて、狼なんやけど……何でロック君の相手を指定?フェイトちゃんとかが相手じゃアカンの?」
「は、恥ずかしい話なんだけど、女の人ってあんまり得意じゃないし、子供を相手に戦うのも同じ位苦手なんだよ俺……相手が、こっちと完全
に敵対してる奴なら話は別なんだけどな。
でも、命のやり取りじゃない『試合』で戦うのは……苦手だな。」
「ま、つまりそう言う訳だ。
ロックがこうなっちまったのは、大体俺のせいだから、何とか克服させようと思ってるんだが……中々道は遠くてな。」
「あ~~~……何となく分かったわ。女の子に免疫のない純情少年て事なんやね。
せやったら了解や。こっちとしても、嘱託として迎え入れようとしとる人の本当の実力を見る事が出来へんていうんは、有り難くないからな。」
手間かけさせて悪いな。
まぁ、ロックの相手は犬……じゃなくて、狼男で決定したが残りは如何する?いっその事、くじ引きやコイントス、何ならじゃんけんでもやって決
めちまうか?
「主はやて、少し宜しいでしょうか?」
「ん?どないしたシグナム?」
「彼の――草薙京の相手は、私に務めさせて頂けませんでしょうか?」
「へぇ?俺を御指名かい?」
ピンクのポニテ……シグナムだったか?
コイツは、模擬戦の相手として選ばれた4人の中では一番強いのは間違いねぇ……てか、一対一の戦いでは恐らく敵なしって所だろ絶対?
そんな奴に指名されるとは光栄だね。
「昨日の記録映像を見た時から、お前は相当の手練れだと思っていたのだが、我が剣がお前の闘気を感じ取ってな。
レヴァンティンが反応する程の巨大な闘気は、復活したテスタロッサ以来10年ぶりなのでな……是非ともお前と戦ってみたくなったのだ。」
「威勢は良いみたいだが……火傷しても知らねぇからな?」
「安心しろ、私とて炎の扱いには慣れているのでな。」
――ボウ!
炎の剣……成程、アンタも炎を使う訳か――しかも、あの野郎と違って真紅の炎だから親近感も沸くってモンだ。
良いぜ、その誘い受けてやるよ。……何よりも、炎使いから戦いを挑まれたとなったら、草薙流の継承者としても無視は出来ねぇからよ!!
「あ~~……ほな、京さんの相手はシグナムで決定やね。
となるとレオナちゃんとテリーさんは……」
「テリー・ボガード、其方の子供は貴方に任せる。」
「はぁ!?って言うか何で!?」
「教官から、子供に暗殺術は使っちゃダメって言われてるから。」
……悩む事もなく決まっちまったなはやて。レオナがフェイトで、テリーがヴィータだ。
とりあえずハイデルン、子供に暗殺術はダメってのは当然だが…それ以前に、保護した孤児に、普通は暗殺術を叩き込んだりしねぇからな?
まぁ、あのヴィータってのも、見てくれはガキだが、多分パワーだけなら大門に勝るとも劣らない感じがするから、相当な奴だとは思うけどよ。
取り敢えず対戦相手は決まったから、後は戦う順番だな。
「それについては大丈夫やで?組み合わせが決まってから試合順決める心算やったから、こうして割りばしくじ作って来たんや。
京さん達に引いて貰って、割りばしの先に書かれてる数字順に試合って事でな?」
「準備が良いな。――そんじゃまぁ、くじを引くか。」
で、クジの結果
・第1試合:ロックvsザフィーラ
・第2試合:テリーvsヴィータ
・第3試合:レオナvsフェイト
・第4試合:俺vsシグナム
となったか。
其れではやて、模擬戦のルールとかはあるのか?
「目潰しと、男子への禁的以外は何でもアリやけど、この模擬戦にはインターミドルで使われとるDSAAルールを適用すんで。
ライフカウンターは設定せんで、疑似ダメージシミュレーターであるクラッシュエミュレートのみを使った特殊ルールやけどね。
試合時間は10分で、相手をKOするか、相手がギブアップしたら其処で終了。延長戦は無しや。
其れから、試験官は飛行禁止な。ジャンプはえぇけど飛行はアカンよ。」
「まぁ、飛んじまったら間合い外から攻撃しまくれるから当然か。」
流石に空を飛ばれちまったらどうしようもねぇからな。
しかしDSAAとはな……前の時にクイントさんが教えてくれたアレか。
其れにクラッシュエミュレートか……実際に骨が折れてなくても、骨折確実の攻撃を受けると、疑似ダメージが発生するって言うアレだよな?
此れは、模擬戦でも気が抜けないぜ。
目指すは全員合格だ。KOF常連の実力ってのを見せてやろうじゃねぇか?――行くぜ!!!
――――――
No Side
こうして始まった、嘱託採用の為の模擬戦。
其の1回戦は、ロックvsザフィーラ。2人とも既にフィールドに移動して、準備は万端と言った所だ。闘気も高まり、後は試合開始を待つだけだ。
「盾の守護獣、参る!!」
「手加減なしで頼むぞ?……限界まで、飛ばすぜ!!」
「それでは、試合開始!!」
――推奨BGM:Spread The Wings
――轟!!
はやての、試合開始の合図とともに、闘気が弾け、ロックとザフィーラは互いに一足飛びで間合いを詰めて、行き成りの格闘戦に入って行く。
ロックのハードエッジに対して、ザフィーラが拳を繰り出して、其れが相討ちになって互いに仰け反るが、すぐさま体勢を立て直して、今度はロ
ックのアッパーと、ザフィーラのフックがぶつかる。
その衝撃で再び仰け反り……今度は間合いも離れる。
「烈風拳!」
間合いが離れた事を確認したロックは、すぐさま烈風拳を繰り出し、体勢を立て直し切っていないザフィーラを攻撃する。
だが、其処は盾の守護獣、避けるのが無理と判断するや否や、烈鋼襲牙で烈風拳を打ち返し、更に自身の魔力弾を飛ばしてカウンターを仕
掛ける。
「ち、マジか?ダブル烈風拳!!」
このカウンターにはロックも驚いたが、ダブル烈風拳・改を放つ事で此れを相殺。
其のまま間合いを詰め、再びクロスレンジの格闘戦を挑む――ザフィーラに対しての飛び道具は、牽制にもならないと考えたのだろう。
其れは確かに間違いではないが、ザフィーラもまたクロスレンジの格闘戦を得意とする故に、ロックの攻撃を巧みにガードして決定打を与えさ
せない。
「烈風拳打ち返して来ただけじゃなく、ディフェンドタクティクスも相当なもんだな?アンタのガードをこじ開けるのは大変そうだ。
だけど、守ってばかりじゃ相手を倒す事は出来ないぜ?」
「無論承知……では、攻めさせて貰うとしようか?……滅牙!」
「うお!?」
そして、此処でザフィーラが攻勢に転じた。
カウンター気味に滅牙を繰り出し、ロックを吹き飛ばす!更に、吹き飛んだロックを牙獣走破で追撃し、一気にダメージを与える事に成功した。
「ったく……でかい図体してるだけあって効いたぜ……だが、そう簡単にはやられるかよ!!」
「ぬぅ!」
だが、ロックとて格闘家としては最高の血と技を受け継いでいるだけに簡単にはやられない。
ザフィーラの更なる攻撃を、クラックカウンターで切り返してラッシュを止めると、流れるような動作で真空投げで放り投げて、ライジングタックル
で追撃し、更に空中で掴んで地面に向かって投げつける。
「縛れ、鋼の軛!!」
可成りのダメージを受けた筈だが、ザフィーラは降下中のロックに対して鋼の軛を発動!
地面から生えた、無数の魔力の棘がロックを襲い、ダメージを与える……尤も、体を捻るなどして直撃をギリギリで避けたロックも大した物だと
言えるのだが。
とは言え、クラッシュエミュレートで多数の裂傷を負ったロックはキツイだろう。
裂傷判定という事は、同時に出血判定でもあり、其れが多数ともなれば試合が進むと共に流血過多判定になり動きに影響が出るのだから。
「……強いな、アンタ。」
そうであるにも拘らず、ロックの顔には笑みが浮かんでいた。
自分の受けたダメージなど関係ない、目の前の相手が強者であった事を悦ぶ格闘家としての笑みと、戦う相手を見つけた餓狼の如き獰猛な
笑みが混ざった笑みを。
そして、この笑みに、ザフィーラの中に眠る狼の本能が反応した。
「お前の強さも中々のモノだ……来い、ロック・ハワード!」
寡黙で、表情もあまり変わらないザフィーラが、獣特有の獰猛な笑みを浮かべてロックを手招きしたのだ。
此れには、観戦していた六課のメンバー誰もが驚いた。スバル達新人は勿論の事、10年来の付き合いとなるなのはとフェイト、彼の主である
はやてだってザフィーラのこんな顔を見た事が無かったし、最も古い付き合いである守護騎士達だって、ザフィーラの獰猛な笑みなど、片手で
足りる位しか見た事はないのだから。
其れを引き出した、ロックの力は相当なモノなのだろうが、戦っている2人にそんな事は関係ない!互いに拳を、蹴りを繰り出しガンガン打ち
合って行く。
そんな中で……
「喰らいな……」
ロックが、そう呟いた次の瞬間――
――ガスゥ!!
「ガハ…!!」
ザフィーラのボディに、ロックの拳が突き刺さった。
間合いが離れ、距離にして2~3mは離れてた筈なのに、ロックの姿が行き成りザフィーラの視界から消えて、強烈な拳打を打ち込んだのだ。
テリーをして『初見で見切る事は出来ない』と言ったシャインナックルが、ザフィーラに突き刺さったのだ。
通常ならば、此処から、肘打ち→ライジングタックルへと繋ぐのだが、今回ロックは肘打ちまでで攻撃を止め……
「デッドリーレェェイブ!!」
其処からデッドリーレイブを発動!
流れるような動作で合計9発の拳打と蹴撃を叩き込み、締めに両手から気功波を放ってザフィーラを吹っ飛ばす――が、此れで終わりではな
いのだ今日のロックは。
「レイジング……ストォォォォォォォォム!!!」
駄目押しとばかりに、レイジングストームをブチかまし、ザフィーラにダメージを叩き込む。
ザフィーラに此れだけのダメージを叩き込む事が出来る存在が果たしてどれだけいるかは疑問だが、此れだけの攻撃を受けて尚KO判定にな
って居ないのは、流石は盾の守護獣と言った所だろう。
「此れでも倒れねぇのか……ドンだけタフだってんだよアンタ?」
「私は盾の守護獣……例え千の刃と矢を受けても倒れる事はない――そして、この拳は守るためにあるのだからな。」
「守るための拳か……ギースに聞かせてやりたいぜ。――でも、其れは其れとして、まだ行けるだろ?」
「無論だ、来い!」
再度構え、再び激突せんとする両者だが――
「はい、タイムア~~ップ!試合終了やで!!」
此処でタイムアップ。
延長戦がない以上、ロックとザフィーラの試合は此処までだ――クラッシュエミュレートが解除されると、ダメージがなかった事に成るのがロッ
クにとっては少々不思議な事だった様だが。
「決着付かずか……コイツは、就職は危ういかな?」
「いや、大丈夫だろう……決着はつかずとも、お前の実力は六課の皆に示された――其れを、主が斬り捨てるとは思えぬからな。」
「そうなのか?……まぁ、不合格にならないんなら何でもいいさ。
だがザフィーラ、アンタとの戦い……楽しかったぜ?――機会があれば、また戦ってくれよ。」
「うむ、私の方からもお願いしたい所だ。」
取り敢えず1回戦は終了。
時間切れではあったが、実力者であるザフィーラと互角以上に戦ったロックの六課採用は、まず間違いないだろう。
――――――
そして模擬戦2試合目を戦うのは――
「Come on!Get serious!!」
「誰であろうとブッ飛ばす!模擬戦だからって、手加減しねぇからな!!」
テリーとヴィータだ。
――推奨BGM:Sunrise On The Train
だが、此の2人の戦いは、ロックvsザフィーラとは全く異なる様相を呈していた。
試合開始直後に、テリーのバーンナックルと、ヴィータのラケーテンハンマーがかち合ったのは、ロックvsザフィーラの開幕と同じ展開だが、此
の戦いは此処からが違った――と言うよりも、異なるしかなかったのだ。
確かにテリーとヴィータの攻撃はかち合ったが、互角に弾ける事は無く、ヴィータの方が一方的に後退させられてしまったのだ。
別にヴィータがテリーに劣っていた訳ではない――寧ろ単純なパワーだけで言うのならば、ヴィータの其れはテリーを大きく上回っていると言
っても過言ではないだろう。
ならばなぜ打ち負けたのか?――答えは簡単だ、テリーとヴィータには圧倒的な体格差があったからだ。
如何に途轍もないパワーを有するとは言え、ヴィータの身体は子供の其れであり、テリーとの体格差は、身長で52cm、体重で55kgもあるの
だから、真っ向からぶつかったら押し負けてしまうのも仕方ないのだ。
そして、この圧倒的な体格差が、ヴィータに本来の力を発揮させてくれない原因となっていたのだ。
アイゼンを使っても尚、ギリギリの間合いにしかならないが故に、相手の有効間合いに入って行かなければならない上に、テリーの天性の格
闘センスがヴィータの間合いを潰した上で、己の有効間合いを保っているのだから。
だが、其れでもヴィータは天性の負けず嫌いなので、徹底的にテリーに喰らい付いて行く!
「お?お?おぉ!?……Ha-ha、やるじゃないか、Pretty Girl!」
「やろ、馬鹿にすんじゃねぇ!!」
「馬鹿になんてしてないさ……お前さんみたいなのが、此れだけのパワーを持ってるって事に、素直に驚いてるんだぜ?
尤も、そのパワーを確実に相手にブチかます策ってのを考える必要があるだろうけどな。」
その様は、地域のお転婆娘が、お兄ちゃんにぶつかって行く様を連想させる。――此れも、子供との交流が多いテリーだからこそなのだろう。
もっと言うのならば、如何に古代ベルカの騎士であっても、パワーに物を言わせた直線的な戦い方では、百戦錬磨のテリーには敵わないと言
う事なのだろう。
だからこそ、幕切れもまた唐突だった。
「Are you OK?Buster Wolf!!」
「!?」
ヴィータの攻撃の隙を突いて、バスターウルフが炸裂し……
「Live Wire!Go Barn!!!」
――ドゴォォォォォォン!!!
追撃に、パワーゲイザーが炸裂!!
如何に守護騎士と言えども、子供の身体であるヴィータに、此のダメージは大きすぎる――カウンター気味に炸裂した事もあって、このコンボ
でヴィータの意識は刈り取られてKO。
この結果は、さっきのロックvsザフィーラ以上の衝撃を、六課のメンバーに与える結果になったのだった。
――――――
Side:京
ロックは時間切れで、テリーはKO勝ちか……ま、ロックは押し気味の時間切れだから、多分合格になるだろうし、テリーの合格は確実だぜ。
となると、残った俺達が不合格ってのは、ちょっとカッコ悪いよな、レオナ?
「格好悪いの?」
「負けたら任務失敗だぜ?」
「……其れは、確かに駄目ね。任務は確実に遂行してこそだわ。」
だろ?
だから、俺とお前も合格しなくちゃだからな……戦力で行くぜ!!
俺の相手のシグナムと、レオナの相手のフェイトは、可成りの使い手なのは間違いねぇが、相手が誰であろうと、立ち塞がるなら払うだけだ。
まぁ、楽しみにしてな?――見せてやる、草薙の拳を!!
To Be Continued… 
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