Side:京


んん……朝か――昨日はゲンヤとしこたま飲んで、其のまま寝ちまったんだっけか?
ベッドに寝てるって事は、クイントさんがあてがってくれた部屋に戻っては来たみたいだが、正直言ってどうやって戻って来たかも覚えてねぇん
だよな……深酒は禁物だなマジで。

時間は……7時か。そろそろ起きないとだな。――って、動けねぇぞ?
金縛りって訳でもねぇんだろうが、だとしたら何で――成程、そう言うカラクリか。



「Zzz………」

「すぅすぅ……」



両脇からスバルとギンガが抱き付いてた訳か……流石に此れじゃ身動きできねぇ訳だぜ。――てかよ、年頃の娘が男のベッドに入り込むって
のは如何なんだ?色々問題がある気がするんだが……


「お兄ちゃん……」

「兄さん……」


今回に限っては、ソイツは不問にしとくか。スバルもギンガも、とっても幸せそうな顔で寝てやがるからな。
とは言っても此のままって訳にもいかねぇから、スバルとギンガを起こさないように、ベッドを抜け出して……よし、此れで大丈夫って所だぜ。
さてと、少しくらいはクイントさんを手伝うか。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round6
『六課に集うはKOFの実力者也』











てな訳でリビングに来たんだが……何してんだロック?



「見て分かれよ、クイントを手伝ってるんだ。
 朝飯の準備を手伝っても罰は当たらないし、これからしばらく厄介になるんだから、此れ位の事はしないとな?タダ飯ってのはダメだろ?」

「ご立派な考え方だな――まぁ、俺もクイントさんを手伝う心算で来たから彼是言えねぇけどよ。
 んで、テリーは如何してんだ?」

「まだ寝てる……一応声をかけたんだが、聞いてたとは思えないな……返事だけして、また寝た可能性も0じゃないんじゃないか?」



その可能性がマジで否定できねぇ……二十歳で高校生の俺が言う事でもねぇが、テリーは一歩間違ったら確実に社会不適合者じゃねぇか!
ギースの野郎を打っ倒して、サウスタウンの英雄になったとは言え、テリーの本質は変わらねぇか。

其れじゃあロック、クイントさんの手伝いは俺が引き継ぐから、お前は改めてテリーを起こして来てくれ……場合によっては、超必殺技を使う事
も許可するぜ……其れでテリーが目を覚ますのならな。



「了解した……限界まで、飛ばすぜ!!」



はぁ、ホントにテリーとロックは親子同然だな?ダメ親父に苦労する出来た息子って感じがしなくもねぇけどよ。
さてとクイントさん、何か手伝う事はあるか?味噌汁位なら俺でも作れるから、手伝ってほしい事があったら言ってくれよな?それとも、殆どロ
ックがやっちまって、俺の仕事は残ってねぇか?



「そんな事はないわよ京君。冷蔵庫に水切りした豆腐が2丁入ってるから、それを人数分に分けて、ネギとおろし生姜と鰹節をかけてくれる?」

「冷奴か、良いねぇ?豆腐の一番旨い喰い方だからな――アンタ、割と和食の事分かってるよな?」

「ゲンヤさんが地球出身だから、色々教えて貰ったのよ。取り敢えず豆腐におからに納豆と、大豆食品は大分偉大だと思うわね。」



ソイツは否定しねぇな。てか、俺的に朝は納豆と焼き魚がデフォだからな。
あ、でも納豆は今回は如何だろう?俺は好物だが、アメリカ人のテリーとロックは抵抗あるかも知れねぇ……最近は納豆好きの外国人も居る
みたいではあるけどな。



「テリーは兎も角、俺は納豆は大丈夫だぜ京。
 前に日本を訪れた時に、テリーの弟のアンディさんに納豆スパゲッティを御馳走になったことがあってな、独特の粘りと匂いはあったが、割と
 美味かったからさ。」

「なんだ、お前は納豆平気だったのかロック……で、目覚めは如何だテリー?」

「……刺激的な目覚ましだった。まさか、レイジングストームで起こされるとは思ってなかったぜ……」

「普通に揺さぶっても起きねぇんだから仕方ねぇだろテリー?デッドリーレイブかまさなかっただけ良いと思えよな?」

「あぁ、アレは出来れば喰らいたくないからな。」



ガチで起こす為に超必殺技使ったのかよロック……俺としては冗談の心算だったんだけどな。――其れ喰らって、ケロッとしてるテリーも大概
だとは思うけどよ。
そんで、お前等も漸くお目覚めか?おはようさん、寝坊助。



「あふ……はよぉ、お兄ちゃん……」

「おはよう……ございます……兄さん。」

「おはよー……京。」



ったく、スバルもギンガもノーヴェも、先ずは顔洗って完全に目を覚まして来いよ。
てか半分眠ってるじゃねぇかお前等……そろそろ朝飯が出来るから、マジで目を覚まして来い――1人30秒以内!!よーい、スタート!!!



――ダッ!!!



……で飛び出していきやがった。意外と乗り良いなアイツ等。


で、全員が30秒以内に戻って来たんだから大したもんだぜ……スバル達も、中々にオーバースペックなのかも知れねぇぜ――まぁ、最強クラ
スと言えるクイントさんの娘だから、ある意味で納得だけどな。

そんなこんなで朝飯って訳だが……如何したゲンヤ?何か通信があったみたいだが……



「まぁ、急ぎの用じゃないからアレなんだが、八神の嬢ちゃんが昨日の夜に次元漂流者を保護したらしいんだ。
 其れで、事情聴取を行った所、如何にも京、お前さんと同じ世界からやって来た可能性が浮上したらしくてな……出勤したら、司令室にお前
 さんを連れて来てくれって事だったんだよ。」

「総司令さんからの通信……其れに俺と同じ世界から来た奴か――ゲンヤ、ソイツの性別は聞いたか?」

「ん?確か女だった筈だぜ?八神の嬢ちゃんが『あの胸、羨ましいわ』とか言ってた事からしても、女で間違いねぇだろ?女が野郎の胸板に嫉
 妬する事はねぇだろうからな。」



そんな奴が居たら間違いなく変態だろオイ。
でも、そうなるとソイツはレオナである可能性は高いな?……オロチの力を制御した存在ってのは宇宙にとって大切な存在だから、レオナが
次元震に巻き込まれ、向こうの世界にもう一人のレオナが生まれた事は否定出来ねぇけど。
まぁ、時空管理局に行けば全てが明らかになるだろうから、此処で彼是考えるのは、下手な考え休むに似たりだぜ――そんな事より、クイント
さん、飯お代わり。



「はいはい~~い、遠慮しないでどんどん食べてね?御飯もたくさん炊いておいたから♪」

「「私もお代わり!!」」

「お、朝から食欲があるのは良い事だぜ2人とも!其れで何杯目のライスだい?」

「「5杯目!」」

「え゛?」

「……京。」



あぁ、聞かなかった事にしよう。細身のクセに、随分と食うんだなスバルとギンガは?ノーヴェはそうでもないみてぇだけど。
だがまぁ、食は身体の基本だし、そんだけ食ってんのに太ってねぇってんなら、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが良いって事だからな。
其れに、飯が美味く食えるってのは一番大事だからな。



「確かに、スバルとギンガは、グルメ番組にも出演できるかもって位に美味そうに食べるからなぁ?実際、母さんの飯は超旨いけどさ。」

「うんうん、管理局の食堂も悪くないけど、やっぱりお母さんの御飯が一番だからね♪――あ、そうだお兄ちゃん、お願いがあるんだけど……」



お袋の味は偉大ってか……で、お願いって何だよスバル?
遠慮しないで言ってみな。八神と仲良くしろとか、真吾に炎を出させろとか、そう言う実現不可能な物じゃ無ければ聞いてやるからさ。



「えっと……それじゃあ、『京兄』って呼んでも良い?」

「何だよ、そんな事か?別に構わねぇよ。てか、好きに呼べって。――良い機会だから、いっそロックの事を『ロッ君』と呼ぶのは如何だろう?」

「其れは止めてくれ、割とマジで。」



冗談だよ。お前のイメージじゃねぇしな。……まぁ、八神の事を『いおりん』て呼ぶよりは大分マシだが…やべ、自分で言って寒気して来たぜ。
取り敢えず、飯食っちまうか。
昨日の今日だが、あの総司令の事だから、俺達が六課に嘱託として出向く準備なんかは出来てるだろうし、俺達とは別に保護された次元漂
流者の事も気になるからな……食ったら速攻で管理局にだな。



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んで管理局。
此処までは、ゲンヤが運転する車で来た――俺以外は。
俺はと言うと、バイクで此処まで来た訳だ。どう言う訳か、と言うか何を想定したのか、クイントさんが『俺が戻って来た時の為に購入してた』バ
イクでな。
バイクそのものは欲しかったし、ある程度金が溜まったら買おうかと思ってたからありがったけどよ……今度、クイントさんに何か礼しねぇとな。

ギンガとゲンヤは六課勤務じゃないからロビーで分かれて、そんでスバルとノーヴェと一緒に司令室にか……てか、俺達の引率を娘2人に任
せていいのよゲンヤ?……そんだけ、スバルとノーヴェの事を信頼してるって事なんだろうけどな。
まぁいいや。おい、入るぜはやて!



「うわっと!ちょっと、ノック位してくれへんか京さん!流石に行き成りは驚くわぁ……てか、私が居なかったらドナイすんねん!」

「居るって分かったからノックしなかったんだよ。
 部屋の中からお前の気配がしたからな?……それと、お前の気配もな。」

「草薙京、テリー・ボガード、ロック・ハワード?……貴方達も此処に来ていたの?」



大体予想はしてたが、ヤッパリ次元漂流者ってのはお前だったかレオナ。
次元震に巻き込まれたのは災難だったが、こうなっちまった以上はしょうがねぇから、仲良くやろうぜ?俺達は、こっちの住人になったからな。



「如何言う事?……元の世界には、戻れないの?」

「ま、ソイツは今から説明してやるよ。」








――レオナに説明中だ、少し待ってろ。……つか、コイツ理解力たけぇなオイ。







つ~訳だ、分かったか?



「大丈夫、理解した。
 教官や大佐、中尉ともう会えないのは寂しいけれど、此れが私の生きる道なのだというのならば、それを懸命に生きてみる事にするわ。
 大佐からも、『運命なんてクソ喰らえだ!テメェの人生は、テメェのモンだ!テメェの生きる道を生きてなんぼだ!』って教わったから。」

「やや暴論感があるが、そう言うのは嫌いじゃないぜ?……何処までも、足掻いてやるってな。」



そんじゃまぁ、レオナが此処に居るのはOKって事で。――んで、如何した総司令……って呼ぶのもメンドクセーからはやてって呼ぶけどよ。



「さっき、部屋入る時にはやてって読んどいていまさら何言うてんねん?てか、予想通りレオナちゃんは京さん達と知り合いやったか~~。
 でも、そうなると扱いどないしよ?小うるさい上層部は、こっちに引き渡せて言うてるし……ん~~~……」

「俺達と一緒に、嘱託扱いで六課に引き入れちまえば良いじゃねぇか?
 レオナの実力は俺が保証するぜ?ハイデルンの暗殺術をほぼ完璧にマスターしたコイツは、並の格闘家じゃ相手にならねぇ……俺やテリー
 でも、レオナ相手には楽勝とは行かないからな。」

「そうしたいのは山々やけど、京さんとテリーさんとロック君を嘱託として六課に引き入れたばかりで、新たな存在を嘱託として取り込む言うんは
 ちょっとばかし難しいモンがあるんよ?
 なんぼ、嘱託にはランク制限がないとは言え、実力ある次元漂流者を全部六課が持ってったとなったら問題あるやろからなぁ……」



なら、ゲンヤとギンガの居る方に配属して、そんでもって出向って言う形にすれば良いんじゃねぇのか?其れなら、誰も文句は言えない筈だ。
仮に文句が出たとしても、ゲンヤの親父が一括して黙らせんだろ絶対に。……あぁ言う親父がもっと居れば、悪童じゃない悪ガキが育つと思う
んだけどな。

それに、レオナだって見ず知らずの連中と一緒にいるよりは、見知った相手と居る方が気が楽だろうと思うしな?……流石に、そうだよな?



「そうね……幾ら何でも、見ず知らずだらけと言うのは精神面で堪える――知り合いが居た方が楽と言う、中尉の言葉は本当だった。」

「そう言う訳だから、何とかその線で頼むぜはやて?」

「OK、ならやってやろうやないか!
 自慢やないけど、齢19で総司令の座に就くために、色々裏工作して、管理局でゴッツイ権力持っとるお偉いさんとのパイプもガッチリ作っとる
 から、法外なモンやなかったら大抵の無理は押し通せるからなぁ!
 ぶっちゃけて言うと、レオナちゃんも相当な使い手みたいやったから、本音を言うなら喉から手が出るほど六課に欲しかったんよ!!
 その後ろ盾を使うのは、最後の手段と思ったんやけど、師匠の所に配属して出向って言う、面倒な手続きふむ位やったら、この際私の権力
 +αを最大限使用したろうやないか!!
 リンディさんにミゼット提督に、それからクロノ君に……知り得る伝を全て使って、レオナちゃんをストレートに六課の嘱託にしたるわボゲェ!
 関西人根性舐めんなや!!!」



うわ、気合入ってるなお前……そんだけ、自分の部隊が大事って事なんだろうけどな。
んで、此の流れだとお前と俺達は同僚って事に成りそうだから、宜しく頼むぜレオナ?――それと、俺の事は『草薙』じゃなくて『京』って呼んで
くれよな?そっちの方がなれてるからな。



「了解。――でも、そうなると総司令である彼女には、敬語で接するべき?」

「あ、別に普通で構わへんよレオナちゃん。
 なんぼ一部隊の部隊長で総司令で二佐言うても、機動六課はそんなに堅い部隊やあらへんからね?部下であり同期であるなのはちゃんと
 フェイトちゃんも、基本的にはタメ口やからね?
 まぁ、流石に新人の子達はアレやけど、私としては同年代の子にはあんまし敬語とかで話されたくないかなぁ?」

「分かった――通じて、分隊長の高町なのはとヴィータ、フェイト・T・ハラオウンとシグナムにも敬語は使わない事にするけれど、問題ない?」

「全然問題なしや♪むしろ畏まられた方が焦ってまう言うモンやからね。」



……総司令が、こんなに軽くて大丈夫なのかよって、普通は思うんだろうが、不思議と大丈夫な気がするんだよな此れが。
って言うか、はやての奴も途轍もない運命を背負って、其れを乗り越えて来たみたいだからな……少なくとも、そんじょそこらの奴等とは全く異
なる存在だろうからな。


時にはやて、俺達は六課に嘱託で配備されるって事になっているんだが、嘱託の試験とかは要らねぇのか?
幾ら嘱託とは言え、大口叩くだけの雑魚を雇ってやるほど管理局ってのは優しくはねぇだろ?――だから、嘱託になる為の試験があるんじゃ
ないかって思ってたんだけど……考え過ぎだったか?



「此れは此れは、勘も鋭いなぁ京さんは?
 せや、京さんの言う通り、嘱託の為の試験は存在しとるで?――ただしペーパーテストなしの実技試験オンリーやけどな。」

「Ha-ha!面白そうだな?」

「実技オンリーか……分かり易くて助かるぜ――戦って力を示せって言うのは、ある意味で最もシンプルで分かり易い事だからな?上等だ。」



ったく、そう来たか――ま、悪くはねぇけどよ。
そんで、試合形式は?



「1vs1の試合を4回やな。
 んで、その結果如何によって、六課での採用になるかホームレスになるかが決まるから、真剣に挑んだってや。」



試合形式は了解だ――其れに、此の実技試験と言う名の模擬戦は、案外楽しめそうな気がしてるからな……何て言うか、久々の感覚だった
けどな。

俺の相手が誰になるかは知らねぇが、少しは俺を燃えさせてくれよな?――楽しませて貰おうじゃねぇか!!








――――――








Side:シグナム


む……これは、レヴァンティンが大きな闘気を感じ取っているようだな?
主はやてから、今日は昨日保護した次元漂流者との戦いがあると聞いて、備えてはいたのだが……まさか、レヴァンティンが昂る程の闘気を
発する事の出来る存在が居るとは驚きだ。

若しかしたら、この闘気の主は、私と互角かそれ以上の実力を備えているのかも知れないな……実際に戦う事に成ったその時は、一瞬でも『
気』を抜いたら即座に此方が消し炭か……素晴らしい実力の持ち主ではないか。

くくく……あぁ、認めよう!認めようじゃないか!!
私は主はやての騎士ではなく、1人の剣士として草薙京と戦ってみたかったのだな……そして、主はやてがその場を用意して下さったのだか
ら、其れを無碍にする事も出来ん――最後の最後まで勝負は分からないのだから!

此処は、少し我儘を言って、私と草薙が当たるように主に頼まねばならないかもしれん……だが、草薙京、お前にだけは絶対負けんぞ!!



――へへ、楽しみにしてるぜ!



今の声は空耳か、それとも……だが、最高の戦いをしたいと思ってるだろうからな……非殺傷は50%解除しておくか。――此れならば、早々
撃ち負ける事は無いだろうからな。

草薙京……貴様の実力、ヴォルケンリッターが将である、この私が見極めてくれる!!そして示して見せろ、貴様が六課の嘱託に相応しいか
如何かをな!!

精々模擬戦で見せて貰うぞ、草薙の拳と言う物をな――!













 To Be Continued…