Side:京


さてと、管理局を出立して10分……10年ぶりのナカジマ家ってのは、少しばかり緊張しちまうな流石に。
てかよ、呼び鈴は俺が押すのかゲンヤ?アンタやスバルが、ドアをノックするんじゃ駄目なのか――って言うか、普通はそっちが優先だろ!?



「其れはそうなんだが……まぁ、連絡を入れたとは言え、此れはアレよクイントへのサプライズってやつよ♪」

「そう言う事だから、お願いしますお兄ちゃん♪」

「Ha-ha!頼むぜ、お兄ちゃん♪」

「アンタ、其れ死亡フラグだぜテリー?」



……親父と妹に言われたんじゃやるしかねぇが、後で覚えてろよテリー?――俺の炎で、死なない程度に燃やし尽くしてやるぜ。
まぁ、其れは兎も角としてだ。


――ピンポーン


「は~~い!……って、京君!?」

「よう、クイントさん――戻って来たぜ?ただいま、お袋。」

アンタにしてみれば5年……随分と、長い事と心配かけちまって悪かったな……少しばかし、予想外の事が重なったからだが、戻って来たぜ。



「うん……おかえり。おかえりなさい、京君。ずっと待って居たわ。」

「遅刻しちまった、悪いな。」

もう一度アンタ等と会うことが出来るなんて、俺にとっては、其れだけでも夢みたいなもんなんだけどな……だけど、それを心から嬉しく思うぜ。
序に言うと安心したよ、この家は、俺の記憶の中に有る家と全く変わってなかったからな。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round5
『ESAKA Forever~再会の家族~』











そんなこんなで、リビングに通されて、今は適当にくつろいでるんだが……よくよく見ると、クイントさんの外見が、最後に見た時と変わってなく
ないか?
こっちではあれから5年経ってる事を考えると、クイントさんだって44だろ?……その筈なのに、5年前とまるで変ってないってどういう事だ!
女に歳の事は禁句って言っても、アレから5年経ってるって事はギンガが17だろ?ぶっちゃけアンタは、17の子供がいるようには見えねぇ!
誰がどう見ても20代半ばじゃねぇか!!一体ドンだけ、アンチエイジングを――



「アハハ……お母さんは若いから……って、如何したのお兄ちゃん?」

「……よくよく考えたら、俺のお袋も大差なかったなオイ!!
 自分で言うのもなんだけど、お袋の見た目は、如何足掻いたって二十歳のガキが居る親の外見じゃねぇ!!30代前半は余裕で行ける上に
 少し無理すれば20代半ばでも通用するだろアレ!!
 あれが普通だと思ってたから何も感じなかったけど、少し世間様と照らし合わせると、大分異常だったんだな……」

「???」



分からないなら、分からないままでいいぜスバル?こんな事、知った所で何の役にも立たないからな。
それにしても良い匂いがするな?……此れは、秋刀魚の炭火焼きか?俺の食欲中枢にダイレクトアタックをかましてくる見事な匂いだぜ!!
俺の好きな物を覚えていてくれたんだなクイントさん?



「忘れる筈ないでしょ京君♪
 そうじゃなきゃ、態々七輪出して秋刀魚を焼いたりはしないわよ?」

「だよな……感謝するぜ。」

良い機会だから、テリーとロックも、此の炭火焼きの秋刀魚を味わっておくと良いぜ。
アメリカ人に焼き魚は縁が薄いかもしれないが、炭火焼きの秋刀魚を一度でも喰ったら、二度と生半可な魚のソテーを喰う事はできないぜ?
それ位に、炭火焼の秋刀魚は旨いからな?
それこそ、焼き魚界のKing Of Fighterって言っても過言じゃねぇんだよ!



「ふふふ、今夜のメニューには期待してくれていいわよ京君?
 ゲンヤさんから、貴方が来るって聞いて腕によりをかける心算だし、其れにソロソロ……」



「兄さーーーーん!!!!」



――ドゴォォォォォン!!!



「ごふあぁ!?」

「コイツは……クリーンヒットって所だな?」

「今日はお前が『ボディがお留守』だったな京?」



のやろぉ……らしい事言ってんじゃねぇテリー!
だがしかし、行き成りの特攻ってのは如何かと思うぜギンガ?俺だからこの程度のダメージで済んだが、一般人に喰らわしたら、肋骨骨折の
内臓破裂で即死だからな。……てか、大概頑丈だな俺も。

でもまぁ、スバル同様、デカくなったなギンガ?元気そうで安心したぜ。



「兄さん……本当だ、本当に兄さんだ……おかえり――おかえりなさい。」

「5年も心配かけて悪かったなギンガ……まぁ、おかげさんでこうして無事其の物なんでね――もう一度、こっちに来ることが出来たぜ。」

「理由は如何でも良いんです……兄さん、もう一度会えて良かった――」



理由は如何でも良いか……そうかもな。
向こうの面倒事は、向こうの俺に任せる事に成るが、こっちの事は俺がだからな――でもな、俺もお前達にもう一度会えて嬉しいぜギンガ。
ただいま、随分と待たせちまったな。



「おかえりなさい、兄さん……!」

「マッタク持って、大分遅刻しちまったぜ。――色んな彼是があって、俺はもう二度とこっちから居なくなる事はねぇから安心しな。」

「え?其れってどういう事ですか兄さん?」



其れに付いては、後でな。
コイツは、クイントさんも聞いといた方が良い事だろうと思うからよ――其れよりも、自己紹介しとけよな、テリー、ロック?



「俺は大丈夫だぞ京、クイントとギンガにも挨拶したし、名刺も渡しといた――便利だよな、名刺作成ツールって。」

「マジでそつがねぇなお前……って事はテリーも?」

「あ、俺自分の名刺しか作ってないから。てか、テリーデザインの名刺は、ハイセンス過ぎて作成ツールじゃ作れねぇって所だったからな……」



一体どんなデザインだったのか其れは其れで気になるが、何となく見ちゃいけねぇ気がするから、深くは追及しない方が良いんだろうな多分。
まぁ、クイントさんなら、テリーの豪快な性格も受け入れてくれるだろうから、問題はねぇか。



「京君、貴方がどんな事をして来たのか、聞かせて貰っても良いかしら?」

「拒否権はねぇんだろクイントさん?
 ――まぁ、隠す程の事でもねぇから話すのは良いが……中には、胸糞の悪くなる話もあるから了承してくれよ?こう見えて中々に、ハードな
 人生送ってるもんでよ。」

「10歳で次元震に巻き込まれて、次元漂流者になった時点で大分ハードだと思うけれど、戻ってからも可成り色んな事があったのね。」



まぁ、色々とな。
……その、色々な事の大半に八神の野郎が関わってるってのは、因縁とか宿命とか、そんなモンじゃ説明がつかねぇ気がしちまうんだけど。
飯を食いながらになるが、俺が元の世界に戻ってから、どんな人生送って来たのか話してやるよ











――帰還の宴開催&説明中だちょっと待ってろよな。










「オロチとの戦いに、自分を兵器として利用したネスツって組織との戦いとは……お前、随分とトンデモねぇ人生送ってんだな京よ?」



まぁ、退屈だけはしなかったけどな。
尤も、俺のクローンが大量に死んでる様を見た時は流石に気が狂いそうだったが……俺のクローンは、八神の野郎が手榴弾で纏めて爆殺し
たって事らしいから、ある意味で納得しちまったぜ。
てか、あの野郎は、そんだけ俺をぶっ殺してもまだ足りねぇのか?……余裕で50人以上の『俺』を爆殺してんだから満足しろよ――まぁ、本物
の俺を殺さないと満足出来ないんだろうけどよ。

だけどな、俺はこの人生を一度たりとも不幸だって思った事はねぇよ。
この身に降りかかったあらゆる事を、草薙の血を引く者の運命や宿命で片付けるのは簡単だが、生憎と俺はそんなモンに踊らされてる心算は
ねぇんだ……この身に降りかかる火の粉も、アイツとの戦いも、全て俺が俺の意思で選んだモンだと思って付き合って来たからな。



「其れにしたって、その八神って奴も迷惑な奴だよな?司令と同じ苗字なのは驚いたけどさ。
 普通、一般人が通ってる学校にまで、京を目当てに襲撃してくるか?アタシだった、幾ら気に入らない相手が居たって、喧嘩しかける場所位
 は選ぶぞ!?」

「ノーヴェ、野郎には常識は通じねぇんだよ。
 八神は、理屈とかそんなのは抜きにして、テメェの本能のままに生きてやがるからな……その生き方の先に破滅が待っていても、アイツは
 止まる事が出来ねぇのさ。」

「何とも迷惑な野郎だが……だが、奴さんは何だってお前さんの事をそんなに憎んでんだ京?」



根本的な事を言っちまうなら、其れは俺達の中に流れる草薙と八神の血って奴なんだろうな。
八神は元々は八尺瓊って名前で、1800年前に草薙と共にヤマタノオロチを倒した一族だったんだが……オロチと戦った八尺瓊には、その凄
まじいまでの力に対する憧れが生まれちまった。
草薙と共に研鑽を積み、遂には草薙流と八尺瓊流って流派が完成したが、その完成を見ると同じ時期に八尺瓊は遂にオロチの封印を解いて
しまったんだ。
当然、八尺瓊は草薙によって止められ、時の帝の命により幽閉される事に成る。
だが、幽閉された八尺瓊に、封印を解かれたオロチが忍び寄り『草薙の者が、今回の事への許しを帝にこう為に、お前の妻を殺害した。』って
囁いたんだ――実際は、オロチ自らが八尺瓊の妻を殺害したんだがよ。

其れを聞いた八尺瓊は怒り、復讐の為に草薙に戦いを挑み、以来草薙と八尺瓊は何度も歴史の裏で戦いを繰り返して来たらしい。
そしてその戦いに乗じて、復活したオロチ一族は、八尺瓊に血の契約を持ち掛けた……『八稚女を持ってして、我等に仇なす草薙を殺せ』と。
んで、660年前に八尺瓊は八神と名を変え草薙と完全に断絶して今に至る――アイツが俺を憎むのは、ある意味で当然なんだよ。

「でもまぁ、俺と八神の場合、そんな御大層な歴史的背景とかじゃなくて、単純に互いの事が気に入らねぇってだけの事なんだけどな。」

「1800年の御大層な歴史を其れで済ましていいのかよ……」



寧ろ、だからこそ良いんじゃねぇかなロック?
其れに、少なくともご先祖様は自分の選択を後悔しちまってるみたいだったからな――オロチと決着を着ける前に俺の前に現れた蒼い炎から
聞こえてきた声は、間違いなく八神を『救ってくれ』って言ってたからよ。
草薙と八神って大きな括りじゃどうしようもねぇが、俺と八神なら何とかなるってモンだろ……互いに、同じ目的があれば共闘する位は出来る
訳なんだからな。



「なんだか不思議な関係ですね、兄さんと八神さんて――襲われる度に返り討ちにしてる兄さんは流石ですが。」

「八神は俺を殺す事を目的に生きてるから、負けてやる訳には行かねぇんだよ。何より、アイツの生きがいを奪っちゃ可哀相だからな。」

「そう言いきっちゃう京君も大概ね。
 でも京君、貴方がこっちに来た事で、その八神君もこっちに来てる可能性があるのよね?……だとすると、オロチってのもこっちに……?」

「その可能性は低いと思うぜクイント。
 オロチってのは……確か地球の意志だった筈だから、地球以外の場所に存在する事は出来ない――んだよな、京。」



オロチの長はな。
そもそも、オロチの長は精神体だから憑代がなくちゃこの世に顕れる事は出来ねぇ。自分の身体を持ってる八傑集なら来てる可能性はあるか
も知れないが、そもそも八傑集の内、四天王+1は既に死んでるから、残るはマチュアとバイスと山崎だから何とかなるさ。
其れに、連中がこっちに来てる可能性は低いぜ?山崎はそもそも大会に出場してねぇし、バイスとマチュアもチームが反則負け喰らった後で
何処かに行方を晦ましちまったらしいからな。

まぁ、純血オロチじゃない奴が来てる可能性は………あったなそう言えば。



「如何した京?」

「なんかあったのかよ?」



いや、八神がこっちに来てるかもしれねぇって事ばっかり考えてて、アイツがこっちに来てる可能性をすっかり忘れてた。



「アイツ?」

「……レオナだよ。」

「「レオナ!?」」



あぁ、アイツはオロチの血を引きながら人として生きる道を選び、八神とは違ってオロチが封印されてる状態なら暴走の完全制御まで成し得た
って言う、ある意味では八神以上にオロチの力を使い熟した奴だからな、こっちに来てる可能性は高い。
草薙と八神が光と影なら、八神とレオナは同じ力を身に宿しながら真逆の道を歩んだ奴だからな……決勝戦会場には、怒チームの面々も居
たから、レオナも俺達と同じ状態になった可能性は0じゃない。てか、間違いなくこっちに来てると思う。

「序に言うと、ユキが来てねぇ事を考えると、こっちの世界にユキの役割を持たされた奴が居るかも知れねぇな。」

「お兄ちゃん、ユキって誰?」



俺の彼女……彼女だった人って言うのが正しいか。もう会う事は出来ないからな……まぁ、ユキの事はあっちの俺に任せるけど。
ユキは、1800年前にオロチの生贄に捧げられた、クシナダヒメの転生体でな――俺が、こっちに居てユキが居ないとなると、この世界の誰か
がクシナダの転生体になった可能性も否定できねぇのさ。
誰が其れになったのかは分からねぇけどな。



「ったく、聞けば聞くほど壮大な話だな京?大凡二十歳のガキの人生とは思えないぜ。
 でもって、コイツと一緒に居てアンタ等は良く身が持ったなテリー、ロック?」

「Ha-ha!まぁ、京と居ると退屈しないから問題ないぜ。
 いつだったかは、俺とアンディと京で、オロチの血の暴走によく似た病気を薬を使って蔓延させてた製薬会社に殴り込みかけたりしたしな。」

「確かに退屈はしないな。
 テリーと各地を渡り歩いてきたが、今回のKOFはその中でも特別スリリングで、魂が震えた気がしたよ。」

「退屈しないか……ッタク大したもんだお前さん達も。
 其れよりも京、お前さん二十歳なら、もう飲む事は出来るよな?」



クシナダの事は兎も角、行き成りなんだよゲンヤ?まぁ、確かに飲む事の出来る歳ではあるけど、其れが如何かしたか?



「おっしゃあぁ、其れじゃあ付き合えや!
 息子と一杯やるってのは、俺の夢だったんだ!まさか、飲んだ事がねぇ訳じゃないだろ京!」

「まぁ、ビール位はな……俺は酒よりも煙草の方だから、あんまし飲まないんだが――そう言う事なら付き合うぜゲンヤ。
 折角だからテリー、アンタも飲めよ?アンタだって、ビールは嫌いじゃないだろ?」

「良いねぇ?ビールは、楽しく飲むのに最高な物だからな!」



だな。
だが、法的に飲むことが出来ない奴も、今日は盛り上がろうぜ?酒が飲めないなら、コーラで盛り上がれ!コーラが飲めないならジュースで!
其れにクイントさん、アンタの事だから此れを予測して、つまみ系の物も作ってあるんだろ?



「勿論♪って言うか、ゲンヤさんの毎晩の晩酌の為に何か作ってるから♪」

「へっ、流石だぜクイントさん。」

今夜は宴だ!盛り上がってゴージャスに行こうじゃねぇか!!限界まで飛ばすぜ!!!



「おい、其れは俺のセリフだろ京!」

「へへ、堅い事言うなよロック!」

それに、俺ももう一度スバルと、ギンガと、クイントさんと、ゲンヤと会えて嬉しいんだ……しかも、ノーヴェって言う新しい妹まで出来てたしな。
今日だけは、無礼講って奴だ!!








――――――








Side:???


KOFⅩⅣの決勝戦後に現れたあの怪物を、草薙達のチームが倒した直後に不思議な光が発生して……気が付いたら見知らぬ場所に居た。
此処は何処?KOFの会場ではない……其れに、大佐と中尉も居ない……携帯通信機は、圏外……仕方ない、暫くはサバイバル生活ね。
教官から教わったサバイバル術を使えば生き残るのは難しくない筈……野草に野生動物、食料になりそうな物は沢山ありそうだから。

――ん?



「此方、機動六課より依頼を受けた捜索隊。ポイントA-18で、指定の赤髪の男ではありませんが、民間人と思わしき女性を発見。
 顔データを局のホストコンピューターに参照した所、該当する者は居なかった事から、次元漂流者である可能性が高いのですが……如何な
 さいますか八神指令?」

『……丁重に此方にお連れして。決して手荒な真似をしたらアカンよ?』

「了解しました。」



彼等は……誰?
其れに八神?……いえ、通信機から聞こえて来たのは彼の声じゃないから、きっと同じ名前の別人……其れで、貴方達は何者?



「時空管理局だ……君の身柄を確保しに来た。
 詳しい事は局で説明するが、君は次元漂流者の可能性が極めて高い故、我々と共に来てほしい――と言うか、大人しく来てくれないか?」

「時空管理局?」

聞いた事のない名前だけど、目の前の者達が素人でない事位は分かる。
彼等は間違いなく、厳しい訓練を潜り抜けてこの場に立っている精鋭……私が『力』を使えば突破は容易いけれど、此処は突破するよりも、彼
等に付いて行った方がメリットが大きい。
私の現状と、この世界の事を知る事が出来るだろうから……了解した、貴方達と共に行かせて貰う。



「協力感謝する。
 2256時、次元漂流者を1名確保!此れより、機動六課に護送する!各員、気を抜かないように!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



でも、まさか彼等が此処に来ているとは、この時は思っても居なかった……或は、制御云々は別として、オロチと草薙は切っても切る事が出来
ない関係なのかも知れない。
だけど、私はオロチには飲み込まれない――もう二度と飲み込まれないって、そう誓ったのだから。











 To Be Continued…