Side:京


10年ぶり……いや、アンタからすれば5年ぶりか?
何にしても元気そうで安心したぜゲンヤ。アレから5年てことは、アンタもそろそろ50だろ?ギックリ腰の一つでも発症して動けなくなってんじゃ
ねぇかって思ってたんだが、余計な心配みたいだったな親父殿?



「ったく、暫く会わねぇうちに口の減らねぇ奴になったもんだな京。生憎と俺はマダマダ現役よ!
 流石に歳だから一線は退いたが、それでも管理局内における影響力ってのは結構強いぜ?……何たって、八神の嬢ちゃんを鍛えたのは、
 この俺だからな!!」

「この総司令様はアンタが育てたのか……成程、納得だぜ。」

アンタが育てたってんなら、俺と同世代で総司令って言う役職についててもオカシクはねぇからな。
其れにだ、その総司令様がこっちの話を聞くために、アンタを呼んだって事は相当に信頼されてんだろゲンヤ?――まぁ、俺としても、偉そうな
だけの能無しに彼是言われるよりは、本当の親父以上に親父なアンタ相手に話した方が色々と楽だけどよ。



「京の……親父以上の親父さんだって?」

「なんだか、複雑な事に成って来たみたいだな?……まぁ、昔世話になった人なんだろうが。」


「……京、お前さんのお友達が、盛大に混乱してるみてぇなんだが……」

「テリーは兎も角、ロックはちょっと説明すればすぐに分かるから大丈夫だろ。ロックが理解できれば、自動的にテリーも理解できるからな。」

「そう言うモンなのか?」

「そう言うモンなんだよ、ゲンヤ。」



小難しい事でも、ロックが理解してくれれば、テリーへの説明はロックが適当にかみ砕いてしてくれるからな。――まあ、取り敢えずはやるべき
事をやっちまおうぜ?
色んな事は其れからだってな。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round4
『Remember ESAKA』











「え~と、つまり此れまでの話を総合すると、京さんとテリーさんとロック君は、KOFって言う格闘技の大会に参加して、その決勝戦の直後に現
 れた得体の知れんバケモンを打っ倒したら、次元震が発生して、それに巻き込まれてこっちに来たという事で間違いないか?」

「All right.その通りだぜ嬢ちゃん。」

「妙な光に飲み込まれたと思ったら、此処に居た……次元震とか言われても、訳が分からないぜ。」



まぁ、そうだろうな。
んで、俺達はどうなるんだ総司令さん?――前にこっちに来た時は、次元漂流者って言う事で親父達に保護して貰ったんだが、今回も同じっ
て訳には行かないだろ?
テリーとロックは兎も角、俺の記録は管理局とやらのデータベースに残ってるだろうからな……何よりも、前と違って、今回は元の世界に戻る
事は出来ないだろうからな。



「はぁ!?何言ってやがる京!本の世界に戻れないってなぁ、如何言うこった?」

「言葉のまんまだぜゲンヤ。」

俺が居た世界に於いて、草薙はオロチ――地球意思に対抗する力であるが故に、宇宙全体としては失う事は出来ない存在だ。
それ故に、向こうの世界は俺と言う存在を、もっと言うのならば草薙流の正当後継者を存在させていなくてはならない――だから、俺達が次元
震に巻き込まれてこっちに来たその瞬間に、向こうの世界ではもう1人の俺達が作られたはずだ。
前に神楽が言ってた事だが、宇宙には、修正力ってもんがあって、場合によってはそれが大きな力を揮って、世界の矛盾をなかった事にしち
まうらしいからな。



「だが、それでも――信じられないだろう?」

「まぁ、そうだが……世界の書き換えは、これ以前にも行われてるんだぜ?
 試みに問うが、ネスツが一体何時出来たか知ってるかテリー?あのクソッ垂れ組織が、何時出来たのか明確に言う事は出来るかよ?」

「ネスツは……分からないが、結構前から存在してたんじゃないのか?そうでなけりゃ、お前のクローンを作る事なんて出来ないだろ!?」



そう思うよな?
だがよく考えてみろよ――俺のクローンを高いレベルで作り出し、更には衛星兵器まで作ってた組織がアメリカ軍の情報網に引っ掛からない
と思うか?それこそ、ハイデルンの部隊なら見逃す筈がねぇだろ?

にも拘らず、ネスツの存在は俺のクローンが大量に確認されるまで認知される事は無かった――如何考えてもオカシイんだ。
ぶっちゃけて言うとな、ネスツって言う組織は、俺と八神がオロチを封印したその直後に現れたんだ――オロチと相討ちになって瀕死の重傷を
負った俺を生かす為にな。コイツは、神楽の見解だけどよ。

瀕死の重傷を負った状態で放置されたら幾ら俺でも生きちゃいねぇし、救助を待ってる時間もなかった。
だから近くに待機してたネスツの工作員によって拉致され、延命処理を施されて生き長らえたんだ――大凡信じられねぇ事かも知れないだろ
うが、コイツは事実らしいぜ。

序に言っとくと、テリーとロックも、あの世界が失うには結構デカい存在なんだぜ?
ギースを倒してサウスタウンを解放した英雄に、ギースの血を引きながらテリーに格闘の手ほどきを受け、テリーとギースの両方の魂を受け継
いでるロック、自然死以外の方法で居なくなるのは避けたいから、お前達も向こうに残ってる筈だ。



「???え~と、つまり……」

「テリー、後でかみ砕いて説明するよ。」

「おう、頼むわロック。」

「ま、そんな訳で、こっちで暮らす事に成るから戸籍とかよろしく頼むわ。」

「オウ任せとけ!じゃねぇだろ!
 今のお前の話が本当だとしても、前に来た時はどうなるってんだ?今の話だと、前に来た時だってお前は戻る事がなかった筈じゃねぇか。」



あのなぁ、前に来た時は俺はまだ10歳のガキだったんだぜ?
当時の草薙流の継承者は親父で、宇宙が失う訳に行かなかったのは親父の方だったんだよ。あの時は、大蛇薙を使う事が出来なかったし。
だから戻れたんだよ。……尤も、同じ時間軸に戻った事で、修正力働いて、向こうに戻った途端に10歳に戻っちまったんだけどな。



「なんや、話聞いとると、テリーさんとロック君は兎も角、京さんは昔もこっちに来とったんかい?
 しかも時期的な事を考えると、庵さんが海鳴に来とった時期とも重なるし……何や、関係ありそうやな?知り合いみたいやったしなぁ?」

「アイツとの関係は……あんまり話したくねぇ。
 つーか、学校にまで襲撃かけて来るんだから性質の悪過ぎるストーカーだぜ……しかも、俺がこっちに来たって事は、多分野郎もこっちに来
 てるだろうからな……憂鬱だぜ。」

「庵さん、厨二病発症して居なくなった思たら、何人様に迷惑かけてんねん……もしこっちで会う事有ったら、高町式のO・HA・NA・SHIせんと。
 まぁ、其れは其れとして、師匠と京さんは知り合いやったんか。」

「何だよ、知らねぇで俺を呼んだのか?
 10年前の記録を調べてみな。当時10歳の『草薙京』って言う次元漂流者が『ゲンヤ・ナカジマ』と『クイント・ナカジマ』の2人に保護されてる
 筈だぜ。」



懐かしいよな。
こっちに飛ばされた俺を一番最初に発見したのがクイントさんで、色んな手続きをしてくれたのがゲンヤ……そんで、余所者の俺を『家族』とし
て迎え入れてくれたんだもんな。
でも、初めてナカジマの家に行った時のクイントさんの第一声には驚いたぜ?
まさか、自分の娘2人に対して『ギンガ、スバル、お兄ちゃん連れて来たわよ♪』だからな?余りのインパクトに、俺も固まっちまったぜ流石に。



「……さっきのヘリの中での会話でも思ったんだが、そのクイントって人の中では家族は連れてくるものなのか?
 なんか、あの赤毛――確かノーヴェの事も『妹連れて来た』って言って連れて来たって、スバルが言ってなかったっけ。」

「豪快っつーか何つーか……色々と凄そうだな、そのクイントってのは。」



実際凄いぜクイントさんは?
管理局員の中でも、前線に出て戦う人で、シューティングアーツって言う格闘技の使い手だった。実力は、KOFでも十分通用するレベルだって
言えば分かり易いか?
流石にピークは過ぎちまっただろうが、それでもタクマとタメ張れるんじゃねぇかと思うぜ?……真吾レベルなら、瞬殺されるんじゃねぇか?
兎に角、主婦力も高い上に、腕っ節も問題ない、更に頭の方だってそれなりに切れる人だったからな……そう考えると、アンタ相当に良い嫁さ
ん貰ったよなゲンヤ?



「果報者だな俺はよ。
 そんな訳で八神の嬢ちゃんよ、京は家で預からせて貰うぜ?スバルやギンガは勿論、クイントも喜ぶだろうからな。別に構わねぇだろ?」

「師匠、ざっくりし過ぎですわ……」

「其れに、色々と手続きだってありますよね?」

「そんなモンは如何にでもならぁな?
 10年前のデータで、俺とクイントが京を保護してた記録は残ってんだから、其れを使えば延長手続きで保護は可能だし、保護期間中に『帰
 還の見通し立たず』って理由で養子縁組しちまえば何も問題ねぇって。」

「其れは、確かにそうですけれど……」



総司令様と、隊長2人相手に回して、それでいて自分の思うように話を進めちまう辺り、ゲンヤの方が経験値がまだまだ上って所だな。
だがよ、俺は其れで良いとして、テリーとロックはどうするんだ?



「メンドクセーから、お前さんと一緒に家で保護しちまおう。
 流石に3人と養子縁組ってのはアレだから、適当な時機を見て、高町やハラオウンと養子縁組する事に成るとは思うがな。」

「そうなるとしたら、俺はテリーと一緒の所に行きたいね。俺にとって、テリーは父親みたいなもんだからさ。」

「親子同然てか?
 ん?俺とロックが親子同然だとすると、アンディと夫婦同然に暮らしてる舞は、ロックからしたらおば……」

「「テリー、それ以上言ったらだめだ!!」」

「ファ!?」

「危険な事言うなよテリー!
 俺も前に同じこと思って、思わず口滑らした事があるんだが、全部言い切る前に『それ以上言ったら怒る』って言われたんだぜ!?」

「てか、舞の歳を考えたら其れは絶対に言っちゃいけねぇ。
 20代前半の女に対して其れは絶対ダメだ……其れ言われた女は、ある意味で暴走した八神やレオナよりも恐ろしい物があるからな……」

「……此処に本人居ないんだから、言っても大丈夫じゃねぇかな?」

「「ガチの怒りは多分次元とか軽く超えると思う。」」



死にたくなかったら、不穏な事言うなよテリー。
つーか、女に対する接し方は、お前よりもロックの方が上だな?女に対して免疫がない事で、ロックは割と相手に遠慮しがちで気を回す事をす
るからな……彼女の一人でも作れよテリー。
とまぁ、色々脱線したが、そう言う事でいいかよ総司令さん?



「もう色々あれやから、師匠に任せるわ~~。
 まぁ、其れは其れとして、京さん、テリーさん、ロック君……ちょっとした提案なんやけど、3人とも『嘱託』としてでえぇから、私の部隊『機動六
 課』に入ってくれへん?
 勿論お給料はちゃんと出すし、嘱託になれば管理局の施設内もある程度は自由に出歩く事も出来るし、何よりも手に職を持てるから、条件を
 考えたら、悪い話やないと思うけどどないや?」

「俺は、それでもかまわねぇよ。
 こっちの世界では、インターミドルって言う女子限定の格闘大会はあるらしいが、KOFみたいな年齢性別無関係の大会は無いみたいだから
 格闘技で喰ってくってのは難しいだろうからな。
 其れなら、適当に戦う事が出来る職場に勤務した方が良いってモンだろ?――手続きの方はアンタに任せるけどな。」

「俺も異論はない……てか、正直な事を言うと、テリーには定職についてほしいと思ってたからな。
 サウスタウンの英雄が、万年住所不定無職ってのは流石に如何かと思う。……此処は、サウスタウンじゃないが、少し働こうぜテリー?」

「……OK、そうするとしよう。」

「なら此れで解決だな。
 時に京、俺とテリーも一緒に行っていいのか?幾ら何でも、迷惑にならないかな?」



ん?あぁ、大丈夫だろクイントさんなら。
俺やノーヴェを、家族として連れて行っちまうような人だから、お前とテリーが来るのだって、歓迎こそすれ迷惑だなんて絶対に思わねぇって。
寧ろ、嬉々として今日はパーティになっちまうかもだからな。



「京の言う通りだから安心しな、お前さん達も。
 クイントの奴は、賑やかなのが好きだからなぁ?お前さん達の事だって歓迎してくれるだろうよ。」



そう言うこった。だから心配無用だぜ?
さてと、其れじゃあこれで話は終わりだな?――悪いが行かせて貰うぜ、俺が連れてかれたって事で、スバルは気が気じゃないだろうからな。



「ん、お疲れ様やね。
 機動六課への嘱託の彼是は、こっちで上手くやっとくさかい、気にせんといて――後日、改めて正式に伝えさせて貰うからな?」

「了解したぜ、総司令様。」

さてと、指令室を後にして、スバル達の所にだ。
待たせたなスバル、無事全部終わったぜ。色んな事は後で説明するが、今日からまた一緒に暮らす事に成った……ま、宜しく頼むぜ?
ノーヴェもな。



「本当に!?お兄ちゃんとまた一緒に……!こ、此方こそ宜しくお願いします!!」

「あ、あぁ、宜しくな。」



こっちの世界に俺が居る以上、八神とオロチ……或は其れに関係する連中も現れちまったんだろうが、そう言う奴らが出て来てちょっかい出し
て来たその時は、払ってやるだけだ。

まぁ、八神との因縁だけは、如何あっても断ち切ることは出来ねぇんだろうけどな。








――――――








Side:クイント


「……そう、やっぱり生きてたのね京君は?」

『オウよ……って、オメェはあんまり驚いてねぇなクイント?』

「当たり前でしょう?炎使いの京君が、火災に巻き込まれて死ぬはずがないってずっと言っていたでしょう?其れが証明されただけですもの。」

『……其れもそうか。』



なんてね。
ゲンヤさんからの連絡を受けた私は物凄く驚いていたし動揺もしていた……5年間のあの日、炎の中に消えた京君が生きていたのだから。

5年前のあの日、忘れもしないビル火災。
燃え盛るビルの中に閉じ込められた京君とギンガとスバル……助けようと思ったけど、火の勢いが強くて救助隊でも近寄れなくて……でも、そ
の炎を、京君はより強力な炎で薙ぎ払って、ギンガとスバルの避難路を確保してくれた。
けど、京君自身は避難することが出来なくて……炎に飲み込まれてしまった。

炎使いの京君が火災に巻き込まれて死ぬ筈がないって周囲に言って、自分自身にも言い聞かせて来たけど……本当に生きていてくれたなん
て……良かった、本当に良かった。


んん、それでゲンヤさん、状況からスバルとは再会したみたいだけどギンガは?



『そっちも問題ねぇ。
 すぐさまスバルが連絡入れて、そんでもって京が直々にギンガに『ただいま』って言ってたからな――ギンガも喜んでるだろうよ。
 あぁ、それから京の他に、今日の友達も2人連れてくから、宜しくな。』




そう、其れなら安心ね。きっとギンガも、喜んだでしょうね。
それにしても、京君のお友達も2人来るって言うの?……ふふ、賑やかになりそう――其れなら、今夜は腕によりをかけて御馳走を作るとしま
しょうか!京君の帰還祝いって言う事でね♪









――――――








Side:はやて


「其れで八神司令……うぅん、はやてちゃん、京さん達を嘱託にって本気なの?
 スバル達の報告と、デバイスに記録されてた映像を見る限り、相当な使い手であるのは間違い無いと思うけど、余計に目を付けられない?」

「ん~~……まぁ、なのはちゃんの言う事も分からなくは無いけど、だからこその嘱託なんや。」

部隊の保有ランク制限ちゅうんは、正規の管理局員にのみ適応されるモンであって、外部からの嘱託は適応範囲外なんよ実は。
ぶっちゃけた事を言うなら、嘱託ならばどんな化け物を雇った所で、法の外の存在やからお偉いさんとて何も言えへんのや……ランクリミッター
で、疑似的に保有ランク落とすのに続く抜け道やけどな。



「はやて、総司令になってから、なんか悪どくなってない?」

「10年前の薄幸の美少女は何処に……なの。」



だまらっしゃい!!
綺麗事だけじゃ、大人の世界は渡れへんのよ……この地位に就くために、結構な裏工作もしたからな。――せやけど全ては、ミッドチルダの
本当の平和の為にや。

管理局の内包する歪みを正し、真の平和を手にする為やったら、私はどんな泥だって被る……そう覚悟を決めとるからね。
そんな中で、降って湧いた凄まじい力を、自分陣営に取り込まん手は無いやろ?京さんの話からしたら、庵さんも来とる可能性があるから、庵
さんも引き込む事が出来れば万々歳や。



「そう言う事なら……一緒に頑張ろうはやて!」

「機動六課は、はやてちゃんの夢の部隊……なら、はやてちゃんのやりたいようにやるのが正しいかもだから。」

「うん、ありがとうな、フェイトちゃん、なのはちゃん♪」

期せずして、六課の追加戦力を確保することが出来たから、此れは私の目的の達成も夢やないかも知れへんね。
管理局の膿を絞り出して、腐敗を正すって言う、目的を達成する事がな――何にしても、京さん達には、此れからお世話になりそうやで。

あと、庵さんと再会した時の為に、あの重度の厨二病を治す手立ても考えとかんとイカンやろね……マッタク、部隊の頭も楽やないなホンマ。












 To Be Continued…