Side:テリー


さてと、ゆりかごとやらの動力室に到達した訳なんだが、此れはまた、何とも強力そうなエンジンだなオイ?出力も馬力も半端なモンじゃな
いぜ此れは……俺が元いた世界で実現されてたら、間違いなく世界のエネルギー事情は解決して、化石燃料に依存しない社会ってモンが
出来上がってたかもな。

出来る事なら壊さずに持って帰って、平和利用したい所だが、悲しい事にそうは行かないんだろうな……結局のところ、ぶっ壊すしかないっ
て言う事か。



「それ以外の選択肢なんて始めっからねぇだろ?
 此奴は存在しちゃいけないもんなんだ……だから、此処で何としてもぶっ壊す!!」

「OK!」

そう言えば、コイツは最強最悪の決戦兵器だったな……なら、二度と動く事が出来ないようにぶっ壊さないとだぜ。――普通にハードなミッ
ションだろうが、俺とヴィータのタッグなら、達成出来ないモンでもないさ。
鉄槌の騎士の剛槌と、伝説の餓狼の攻撃の前に、耐えられるモノなんて存在しないさ――ドレだけ頑丈であっても、何れは壊す事が出来
るだろうからな!

だからゆりかごの動力停止は問題ないが、気になるのは京達とロック達だ。
京とシグナムなら、相手が誰であってもどうにかなるだろうが、ロックの相手にギースが出て来たとしたら拙い――最悪の場合、ギースに対
する、ロックの憎悪が増幅して暴走する可能性があるからな……高くないとは言え、0%とは言えないから気になっちまうぜ。

だが、同時に、お前ならギースから受け継いじまった暗黒の血に打ち勝つ事が出来るとも思ってるぜロック。――だから、決して己を見失う
なよ?
お前なら、きっとギースにも勝てるさ――俺が、勝てたんだからな。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round37
『因縁との戦い:Spread The Wings』











Side:ロック


さてと、戦闘機人共を一掃して、ティアナのサーチを使って、ギースが居るであろうビルの最上階に来た訳なんだが……此れは、一体何処
から突っ込みを入れればいいんだ?
床が全部畳敷きな事か?其れとも、無節操に飾られた仏像の類か?或は、浮世絵風に描かれて、更には『覇我亜怒』って謎の当て字が
入った浮世絵風のギースの似顔絵か!?
一体どんなセンスだよ此れ!?理解出来ねぇよ!ギースの脳味噌はどうなってんだよ!!



「此れは何とも……リンディ提督もすさまじかったけど、この空間はそれ以上だわ……寧ろ、リンディ提督の『間違った和室』が可愛く見える
 位よ。
 って言うか、八神指令が此の部屋見たら、間違いなく『日本文化舐めとんのかぁ!』ってキレてるわね。」

「何となく納得だぜ。」

何にしても趣味が悪いぜ……アンディさんが言ってた、『間違った日本文化』をインプットしちまった典型例みたいだなギースの野郎はよ。
……益々、俺の親父だって思いたくなくなって来たぜ。



「よく来たな、ティアナ・ランスター。そして我が息子よ。
 如何だ、この空間は?とても神妙な雰囲気に満ちてるとは思わないか?」

「思わねぇよ馬鹿。」

「趣味が悪いわよ幾ら何でも……」

「其れは残念だ。お前達のような年若い者には、此の侘び寂びの浪漫と言う物は理解出来なかったか。」



いや、分かる奴の方が居ねぇよ。本当の和室ってのは、京の実家や不知火舞の実家にある部屋みたいのを言うんであって、決して日本文
化を可能な限り、節操なく配置したモンじゃないぜ。
根本から間違ってるぜアンタ?……若しかして、握った酢飯にカットしたステーキを乗せた物を寿司だとか思ってないだろうな?



「レアステーキの寿司は美味だった。」

「あ、此れ間違いなく日本文化勘違いしてるパターンのアメリカ人だ。」

「救いがないわ……」

「フッフッフ、日本文化は真に素晴らしい。
 此度の戦いで私達が勝利した暁には、ミッドチルダの中心街は、私が支配する事になる――つまり、ミッドチルダ全体が、この素晴らしい
 侘び寂びの浪漫で溢れかえる事になるのだ。」



ワビサビ以前に、このセンスを理解出来るやつなんていねぇだろ絶対。
アンタの忠臣であったビリーですら、『ギース様の趣味は、俺には理解出来なかった』って言ってたからな?――侘び寂び云々を語るなら、
先ずは正しい日本文化を身に付けて来いよ。
間違った知識を曝してるってのは、息子として恥ずかしいんでね。
てか、アンタの野望を聞いて余計に負ける事が出来なくなった。間抜けな理由かもしれないが、ミッドチルダがアンタの珍妙な趣味で塗りつ
ぶされるってのは、流石に看過出来ないぜ。



「ミッドチルダ全域が此の趣味で埋め尽くされる……悪夢以外の何物でもないわね此れは。」

「悪夢とは失礼な……この文化を生み出した日本人に謝りたまえ、ティアナ・ランスター君。」

「いや、思い切り間違って覚えてるアンタが先に日本人に謝れよギース……この日本文化がカオスに入り混じった空間は、ハッキリ言って
 日本文化を冒涜してるとしか言えねぇよ。」

そんな珍妙なモンをミッドチルダに蔓延らせる訳には行かねぇし、何よりもアンタは俺達の敵なんだ――だから、此処で倒させて貰うぜ?
母さんが味わった苦しみの半分だけでも、お前に味わわせてやる!覚悟しなギース!



「フム……良い気迫だ。ならば存分にかかって来るが良い。
 この私の血を継いだお前が、テリー・ボガードに師事してどれだけの強さになったのかと言う事には興味があるのでな……Come on!」

「上等だ……限界まで、否、限界を突破して飛ばすぜ!!」

「私達なら出来る!此処で貴方を倒す!!」



あぁ、俺達なら出来るさ、絶対にな!
何よりも、このギースはテリーに倒された過去の亡霊だ……なら、もう一度ぶっ倒してあるべき場所にその魂を返してやるだけの事だぜ!
そしてとくと味わいな、ハワードの血がテリーによって鍛えられたらどうなるのかって言う事をな!――全力で行くぜ!!








――――――








No Side


可成り間違った日本文化の知識で埋め尽くされた高層ビルの最上階にて始まったロック&ティアナvsギースの戦いは、先ずは、ロックとティ
アナの、ヤングコンビが戦況を有利に進めていた。
ギースは、確かに極上の『悪』であり、格闘家としてもS級の実力者だが、まだ10代で、やる気と闘気に満ち溢れている若者2人から、息の
合ったコンビネーションで攻め立てられては堪った物ではない。


「せい!でやぁぁぁ!!」

クロスファイヤー!!

「ほう……?」


此れが一対一のタイマン勝負であったのならばギースの方に分があったのだろうが、ロックとティアナは二対一と言う状況を最大限に利用
して、ギースに対して格闘と魔法の波状攻撃を行っていたのだ。
ロックの嵐のような格闘攻撃と、その隙を埋めるべく放たれるティアナの射撃魔法の前に、ギースは防戦を余儀なくされていたのである。


「ふむ、見事な攻撃だロック、そしてティアナ・ランスターよ。
 もしもお前達がテリー・ボガードの領域にまで達していたのならば、私はとっくに倒されていただろう――否、こうして戦っている間にも、お
 前達の力はドンドン上がっている……矢張り戦いとはこうでなくてはな。」

「余裕かましてる暇があるのかギース?」

「貴方の余裕は、強者の油断……己の半分も生きてない若造に負けはしないって思ってるんだろうけど、其処につけ入る隙がある!!」


其れでも焦る様子を見せない辺り、ギースはサウスタウンを支配した絶対の覇者であり、悪のカリスマと言う所だろう。
何よりも驚くべき事は、防戦一方であるにも拘らず、ギースの顔には笑みが浮かんでいると言う事だ――攻め立てられながらも、この戦い
をギースは楽しんでいるのだ。

そして――


「すおりゃぁぁ!!」

「のわ!!」


ダブル烈風拳!!

「うわ!?」


ロックのハードエッジを、当て身投げでカウンターすると、そのままティアナに向けてダブル烈風拳を発射!
ロックは巧く受け身を取り、ティアナもギリギリで回避したため、ダメージは大した事ないが、この一連の攻撃で、ギースが防戦一方だった戦
局は崩れた。
コンビネーションによるラッシュは強力だが、攻撃の波を止められてしまうと、再び波に乗るのが難しく、其処を相手に突かれて逆転されてし
まうと言う事例は少なくない。
こう言った物は、熟練のコンビネーション程起きやすいのだが……


「舐めんじゃねぇぞ、ギース!!」

「此れ位じゃ、へこたれない!!」


反撃?其れが如何した。寧ろ反撃の一つも無いんじゃ面白くないとばかりに、ロックとティアナは再び一気呵成にギースへの攻撃を再開!
此れもまた、10代の若さゆえに出来た事だろう。ソコソコ、歳が進んだ者ではこうは行かなかっただろうから。

しかし、先程よりも苛烈な攻撃に対し、今度はギースも防御をするだけでなく、合気道式の捌きで攻撃を次々と捌き、所々でカウンターを放
って来る――矢張り、ギースは未だ本気は出していなかったのだ。


「ふふふ……良いぞ、もっと攻めてこい!私を楽しませて見せろ!!」

「テメェ……!!」


あくまでも余裕の態度を崩さないギースに苛立ったロックは、レイジランType:アッパーを繰り出すが、ギースは其れを待っていたとばかりに
アッパーを繰り出したロックの右腕を掴み、其のまま強引にヘッドロックを極め――


「如何した……」


――ガス!!


「もっと……」


――ゴス!!


「打ってこい!!」


顔に拳を撃ち込み、そしてティアナに向かって投げ飛ばす。
突然味方を投げつけられたティアナは、完全に虚を突かれた形となり、其れを真面に喰らって、ロック共々ダウン状態に陥ってしまう。(この
時、略脊髄反射でダメージを最小限に止めようと、自分から倒れに行ったティアナは見事だが。)


「むぅぅん……邪影拳!!


更に其処に、ギースが追い打ちに邪影拳を繰り出して、ロックとティアナを吹き飛ばすが、ロックは空中で体勢を立て直して……


「せいやぁぁ!!」


一足飛びでギースに接近して横蹴りを一閃!!
そして、其れを皮切りに、右ストレート、左アッパー、上体を落としてからのワンツーボディブローへと繋ぎ……


吹っ飛べ!!

「ごあぁぁぁあ!!」


レイジランType:アッパーでブッ飛ばす!


「調子になるなよ小童!」


だが、ギースもやられっぱなしではなく、即座にロックに近付くと、古武術式の掌底をブチかまし、更に延髄に肘を落としてロックを強制ダウ
ンさせる。
しかし、ロックの一連の攻撃は、ギースにとっては予想外の物だった。反撃して来るにしても、即座に其れが来るとは思っていなかった。
それ以上に、驚いたのは、ロックの潜在能力だ。


「この私を一瞬とは言え怯ませるとは、ロックよ、お前は――」


ギースはロックに対して何かを考えるが、其れは強制中断される事になる。


「ギース!!」

「!!」


何故ならば、ティアナがギースに向かってきていたから。
ティアナの本質は指揮官として指示を飛ばし、バックスとして仲間をサポートする事だが、しかし決して単騎でのクロスレンジが出来ない訳
ではない。
何よりも、ティアナは貪欲に何でも吸収しようとする姿勢を持っていて、その姿勢が、決して得意ではないクロスレンジの格闘戦をも身に付
けるに至っていたのだ。


「ティアナ、今だ!!」


そして、此れを好機と見たロックは、ギースの足をホールドして動きを制限しティアナをアシストする。
其の機を逃さず、ティアナは少し飛び上がると……


竜巻旋風脚!!


跳び膝蹴り→跳び後ろ回し蹴り→跳び回し蹴りの、跳び蹴り三連コンボをギースに叩き込み――


ライジングタックル!!


追撃にロックがライジングタックルをブチかまし、ギースを吹き飛ばす!!
そして、此れはまたとない好機だ。


「もらったぁぁぁぁぁ!!!」

「応ぉぉぉ!!!」


ギースが吹っ飛ばされたと見るや否や、ティアナは魔力を集中し、ロックもライジングタックルが終わった直後に気を最大限に集中する。
極限まで高められた気と魔力は、激しくスパークし、ロックとティアナの身体の周りでバチバチと火花放電を発生させているのだ。


「む……!?」


「此れで決める……ファントムブレイザー!!

「亡霊は地獄で眠ってな!虚空烈風拳!!


其処から放たれたティアナの直射砲と、ロックの連続烈風拳は、ギースに向かって進み、そして着弾と共に爆破炎上!!
其れは、ロックとティアナのコンビネーションが、絶対的な『悪のカリスマ』を越えた事での証明でもあった。








――――――







Side:ロック


はぁ、はぁ……手応えはあったぜ――幾らギースでも、此れを喰らって無傷な筈がねぇ。
俺もティアナも、今の攻撃で大分力を使っちまったが、無傷じゃないギースが相手なら、押し切る事は難しくないぜ……何よりも、俺もティア
ナも、まだ限界を越えちゃいないから、まだ上に行く事は出来るからな。



「勝ったの?」

「分からないが……此の位で倒せるなら、テリーが現れるよりも前に、ギースは倒されてたはずだ。
 アイツは此のままじゃくたばらねぇ……だから、もう一戦やる覚悟はしていてくれよティアナ。」

「……流石に、簡単に倒せる相手じゃないか……私とロックの同時攻撃を喰らって、それでもまだ動く事が出来るって言う事には呆れを通
 り越して、尊敬するわ。」



認めたくねぇが、俺の親父だから、頑丈さは相当なモンだろ?
テリーと最初に戦った時には、ビルから落下しても疾風拳で落下の速度を落として生き延びたらしいからな……まぁ、今回はそんな裏技は
使えないが、このギースには、本当の切り札が有るからな。



――轟ォォォォォォォォォォォォォ!!



「此れは、この力は!!!」

「来やがったか……!!」




「ふふふ……ふはははははははは!!私を此処まで追い詰めてた事を褒めてやろう!
 だが、先程の攻撃で私を倒す事が出来なかったのは最大の失策だな!!――最早、お前達が勝つ確率は無くなった!!今此処に、悪
 夢が降臨したのだからな!!」

「成程……確かに此れがアイツには有ったわねロック……悪の波動が増してるわね。」

「此れだけの悪の波動を放っておきながら、テメェの理性は失ってねぇってんだからトンでもねぇがな……」

現れやがったな、ナイトメア・ギース!!
ナイトメアと化したテメェの力は、此れまでとは比べ物にならないが、だからと言って俺達を蹂躙する事が出来ると思ったら大間違いだぞ?
六課本部での戦いでは不覚を取ったが、今度はそうは行かないぜ!!

何よりも、悪夢は払う物だからな――アンタが齎す悪夢は、俺達が払ってやる!!



「ほう?ナイトメアと化した私に勝つ心算か?」

「勝つ心算じゃねぇ、勝つんだ。俺とティアナがな。」

「悪夢はあくまでも夢であって現実じゃない――その夢は、此処で霧散させる!!」



そう言う訳で、貴様を倒すぜギース。
今度こそ、貴様を悪夢と共に地獄に送り返してやる!――そして、地獄で天国の母さんに侘びを入れな!見捨ててゴメンなさいってな!!
行くぜ、ギース!!クライマックスは此処からだぜ!!












 To Be Continued…