Side:はやて


意見陳述会の会場では、なのはちゃんと庵さんがはっちゃけてくれたお陰で地上の被害はゼロやったけど、地下ではギンガが敵の手に落
ちて、六課本部の方は壊滅してヴィヴィオも攫われた……結果だけを見るなら、此れは完全敗北って言っても過言やないな。

けど、私は此処で折れる気は全く無いでスカリエッティ!!
寧ろ、アンタはアタシの闘争本能に火を点けたで?――関西人って言うのは、コケにされて黙ってられる程、人間出来てないんやで?寧ろ
やられた事には倍返しが基本やっちゅーねん!!

尤も……庵さんとなのはちゃんに限っては、倍返しじゃ済まへんやろうけどね。
でも、アンタ等2人は、相手にやり返す前に始末書100枚ほど書いて貰うからその心算で居ろや、味方の筈なのにラスボスコンビが。



「始末書ってなんで?」

「ガジェットも、京のクローン共も始末したのに、解せんな?」



アンタ等なぁ……確かに戦果は上げたけど、なのはちゃんの砲撃と庵さんの八酒杯が、敵が壊す以上に意見陳述会の会場を壊してるんや
で!って言うか、ぶっちゃけトドメ刺したんはなのはちゃんやし!!
戦果以上の被害出しといて始末書が無いと思ってんのかい、此のドアホ垂れ共がぁ!!



「「敵を倒せば其れで良いと思ってる。」」

「本気でアホかアンタ等ぁ!!」

アカン、なのはちゃんも庵さんも、六課に誘わんかったら最強最悪の犯罪者になってた可能性が高いわ此れ……味方なら頼もしいけど。
其れは其れとして、六課本部はもう使えへん……せやけど手がない訳やない。――倉庫の奥で眠ってるアースラなら本部に使えるし、幸い
な事にシャマルは無事やから、負傷者の治癒も可能や。
何よりも、期せずしてアインスが加入してくれた事で、戦力的には充分やから、スカリエッティにリベンジするには充分やで。

只、心配なのは京さんや。目の前でギンガを奪われて、その上ヴィヴィオまで攫われてもうたから、精神的には可成り来とる筈や。
次の戦いに、京さんの力は絶対に必要になるから、何とかギンガとヴィヴィオの事を乗り越えて欲しいモンやな……









リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round33
『六課の再起~Barning blood~』











Side:京


クソ!ギンガだけじゃなく、ヴィヴィオまで攫われるとは、最悪だぜ……大事な妹と、娘すら守ってやる事が出来なかったのか俺は――否、
其れ以前に、禁断の奥義である十拳を使って、スバルとノーヴェまで傷付けちまった……ハハ、兄貴失格だな俺は。



「失格なんかじゃないよ京兄!
 京兄はギン姉がやられた事に本気で怒って、其れであの技を使ったんでしょ?自分自身すら傷付きかねない一撃なんて、早々使える物
 じゃないのに、京兄は其れを選んだ……此れって凄い事だよ!?」

「大体なぁ、アタシもスバルもあれ位じゃへこたれねぇっての!
 皮膚と肉が焼けて、内部フレームが剥き出しになっちまったが、此の程度ならマリーさんに調整して貰って、シャマル先生に治して貰えば
 問題ねぇ。
 てか、アタシ的には兄貴が1部屋丸々炭化させる程の技を持ってた事に驚きだぜ。」

「お前等……」

俺を気遣ってくれてんのか?……ったく、良く出来た妹だぜ。
なら、俺が何時までも引き摺ってるのは良くないよな?完全に割り切るのは難しいが、お前達のお陰で、少し気が楽になったぜスバル、ノ
ーヴェ。……ありがとよ。
時に、お前等の腕から見えたのって、金属製のフレームだよな?……スバルもノーヴェも普通の人間じゃなかったのか?



「其れについて私から説明するわ京君。」

「お袋?」

「スバルとギンガは、私の遺伝子をクローン培養して作られた戦闘機人の『タイプゼロ』と呼ばれていた個体で、君と出会う以前に保護して
 娘としていたの。
 そして、ノーヴェもまた私の遺伝子を基に作られた戦闘機人の『タイプアイン・9th』で、9thをイタリア語読みにしてノーヴェと名付けのよ。
 期を見て話す心算だったのだけど、こんな形で話す事になるとは思わなかったわ……其れで京君……」



安心しなお袋。
どんな存在だろうと、スバルもノーヴェもギンガも俺の大事な妹だ――てか、其れを聞いて安心したぜ……生身の人間じゃないなら、首から
下を奪われても生きてる可能性があるからな。

尤も、その場合は敵の手駒と化してる可能性が高いんだが、そうなってたらそうなってたで、ギンガの目を覚ましてやりゃ良いだけだろ?
調子の悪い物は、思い切りぶっ叩いてやりゃ大抵調子が良くなるもんだからな。



「京兄、其れ間違ってると思う。」

「下手すりゃ致命傷だよな普通に……」

「暴走した八神に、全力の大蛇薙喰らわしたら正気に戻ったんだがなぁ?」

でもまぁ、その時はお前等の本気の一撃を叩き込んでやれば良いと思うぜ?
魂の籠った一撃ってのは、言葉以上に相手の心に響くモンなんだ――スカリエッティの野郎が、ギンガを洗脳してテメェの手駒にしても、ギ
ンガの本質を変える事は出来ねぇから、本気の一撃でギンガを元に戻す事は出来る筈だ。
つっても、ギンガが敵として現れた場合の事だけどな。



「……ふん、妹と娘を攫われて、腑抜けているかとも思ったが、その分では大丈夫そうだな京?」

「八神……」

テメェ、何しに来やがった?
妹と娘を守れなかった俺を、嘲笑いにでも来やがったのか?だとしたら残念だったな。生憎と俺は腑抜けちゃいないぜ……寧ろ、ヴィヴィオ
とギンガの奪還に燃えてる感じだぜ。



「嘲笑う心算はない……腑抜けた貴様では、殺しても意味がないのでな……そうなっていないか気になっただけだ。
 まして、草薙流で禁断の奥義とされている十拳を使ったと言うのは、相当な事だったのだろうからな……取り敢えず、貴様が腑抜けになっ
 て居ないのならば、其れで良い。」

「はいはい、ならよござんしたね。
 俺の心配するより、テメェの心配しろ八神。どうせテメェとなのはにはトンでもねぇ量の始末書が用意されてんだろ?先ずは其れを、消化し
 やがれってんだ。」

「此のままでは終わらんぞーーー!!」


――KO!Wiener is Kyo!!



俺の……勝ちだ!!

なんて、馬鹿やってる暇じゃねぇな。
ギンガとヴィヴィオがスカリエッティの手に落ち、六課本部も壊滅と、状況は最悪極まりねぇ状態だからな……尤も、はやての事だから、ここ
からの一発逆転の一手を考えてるんだろうけどよ。



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「本日より、此のアースラが機動六課の新たな本部や!」



んで、予想通りはやてはやってくれたぜ。
10年前の闇の書事件とやらの際に使われて、今はお蔵入りになってた『アースラ』って次元航行艦を持ち出して、臨時の六課本部にしちま
ったんだからな?コイツの行動力には恐れ入るぜ。
でもまぁ、当面の拠点が出来たってのは有り難いんだが……なんだって、そいつが居るんだ。レジアスのオッサンがよ。



「私が連れて来たんだ京。
 レジアス中将は、私が戦い、最期を看取ったゼスト・グランガイツとは旧知の中でな……騎士ゼストの最期を話したら『六課諸君に話すべ
 き事がある』と言うので、お連れしたのだ。」

「六課に話すべき事、だと?如何言うこった、レジアス。」

「うむ……其れを話す前に、先ずは礼を言わせてくれ六課の諸君。
 少々強引な手段を使って結成された部隊ではあるが、諸君はワシの望みである『ミッドチルダから犯罪を無くす』と言う理想を実現してくれ
 た――諸君らのお陰で、ミッドチルダの犯罪件数は劇的に減ったのだからな。」

「ふん、それに比例するように、なのはによる建物破壊が増えているがな。」



テメェは、余計な事言うんじゃねぇ八神。
なのはがぶっ壊した物以上に、犯罪者の摘発の方で効果が上がってんだ。費用対効果で、効果の方が上回ってんなら、誰も文句を付ける
事が出来ねぇだろ?
俺的には、意見陳述会で六課に難癖付けて来た三下野郎が滑稽に思えたからな。
んで、アンタの話は其れだけじゃねぇだろ?



「……ワシは、最高評議会を通して、スカリエッティ一味と内通していた。」

「なに?」

「……其れは、本当の事?」

「だとしたら、只で済ます事は出来ないぜ?」



スカリエッティのクソ野郎と内通してただって?
それが本当なら、テリーの言うように只で済ます事は出来ねぇんだが……意見陳述会で六課の功績を認めてくれたアンタが、何も無しにそ
んな事をするとは思えねぇ。

「野郎と繋がる事で得られるメリットがあったって事か……?」

「情けないがその通りだ草薙京よ。
 スカリエッティが進めていた戦闘機人計画を軌道に乗せる事が出来れば、管理局の人手不足問題も解決できる上に、戦力が確保できれ
 ば、ミッドチルダの犯罪を減らす事も出来ると思ったのだ。
 だが、其れは所詮夢物語に過ぎなかったらしい……最高評議会の連中は己の保身と永遠の生のみを望み、スカリエッティは己の欲望を
 満たす事に固執していたのだからな。
 だからこそ、ワシは諸君等に、ワシの知ってる全ての事を話そう。
 願わくは、諸君らがスカリエッティを打ち倒して、ミッドチルダに真なる平和を齎さん事をだ……」



レジアス……アンタはアンタで、真にミッドチルダの事を考えてたんだな。
だが、こんな事を俺達に話して良いのか?最高評議会の腐れ脳味噌達に此の事が知れたら、アンタだけじゃなく、アンタの娘さんだって危
ないんじゃないか?



「其れについては心配ご無用よ、京さん。」

「誰だお前?つーかどっから現れた?」

「こうして会うのは初めてね?
 機動六課独立隠密員のドゥーエよ。六課総司令であるはやての命を受けて独自に動いていたから私の事は知らないだろうけれど、最高
 評議会の脳味噌共は、私がこの手で引導を渡してやったわ――培養ポッドを壊したら其れでお終いってのは、味気なかったけれどね。」



独立隠密って、はやての奴はそんな部下まで持ってたのかよ?そんで、その隠密さんが腐れ脳味噌をぶっ殺したってか。
確かにそいつ等が居なくなったならレジアスやその家族に危害が及ぶ可能性は……否、やっぱりある。スカリエッティのクソ野郎が、コイツ
の事を直接葬りに来る可能性だって否定できないからな。



「其れについては大丈夫や。
 事が済むまでの間、レジアス中将とオーリスさんには、此のアースラで過ごして貰おうかと思てるんや。
 シャマルの話やと、敵さんには壁抜けの能力を持った奴が居るらしいけど、其れでも宙に浮かぶアースラに来る事は出来へんし、万が一
 アースラに乗り込もうとしても、アースラの護衛にはなのはちゃんを付ける予定やから、乗り込まれる事は先ず無いからな。」

「……なのはが護衛なら、確かに安心ね。」



マッタクだな。
なら、話して貰おうぜレジアス。アンタの知ってる事を全てな。









――レジアスのオッサン説明中だ。八神のMAX八稚女(96Ver)の動画でも見て待ってな。








……成程、全ての元凶は、最高評議会って事か。
結局は連中の不死の望みを叶える為に、アルハザードとか言う世界に居たって言う科学者を複製して生まれたのがスカリエッティで、その
スカリエッティ自体も、完全な複製じゃなかった事と、絶対服従のデータを入れなかった為に、己の欲望を優先して暴走するマッドになっちま
ったって訳か……ったく、詰めが甘いと言うか何と言うか……

だが、此れで余計に野郎をぶっ倒す理由が出来たぜ!
テメェの欲望のままに戦闘機人なんてモンを作り出し、俺のクローンを生み出した上に、ギースとルガールを復活させて、更にはオロチ擬き
まで作ろうとしてるんだからな!
今、此処で野郎をぶっ倒さなかったら、この先、世界がどうなるか分かったもんじゃないぜ!!

一刻も早く奴を――



――ヴィン



って、何だ?行き成り光学モニターが……



『ご機嫌麗しゅう、ミッドチルダの諸君。先ずは自己紹介させて頂こうか?
 私はジェイル・スカリエッティ。数時間前に起きた、未曾有のテロを計画した人物と言っておこう。
 さて、先の攻撃は、序章に過ぎない――我々は、次の攻撃として、12時間後に古代の決戦兵器『ゆりかご』を起動し、ミッドチルダ全域
 への攻撃を開始する。
 私は如何なることを持ってしても、この攻撃を止める心算はない……精々、止めて見せたまえ無能なる時空管理局の諸君よ。』


『逃げんじゃねぇぞオリジナル!ビビってんのか、あぁん!?』



コイツはスカリエッティと、KUSANAGI!
態々光学モニター使って、宣戦布告して来るとは良い度胸じゃねぇか……しかも、スカリエッティの口振りからするに、今のはミッド全域に放
送されたって事だよな?

上等だ、その喧嘩受けてやるぜ!
てか、テメェ等も大概マヌケだなオイ?こんな事しなかったら、ゆりかごの不意打ちで俺達を全滅させられたかも知れねぇのに、態々御丁寧
に挑発してくれたんだからな?
悪いが、機動六課の総司令様と、スターズの隊長様は、こんな事やられて黙ってるタマじゃないぜ?



「ほう?言ってくれるやないかマッド風情が……望み通り、返り討ちにしたるわ、おんどりゃぁぁぁぁ!!」

「うふふふ……私に対して喧嘩売った事を、後悔させてやるの……」



……完全に火が点いちまったからな。
とは言え、不安が無いと言うと嘘になるぜ――ゆりかごを使うって事は、ヴィヴィオが起動の鍵になるって事だからな……シグナムから聞い
た限りじゃ、ゆりかごは聖王の命をコストにして戦う最悪の兵器らしいからな。

其れを考えると、ゆりかごが完全起動する前に内部に突入して、ヴィヴィオを救い出さねぇとだが……多分そう簡単には行かねぇ筈だ。
如何にもコイツは、高難易度のミッションになりそうだな。








――――――








Side:シグナム


スカリエッティめ、まさか最悪の決戦兵器であるゆりかごを持ち出してくるとは……矢張り、ヴィヴィオはアレを起動する為に創られた、聖王
の複製だったか。
だが、奴等の思い通りにさせん!必ずやヴィヴィオを奪還し、然る後にゆりかごを破壊してくれる!!

「其れは其れとして、改めてみると酷い有り様だな六課本部は……この惨状で、死人が1人も出なかったと言うのは御の字なのだろうな。」

だからと言って割り切れる物ではないが……ん?

「京?」

「シグナムか……」



如何したこんな所で?
お前がこんな所に来てると言うのは、正直な事を言うのならば少し意外だったのだが……



「かもな。俺自身そう思ってるしよ。
 でも、俺はこの光景を目に焼き付けとかないとならねぇ……じゃないと、俺はヴィヴィオもギンガも取り戻す事は出来ないだろうからな。」

「……かも知れないが、少しお前らしくないぞ京。
 お前ならば、誰が相手でも不遜な態度を崩さずに撃破してしまうと思ったのだがな?」

「今まではそうだった……だが、今回は正直言って怖いんだ。」



怖いだと?



「オロチの連中がユキを狙ってた事はあったが、その時でもユキは敵の手に落ちてなかった……俺と八神と神楽の『三種の神器』が負けな
 ければ、ユキが、クシナダが敵の手に落ちる事は無かった。
 だが、今度はそうじゃない――戦う前からヴィヴィオは敵の手中にある……だから、俺達が勝ってもヴィヴィオが無事って保証がねぇんだ
 よ……最悪の場合、俺達が勝ってもヴィヴィオは無事じゃない可能性すらある。
 その最悪を考えると、少し怖いんだ……情けねぇけどな。」

「……情けなくなどない。寧ろ、この様な状況で恐れの感情を持たない方が異常だと私は思う。」

だが、仲間が居ればその恐れを乗り越える事も出来るだろう?――無論私だって、恐れはある。
だから、お前の恐れは私が埋めるから、私の恐れはお前が埋めてくれないか京?



「シグナム……お前、聞きようによってはそれ、誘ってるように聞こえるぜ?」

「そう取って貰って構わん……如何やら、私は騎士だが、その本質は『女』だった事に変わりはない様だからな。」

「お前、意外と大胆だよな……」



お前が相手だからだと言っておこう。

だから、私の全てをお前に捧げよう京。そして、その代わりに、私にお前の全てをくれ――互いに足りない部分を補って行こうじゃないか。

ガラではないが敢えて言わせてくれ京……私とお前は、一心同体だとな。












 To Be Continued…