Side:ドゥーエ
防護が薄くなるのは予想していたけれど、徘徊型のガジェットすらいないって、幾ら何でもセキュリティが脆過ぎるわ――そのお陰で、私は
此処に来れたのだけれどね。
さて、この姿でお会いするのは初めてかしらね最高評議会さん?本当は、何度も貴方達と会っているのだけれど、覚えていない……と言う
よりも、分かってないわよね?
なら、この姿なら分かるかしら?
――グニャリ……
『『『…………!!』』』
「驚いてくれたみたいね?ライアーズマスクって言う、私の能力なのよ此れ。
そう、貴方達の延命処理を行っていた女秘書が私……より正確に言うのならば、彼女に化けていたのよ。
あぁ、安心なさい?本物の彼女は今頃南の島でバカンスを楽しんでいるでしょうね……私が用意した、偽の懸賞ハガキ当選のお知らせと
同封したチケットを使ってね。」
あぁ、そうそう……彼女ね、実は貴貴女達の世話が本当は嫌で嫌で仕方なかったみたいよ?
偽の有休をとらせたら、『脳味噌のお守りから解放される~~♪』って喜んでいたしねぇ?……ま、余程のキチガイじゃない限り、貴方達み
たいのと付き合おうとは思わない――と、喋り過ぎたわね。
此れが何か分かる?ふふ、スカリエッティが試作していたプラズマビームキャノン。此れで貴方達を逝かせてあげるわ。
それじゃあ、サヨナラ。
――キィィィン……バガァァァァァァァァン!!
……うん、自分で使っておいてなんだけど、この威力は引くわ……脳味噌共が跡形もなく消滅とか、此れ街中で使っちゃダメな兵器だわ。
今回は役に立ったけど、こんな兵器を作ってるなんて、本気でスカリエッティは戦争――って言う事はないか。作りたくなったから作っただけ
なんでしょうねきっと。
まぁ良いわ。此れでミッションコンプリート。
後は六課が、スカリエッティの戦力を抑えればゲームセットなんだけど……何だろう、嫌な胸騒ぎがするわね……
リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round31
『Barning Soul!Soul to Burn!』
No Side
京とスバルとノーヴェが辿り着いた先で見た物は、大凡信じられない光景だった。
敵と思われる一団が持っていたのは、引き千切られたギンガ……首から下を殆ど失った状態の、無残なギンガの姿だった。
普通の人間なら、こんな状態で生きている事は出来ない――現実に、ぶら下げられたギンガの瞳に生気は無く、死者の瞳と同様に曇り切
って居るのだから。
そして、ギンガをそんな風にされて黙ってられる3人ではない。
「テメェ等、俺の妹をそんなにしやがったんだ……覚悟は出来てんだろうな、パイナップルに眼帯チビと他2名!!」
「ギンガをそんなにしやがって……ぜってぇ許さねぇ!!謝っても、おせぇからな!」
「ギン姉を、返せぇぇぇえぇ!!!」
瞬間、京の炎が掌で燃え盛る。
それと同じく、スバルのリボルバーナックルとマッハキャリバーが、ノーヴェのガンナックルとジェットエッジが唸りを上げ……はしなかった。
唸りを上げるどころか、デバイスが強制解除されてしまったのだ。
「な!?」
「此れは……」
「アタシ等が何の対策も無しに来たと思ってるっすか?
残念ながら、アタシ達が装備してる『簡易AMF:Type-D』の効果で、この地下室限定で、魔導師のデバイスは使用不能になってるんすよ。
バリアジャケット纏っててもデバイスがなければ、どんな魔導師だって恐れるに足らねぇっすよ――アンタ等の姉ちゃんみたいにね!!」
其れは、敵が使っていた特殊な装備のせい。
ガジェットにも搭載されているAMFの性能違い的なモノにより、デバイスが使用不能になってしまったのである――そして、其れがギンガが
やられた直接の原因でもあった。
ギンガは魔導師ランクがAであり、更に格闘技の腕に関しても『インターミドルに出場したら優勝は確実』とまで言われる程である上に、シュ
ーティングアーツ+独学草薙流がその実力を底上げしていた。
そんなギンガなら、例え4人が相手であっても負ける事は無かったろうが、デバイスを封じられてはそうは行かない。
デバイスを封じられたと言う事は、ギンガはシューティングアーツと独学草薙流の殆どの技を封殺され、己の肉体のみを使った格闘技で戦
わざるを得ないのだ。
そんな状態で、武器使い放題、飛び道具上等の相手と戦えるだろうか?――考えるまでもなく答えは『否』だ。
攻撃手段を封殺されたギンガは、一方的な、蹂躙とも言える攻撃により倒されてしまったのである。――其れを踏まえると、この効果を受け
てしまったスバルとノーヴェもヤバいのだが……
「成程……要は、テメェ等だけ攻撃し放題って状況でギンガを嬲り殺しにしたって訳か。
だったら、尚の事許せないぜ、このクズ野郎!!灰にするだけじゃ飽き足らねぇ!細胞の一欠けらも残さずに、焼き潰してやる!!」
京に関しては、其れが通じない。
バリアジャケットこそマリーが作ってくれたが、京の炎はデバイスを介して使っているモノではなく、草薙の血によって発生させている物なの
で、デバイスに干渉する敵の装備など関係ないのだ。
「ふむ、奴には効かんか……ならば、攻撃で沈めるだけの事!穿て、ランブルデトネイター!!」
「ウザってぇ!!」
京を無力化できないと考えるや否や、銀髪で眼帯をした少女がナイフを投擲して来るが、京は闇払いで其れを相殺し……
「おぉぉりゃぁぁ!燃えろぉぉぉぉぉ!!」
「なに!?うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一瞬で間合いを詰めて、琴月 陽でナイフを投擲して来た少女を燃やす。
京の怒りが上乗せされたのか、この琴月 陽の破壊力は普段より格段に高く、この一撃で眼帯の少女――チンクは意識を刈り取られKO!
「チンク姉!アンタ、よくもチンク姉を!!」
「ギンガをそんなにした癖に、テメェの姉妹がやられたからってキレてんじゃねぇクソパイナップル!!」
此れには特徴的は髪型をした赤毛の処女――ウェンディが激高し、手にしたボードから射撃を放つが、京は鬼焼きで其れを燃やし、ウェン
ディを力任せにブッ飛ばす!!最も、草薙流の技でなく、只の力任せのフックだったのでウェンディは戦闘不能にはならなかったが。
だが、其れで止まる京ではない。
ウェンディを殴り飛ばした直後に、自身が『他2名』と称した少女――オットーとディードに一瞬で近付くと、荒咬み連携と毒咬み連携を叩き
込んで即時戦闘不能にしてしまう。
正に圧倒的。
怒りでリミッターが解除された京は、真の無双の戦士と言っても過言ではないだろう――如何考えても、京に分があるのは明らかだろう。
しかし、怒りは潜在能力を解放すると同時に、理性を奪う。冷静な判断力を奪う……其れは、京であっても例外ではなかった。
「生きて帰れると思うなよクソっ垂れ……テメェ等は此処で燃やし尽くすぜ!!」
――轟!!
「!!!」
――推奨BGM『ESAKA!』
京の拳に宿った炎を見て、ウェンディは本能的に直感した――アレはヤバいと。
アレを真面に喰らったら、只では済まない……だから、救援の要請を出したのだ、他方で戦っている姉に向かって。
「ちょっとヤバい状況っす!援軍か退避路を要請するっす!!」
『あぁ、お姉ちゃんに任せときな!』
ウェンディの要請に対し、光学モニターに映った水色の髪の少女はそう返すが、既に京の炎は臨界点を突破し、拳に宿っていた炎は全身を
包み込んでいる――其処に居たのは、炎の神だった。
「何かこそこそやってたみたいだが、コイツで決めてやるぜ!!
あの世でギンガに詫びろクソっ垂れが!!草薙流最終決戦奥義・十拳ぁ!!こいつで燃え尽きろぉぉぉぉぉ!!」
その炎を右の拳に集約して放たれた十拳は、文字通り万物を焼き尽くして灰にしてしまうだけの炎を巻き上げる……其れこそ、京自身すら
焼き尽くしかねない程の炎が。
だが……その炎が治まったその時に、敵の姿は無かった。
十拳が放たれる刹那の瞬間に、この場を離脱してしまっていたのである。
残ったのは壁が炭化した地下室と、十拳の炎で破損したバリアジャケットを纏う京とスバルとノーヴェだけ……敵3人をKOしたとは言え、ギ
ンガを倒されてしまった上に敵には逃げられた――最終的に勝ったのは何方か等、言うまでもない事だった。
「クソ……クソ……クソォ!!!ギンガァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「アニキ……」
「京兄……」
ギンガを助けられなかった己の不甲斐なさと、敵を倒しきれなかった悔しさで床を殴りつける京に、スバルもギンガも掛ける言葉が見つから
なかった。
――――――
京が怒りに任せて地下室で大暴れしていた頃、六課本部での戦いも本格化していた。
六課本部に新たに現れた戦力はギースとルガールだけでなく、スカリエッティの配下である戦闘機人トーレとセッテも加わっており、その為
に六課防衛組は戦力を分ける事になった。
ギースに対抗するのはロックとティアナ、ルガールに対抗するのはレオナとキャロとエリオ、トーレに対抗するのはテリー、セッテに対抗する
のはザフィーラとなっている。
最初はギースを倒すのはテリーが名乗りを上げたのだが、其処にロックが割り込みこの編成に。
ロック曰く、『アイツに、母さんの苦しみの半分位は分からせる!』との事であり、またテリーも元の世界で一度は仇を討っている事から、ギ
ースに対して以前よりも拘りが有った訳でなく、『なら、やりたいようにやってみな』と、ロックに譲ったのだ。
――推奨BGM『クラブM~青空とフルート~』
「せい!おぉぉりゃぁぁぁ!!」
「ほう……悪くない腕だ――同じ頃のテリー・ボガードを既に超えているか。
尤も、曲がりなりにも私の息子であり、更に奴に鍛えられたのだから、最低でも此れ位でなくては困るがな。」
「親らしいことを何一つしなかったくせに、今更父親面すんじゃねぇ!
例え遺伝子がどうのこうの言った所で、俺はアンタを父親とは認めない!そして、俺は俺自身をアンタの息子とは思わない!!」
「如何思おうと勝手だが、お前が私の息子であると言う事実は変わらないぞ、ロックよ。」
「黙れぇ!ダブル烈風拳!!」
その戦いは、攻めているのはロックだが、ギースは古武術の防御で巧みに点をずらして決定打を与えない。
此のままでは、我武者羅に攻めているロックの方が先にガス欠になるのは、誰の目にも明らかなのだが、ロックと組んでいるティアナは何
も言わずに、ギースの動きを注視している。
まるで何かを狙っているように。
「若く猛々しいが、簡単に頭に血が上るようではまだまだ一流とは言えんなロックよ?」
ロックの攻撃が雑になって来たのを感じ取り、ギースは攻撃に転じようとするが……
「そう思うか?なら、俺の演技力はオスカークラスかもな。」
ロックが、そう不敵に笑った次の瞬間、ギースの四肢をオレンジ色の魔力が拘束しその動きを止めた。
それをやったのはティアナ。しかし、ロックとギースの戦いの最中にギースにバインドを放ったのではない――戦闘が始まったと同時に、設
置型の不可視のバインドを設置し、ロックが其処にギースを押し込んだのである。
何の事はない、ロックはギースの存在と言葉に逆上したフリをしながら攻撃を加え、ティアナがバインドを設置した場所まで押し込んでいた
だけの事だったのだ。
「此れは……ふむ、見事だ。全く動けん。
私に激高しているフリをしながら、この場所まで強引に連れて来たと言う訳か……実に素晴らしい。」
「俺は自分の実力は理解してる心算だ。
弱音を吐くわけじゃないが、今の俺じゃアンタに勝つのは無理だろ?アンタを倒したテリーに、俺は1度も勝ってないんだからな。
だが、1人で勝てないのなら仲間の力を借りりゃ良いだけの事――アンタだって、自分1人じゃどうしようもない事があった時は部下を、自
分以外の何かを使った筈だ。そうじゃなきゃサウスタウンの統一と支配は出来なかっただろうからな。
もっと言うなら、アンタはティアナを舐め過ぎた。所詮小娘ってな。
確かにティアナはアンタには遠く及ばないかも知れないさ、単純な戦闘能力に限ればな。だが、ティアナは指揮官としての広い視野と柔軟
な思考が備わってるんだ、その手足として動く戦力が居れば、ある意味で無敵なんだよ!」
「ちょ、褒め過ぎよロック!まぁ、悪い気はしないけれど……」
「あ、いやなんだその……他意は無くてだな、純粋にティアナを評価してるって言うか、えーと、その、つまりだな……」
「……この状況で言うのもなんだが、さっさと付き合ってしまえ貴様等。式の費用位は父親として出してやるわ。」
「「どうしてそうなる!?」」
それに感心したギースだが、ロックとティアナの微妙な関係(ティアナがロックに悩みを打ち明け、更にオロチ擬きにティアナが取り込まれた
のをロックが救って以来、何か良い雰囲気になってたらしい)に突っ込みを入れて、なんか締まらない状態になっていた。
しかし今は戦いの最中であり、少し脱線してもすべき事はせねばならない。
「ったくアンタは何処までも……だがまぁ、アンタは此れで動けないよな?
動けない奴に攻撃するってのは、KOFだったら躊躇する所だが、生憎と今はルールも何もない戦いなんでな……ブチかまさせて貰うぜ!
デッドリィィィィィィ……レェェェブ!!!」
拘束されたギースに対して、ロックは自身の最強技であるデッドリーレイブを発動!
動きを封じられたギースに、其れを防ぐ手段はなく、合計9発の拳と蹴りが叩き込まれ、フィニッシュに両手から気功波を放って吹き飛ばす。
そしてロックのこの攻撃に呼応するかのように……
「フリード!ヴォルテール!!」
「紫電一閃!!」
「貴方では勝てない……Vスラッシャー!!」
キャロが自身の僕であるフリードリヒとヴォルテールの2体の巨竜のブレスを、エリオがストラーダで乾坤一擲の一撃を、レオナがオロチの力
を覚醒した状態でのVスラッシャーをルガールに叩き込む。
京達が元いた世界で、『巨悪四天王(ルガール、ギース、クラウザー、Mrビッグ)』の内2人が、次代を担う若者達によって封殺されていたの
である――此れは驚くべき事だろう。
更に戦闘機人であるトーレとセッテも……
「Hu!中々やるが、少し実戦経験が足りないな?其れじゃ俺には勝てないぜ!Go Barn!One、Two、Barbed wire!!」
「その剣技は見事だが、我が拳を越えるには程遠い!出直して来い!!」
テリーとザフィーラの、2人の狼に完全に封殺されていた。
トーレは戦闘機人の中ではトップの戦闘力を有しているが、実戦経験があまりなく、百戦錬磨のテリーには赤子同然であり、セッテもまた優
秀な能力を備えながら、歴戦の勇士であるザフィーラにはその刃を届かせる事が出来ないで居た。
此れだけ見れば、六課防衛戦は危なげないと見えるだろう。
だが――
「アンタの力はこんなもんじゃない筈だ……本気で来いよギース!!」
「教官が此の程度の相手に後れを取ったとは思えない……戦場で実力を隠すのは愚かな行為よルガール。」
ロックとレオナは、ギースとルガールの実力が此の程度ではないと言う事を見抜いていた。
否、其れは当然だろう――こうも簡単に倒せる相手が、サウスタウンの統一と支配や、武器商人としてブラックマーケットを牛耳る事は到底
出来ないのだから。
そしてその答えとして、ギースとルガールが吹き飛ばされた夫々の場所から闘気が爆発し、其処からギースとルガールが姿を現す。
――推奨BGM『The lord GOD』
「よもやこれ程とは……ならば私も、全力を持って相手をしようではないか。」
「すわぁ、見るがいぃ、わぁぐぁちかるぁ!!」
だが、現れたギースとルガールの姿は、此れまでとは異なっていた。
ギースは髪が銀色になり、肌はダークグレーになって白い紋様が入って瞳の色が反転し、ルガールも肌がダークグレイに染まって、髪は庵
よりも赤く染まり、右腕も不気味に輝いている。
其処に降臨したのは『ナイトメア・ギース』と『オメガ・ゴッド・ルガール』……凶悪な『悪夢』と『悪神』が、この戦場に降り立ったのだった。
――――――
Side:シグナム
六課本部の方が気になったので、そちらに向かう旨をナカジマ一尉に伝えて、本部に向かっているのだが……まさか、お前と再会する事に
なるとは思っていなかったよリインフォース。
スカリエッティに再生されたとの事だが、元気そうで安心したよ――姉上。
「……間違ってはいないかも知れないが、そう呼ぶのは止めてくれないか将?お前にそう呼ばれると、背中がむず痒くなってしまうよ。」
「其れは済まなかったが、10年ぶりの再会なんだから、此れ位は許してくれ。」
「お前は、昔から生真面目だが変な所で茶目っ気を出す所があったのだが、其れは今でも健在のようで逆に安心したよ。」
むぅ、私は堅物ではないぞリインフォース。もしも私が真に堅物であったのなら、京と言う恋人を得るには至らなかっただろうからな……自分
で言うのもなんだが、意外と女らしいと思うぞ私は?
「知っている。
私の記憶にある限り、お前は誰よりも騎士らしく、そして女らしかったからね……まぁ、思い出話はまた後だ――先ずは、我等に仇なす者
達を掃討するとしよう将!!」
言われるまでもないぞリインフォース!
我等に仇なすは、我が主に仇なす事と同義……そんな不逞の輩は、我が剣の錆にするだけだ!!何より、お前が一緒なら誰が相手でも、
負ける気がしないぞリインフォース。
それなのに、何故こんなにも私の胸はざわつくのか……如何にも嫌な予感がしてならない――私の杞憂であれば良いのだがな……
To Be Continued… 
|